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112 私だけに見えるもの
アドルファスの体を浄化した時に感じたような熱が体から湧き上がる。
うっすらと閉じていた目を開けると、私からシスティーヌ様へ流れていく綿毛のようにフワフワとしたものが見えた。
「あ・・」
「どうしたのですか、ユイナ」
綿毛はフワフワとナターシャ様を包む込む。
「あの、どうやら成功したみたいです。ほら、フワフワと綿毛のような光が見えますか?」
力が発動できたことに喜んだ私は、彼女の顔の横に浮いた光を掬い上げて二人の目の前に差し出した。
けれど二人はきょとんとした顔をしている。
「ユイナ・・何を言っているのか私にはわかりません。あなたの掌に何があるというのですか?」
「え?」
「アドルファスの言うとおりです。何もありませんが」
「え、そんな」
私の目にははっきりと見えるのに、二人が私を担いでいるようには思えない。
「力というものは感じるものですが、見たことはありません。もちろん炎の魔法なら炎が、水魔法なら水という物質になりますから見ることはできますが、浄化の魔法は見えません」
「え、でも・・前にクムヒム神官があなたを浄化したときも、光は見えたし、あなたが私を探して街中で魔法を使ったときも、ダイヤモンドダストみたいな光が見えたわ」
「あの探索魔法ですか?」
「そうです」
そう尋ねられ、力強く頷くと、二人は顔を見合わせた。
「あの、アドルファス?」
「ユイナ、探索魔法も放った本人が捜索対象を発見する際に、感じることはできますがユイナの言うような現象は初めて聞きます」
「え、ええ、だって」
魔法というものについてあることは知っていても、魔法が実際どんなのものか知らない私は、それが当たり前だと思っていた。
私には初めての体験でも、この世界の人たちにとっては当たり前の現象なんだと。
そう言えば、ファビオさん達も気がついていない感じだった。
あの時のことを思い出し、それに気づく。
すぐにアドルファスが来たからうやむやになってしまったけど。
「どうやら、あなたの目には私たちには見えないものが映っているようですね」
「そういえば、眼鏡のせいで気づかなかったが、左右の瞳の大きさが違う。そのせいとは言い切れないが」
「う・・・ん」
その時、ナターシャ様の口から声が漏れた。光はいつの間にか消えて、最後のひとつが彼女の額へ吸い込まれていくのが見えた。
「ナターシャ」
カーライル様が声をかけると、瞼が揺れてゆっくりと瞳が開かれた。
「気がついたか。気分はどうだ?」
「カー・・ライル?」
カーライル様が彼女の額に手を当てて話しかけると、彼女はか細く夫の名を呼んだ。
「私・・」
「食事中に急に倒れたんだ。どこか苦しくはないか? 痛いところは?」
「倒れた・・? 私が?」
「憶えていないのか?」
「あ、いえ・・急に頭が痛くなって・・」
それから彼女は私とアドルファスに気がついてこちらを見た。
「あの・・」
「はい?」
声を掛けられ、アドルファスが緊張して答える。
そんなアドルファスをじっと見上げ、ナターシャ様は次の言葉を口にするのを躊躇っている。
「ナターシャ、彼に何か言いたいのか?」
沈黙を不審に思いカーライル様が問いかける。
「あなた、アドルファスよね?」
「はい」
さきほど自己紹介は済ませているので、彼女がその名を口に知るのは当然のこと。
「アドルファス・・」
起き上がろうとした彼女をカーライル様が助けた。
半身を起こして彼女はアドルファスをしっかりと見た。
「どうした?」
「アドルファス、わたしの息子」
「!!!!!!!!」
私を含め、誰もが驚き目を見開いた。
「ああ、ごめんなさい。母を・・弱い母を許して。一番辛かったのはあなたなのに、私は・・私は」
彼女の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「は、母上」
「ナターシャ、思い出したのか」
アドルファスはさすがに涙は堪えたようだが、カーライル様は堪えきれず号泣といかないまでもその目には光る者があった。
驚愕する二人に彼女はしっかりと頷いた。
それから私の方を見る。
「ユイナさん、あなたのお陰ね。何だか長い夢から覚めたような晴れやかな気分よ」
そう言って彼女は私の手をしっかりと握った。
うっすらと閉じていた目を開けると、私からシスティーヌ様へ流れていく綿毛のようにフワフワとしたものが見えた。
「あ・・」
「どうしたのですか、ユイナ」
綿毛はフワフワとナターシャ様を包む込む。
「あの、どうやら成功したみたいです。ほら、フワフワと綿毛のような光が見えますか?」
力が発動できたことに喜んだ私は、彼女の顔の横に浮いた光を掬い上げて二人の目の前に差し出した。
けれど二人はきょとんとした顔をしている。
「ユイナ・・何を言っているのか私にはわかりません。あなたの掌に何があるというのですか?」
「え?」
「アドルファスの言うとおりです。何もありませんが」
「え、そんな」
私の目にははっきりと見えるのに、二人が私を担いでいるようには思えない。
「力というものは感じるものですが、見たことはありません。もちろん炎の魔法なら炎が、水魔法なら水という物質になりますから見ることはできますが、浄化の魔法は見えません」
「え、でも・・前にクムヒム神官があなたを浄化したときも、光は見えたし、あなたが私を探して街中で魔法を使ったときも、ダイヤモンドダストみたいな光が見えたわ」
「あの探索魔法ですか?」
「そうです」
そう尋ねられ、力強く頷くと、二人は顔を見合わせた。
「あの、アドルファス?」
「ユイナ、探索魔法も放った本人が捜索対象を発見する際に、感じることはできますがユイナの言うような現象は初めて聞きます」
「え、ええ、だって」
魔法というものについてあることは知っていても、魔法が実際どんなのものか知らない私は、それが当たり前だと思っていた。
私には初めての体験でも、この世界の人たちにとっては当たり前の現象なんだと。
そう言えば、ファビオさん達も気がついていない感じだった。
あの時のことを思い出し、それに気づく。
すぐにアドルファスが来たからうやむやになってしまったけど。
「どうやら、あなたの目には私たちには見えないものが映っているようですね」
「そういえば、眼鏡のせいで気づかなかったが、左右の瞳の大きさが違う。そのせいとは言い切れないが」
「う・・・ん」
その時、ナターシャ様の口から声が漏れた。光はいつの間にか消えて、最後のひとつが彼女の額へ吸い込まれていくのが見えた。
「ナターシャ」
カーライル様が声をかけると、瞼が揺れてゆっくりと瞳が開かれた。
「気がついたか。気分はどうだ?」
「カー・・ライル?」
カーライル様が彼女の額に手を当てて話しかけると、彼女はか細く夫の名を呼んだ。
「私・・」
「食事中に急に倒れたんだ。どこか苦しくはないか? 痛いところは?」
「倒れた・・? 私が?」
「憶えていないのか?」
「あ、いえ・・急に頭が痛くなって・・」
それから彼女は私とアドルファスに気がついてこちらを見た。
「あの・・」
「はい?」
声を掛けられ、アドルファスが緊張して答える。
そんなアドルファスをじっと見上げ、ナターシャ様は次の言葉を口にするのを躊躇っている。
「ナターシャ、彼に何か言いたいのか?」
沈黙を不審に思いカーライル様が問いかける。
「あなた、アドルファスよね?」
「はい」
さきほど自己紹介は済ませているので、彼女がその名を口に知るのは当然のこと。
「アドルファス・・」
起き上がろうとした彼女をカーライル様が助けた。
半身を起こして彼女はアドルファスをしっかりと見た。
「どうした?」
「アドルファス、わたしの息子」
「!!!!!!!!」
私を含め、誰もが驚き目を見開いた。
「ああ、ごめんなさい。母を・・弱い母を許して。一番辛かったのはあなたなのに、私は・・私は」
彼女の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「は、母上」
「ナターシャ、思い出したのか」
アドルファスはさすがに涙は堪えたようだが、カーライル様は堪えきれず号泣といかないまでもその目には光る者があった。
驚愕する二人に彼女はしっかりと頷いた。
それから私の方を見る。
「ユイナさん、あなたのお陰ね。何だか長い夢から覚めたような晴れやかな気分よ」
そう言って彼女は私の手をしっかりと握った。
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