ディック・ウォーズ

天の惹

文字の大きさ
29 / 87
第3章 ルークの初めて

第29話 チャスティンとの遭遇

しおりを挟む
 王都を出て1週間、船をようやくチチカンダールの港へ滑り込んだ。
チャスティンはクレイに丁寧に礼を言うと例の男を探す為、街に繰り出した。
噂によると男はよく街の南東部の裕福な者が住む地区で目撃されているとのこと。
まずは宿の確保だ。宿は男がよく目撃されている地区で取った。
これは丁度いい。少しは楽に探せるはずだ。

 宿はこの街一番の高級宿だ。2人は一泊金貨2枚のスイートに滞在した。スイートはマスターベッドルームとベットルームがもう1つのある。
マスターベッドルームにはキングサイズベッドが1つ置いてある。
もう1つのベッドルームにはツインサイズベッドが2つ置いてある。
2人は徒歩で街を探索しやすいように着替えた。なるべく動きやすく街に繰り出しても浮かない服を選んだ。
宿のロビーに行くと早速、街の情報収集だ。街のことは街に詳しいコンシェルジュに聞くのが一番だ。2人はコンシェルジュ・デスクに行くと早速尋ねた。

「この街の名物はですね⋯⋯」

「いえいえ、我々は観光に来た訳ではありません」

チャスティンは事の経緯を説明した。2人は不埒な露出狂を探しに来たのだと。

「あぁ、ルーク様のことですね。あの方はよくこの近くの公園にいますよ。見ればすぐわかりますよ」

 あの男の名はルークと言うのか。
なんでこのコンシェルジュ、そんな事知っているのか。
てかそんなに知られていてよく牢屋へぶち込まれていないな。
やはり警備隊は何もしていなかった。これは警備隊の怠慢だな。国王に進言して罰を受けてもらうことは決定だな。

 コンシェルジュによるとルークの見た目は身長190センチある細マッチョだ。髪の色は濃い茶色で短髪。顔は男が見ても惚れ惚れするほどのハンサムな男だ。
チャスティンとアークは早速、街へ繰り出した。

 一方、ルークとワン・コロは少し遅い昼食を取っていた。朝練が終わりレストランでエールを飲みながら肉料理を舌鼓している。エールを何杯かおかわりした。

「よぉ、ルーク。ちょっと飲み過ぎじゃない」

ワン・コロが嗜めた。確かに、ノー・ソイが不在な為、少し気が抜けている。うるさく指導する師匠はいない。
ワン・コロはいるが、彼はフォーナスの事を理解していない。使えないのだから当たり前だ。あまりルークの行動に口出し出来る立場ではない。

「えっ、そうですか?全然酔ってないですよ」

ルークの顔はほんのり赤くなっているが、言動はしっかりしている。ルークは店員にもう1杯エールを注文しようとしたが、ワン・コロが制した。ワン・コロはルークを促すように店を後にした。

 ルークとワン・コロはいつもの公園のベンチに腰を掛けた。公園には心地よい風が通り過ぎ気持ちがいい。これでちょっとは酔が冷めた。

「ワン・コロ、俺、ちょっとひとっ走りしてくるわ」

「わかった。だが公園から出るなよ。俺、ここで待っているから」

「わかった。じゃあ行ってくる」

 ルークは公園内の小道を走り出した。小道と言っても幅10メーター位あるが。
この公園はこの街で一番大きい公園だ。公園の真ん中には池があり、公園の小道はこの池の周りを回っていた。大体、1周2キロくらいの距離だ。
公園の池は市民の憩いの場になっている。遊泳禁止にも関わらず、中には池で泳いでいる人もいる。
小道の脇には等間隔でベンチが置いてあり、この時間帯ではほぼ使われていた。今の時間帯は老若男女を問わず公園内でくつろいでいる。少し若い女が多いか。

ルークはしばらく走っていると若い女性から黄色い声を掛けられた。

「キャー、ルーク様、素敵。愛してる」

 ルークは軽く手を振って女性の声に応じた。更に別の女性からも同じ様な声を掛けられた。ルークはいつの間にか有名人になっていた。ただ、本人にはそんな自覚は全くなかった。

 今、この一連のやり取りを見て怒っている人物が居た。チャスティンだ。チャスティンはルークの前に立って道を塞いだ。

「そこのあなた、ちょっとそこで止まりなさい!」

「はい?」

「あなたですか?ルークと呼ばれ噂される不埒な輩は?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...