その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました

七夜かなた

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エピローグ

ディラン①

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 異世界転生が自分の身に起こったと気づいたのは、ディラン・シャルボイエとして生を受けた瞬間だった。
 赤ん坊でオギャアしか言えないながらも、地球という惑星の日本で生きていたラノベとゲーム好きのサラリーマンだった記憶を持っていた。

 大人の記憶があったお陰で、神童などと持て囃されるようになった。
 はっきり言って、ここは中学生程度の勉強が出来ればかなりできる方だ。

 そしてここは魔法が使える世界。
  
 魔法が使えることに夢中になった。

 しかも第二王子だなんて、生まれながらに特権階級にいるだなんて、ラッキーとしか言いようがない。
 まあ、母親の趣味でドレスを着せられたりしたのは誤算ではあった。

 しかし、ここは顔面偏差値が異様に高い世界。
 たとえ女装でも、似合ってしまう自分を鏡で見て、新しい扉が開きそうになった。

 でも、ここは自分が好んで読んでいたチート能力で成り上がる類の話とは違った。
 ではどんな世界だろう。
 それがわかったのはついこの間のこと。
 異母兄のアレッサンドロが、婚約者の侯爵令嬢に婚約破棄を突きつけたと聞いた時だ。

(ここは悪役令嬢ものの世界だったのか!!)

 よくある悪役令嬢の断罪劇。

 設定としては知っている程度で、その手の話は殆ど読んだことがない。

 婚約者の王子は他に好きな令嬢が出来て、婚約者だった高位貴族の令嬢が婚約破棄される。

 主役が王子の恋人なら、悪役令嬢は婚約破棄されて、その後婚約破棄された令嬢は悲惨な人生を送る。
 主役が悪役令嬢なら、それは冤罪で、そこから令嬢の新たなやり直し人生が始まる。
 もっと大物の男性に見初められたり、自分自身でもって生まれた能力を駆使して生き直す。
 そして王子や恋人の令嬢は酷い憂き目に合う。
 この場合は、どうだろう。

 はっきり言って、婚約破棄をしようとしている男主人公(?)的存在の異母兄、王太子アレッサンドロは、お世辞にも完璧とは言い難い。
 
 自分についた家庭教師は、かつて彼の家庭教師でもあったのだが、どうやら彼はあまり成績がよろしくなかったようだ。

 いや、ではなく、と言った方がいい。

 正妃の唯一の子で、一番最初に生まれた男子だから、たまたま王太子なだけの、頭の軽いアレッサンドロ。

 そんな男の寵を争って王妃になっても、苦労するだけだ。

 彼と結婚するはずだった相手のほうがかなり優秀で、だからこそ、父である国王は彼女を婚約者にしたのだろう。

 これは、婚約破棄された令嬢がヒロインの物語?

 だとしたら、十歳の自分が相手の令嬢と恋に落ちるわけでもないだろうから、第二王子という設定の自分はこの世界では、完全にモブ


 と思ったら、そこに割り込んで来た人間がいた。

 それがもう一人の姉弟。
 
 ベルテだった。

 悪役令嬢ものだと思ったが、違うのだろうか。

 そして悪事が次々と明るみにされたアレッサンドロは、王太子の座を奪われてその座が自分に転がり込んできたのだった。

 モブの筈が主人公は彼女?

 悪役令嬢の立ち位置にいるシャンティエ嬢にとって、アレッサンドロの失脚は「ざまぁ」と言えるのではないだろうか。

 ベルテのお陰でアレッサンドロは王太子の座を失い、自分にその順番が回ってきた。

 これが悪役令嬢ものだろうが、何だろうが前世では普通のサラリーマンだった人間が、一国の王になるなんて。責任は重いがまさに一国一城の主になるのだ。

 父に呼ばれ、父の執務室行く。

 そこではアレッサンドロとの婚約を解消した令嬢の今後のことが話し合われた。

 結果、令嬢には密かに想いを寄せていた男性がいたという、意外な事実を知ることになった。

 そのうえ、今度は異母姉のベルテの婚約話が浮上したのだった。

 相手は「白薔薇の君」と中二病的な呼称で呼ばれる侯爵の息子だ。
 ビシュアルも、間違いなく某海外雑誌で世界のイケメン五十人という見出しに載りそうな、令息だった。
 しかもどこのアイドルだとツッコミたくなるような「白薔薇を愛でる会」という、聞いたこっちが鳥肌ものの妙な会まであると聞いたことがある。
 メンバーは相当数いて老若男女問わないらしい。
 その実態は昭和にアイドルに付いていた「親衛隊」みたいなものだろうか。
 推しは皆のもの。抜け駆け厳禁。特定の誰かのものになってはいけない。
 かつて勝手に自分を売り込もうと、騎士団に潜り込んだ令嬢は失敗してその集団から酷い目に合わされたらしい。
 
 異母姉のベルテは、弟からみればかわいい姉だ。
 でも社交的とは言い難く、錬金術にしか興味がない。
 はっきり言って、彼と婚約したと知られたら、彼のファンクラブみたいなその集団「白薔薇を愛でる会」が黙っていないのではないだろうか。
 
 王女だからと、大目に見てくれたりするのか。
 どうやらその会のことを何も知らなかったようで、話を聞いて驚いていた。

 
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