13 / 61
13 燕の仕事
しおりを挟む
『この度は当ホテルをご利用いただきありがとうございます。ジェネラルマネージャーのクラーク・チャンドラーと申します。こちら担当のコンシェルジュのブラウンとルークスです。二人で二十四時間対応させていただきますので何なりとお申し付けください』
『クラーク、よろしく頼む。彼女はカズネだ。滞在中は彼女のことを一番に気遣ってくれ。それから、彼はアンドー、彼女はサカグチ、医者と看護師だ。彼らの指示も最優先で対応してくれ』
『畏まりました』
燕と多分ホテルのスタッフだろう。ビシリと制服を来たとてもパリッとした人たちが、着いてそうそうやって来た。
彼とは英語で話しているので名前などの単語しか聞き取れなかったが、和音の名前や安藤さん、坂口さんの名前も出たから、きっと自己紹介してるんだろうことはわかった。
部屋には花が飾られていて、バーカウンターもあって、そこにはバイキングブュッフェでもするのか、カナッペやらサンドイッチ、マカロンやプラリネチョコレートなどが置かれている。
それに、ホテルの部屋なのになぜか階段が付いている。これはメゾネットタイプとかいうやつか?
それより話している間ずっと燕が和音の腰に手を添えて、密着しているのが気になった。
「和音、彼はチャンドラー、このホテルの総支配人だ。彼はブラウン、彼女はルークス、私達専用のコンシェルジュだ。何かほしい物や用があれば彼らに言うといい」
「総支配人? 専用? その、コンシェルジュって何する人なの?」
総支配人ってホテルで一番偉い人なのでは?しかもコンシェルジュって、専用で付くものなのかと和音は初めてのことなのでわからなかった。
「一般的なのは観劇などのチケットを手配したりレストランの予約をしたり、車の手配やらこのホテルの滞在中にしたいことを相談すれば大抵のことはやってくれる」
「そ、そう…」
「何がしたい?」
「急にそう言われても、何も思いつかないけど…取り敢えずは『自由の女神』見学とか?」
ニューヨークに来る予定もなかったのだ、何がしたいかなど聞かれてもわからない。
「わかった」
思いつきで言ったことだったが、燕は頷くと彼らに何か言った。
「用意ができたら教えてくれる」
「用意?」
「ニューヨーク観光だ」
『取り敢えず、後で宝石商が来ることになっている。着いたら教えてほしい』
『畏まりました』
また燕が指示をして彼らは一旦引き上げた。
「君たちも何かあれば呼ぶから隣の部屋で待機していてくれ」
実はこの部屋の両脇にある部屋二つも燕が貸し切っていると和音は後で聞いた。護衛の人たちと安藤たち用だ。
「はい、では和音様、失礼いたします」
「ありがとう、安藤さん、坂口さん」
二人がお辞儀をして出ていくと、燕と二人きりになり、広い部屋だから息が詰まるということはないが、和音は途端にソワソワしだした。
例えば安藤さんと二人きりなら意識しないですむが、燕は和音がこれまで接してきた誰よりも、母よりもパーソナルスペースが近い。
もともとスキンシップに不慣れな和音は、彼との距離をどう詰めたらいいかわからない。
「英語…上手ね」
「方言とか地域特有のものまでは無理だが、地球で話されている公用語は大抵話せる」
「え、それって…何リンガルになるの?」
英語、フランス語、中国語、韓国語、スペイン語にポルトガル語、ロシア語、ドイツ語、アラビア語、ヒンディー語、タイ語に日本語は話して書けるし読めると燕は言った。まるで翻訳機だと和音は思った。
「燕は、普段は何をしているの?」
「それはプライベート? それとも仕事? これから私のプライベートは、和音のためだけに使う。いつも一緒だ」
広い部屋なのにピタリと密着している。
切れ長の目がすっと細められて、じっと和音を見下ろす。
「もちろん仕事です」
恥ずかしくて和音は顔を反らした。
「私の仕事は一族を統べること。トゥールラーク人はあらゆる国にいる。彼らがつつがなくここで暮らせるよう、そして子孫を残せるよう、地域の人たちとうまく融合できるよう采配することだ」
それが燕の仕事の一部らしい。
『クラーク、よろしく頼む。彼女はカズネだ。滞在中は彼女のことを一番に気遣ってくれ。それから、彼はアンドー、彼女はサカグチ、医者と看護師だ。彼らの指示も最優先で対応してくれ』
『畏まりました』
燕と多分ホテルのスタッフだろう。ビシリと制服を来たとてもパリッとした人たちが、着いてそうそうやって来た。
彼とは英語で話しているので名前などの単語しか聞き取れなかったが、和音の名前や安藤さん、坂口さんの名前も出たから、きっと自己紹介してるんだろうことはわかった。
部屋には花が飾られていて、バーカウンターもあって、そこにはバイキングブュッフェでもするのか、カナッペやらサンドイッチ、マカロンやプラリネチョコレートなどが置かれている。
それに、ホテルの部屋なのになぜか階段が付いている。これはメゾネットタイプとかいうやつか?
それより話している間ずっと燕が和音の腰に手を添えて、密着しているのが気になった。
「和音、彼はチャンドラー、このホテルの総支配人だ。彼はブラウン、彼女はルークス、私達専用のコンシェルジュだ。何かほしい物や用があれば彼らに言うといい」
「総支配人? 専用? その、コンシェルジュって何する人なの?」
総支配人ってホテルで一番偉い人なのでは?しかもコンシェルジュって、専用で付くものなのかと和音は初めてのことなのでわからなかった。
「一般的なのは観劇などのチケットを手配したりレストランの予約をしたり、車の手配やらこのホテルの滞在中にしたいことを相談すれば大抵のことはやってくれる」
「そ、そう…」
「何がしたい?」
「急にそう言われても、何も思いつかないけど…取り敢えずは『自由の女神』見学とか?」
ニューヨークに来る予定もなかったのだ、何がしたいかなど聞かれてもわからない。
「わかった」
思いつきで言ったことだったが、燕は頷くと彼らに何か言った。
「用意ができたら教えてくれる」
「用意?」
「ニューヨーク観光だ」
『取り敢えず、後で宝石商が来ることになっている。着いたら教えてほしい』
『畏まりました』
また燕が指示をして彼らは一旦引き上げた。
「君たちも何かあれば呼ぶから隣の部屋で待機していてくれ」
実はこの部屋の両脇にある部屋二つも燕が貸し切っていると和音は後で聞いた。護衛の人たちと安藤たち用だ。
「はい、では和音様、失礼いたします」
「ありがとう、安藤さん、坂口さん」
二人がお辞儀をして出ていくと、燕と二人きりになり、広い部屋だから息が詰まるということはないが、和音は途端にソワソワしだした。
例えば安藤さんと二人きりなら意識しないですむが、燕は和音がこれまで接してきた誰よりも、母よりもパーソナルスペースが近い。
もともとスキンシップに不慣れな和音は、彼との距離をどう詰めたらいいかわからない。
「英語…上手ね」
「方言とか地域特有のものまでは無理だが、地球で話されている公用語は大抵話せる」
「え、それって…何リンガルになるの?」
英語、フランス語、中国語、韓国語、スペイン語にポルトガル語、ロシア語、ドイツ語、アラビア語、ヒンディー語、タイ語に日本語は話して書けるし読めると燕は言った。まるで翻訳機だと和音は思った。
「燕は、普段は何をしているの?」
「それはプライベート? それとも仕事? これから私のプライベートは、和音のためだけに使う。いつも一緒だ」
広い部屋なのにピタリと密着している。
切れ長の目がすっと細められて、じっと和音を見下ろす。
「もちろん仕事です」
恥ずかしくて和音は顔を反らした。
「私の仕事は一族を統べること。トゥールラーク人はあらゆる国にいる。彼らがつつがなくここで暮らせるよう、そして子孫を残せるよう、地域の人たちとうまく融合できるよう采配することだ」
それが燕の仕事の一部らしい。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる