【完結】ご懐妊から始まる溺愛〜お相手は宇宙人

七夜かなた

文字の大きさ
46 / 61

46 真実の歴史とは

しおりを挟む
Xは和音のお腹の子を交渉の道具として使おうとしていると、はっきり言った。
和音は画面の向こうのXから守るように両手をクロスして、お腹に当てた。

「そうそう、高野と大平のことですが、仲間で間違いありません」
「彼らは特殊任務でトゥールラーク人に関する事案を担当していると聞きました」
「それも間違いありません」
「警察関係者は全員『ホワイトブラッド』の人たちなんですか?」
「そう、と言いたいところですが、違います」

ということは、警察組織全体がトゥールラーク人に敵意を持っているわけじゃないことか。警察関係者が全国にどれくらいいるのかわからないが、全てを敵にするわけじゃなさそうで和音は安心した。

(私、燕のことを心配してる)

Xがトゥールラーク人が悪のように言っているのを聞いても、和音は燕のことをそこまで悪く思えない。それどころか燕を心配していることに気づく。

「しかし、我らの組織は日本だけでなく全世界に散らばっている。ニューヨークにもね」
「ニューヨーク?」
「ヘリコプターでニューヨーク観光とは、随分呑気ですね」
「え?」

なぜ彼がそれを知っているのか。和音は身を固くした。

「言ったでしょ。我々の仲間は世界中にいる。そして見張っている。ニューヨークの仲間があいつを見つけて、ヘリを攻撃したそうです」
「攻撃?」

和音はあの時揺れたヘリのことを思い出す。

「攻撃、あれはあなたたちが? どうやって?」
「我々の仲間には技術に長けた者がおります。ヘリの計器に少し細工をしただけです。本当に落とすつもりはなかったようですが」

あの時の恐怖が蘇り、体が震えた。落とすつもりはなかったと言われても、ひとつ間違えば落ちていたかも知れないのだ。
燕を攻撃したにしろ、パイロットも坂口も和音もいた。なのに彼らは和音達のことを考えなかったのだろうか。

「彼らは長い年月を掛けて地球に住み着き、統治者気取りで我が物顔で人の領域を闊歩している。地球を動かしているのは自分たちだと驕り、我々地球人を手駒か何かと勘違いしているのだ」

Xはトゥールラーク人を悪し様に言っているが、彼は自分たちが地球人の和音やパイロットたちが巻き添えになって死んだかもしれないとは思わないのだろうか。

彼が熱く語れば語るほどに、和音はその主張のずれに違和感を感じた。

「でも、彼は共存しているだけで支配はしていない。地球人の進化に応じて手助けはしてきたけど、過度な干渉はしないって」
「いいように騙されているだけだ。単純な者ほど洗脳しやすいようだ」
「・・・・」

単純な者というのは和音のことを言っているのだろうか。失礼な物言いにむっとなる。
燕から聞いた話と、Xから聞かされた話は少しずつずれているのがわかる。
どちらが正しいのだろうか。
仮に燕が嘘を言っているとして、本当にトゥールラーク人が地球を牛耳っているとするなら、和音にあんな風に話した理由は何だろうか。
和音を信用させるため? 
そもそも勝手に妊娠させた時点で、燕に対する和音の心象は悪い。どんなに正当性を訴えても、その時点で身勝手だと和音が思って拒絶すれば終わりだ。
権力に興味はないが、絶対的な支配者だと言った方が、和音はなびいたかもしれない。
あくまで共存だと言い切る真意はどこにあるのか。

「今すぐ判断がつかないなら、考える時間をあげましょう。我々がいかに正しいか。トゥールラーク人がどれだけ卑劣で狡猾か、今からじっくり教えてあげましょう」

和音が黙ったまま自分の言葉に同意しないので、彼は少し苛立っているようだ。

「何を教えるというんですか?」
「今から流す映像を見れば、あなたも納得するでしょう」

それだけ言ってXは画面から消え、次に画面に映し出されたのは「トゥールラーク人の実体~水の星地球を我らの手に取り戻そう~①」というタイトルだった。

「何これ」

それは恐竜の時代の終わり。トゥールラーク人がこの地球に現われてから今日に至るまでの、長い歴史の中でトゥールラーク人がやってきただろうとされる支配の歴史と、地球人に対する迫害や支配の記録をドキュメンタリー形式で作成したものだった。

映像の中でトゥールラーク人の姿は蜥蜴で、これでもかというほど残虐に描かれていた。
①が終わると、次は②が始まり、和音は途中で睡魔に襲われながら、⑤までの映像を見せられた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...