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第3章 討伐依頼
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営業開始と同時にフェルが入ってきたが、間の悪いことにそこにエミリオも現れた。
入口のところで鉢合わせしたが、牽制しているのは一方的にエミリオで、フェルの方はまったく意識していない様子だった。それが更にエミリオの怒りをあおった。
「俺はこの依頼を受ける。C級のお前はこれでもやっとけ」
エミリオとフェルが持ってきた依頼書は、エミリオがベアドウルフの討伐依頼。そしてフェルは一角モグラの駆除依頼だった。
ベアドウルフは群れで行動する氷属性を使う魔物。個体一体の攻撃力は弱いが徒党を組むとかなりの強敵になる。ランク自体はBランクの魔物。
一角モグラは魔物と言ってもFランクで、普通のモグラに比べれば体も大きいだけのモグラだけど、額にある角でモグラ除けも突き破り農作物を荒らすので、時折駆除の依頼が農家から舞い込んでくる。
報酬もベアドウルフと比べれば五分の一だ。
「一角モグラの駆除なんて、俺が駆け出しの冒険者の頃に一回か二回受けたショボイやつだ。お前にはお似合いだよ。俺クラスになればこういうど派手な依頼もチャッチャッとこなせるのさ」
「ちょっとエミリオ、依頼にショボイもど派手もないわ。どれも依頼者には切実なものばかりなのよ」
ミランダがエミリオの配慮のない言動を注意する。
「それに、どんな依頼も侮ったりしたら酷い目に会うからね」
簡単な依頼だと高を括り、ひどい怪我を負ったり命を落とした冒険者を見てきた。油断は禁物だ。
情報も必ずしも正確だとは限らない。討伐に行って聞いていた情報より深刻な状態だったということもある。
「はいはい、わかりました。心配性だな。でも心配ご無用。A級の俺には楽勝だ。俺と一緒にこの依頼を受けるやつは今日の正午に東の城門に来てくれ、報酬は山分けだ」
依頼は一人で受けても複数で受けてもいい。パーティを組んで集団で行動する者もいれば、依頼に合わせてその都度パーティを組む者もいる。
そして報酬は声をかけた者が配分を決めることが常で、大抵はその者が一番多く報酬を得る。
しかし今回エミリオは均等に分けることを宣言した。
何人かが興味有りげに反応し、エミリオの元へと集まってきた。
「じゃあな。せいぜい作物を一角モグラから護ってやれよ」
明らかにフェルを馬鹿にした態度でエミリオが建物を出ていった。
「フェルさん、本当にこの依頼でいいですか?」
「ああ、構わない」
「一角モグラは弱いけど、土の中深くに潜って見つけにくいですよ」
「わかっている。でも大丈夫だ」
「依頼した農家の方に駆除を始める前に挨拶してください。こちらから連絡を入れておきます。地図はギルドカードに送りました。駆除の証拠は一角モグラの角です。こちらで角一本につき報酬を支払います。肉は魔獣肉の処理専門店に行ったら買い取ってくれますよ」
「わかった。では行ってくる」
「行ってらっしゃい」
出ていこうとするフェルにマリベルが声をかけると、ピタリと彼が足を止めてこちらを振り返った。
「今のもう一度行ってください」
「フェルさん? 何を、ですか?」
「その…よく聞こえなかったので…何と言ったのですか」
なぜか照れてフェルがモジモジする。
「えっと…行ってらっしゃい…と言ったんです」
それほど小さい声ではなかったと思うが、他のことに気を取られて耳に入らなかったのだろうか。
「はい、行ってきます」
ニコリと微笑むと、子供のように元気いっぱいに返事をしてフェルは出ていった。
入口のところで鉢合わせしたが、牽制しているのは一方的にエミリオで、フェルの方はまったく意識していない様子だった。それが更にエミリオの怒りをあおった。
「俺はこの依頼を受ける。C級のお前はこれでもやっとけ」
エミリオとフェルが持ってきた依頼書は、エミリオがベアドウルフの討伐依頼。そしてフェルは一角モグラの駆除依頼だった。
ベアドウルフは群れで行動する氷属性を使う魔物。個体一体の攻撃力は弱いが徒党を組むとかなりの強敵になる。ランク自体はBランクの魔物。
一角モグラは魔物と言ってもFランクで、普通のモグラに比べれば体も大きいだけのモグラだけど、額にある角でモグラ除けも突き破り農作物を荒らすので、時折駆除の依頼が農家から舞い込んでくる。
報酬もベアドウルフと比べれば五分の一だ。
「一角モグラの駆除なんて、俺が駆け出しの冒険者の頃に一回か二回受けたショボイやつだ。お前にはお似合いだよ。俺クラスになればこういうど派手な依頼もチャッチャッとこなせるのさ」
「ちょっとエミリオ、依頼にショボイもど派手もないわ。どれも依頼者には切実なものばかりなのよ」
ミランダがエミリオの配慮のない言動を注意する。
「それに、どんな依頼も侮ったりしたら酷い目に会うからね」
簡単な依頼だと高を括り、ひどい怪我を負ったり命を落とした冒険者を見てきた。油断は禁物だ。
情報も必ずしも正確だとは限らない。討伐に行って聞いていた情報より深刻な状態だったということもある。
「はいはい、わかりました。心配性だな。でも心配ご無用。A級の俺には楽勝だ。俺と一緒にこの依頼を受けるやつは今日の正午に東の城門に来てくれ、報酬は山分けだ」
依頼は一人で受けても複数で受けてもいい。パーティを組んで集団で行動する者もいれば、依頼に合わせてその都度パーティを組む者もいる。
そして報酬は声をかけた者が配分を決めることが常で、大抵はその者が一番多く報酬を得る。
しかし今回エミリオは均等に分けることを宣言した。
何人かが興味有りげに反応し、エミリオの元へと集まってきた。
「じゃあな。せいぜい作物を一角モグラから護ってやれよ」
明らかにフェルを馬鹿にした態度でエミリオが建物を出ていった。
「フェルさん、本当にこの依頼でいいですか?」
「ああ、構わない」
「一角モグラは弱いけど、土の中深くに潜って見つけにくいですよ」
「わかっている。でも大丈夫だ」
「依頼した農家の方に駆除を始める前に挨拶してください。こちらから連絡を入れておきます。地図はギルドカードに送りました。駆除の証拠は一角モグラの角です。こちらで角一本につき報酬を支払います。肉は魔獣肉の処理専門店に行ったら買い取ってくれますよ」
「わかった。では行ってくる」
「行ってらっしゃい」
出ていこうとするフェルにマリベルが声をかけると、ピタリと彼が足を止めてこちらを振り返った。
「今のもう一度行ってください」
「フェルさん? 何を、ですか?」
「その…よく聞こえなかったので…何と言ったのですか」
なぜか照れてフェルがモジモジする。
「えっと…行ってらっしゃい…と言ったんです」
それほど小さい声ではなかったと思うが、他のことに気を取られて耳に入らなかったのだろうか。
「はい、行ってきます」
ニコリと微笑むと、子供のように元気いっぱいに返事をしてフェルは出ていった。
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