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29 魔塔からの贈り物
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ボルタンヌさんたちが帰り、レディ・シンクレアと共に少し遅めの昼食を済ませた。
昼食のメニューはキャベツと玉ねぎとソーセージの煮込み。ソーセージの塩味がキャベツと玉ねぎに染み、ちょうどいい塩加減だった。
スープに固くなったパンを浸すと、パンの酸味も和らいだ。
レディ・シンクレアは玉ねぎとキャベツを最初は食べるのを躊躇っていた。それでも私が美味しそうに食べるのを見て、もともと思い切りのいい方らしく、ひと口食べると後は二杯の煮込み料理をペロリと平らげた。
野菜は庶民の食べ物という認識があるらしく、貴族の食卓ではあまり食べられることはないらしい。
「ユイナさんは野菜はよく食べるのですか?」
「そうですね。国にもよりますし、嫌いな人も多いですが、野菜しか食べない主義の人もいます。豆類などで肉の代用品を作って、そっくりに作る技術もありますし、エディブルフラワーと言って食用に栽培した花もあります」
「花も?」
「お菓子の飾りに使ったり、盛り付けやお茶に浮かべたりします」
「まあ、それは見た目には綺麗でしょうけど…」
花を食べると言うことが想像つかないらしく、彼女は顔をしかめた。
「最初は私も抵抗はありましたけど、ビタミンとか食物繊維、ミネラルも豊富で意外と栄養もあるんですよ」
「そう…ビタ? ミネ?」
言葉はこの世界に召喚された時、魔法で言語理解の効果を付与してくれていたおかげで、始めから不自由していない。その点は有り難い。言葉が通じるのとそうでないのではストレスが随分違う。
でも今の私の話は彼女に通じなかったらしい。
「ビタミンやミネラルは体に必要な栄養素で…体の調子を整え健康や美容に良くって…人が体では作れないので食べ物から補うんです」
「食べ物で健康に? 生きていくために食べなければいけないのはわかりますが、ただそれだけでしょ」
どうやらこの世界では食べ物は生きていくには必要はことはわかっているけど、栄養とか美容についての認識がないようだ。
「それは何の為に気にするのかしら」
「体が少しでも健康でいられるように…でしょうか。食生活が乱れると体も不調になります。元から病気の時もありますが、それで病気になったり…もちろん食べ物だけのせいではありませんけど」
「病気も怪我も魔法で治ります。それでも治らないものは天命と思って諦めます。体は鍛えたりしますが、始めから病気にならないために何かをすることはありません」
魔力があれば禿げないし、食べたいものを食べたいだけ食べても健康でいられる。魔法があるということでここと地球はやっぱり違う世界なんだと思う。
「でも、今日の昼食はなかなか新しい体験でしたわ。お花のことも、鑑賞するだけでなく食べられるなんて新しい試みね。一度試してみたいわ」
「それをするには、薬など使わず自然に育てて口に入れても大丈夫でなければ使えません」
「じゃあここの花は無理かしら。虫除けに何か薬を使っていると思うわ」
「それでは使えませんね」
「残念だわ」
「エディブルフラワーなんて、無理に食べる必要はありません」
「でも食べてみたい気もするわ」
思い立ったら実行しないと気がすまない性格なのか、食べられないとなると余計に食べたくなるものだ。
「大奥様、ユイナ様、よろしいでしょうか」
そこへベラさんが入ってきた。
「どうしたの、ベラ…それは?」
彼女は両手に零れそうなくらい大きな花束を抱えていた。
色々な色の薔薇が美しく咲き誇っている。
「ユイナ様にと…魔塔のアドキンス氏からです」
「魔塔の?」
「アドキンスとは?」
昨日私の手にキスをした気障な感じの魔法使いの顔を思い出す。
「確か…伯爵家の次男から魔塔に行った…」
伯爵家の…貴族出身だからあんな気障な感じだったのか。
そう言えばレインズフォード家って爵位はあるのだろうか。
レディ・シンクレアが王族の人なのは聞いた。王族が嫁ぐならそれなりに身分はあるのかな。アドルファスさんは騎士だったし、引退したご両親は領地にいると言っていた。領地を持つということは、やっぱりそこそこ位は高いのかも。
「アドキンス氏のことは覚えていますか?」
「はい…あの、魔塔主の補佐だと聞きました。昨日もアドルファスさんと同じように聖女でなかった私にも気を配ってくれていました」
手にキスされたことは言わなくていいよね。私にとっては驚きだったが、ここでは当たり前で騒ぐ程のことではないかもしれない。
アドルファスさんはちょっと怒った感じだったけど。
「アドルファスと?…そう」
レディ・シンクレアも何か言いたげな様子を見せたけど、彼とアドルファスさんとは仲が悪いのかと思ったことを思い出した。
昼食のメニューはキャベツと玉ねぎとソーセージの煮込み。ソーセージの塩味がキャベツと玉ねぎに染み、ちょうどいい塩加減だった。
スープに固くなったパンを浸すと、パンの酸味も和らいだ。
レディ・シンクレアは玉ねぎとキャベツを最初は食べるのを躊躇っていた。それでも私が美味しそうに食べるのを見て、もともと思い切りのいい方らしく、ひと口食べると後は二杯の煮込み料理をペロリと平らげた。
野菜は庶民の食べ物という認識があるらしく、貴族の食卓ではあまり食べられることはないらしい。
「ユイナさんは野菜はよく食べるのですか?」
「そうですね。国にもよりますし、嫌いな人も多いですが、野菜しか食べない主義の人もいます。豆類などで肉の代用品を作って、そっくりに作る技術もありますし、エディブルフラワーと言って食用に栽培した花もあります」
「花も?」
「お菓子の飾りに使ったり、盛り付けやお茶に浮かべたりします」
「まあ、それは見た目には綺麗でしょうけど…」
花を食べると言うことが想像つかないらしく、彼女は顔をしかめた。
「最初は私も抵抗はありましたけど、ビタミンとか食物繊維、ミネラルも豊富で意外と栄養もあるんですよ」
「そう…ビタ? ミネ?」
言葉はこの世界に召喚された時、魔法で言語理解の効果を付与してくれていたおかげで、始めから不自由していない。その点は有り難い。言葉が通じるのとそうでないのではストレスが随分違う。
でも今の私の話は彼女に通じなかったらしい。
「ビタミンやミネラルは体に必要な栄養素で…体の調子を整え健康や美容に良くって…人が体では作れないので食べ物から補うんです」
「食べ物で健康に? 生きていくために食べなければいけないのはわかりますが、ただそれだけでしょ」
どうやらこの世界では食べ物は生きていくには必要はことはわかっているけど、栄養とか美容についての認識がないようだ。
「それは何の為に気にするのかしら」
「体が少しでも健康でいられるように…でしょうか。食生活が乱れると体も不調になります。元から病気の時もありますが、それで病気になったり…もちろん食べ物だけのせいではありませんけど」
「病気も怪我も魔法で治ります。それでも治らないものは天命と思って諦めます。体は鍛えたりしますが、始めから病気にならないために何かをすることはありません」
魔力があれば禿げないし、食べたいものを食べたいだけ食べても健康でいられる。魔法があるということでここと地球はやっぱり違う世界なんだと思う。
「でも、今日の昼食はなかなか新しい体験でしたわ。お花のことも、鑑賞するだけでなく食べられるなんて新しい試みね。一度試してみたいわ」
「それをするには、薬など使わず自然に育てて口に入れても大丈夫でなければ使えません」
「じゃあここの花は無理かしら。虫除けに何か薬を使っていると思うわ」
「それでは使えませんね」
「残念だわ」
「エディブルフラワーなんて、無理に食べる必要はありません」
「でも食べてみたい気もするわ」
思い立ったら実行しないと気がすまない性格なのか、食べられないとなると余計に食べたくなるものだ。
「大奥様、ユイナ様、よろしいでしょうか」
そこへベラさんが入ってきた。
「どうしたの、ベラ…それは?」
彼女は両手に零れそうなくらい大きな花束を抱えていた。
色々な色の薔薇が美しく咲き誇っている。
「ユイナ様にと…魔塔のアドキンス氏からです」
「魔塔の?」
「アドキンスとは?」
昨日私の手にキスをした気障な感じの魔法使いの顔を思い出す。
「確か…伯爵家の次男から魔塔に行った…」
伯爵家の…貴族出身だからあんな気障な感じだったのか。
そう言えばレインズフォード家って爵位はあるのだろうか。
レディ・シンクレアが王族の人なのは聞いた。王族が嫁ぐならそれなりに身分はあるのかな。アドルファスさんは騎士だったし、引退したご両親は領地にいると言っていた。領地を持つということは、やっぱりそこそこ位は高いのかも。
「アドキンス氏のことは覚えていますか?」
「はい…あの、魔塔主の補佐だと聞きました。昨日もアドルファスさんと同じように聖女でなかった私にも気を配ってくれていました」
手にキスされたことは言わなくていいよね。私にとっては驚きだったが、ここでは当たり前で騒ぐ程のことではないかもしれない。
アドルファスさんはちょっと怒った感じだったけど。
「アドルファスと?…そう」
レディ・シンクレアも何か言いたげな様子を見せたけど、彼とアドルファスさんとは仲が悪いのかと思ったことを思い出した。
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