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熾さんの罪(?)を赦す代わりに、月夜見さんの頼みをきく。
それって私がやらないといけないこと?
なんだか腑に落ちない。
「えっと、血を……」
「それはすぐに花嫁にならないという、約束の代わりだ」
え、そうだったっけ?
「じゃあ、名前を呼ぶのは……」
「それは車から降ろす代わりに提案した話だ」
それも、そうだった?
じゃあ名前を呼ぶことを承諾しなかったら、いつまでも監禁されてたってこと?
でも口約束だし、正直早く車から降ろしてもらいたいと思っていたから、細かいところまで覚えていない。
「どうする? 熾を助けるために、君は何をしてくれる?」
私に決断を迫る月夜見さん。ちらりと熾さんに視線を向けると、彼はずっと項垂れたままだ。
きっと月夜見さんの沙汰を待っているのだろう。
腕を折られるかもしれないのに、慌てる様子もない。こういうことはよくあるんだろうか。
よくあることなら、ちょっと怖い。
「どうする? はっきり言って、俺は気が長いほうではない。それに熾のために君が思い悩んでいること自体、気に入らない。だから時間をかければかけるだけ、交換条件は厳しいものになる」
「そ、そんな……」
決断するしかない。でも、何をすれば彼は納得するんだろう。
たとえすぐ治ると言っても、誰かが自分のせいで痛い思いをするのはやっぱり寝覚めが悪い。
「時間は有限だ。いつまでも待てない」
「わ、わかりました。あなたの気の済むようにしてください。ただし、『花嫁』になる以外はだめです」
「俺の、気の済むように? というのは、俺の好きなようにしていい、ということか?」
「そ、そうです。でも私が出来ることにしてください。それと、法律に反しない内容で」
今朝もこんなやり取りをした気がする。
「言質はとったぞ」
月夜見さんの目がきらりと光り、私をぐっと引き寄せた。
「な、ななな」
「俺のしたいように、だな。ならば俺の元へこい」
「……え?」
「花嫁になるのは待ってやろう。どうせ未来は変えられない。今すぐか、少し先になるだけのことだ」
「ど、どうして……そんなこと絶対にそうなるとは……」
月夜見閨の花嫁になる未来は変わらない。なぜそんなことが言い切れるのか。
「これまで俺が望んで手に入れられなかったものはない。いや、ここまで望んだことはない」
「なんでも例外はあるのでは? それとも私にこの前みたいに術でもかけて、操るの?」
彼の瞳の光に魅入られると、その声に抗うのは難しい。
無理に逆らおうとすれば、できないことはないけど、ものすごく気力を使うので疲れる。
「軽く身体的に拘束することはあっても、心までは操らない。ほしいのは生きた人形ではなく、『日向雪緒』だ」
月夜見さんの手がさらに強くなる。これ以上強い力で抱きしめられたら息が止まるだろつもいう、ギリギリの力加減だ。
「こ、拘束……するんだ」
精神的には助かったけど、ちっとも穏やかではない。
「それに、君は俺の顔は好みなのだろう? 時折見惚れてくれているのを俺が気づいていないとでも?」
視界いっぱいに顔全体が見える位置まで、顔を近づけてくる。
図星だったので、ドキリとする。
「そ、それは……び、美形なのはあなたも認めるでしょ」
ネットで「月夜見 閨」と検索すると、その経歴の前にはいつも見出しとして、「イケメン経営者」「世界が認めるイケメン」「才能もお金も容姿も揃った人物」などなどの言葉が出てくる。
数年前、彼が「月夜見ホールディングス」の経営を継いだ記事が載った雑誌は、経済誌ながら発行部数は百万部を超えたともあった。
けれど、それ以外はあまりメディアに出ることはなく、彼のインタビューが載った社内報は、ネットで高く取引されている。
「き、綺麗な顔だと思っているのは、世間も認めていることですから」
「俺は君に認められたい。なんなら雪緒が気に入る顔に変えてもいい」
「え、や、そ、そこまでしなくていいです。それは重いです」
彼の言動は、それが彼にとって普通なのかもしれないが、驚くことばかりだし、どうしたらいいのか戸惑うことばかり。正直、とても重い。
「……わかった。ありのままの俺を受け入れてくれるということだな」
そんなことひと言も言っていませんが。この人の思考回路は一体どうなっているのだろう。
私はまるで珍獣を見るような目で、彼を見た。
それって私がやらないといけないこと?
なんだか腑に落ちない。
「えっと、血を……」
「それはすぐに花嫁にならないという、約束の代わりだ」
え、そうだったっけ?
「じゃあ、名前を呼ぶのは……」
「それは車から降ろす代わりに提案した話だ」
それも、そうだった?
じゃあ名前を呼ぶことを承諾しなかったら、いつまでも監禁されてたってこと?
でも口約束だし、正直早く車から降ろしてもらいたいと思っていたから、細かいところまで覚えていない。
「どうする? 熾を助けるために、君は何をしてくれる?」
私に決断を迫る月夜見さん。ちらりと熾さんに視線を向けると、彼はずっと項垂れたままだ。
きっと月夜見さんの沙汰を待っているのだろう。
腕を折られるかもしれないのに、慌てる様子もない。こういうことはよくあるんだろうか。
よくあることなら、ちょっと怖い。
「どうする? はっきり言って、俺は気が長いほうではない。それに熾のために君が思い悩んでいること自体、気に入らない。だから時間をかければかけるだけ、交換条件は厳しいものになる」
「そ、そんな……」
決断するしかない。でも、何をすれば彼は納得するんだろう。
たとえすぐ治ると言っても、誰かが自分のせいで痛い思いをするのはやっぱり寝覚めが悪い。
「時間は有限だ。いつまでも待てない」
「わ、わかりました。あなたの気の済むようにしてください。ただし、『花嫁』になる以外はだめです」
「俺の、気の済むように? というのは、俺の好きなようにしていい、ということか?」
「そ、そうです。でも私が出来ることにしてください。それと、法律に反しない内容で」
今朝もこんなやり取りをした気がする。
「言質はとったぞ」
月夜見さんの目がきらりと光り、私をぐっと引き寄せた。
「な、ななな」
「俺のしたいように、だな。ならば俺の元へこい」
「……え?」
「花嫁になるのは待ってやろう。どうせ未来は変えられない。今すぐか、少し先になるだけのことだ」
「ど、どうして……そんなこと絶対にそうなるとは……」
月夜見閨の花嫁になる未来は変わらない。なぜそんなことが言い切れるのか。
「これまで俺が望んで手に入れられなかったものはない。いや、ここまで望んだことはない」
「なんでも例外はあるのでは? それとも私にこの前みたいに術でもかけて、操るの?」
彼の瞳の光に魅入られると、その声に抗うのは難しい。
無理に逆らおうとすれば、できないことはないけど、ものすごく気力を使うので疲れる。
「軽く身体的に拘束することはあっても、心までは操らない。ほしいのは生きた人形ではなく、『日向雪緒』だ」
月夜見さんの手がさらに強くなる。これ以上強い力で抱きしめられたら息が止まるだろつもいう、ギリギリの力加減だ。
「こ、拘束……するんだ」
精神的には助かったけど、ちっとも穏やかではない。
「それに、君は俺の顔は好みなのだろう? 時折見惚れてくれているのを俺が気づいていないとでも?」
視界いっぱいに顔全体が見える位置まで、顔を近づけてくる。
図星だったので、ドキリとする。
「そ、それは……び、美形なのはあなたも認めるでしょ」
ネットで「月夜見 閨」と検索すると、その経歴の前にはいつも見出しとして、「イケメン経営者」「世界が認めるイケメン」「才能もお金も容姿も揃った人物」などなどの言葉が出てくる。
数年前、彼が「月夜見ホールディングス」の経営を継いだ記事が載った雑誌は、経済誌ながら発行部数は百万部を超えたともあった。
けれど、それ以外はあまりメディアに出ることはなく、彼のインタビューが載った社内報は、ネットで高く取引されている。
「き、綺麗な顔だと思っているのは、世間も認めていることですから」
「俺は君に認められたい。なんなら雪緒が気に入る顔に変えてもいい」
「え、や、そ、そこまでしなくていいです。それは重いです」
彼の言動は、それが彼にとって普通なのかもしれないが、驚くことばかりだし、どうしたらいいのか戸惑うことばかり。正直、とても重い。
「……わかった。ありのままの俺を受け入れてくれるということだな」
そんなことひと言も言っていませんが。この人の思考回路は一体どうなっているのだろう。
私はまるで珍獣を見るような目で、彼を見た。
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