ディック・ウォーズ

天の惹

文字の大きさ
67 / 87
第7章 ルークの誘拐

第66話 ショッピング

しおりを挟む
 ルーク達はシャブーレの街に来て以来、毎日訓練をしていた。ルークはたまには休みを入れてもいいだろうと思い、街へ繰り出すことにした。一人で出掛けるのも何だし、チャスティンを誘ってみることにした。

「チャスティン、今から訓練を休んで街へ遊びに出かけるのだが、一緒に行かないか?」

 ルークはアークには尋ねなかった。アークは当然、拒否するからな。
そもそもルークとはあまり仲が良くないし、チャスティンを放ったらかしにして出かける事は絶対にないからな。
それにチャスティンが一緒に来れば必ず付いてくる。

「いいですよ。丁度、頭の切り替えが必要でした」

勿論、チャスティンには頭の切り替えは全く必要なかった。
チャスティンはちょっと前、秘術の実験で何かを掴んでおり、良い結果を出していた。後は秘術をスムーズにできるように体に覚えさせるだけだ。秘術が無意識でできるレベルまで高めるまでに。
だが、実験が成功して一区切りできたから休みを入れるには丁度いいタイミングだ。

ルークはチャスティンの返事を聞くと、アークがツッコミを入れる前にさらりと言った。

「では準備ができ次第、一緒に行きましょう」

 チャスティンは寝室へ戻ると服を選びだした。とは言えチャスティンは服を選ぶほど沢山持っていなかった。
今まで旅ばかりしていたからあまり持ち合わせがなかった。今回のお出かけでいっぱい服を買うつもりだ。
チャスティンは服を選ぶと着替えた。
寝室を出ようとするとアークもすでに着替えを終えていた。

「アーク、あなたも来るのですか?」

「勿論です。姫様が行く所へはどこでも行きます」

折角、ルークと2人きりでデートできると思っていたのに残念だ。まぁ、付いてくるのは予想していたが。

「姫様、では行きましょう」

 2人は寝室を出るとルークと合流した。3人が家を出るとプルードー軍の騎士が2人、外で待っていた。ルークはあらかじめプルードー軍にチャスティンを誘って街へ遊びに行くと連絡を入れていたのだ。
プルードー軍はチャスティンが安全に街へ遊びに行けるのを助けるため、2人の騎士を護衛として派遣してきた。この2人はハードオン砦でルーク達に同行した20人の騎士の中の2人だった。
きっと、街中で人混みの中を歩くのに護衛がたった2人(ルークとアーク)では心許ないから騎士を派遣してきたのだろう。
3人で行こうが5人で行こうがルークにとっては変わらないのだが。この街にはルークの顔なじみが多いからルークに変なちょっかいを出す連中は殆どいない。
だからルークにとって警備上、護衛が少なくとも問題はなかった。とは言い、多すぎて困ることもないのだが。

 ルークは皆を連れて街の中心部にあるバザールへ向かった。ここに行けば大抵の物が手に入る。チャスティンも買い物を堪能できるだろう。

 バザールの中に入ると以前の賑やかさを取り戻していた。戦争で商品などはボコール軍に徴発されたが、店舗などは壊されなかった。
エイナールがシャブーレを取り戻すと物流は以前と同じレベルに戻っていた。商品は店舗の棚に潤沢に並んでいた。
どうやら避難していた店舗の店主や従業員は戻ってきたようだ。その中のルークと親しかった者が話しかけてきた。

「ルーク、久しぶり!今まで全然見なかったんだけど、どこ行ってたの?」

「いろんな所へ行っていたよ。隣国のプルードー王国とか旧ショーマニーのタマチンドーフとか。色々と」

「へぇ~、そうなんだ。ところでルークの隣にいるべっぴんさん、誰?もしかしてデート中?」

「まあな」

 ルークは少しバツが悪そうに答えた。チャスティンはルークの返答を聞くと頬を僅かに赤らませた。

 ルークは知り合いと挨拶を交わすと食品を売っているセクションへ向かった。そこで少し腹ごしらえをするつもりだ。

 ルークはシャブーレ名物の魚料理を皆に振る舞うつもりだ。シャブーレの付近には湖が多数ありナマズに似た魚が豊富に取れる。
ナマズは上質な白身魚で身が肉厚でプリプリした歯ごたえがあり、食べ応えのある魚だ。
ナマズはシャブーレの住民の間ではとても人気がある魚だ。
ナマズは栄養満点でタンパク質が豊富に含まれており、肉厚の割に脂質が少なく低カロリーだから食べすぎても太ることがなかった。まぁ、限度はあるが。

 ルーク達は一軒のナマズ料理レストランに入って行った。そのレストランはギョネンと言い、シャブーレで1番美味しいナマズ料理レストランで知られていた。
ギョネンは色々なタイプのナマズ料理を楽しめるレストランだ。ルークは一通り、ここで食べられるナマズ料理を注文した。
まずは天ぷらにフライと揚げ物に続き蒲焼とムニエルを注文して持ってきてもらった。このレストランで提供されるどの料理もとても美味しかった。皆はその味に大変、満足した。
どうやらチャスティンの1番のお気に入りはナマズのフライのようだ。特にフライにかけるタルタルソースには目がないようだ。
5人は昼食を堪能するとレストランを後にした。

 食後、ルーク達は再びバザールを見て回った。
フルーツを売っているセクションではチャスティンが見たことのないこの地方特産のフルーツを中心につまみ食いをしながら歩いた。
フルーツセクションを抜けると衣服類が多く売っているセクションへ入って行った。ここはチャスティンがこのお出かけ中に1番行きたかった所だ。
長旅の上、いつも同じ服を繰り返し戦場で着ていたからか、服はかなりヨレヨレになっていて、しかも薄汚くなっていた。破れて直している箇所がいくつかある。
これでは王族と言うよりは庶民みたいな見た目だ。
チャスティンとアークはここで自分達の持っている服を一新するつもりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...