ディック・ウォーズ

第３章 ルークの初めて

第２５話 フォーナスの訓練：第３段階（理論）

「今日からフォーナスの第３段階の訓練を始める」

ノー・ソイは高々と宣言した。ルークにとっては以外だった。まだ第２段階の修行を始めてからすぐだった。丹田にフォーナスの集める感覚を掴み始めた所だ。それでいきなりフォーナスの第３段階の訓練を始めるって。

「少し早すぎではないですか。まだ第２段階の修行もままならないのですが」

「大丈夫だ。第１と第２段階の修行は一生続く。修行に終わりはないのだ。ある程度出来れば次に進んでいい」

　第3段階では感覚の拡張だ。この中で一番重要な感覚は触覚だ。
普通、人間は自分の皮膚に何かが触られることでその存在を感じ取ることができる。その皮膚感覚をフォーナスを使って拡張して遠くの物の存在を感じ取る。
これはコウモリのエコーロケーションに少し似ている。
コウモリは超音波を発して壁などに当たって跳ね帰って来た超音波で障害物を認識する。原理は少し似ているが別にフォーナスをエコーロケーションのように使う訳ではない。
第3段階ではフォーナスを発するが、別にフォーナスが何かに跳ね返って戻ってきたフォーナスを感じ取る訳ではない。
フォーナスは物質をすり抜けるからな。
フォーナスの使い手は体から発したフォーナスを皮膚感覚と同化してまるで触られたかのように物を認識する。
フォーナスを使って感覚を広げる事自体はそれほど難しくない。問題はフォーナスの量だけだからな。
だから未熟な者でも修練して大丈夫だ。だがそこには第3段階の訓練ならでの大きな問題があった。

　それは範囲が広くなれば広くなるほど処理するデータ量が多くなると言う事だ。
広げすぎると脳の処理が追いつかなくなって脳がパンクする。要は範囲を広げすぎない訓練だ。
そして入って来るデータをしっかりとフィルタリングをすることだ。
優先順位の高い脅威になる物だけ認識し優先順位の低い物は無視する。
フォーナスで感じられる物の９９．９９⋯⋯パーセントは無害の物だ。
例えば、フォーナスを広げた範囲にある無害のただの壁とか道端に落ちているただの石とかは脳で認識する必要は全くない。
だがこちらへ投げられた石は認識する必要がある。
第３段階ではこの取捨選択の訓練を主にする。