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第6章 意外な展開
第63話 タレーランの攻略と陣地の構築
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モー軍団が宿営していた陣からタレーランまでは荒野が広がっていた。行軍は道なき道を行き、迅速かつ騒々しくした。数を誤魔化す為、業と土埃を上げながら進んだ。
それと身軽になるため、大砲をあえて持ってこなかった。タレーランは要塞都市ではない。常時の警備隊も多くない。攻略には大砲は不要だ。
当初、モー軍団が軍営を撤収した時、敵は何の反応も示さなかった。きっと奇怪に写ったのだろう。これから戦いが始まるのに軍を撤収するとは。敵前逃亡するつもりか。
モー軍団の正面で対峙していた敵の軍団の司令官のユーキ・ネイは放っておくことにした。無駄な消耗はしたくない。これでネイの軍もアメンボ分裂国の主力に兵力を向けることができる。
だが、モー軍団は敵前逃亡するには変な行動を起こした。奴らは西へ撤退するのではなく、北へ向けて行軍を始めた。
ネイの判断ミスでモー軍団主力は1日先行することができた。
強行軍でタレーランへ向けて出発したモー軍団は4日でタレーランの近くまで迫っていた。普通に行軍すれば6~7日かかる日程だ。
かなりの強行軍にも関わらず兵士の士気は全く低下していなかった。逆に士気が上がっていた。
と言うのもタレーランに着けば美味しい食事ができると皆が期待していたからだ。
まぁ、すんなり町に入れたのであればな。
モー軍団はタレーランの郊外に着くと町へ使者を送った。使者が市長に降伏を勧めるとすんなり了承された。タレーランの守備隊がたった数十名に対してモー軍団の兵の数は数千名に達していた。約100倍の兵力差だ。
その上、町は城壁で守られていない。柵すらなかった。まるで丸腰の町だ。
市長には降伏以外の選択肢はなかった。
モー軍団は消耗ゼロでタレーランを制圧することに成功した。
モー軍団は町に入ると、早速、食料品を徴発した。スパイスやタレなどの調味料は勿論、卵や米などの食料も手に入った。これでようやくまともな飯が食えると兵士達は喜んだ。
まずは軍から支給された雑草を美味しく食べられるように料理をした。フライパンを熱してそこにバターを溶かす。そしてその中に雑草をいれる。
しばらく火を通してたらスパイスとタレで味付けをする。
ボールの中に卵と塩を少々入れてからかき回す。
卵をフライパンに入れて卵と草をかき混ぜる。
卵がある程度固まったら調理終了だ。簡単な卵とじ雑草の完成だ。
それを炊いた米と一緒に食べる。
兵士達はその日の晩飯を堪能した。
その日の夜は徴発した宿や家に泊まって体を休めた。
翌朝、モー軍団は町を出る決断をした。この町に来た目的は果たしたからもう要はない。それに敵軍がこちらへ迫って来ている。あと2日もすれば敵軍はタレーランに着く。
何の防衛施設もない町で敵軍を迎え撃つなど全くの無謀な行為だ。相手との戦力差は約2倍もある。
だが、宿に泊まってゆっくりできるのはかなり魅力的だったからか幹部の1人が提案をした。
「この町の住人を人質に取り、人質を盾にして戦ってみるのはどうでしょう」
「却下だ」
モーはすぐに拒んだ。人の命を重んじてそう言った訳ではない。モーは黙々と理由を語った。
「ボコール軍は非道な集団で知られている。たとえ自国民が人質になろうとも彼等は人質などいなかったように攻めてくる。そんな全く役に立たない盾を頼りにして戦えばあっという間に我々は殲滅させられてしまう」
ボコール軍は人質を盾として前面に出しても、平気で矢を射ってくるのは明白だった。
盾がなくなれば何の防御陣のない町など瞬殺される。
ここはこちらに有利な地形へ迅速に移動して防御陣を築き、敵を迎え撃つしか勝ち目はない。
モー軍団は町から1日くらい離れた所に移動した。そこには崖があり崖と崖の間は約100メーターくらいの幅があった。そして崖から2キロ奥には丘が幾つかあり、敵からはモー側の陣が直接見えないような地形だった。
正論ではこの崖の上に伏兵を忍ばせて待ち伏せだが、モーはあえてそのような戦術を取らなかった。あまりに王道すぎてバレバレだからな。その上、敵は大砲を持っている。確実に遠くから狙い撃ちをされる。
それに、崖の出口からモー側の陣は直接見えない。だからモー側の陣はそこからの敵の大砲の射撃を免れる。
その代わりにモーは別の指示をだした。
「丘を利用して空堀を作れ。掘った土を使って土塁を築け。土塁の上には馬柵を設置せよ」
土塁は人工の崖になっており高さは約3メーター程になった。土塁の上に柵があるため馬で乗り越えることは不可能な状態だ。因みに柵の材料はタレーランで徴発した木で作られている。
これで敵騎兵を狭いモー軍団の正面に向かわせるように誘いこめば、こちらに有利に戦える。勿論、正面にも馬柵を設置している。空掘はないが。
これによって騎兵の速度がかなり落ちるから、銃や弓で狙い撃ちしやすいようになる。
モーは敵の行軍のスピードを落とさせるため、崖の両側に斥候兵を残しておいた。
斥候兵の他にカカシで作った偽装兵を置いといた。敵はそれを見て警戒するだろう。なるべく敵の行軍を遅らせ、それで防護陣を作る時間稼ぎを少しでもするつもりだ。
斥候兵を置いたのは他の目的もある。斥候兵は敵を見たら銃撃するように命じていた。銃声が敵の接近を知らせる合図になる。
それと斥候兵にはあまり抵抗せず逃げてこいとも命じていた。目的は少しの足止めと敵の襲来を知らせるだけだ。生死を賭けてする任務ではない。
パン、パン、パン⋯⋯
銃声が崖の方から聞こえた。敵の襲来だ。
それと身軽になるため、大砲をあえて持ってこなかった。タレーランは要塞都市ではない。常時の警備隊も多くない。攻略には大砲は不要だ。
当初、モー軍団が軍営を撤収した時、敵は何の反応も示さなかった。きっと奇怪に写ったのだろう。これから戦いが始まるのに軍を撤収するとは。敵前逃亡するつもりか。
モー軍団の正面で対峙していた敵の軍団の司令官のユーキ・ネイは放っておくことにした。無駄な消耗はしたくない。これでネイの軍もアメンボ分裂国の主力に兵力を向けることができる。
だが、モー軍団は敵前逃亡するには変な行動を起こした。奴らは西へ撤退するのではなく、北へ向けて行軍を始めた。
ネイの判断ミスでモー軍団主力は1日先行することができた。
強行軍でタレーランへ向けて出発したモー軍団は4日でタレーランの近くまで迫っていた。普通に行軍すれば6~7日かかる日程だ。
かなりの強行軍にも関わらず兵士の士気は全く低下していなかった。逆に士気が上がっていた。
と言うのもタレーランに着けば美味しい食事ができると皆が期待していたからだ。
まぁ、すんなり町に入れたのであればな。
モー軍団はタレーランの郊外に着くと町へ使者を送った。使者が市長に降伏を勧めるとすんなり了承された。タレーランの守備隊がたった数十名に対してモー軍団の兵の数は数千名に達していた。約100倍の兵力差だ。
その上、町は城壁で守られていない。柵すらなかった。まるで丸腰の町だ。
市長には降伏以外の選択肢はなかった。
モー軍団は消耗ゼロでタレーランを制圧することに成功した。
モー軍団は町に入ると、早速、食料品を徴発した。スパイスやタレなどの調味料は勿論、卵や米などの食料も手に入った。これでようやくまともな飯が食えると兵士達は喜んだ。
まずは軍から支給された雑草を美味しく食べられるように料理をした。フライパンを熱してそこにバターを溶かす。そしてその中に雑草をいれる。
しばらく火を通してたらスパイスとタレで味付けをする。
ボールの中に卵と塩を少々入れてからかき回す。
卵をフライパンに入れて卵と草をかき混ぜる。
卵がある程度固まったら調理終了だ。簡単な卵とじ雑草の完成だ。
それを炊いた米と一緒に食べる。
兵士達はその日の晩飯を堪能した。
その日の夜は徴発した宿や家に泊まって体を休めた。
翌朝、モー軍団は町を出る決断をした。この町に来た目的は果たしたからもう要はない。それに敵軍がこちらへ迫って来ている。あと2日もすれば敵軍はタレーランに着く。
何の防衛施設もない町で敵軍を迎え撃つなど全くの無謀な行為だ。相手との戦力差は約2倍もある。
だが、宿に泊まってゆっくりできるのはかなり魅力的だったからか幹部の1人が提案をした。
「この町の住人を人質に取り、人質を盾にして戦ってみるのはどうでしょう」
「却下だ」
モーはすぐに拒んだ。人の命を重んじてそう言った訳ではない。モーは黙々と理由を語った。
「ボコール軍は非道な集団で知られている。たとえ自国民が人質になろうとも彼等は人質などいなかったように攻めてくる。そんな全く役に立たない盾を頼りにして戦えばあっという間に我々は殲滅させられてしまう」
ボコール軍は人質を盾として前面に出しても、平気で矢を射ってくるのは明白だった。
盾がなくなれば何の防御陣のない町など瞬殺される。
ここはこちらに有利な地形へ迅速に移動して防御陣を築き、敵を迎え撃つしか勝ち目はない。
モー軍団は町から1日くらい離れた所に移動した。そこには崖があり崖と崖の間は約100メーターくらいの幅があった。そして崖から2キロ奥には丘が幾つかあり、敵からはモー側の陣が直接見えないような地形だった。
正論ではこの崖の上に伏兵を忍ばせて待ち伏せだが、モーはあえてそのような戦術を取らなかった。あまりに王道すぎてバレバレだからな。その上、敵は大砲を持っている。確実に遠くから狙い撃ちをされる。
それに、崖の出口からモー側の陣は直接見えない。だからモー側の陣はそこからの敵の大砲の射撃を免れる。
その代わりにモーは別の指示をだした。
「丘を利用して空堀を作れ。掘った土を使って土塁を築け。土塁の上には馬柵を設置せよ」
土塁は人工の崖になっており高さは約3メーター程になった。土塁の上に柵があるため馬で乗り越えることは不可能な状態だ。因みに柵の材料はタレーランで徴発した木で作られている。
これで敵騎兵を狭いモー軍団の正面に向かわせるように誘いこめば、こちらに有利に戦える。勿論、正面にも馬柵を設置している。空掘はないが。
これによって騎兵の速度がかなり落ちるから、銃や弓で狙い撃ちしやすいようになる。
モーは敵の行軍のスピードを落とさせるため、崖の両側に斥候兵を残しておいた。
斥候兵の他にカカシで作った偽装兵を置いといた。敵はそれを見て警戒するだろう。なるべく敵の行軍を遅らせ、それで防護陣を作る時間稼ぎを少しでもするつもりだ。
斥候兵を置いたのは他の目的もある。斥候兵は敵を見たら銃撃するように命じていた。銃声が敵の接近を知らせる合図になる。
それと斥候兵にはあまり抵抗せず逃げてこいとも命じていた。目的は少しの足止めと敵の襲来を知らせるだけだ。生死を賭けてする任務ではない。
パン、パン、パン⋯⋯
銃声が崖の方から聞こえた。敵の襲来だ。
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