【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた

文字の大きさ
112 / 118

112 私だけに見えるもの

しおりを挟む
 アドルファスの体を浄化した時に感じたような熱が体から湧き上がる。
 うっすらと閉じていた目を開けると、私からシスティーヌ様へ流れていく綿毛のようにフワフワとしたものが見えた。

「あ・・」
「どうしたのですか、ユイナ」

 綿毛はフワフワとナターシャ様を包む込む。

「あの、どうやら成功したみたいです。ほら、フワフワと綿毛のような光が見えますか?」

 力が発動できたことに喜んだ私は、彼女の顔の横に浮いた光を掬い上げて二人の目の前に差し出した。
 けれど二人はきょとんとした顔をしている。

「ユイナ・・何を言っているのか私にはわかりません。あなたの掌に何があるというのですか?」
「え?」
「アドルファスの言うとおりです。何もありませんが」
「え、そんな」

 私の目にははっきりと見えるのに、二人が私を担いでいるようには思えない。

「力というものは感じるものですが、見たことはありません。もちろん炎の魔法なら炎が、水魔法なら水という物質になりますから見ることはできますが、浄化の魔法は見えません」
「え、でも・・前にクムヒム神官があなたを浄化したときも、光は見えたし、あなたが私を探して街中で魔法を使ったときも、ダイヤモンドダストみたいな光が見えたわ」
「あの探索魔法ですか?」
「そうです」

 そう尋ねられ、力強く頷くと、二人は顔を見合わせた。

「あの、アドルファス?」
「ユイナ、探索魔法も放った本人が捜索対象を発見する際に、感じることはできますがユイナの言うような現象は初めて聞きます」
「え、ええ、だって」

 魔法というものについてあることは知っていても、魔法が実際どんなのものか知らない私は、それが当たり前だと思っていた。
 私には初めての体験でも、この世界の人たちにとっては当たり前の現象なんだと。
 そう言えば、ファビオさん達も気がついていない感じだった。
 あの時のことを思い出し、それに気づく。
 すぐにアドルファスが来たからうやむやになってしまったけど。

「どうやら、あなたの目には私たちには見えないものが映っているようですね」
「そういえば、眼鏡のせいで気づかなかったが、左右の瞳の大きさが違う。そのせいとは言い切れないが」
「う・・・ん」

 その時、ナターシャ様の口から声が漏れた。光はいつの間にか消えて、最後のひとつが彼女の額へ吸い込まれていくのが見えた。

「ナターシャ」

 カーライル様が声をかけると、瞼が揺れてゆっくりと瞳が開かれた。

「気がついたか。気分はどうだ?」
「カー・・ライル?」

 カーライル様が彼女の額に手を当てて話しかけると、彼女はか細く夫の名を呼んだ。

「私・・」
「食事中に急に倒れたんだ。どこか苦しくはないか? 痛いところは?」
「倒れた・・? 私が?」
「憶えていないのか?」
「あ、いえ・・急に頭が痛くなって・・」

 それから彼女は私とアドルファスに気がついてこちらを見た。

「あの・・」
「はい?」

 声を掛けられ、アドルファスが緊張して答える。
 そんなアドルファスをじっと見上げ、ナターシャ様は次の言葉を口にするのを躊躇っている。

「ナターシャ、彼に何か言いたいのか?」

 沈黙を不審に思いカーライル様が問いかける。

「あなた、アドルファスよね?」
「はい」

 さきほど自己紹介は済ませているので、彼女がその名を口に知るのは当然のこと。

「アドルファス・・」

 起き上がろうとした彼女をカーライル様が助けた。
 半身を起こして彼女はアドルファスをしっかりと見た。

「どうした?」
「アドルファス、わたしの息子」
「!!!!!!!!」

 私を含め、誰もが驚き目を見開いた。

「ああ、ごめんなさい。母を・・弱い母を許して。一番辛かったのはあなたなのに、私は・・私は」

 彼女の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。

「は、母上」
「ナターシャ、思い出したのか」

 アドルファスはさすがに涙は堪えたようだが、カーライル様は堪えきれず号泣といかないまでもその目には光る者があった。

 驚愕する二人に彼女はしっかりと頷いた。
 それから私の方を見る。

「ユイナさん、あなたのお陰ね。何だか長い夢から覚めたような晴れやかな気分よ」

 そう言って彼女は私の手をしっかりと握った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

料理がマズいと言われ続けて限界がきたので、もっとマズいものを作って差し上げたら旦那様に泣かれてしまいました

九条 雛
恋愛
和平の証として魔族の元へと嫁がされたエルネットは、作った料理が不味いと毎日なじられ続けていた。 それでも魔族の慣わしとして、家族の口へと入る料理は彼女が作らねばならないらしい。 侯爵家の令嬢で、料理をしたことがなかった自分が悪いのだと努力を続けるエルネットだったが、それでも夫は彼女の料理を不味いと言い捨て、愛人の元へ通いに行くと公言する。 ほとんど限界を迎えていた彼女の中で、ついに何かがプツリと切れた。

処理中です...