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結局、大家さんからの電話に動揺して、昼からの私は朝よりもっとポンコツだった。
「日向さんさぁ、こんなにミスばかりされたら、正直困るんだよねぇ、うちも人手はほしいけど、こう失敗ばかりされたら、こっちも考えなきゃいけなくなる」
「はい、すみません。明日からは気をつけます。すみません」
私は項垂れてひたすら謝った。この店長は、自分の保身が第一で、エリアマネージャーが来ると、あからさまにヘコヘコしている。要は長い物には巻かれるタイプ。正社員やパート、バイトにはとことん厳しい。
そんな店長の説教は長々と続き、一度アパートに戻ろうと思っていたのに、その時間が無くなって私はもうひとつの仕事先である清掃会社へ直行した。
いつもは一度帰ったときに、夕飯用におにぎりを作って行くのだけど、それもできなかった。
あまり美味しくないけど、そんな時はどこかで買ったりするのだが、今日は落ち込んで食欲もなくなっていた。
「日向さん、悪いけど今日も昨日と同じ現場に行ってもらえないかしら」
スタッフの派遣先を決めるマネージャーの加賀さんが、集合後に行ってきた。
今日は定休日のレストランに行く予定だった。
「昨日と同じって……月夜見ホールディングス……」
「ええ、そうよ。暫くはそちらに回ってもらうことになるわ」
「え、どうして」
「なに、私の采配が気に入らないの?」
「あ、いえ、そういうわけでは……」
文句を言っていると思われたのか、加賀さんは不機嫌になった。
「雪緒ちゃん、来なくていいと言われるよりいいじゃない」
「でもレストランならフロアの部分だけだけど、月夜見ホールディングスは何階もあるから、移動が大変よね。行きたくない気持ちもわかるわ」
「あ、いえ、その点は別に苦では……」
確かに掃除する場所は広いし、ビル全体だと大変だ。私があそこに行き渋る理由は、別のことだ。でも、その理由は言えない。
「なら問題ないわね。じゃあ、よろしくお願いします」
加賀さんがファイルを閉じて、ミーティングは終了した。
月夜見ホールディングス専属とか、何かありそうで行くのが不安だったが、行かないとお給料が貰えない。
私は重い足取りで、月夜見ホールディングスへ向かう車に乗り込んだ。
「日向様」
地下の駐車場の所定の場所に車を停め、荷物を降ろしていると、ふいに声をかけられた。
嫌な予感がして振り向くと、あの熾とかいう男性が立っていた。
「な、なんですか」
「お迎えにあがりました」
「迎え?」
今朝同様、黒のスーツをびしっと着ていて、清掃会社のスタッフを出迎えるには、かなり仰々しい。
「閨様がお待ちです。どうぞ」
「は? あの……私、今から仕事が……」
そう言って逃げようとして振り返ると「じゃあ、皆よろしく」と、私を無視して従業員用エレベーターで昇っていくところだった。
「あ、待って私も」
「彼らには暗示をかけ、あなた様もそこにいると思っております」
すぐ耳元で囁かれ、びっくりして振り返る。
この人も、月夜見閨同様、毛穴レスだ。
「な、なんで」
「あなたはこちらへ」
軽く背中を押されているだけなのに、強い力なのがわかる。
彼は私を皆が乗っていったエレベーターとは別のエレベーターへと誘導した。
「こ、これは?」
「役員専用」というプレートが掲げられている。
「最上階と役員専用フロア直通のエレベーターです」
「そんなことを聞いているんじゃ」
「さあどうぞ」
彼が上行きのボタンを押すと、すぐにエレベーターが開いた。
「……へ?」
中を見て驚いた。そこは私が生きてきた中で見てきたエレベーターの中とはどれも違う。
広々としていて、黒い革張りのソファが置かれた応接間のような空間が広がっていた。
「日向さんさぁ、こんなにミスばかりされたら、正直困るんだよねぇ、うちも人手はほしいけど、こう失敗ばかりされたら、こっちも考えなきゃいけなくなる」
「はい、すみません。明日からは気をつけます。すみません」
私は項垂れてひたすら謝った。この店長は、自分の保身が第一で、エリアマネージャーが来ると、あからさまにヘコヘコしている。要は長い物には巻かれるタイプ。正社員やパート、バイトにはとことん厳しい。
そんな店長の説教は長々と続き、一度アパートに戻ろうと思っていたのに、その時間が無くなって私はもうひとつの仕事先である清掃会社へ直行した。
いつもは一度帰ったときに、夕飯用におにぎりを作って行くのだけど、それもできなかった。
あまり美味しくないけど、そんな時はどこかで買ったりするのだが、今日は落ち込んで食欲もなくなっていた。
「日向さん、悪いけど今日も昨日と同じ現場に行ってもらえないかしら」
スタッフの派遣先を決めるマネージャーの加賀さんが、集合後に行ってきた。
今日は定休日のレストランに行く予定だった。
「昨日と同じって……月夜見ホールディングス……」
「ええ、そうよ。暫くはそちらに回ってもらうことになるわ」
「え、どうして」
「なに、私の采配が気に入らないの?」
「あ、いえ、そういうわけでは……」
文句を言っていると思われたのか、加賀さんは不機嫌になった。
「雪緒ちゃん、来なくていいと言われるよりいいじゃない」
「でもレストランならフロアの部分だけだけど、月夜見ホールディングスは何階もあるから、移動が大変よね。行きたくない気持ちもわかるわ」
「あ、いえ、その点は別に苦では……」
確かに掃除する場所は広いし、ビル全体だと大変だ。私があそこに行き渋る理由は、別のことだ。でも、その理由は言えない。
「なら問題ないわね。じゃあ、よろしくお願いします」
加賀さんがファイルを閉じて、ミーティングは終了した。
月夜見ホールディングス専属とか、何かありそうで行くのが不安だったが、行かないとお給料が貰えない。
私は重い足取りで、月夜見ホールディングスへ向かう車に乗り込んだ。
「日向様」
地下の駐車場の所定の場所に車を停め、荷物を降ろしていると、ふいに声をかけられた。
嫌な予感がして振り向くと、あの熾とかいう男性が立っていた。
「な、なんですか」
「お迎えにあがりました」
「迎え?」
今朝同様、黒のスーツをびしっと着ていて、清掃会社のスタッフを出迎えるには、かなり仰々しい。
「閨様がお待ちです。どうぞ」
「は? あの……私、今から仕事が……」
そう言って逃げようとして振り返ると「じゃあ、皆よろしく」と、私を無視して従業員用エレベーターで昇っていくところだった。
「あ、待って私も」
「彼らには暗示をかけ、あなた様もそこにいると思っております」
すぐ耳元で囁かれ、びっくりして振り返る。
この人も、月夜見閨同様、毛穴レスだ。
「な、なんで」
「あなたはこちらへ」
軽く背中を押されているだけなのに、強い力なのがわかる。
彼は私を皆が乗っていったエレベーターとは別のエレベーターへと誘導した。
「こ、これは?」
「役員専用」というプレートが掲げられている。
「最上階と役員専用フロア直通のエレベーターです」
「そんなことを聞いているんじゃ」
「さあどうぞ」
彼が上行きのボタンを押すと、すぐにエレベーターが開いた。
「……へ?」
中を見て驚いた。そこは私が生きてきた中で見てきたエレベーターの中とはどれも違う。
広々としていて、黒い革張りのソファが置かれた応接間のような空間が広がっていた。
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