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231 女の闘い?
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「準備が整い次第始める。順に呼びに来るのでもう暫くここで待つように」
部下の方の役人がそう告げ、二人は部屋を出ていく。
出ていく際に誰かと視線を交わして頷いたので、その視線を追うと、ラトゥーヤと彼女の舞屋の主らしき女性に向いていた。
「初めて見る顔ね。名前は?」
ラトゥーヤから私に近づいてきた。
「よろしく、私はクレア……"月下の花"です」
彼女は私の挨拶を無視して私の頭から足元までをじろじろ見てくる。
「何か?」
「別に……月下の……もしかしてこの前の宴で王室の推奨をもらったときの踊り子?」
「そうですが……」
「へえ……あなただったんだ……衣装が破れても最後まで踊り抜いたって……なるほどねぇ」
「何が言いたいんですか」
「私のこと……知っている?」
「えっと……ラトゥーヤさんって皆さんが……」
「それで?」
「………それで、とは?」
「まさか、あなた私のこと知らないの?」
意外に大きな声を出したので、回りにいた皆に注目された。
「う……すいません。有名な方なんですよね……きっと」
そのことを謝ると、まわりから失笑が聞こえた。
「ラトゥーヤったら、皆が自分に一目置いてるって勘違いしていない?」
「ちょっと踊りがうまいからっていつも偉そう。いい気味ね」
「でもラトゥーヤを知らないなんて、もぐりもいいところね」
「ちょっと!聞こえてるわよ」
聞こえるように言っているのがわかり、ラトゥーヤさんが振り返って怒鳴った。
「毎年私が選ばれるからってやっかんでるんじゃないわよ!」
彼女の一喝にこそこそ話していた声が止む。
皆が口をつぐんだのを確認してから彼女がこちらに向き直った。
「私はね、ここ二、三年毎年選ばれているの。本当なら審査なんて必要ないんだけど、一応建前上は審査を受けたことにしないといけないからこうやって来てるの、おわかり?」
どや顔で私に説明をしてくる。彼女の話だと、すでに踊り子の一人は彼女に決まっているということなのか。その話が本当かどうか確認する術もないので、私はただ「そうですか」というしかなかった。
「まあ、あなたもせいぜい頑張りなさい。もし選ばれたら私の引き立て役くらいならなれるんじゃないかしら」
彼女なりの嫌味なんだろう。ミリアムにも引き立て役を切望されていることは黙っておこう。
「励ましありがとう。もし選ばれたら仲良くしてくださいね」
年は二十歳を過ぎた頃だろうか?まわりにいないタイプだが、アラサーの余裕で嫌味も受け流した。
「ば、バカじゃないの!あなたなんか選ばれるわけないじゃない!私を知らないなんて、本当にあなた踊り子?」
私に嫌味が通じないとわかって、ラトゥーヤが更に詰め寄ってきた。
「ラトゥーヤ、いい加減にしなさい!そんな田舎者相手にする必要ないわ」
そこへ彼女のお母さんである女性が割って入ってきた。
「ちょっと、レリアナ、うちの踊り子を田舎者呼ばわり……」
黙って聞いていたティータさんも参戦する。
「うちのラトゥーヤを知らないなんて田舎者でしょ?うちは王都で一番大きな舞屋でラトゥーヤは一番の稼ぎ頭だよ。あんたのところやメレディスのところと格が違うんだから」
「ちょっと、それどういうことよ。確かに大きさでは負けるけど、うちだって!」
先ほどのメレディスさんも加わり、三人が三つ巴よろしくにらみ合い互いに言いたい放題罵りだした。
部下の方の役人がそう告げ、二人は部屋を出ていく。
出ていく際に誰かと視線を交わして頷いたので、その視線を追うと、ラトゥーヤと彼女の舞屋の主らしき女性に向いていた。
「初めて見る顔ね。名前は?」
ラトゥーヤから私に近づいてきた。
「よろしく、私はクレア……"月下の花"です」
彼女は私の挨拶を無視して私の頭から足元までをじろじろ見てくる。
「何か?」
「別に……月下の……もしかしてこの前の宴で王室の推奨をもらったときの踊り子?」
「そうですが……」
「へえ……あなただったんだ……衣装が破れても最後まで踊り抜いたって……なるほどねぇ」
「何が言いたいんですか」
「私のこと……知っている?」
「えっと……ラトゥーヤさんって皆さんが……」
「それで?」
「………それで、とは?」
「まさか、あなた私のこと知らないの?」
意外に大きな声を出したので、回りにいた皆に注目された。
「う……すいません。有名な方なんですよね……きっと」
そのことを謝ると、まわりから失笑が聞こえた。
「ラトゥーヤったら、皆が自分に一目置いてるって勘違いしていない?」
「ちょっと踊りがうまいからっていつも偉そう。いい気味ね」
「でもラトゥーヤを知らないなんて、もぐりもいいところね」
「ちょっと!聞こえてるわよ」
聞こえるように言っているのがわかり、ラトゥーヤさんが振り返って怒鳴った。
「毎年私が選ばれるからってやっかんでるんじゃないわよ!」
彼女の一喝にこそこそ話していた声が止む。
皆が口をつぐんだのを確認してから彼女がこちらに向き直った。
「私はね、ここ二、三年毎年選ばれているの。本当なら審査なんて必要ないんだけど、一応建前上は審査を受けたことにしないといけないからこうやって来てるの、おわかり?」
どや顔で私に説明をしてくる。彼女の話だと、すでに踊り子の一人は彼女に決まっているということなのか。その話が本当かどうか確認する術もないので、私はただ「そうですか」というしかなかった。
「まあ、あなたもせいぜい頑張りなさい。もし選ばれたら私の引き立て役くらいならなれるんじゃないかしら」
彼女なりの嫌味なんだろう。ミリアムにも引き立て役を切望されていることは黙っておこう。
「励ましありがとう。もし選ばれたら仲良くしてくださいね」
年は二十歳を過ぎた頃だろうか?まわりにいないタイプだが、アラサーの余裕で嫌味も受け流した。
「ば、バカじゃないの!あなたなんか選ばれるわけないじゃない!私を知らないなんて、本当にあなた踊り子?」
私に嫌味が通じないとわかって、ラトゥーヤが更に詰め寄ってきた。
「ラトゥーヤ、いい加減にしなさい!そんな田舎者相手にする必要ないわ」
そこへ彼女のお母さんである女性が割って入ってきた。
「ちょっと、レリアナ、うちの踊り子を田舎者呼ばわり……」
黙って聞いていたティータさんも参戦する。
「うちのラトゥーヤを知らないなんて田舎者でしょ?うちは王都で一番大きな舞屋でラトゥーヤは一番の稼ぎ頭だよ。あんたのところやメレディスのところと格が違うんだから」
「ちょっと、それどういうことよ。確かに大きさでは負けるけど、うちだって!」
先ほどのメレディスさんも加わり、三人が三つ巴よろしくにらみ合い互いに言いたい放題罵りだした。
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