ディック・ウォーズ

天の惹

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第8章 最終戦

第79話 ペッカーの対策と待ち伏せ

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 ルークと護衛の精鋭兵の40名はすでにシャブーレで一緒に訓練をしており連携には抜かりない。
特にこの中の20名はハードオン砦へ一緒に遠征した仲だ。ルークは彼等の実力の程をかなり知っていた。非常に頼りになる連中だ。
残り20名も同じくらいの実力の持ち主だとルークは認識している。残り20名はハードオン砦で付いてきた20名と同じ部隊に所属していていつも一緒に訓練している仲間だ。彼らの間にはすでに阿吽の呼吸があり、命令がなくとも完璧な連携ができている。

 プルードー王国軍の砲撃が始まると敵兵はまたこちら側の陣地に白兵戦を仕掛けてきた。昨日と同じようにプルードー王国軍の大砲と弾薬を潰しに来たのだ。
エイナール軍の方にも同じように白兵戦を仕掛けているのだろう。
昨日いたペッカーのヒデーノとエグイノはたぶん、プルードー王国軍の方に来ているのだろう。まぁ、彼等がどれだけ疑い深いかによるが。
あの現場にはルークとノー・ソイの死体は勿論ないから彼等が何をどのように解釈するのかわからない。彼等が単純馬鹿でルークとノー・ソイの死体が木っ端微塵になったと思い込めばいいのだが。多分、それはないだろう。まぁ、行ってみればわかるだろうが。
今回、ルークとノー・ソイはプルードー王国軍の一般兵に見えるように制服を着ている。頭には深めの帽子を被り顔がよく見えないように工夫した。これで奇襲のペック・クロスは防げるはずだ。
奴らはそうそうペック・クロスは使えないからな。ルーク達一行はボコール軍の突撃兵を遠くに確認した。戦闘開始だ。

 ルークとノー・ソイはボコール軍の突撃兵を遠くに見るとそちらの方へ向けて全速力で駆けた。チャスティン達はすこし距離を開けて付いてきている。

「ルーク、左側の連中は任せる。我は右側の連中を引き受ける」

「わかった」

 ルークとノー・ソイはズボンのジッパーを下ろすとディック・セイバーを展開した。彼等は離れた所からフォーナスの斬撃を敵兵に向かって放つと敵兵の8割以上が倒れた。そして打漏らした敵兵は直接ディック・セイバーで切り裂いた。
ウォームアップには丁度いい。
ヒデーノとエグイノはここにはいなかった。幸先良いスタートだ。
ルークはチャスティンを見るとなぜかムッとしていた。どうやら戦闘に参加できなったから機嫌を損ねたようだ。
もしルーク達が敵兵を打漏らして奴らがチャスティンの方へ向かっても、護衛の兵達がチャスティンを守るためにチャスティンが手を出すよりも先に戦闘を開始するはずだ。だからルークにムッとされても困る。
ルーク達は更にボコール帝国軍の陣地の方に向かった。
わざわざ敵が攻めてくるのを待つつもりはない。しかもこんな見通しのいい場所で。

 ルーク達が敵陣の方へ進んで行くと見知った顔があった。一昨日に見たヒデーノとエグイノだ。
まだ奴らはルークとノー・ソイの存在に気付いていない。
ルークとノー・ソイは当然の事ながらおちんちんをズボンの中に戻している。あんな物を出しっぱなしだと遠くからでもディッカーだとバレてしまうからな。使う時だけ出せば良い。オシッコをする時と同じだ。

 ルークとノー・ソイはヒデーノとエグイノにバレないように隠れながら慎重に前進した。またいきなりペック・クロスを放たれたら困るからな。

 ルークとノー・ソイはある程度ボコール帝国軍の陣地に近づくと丁度いい待ち伏せ地点を見つけた。こちらへ向かってくるボコール兵にとってはこちらは死角になっており、かなり近づかないとこちらの存在には気付かない位置だ。ここでボコール兵が来るまで待つことにした。

 ボコール兵の方がこちらへ向かう必要性がより強い。彼らは我々の大砲を潰さないとジリ貧になるからな。こちらは敵兵のみに対処すればいい。
敵の大砲は自軍の大砲に任せればいい。
こちらはわざわざ敵が攻めてくるの待つ必要はないが、戦術的に有利な状況を捨ててまで待つリスクを取る必要はもっとない。状況に応じて切り替えればいい。

 敵兵がこちらへ近づいてくる間、ノー・ソイはチャスティンと護衛兵に対して色々と指示を出した。まずはどのようなフォーメーションを取るかだ。
ノー・ソイは護衛兵を2つのチームに分けた。前衛36名とチャスティンを護衛する4名のチームだ。
勿論、アークはその4名のチームの一員に入る。

 36名の前衛は更に12名づつに分けて3列の隊を形成させた。3列は横に展開してボコール兵に対して壁を作る。
ルークとノー・ソイはヒデーノとエグイノに見つからないように前衛の壁に隠れ、彼らが来るのを待つ。
その後ろにチャスティンと護衛が控える。

 ヒデーノとエグイノが前衛に突撃してきたら、絶対に戦わずに左右に分かれてヒデーノとエグイノが通れるように道を空ける。
戦えば必ず殺されるから絶対にするなと厳命しておいた。
その道はヒデーノとエグイノが通れるように空けるのでなく、本当はルークとノー・ソイが通れるように空けるのだと説明しておいた。

 次はチャスティンに指示を出した。チャスティン達にはヒデーノとエグイノがペック・クロスを放つアクションをとっている時にルークとノー・ソイをサポートしてほしいと伝えた。
できればヒデーノとエグイノは剣技で負かすつもりだが、もし奴らがペック・クロスを放つとノー・ソイ達もディック・クロスで対抗するつもりだからフォーナスの溜めの時間が必要になる。
溜めの時間はノー・ソイ達も無防備になるからその間、チャスティン達にボコールの一般兵の対処をしてもらいたいと伝えた。
チャスティンは首をかしげながら尋ねた。

「でも叔父様は昨日、言っていたではないですか。叔父様達から距離を取って置くようにと」

「あれはヒデーノとエグイノが奇襲して、いきなりペック・クロスを放ってくることを前提で言ったんです。今は我々が奇襲する側なので問題ありません」

「わかりました」

 チャスティンは前衛からピストルを12丁、回収した。チャスティンはアークと彼女の護衛にそれぞれ2丁づつ渡した。
ピストルには6発が装填してあるから合計72発の弾丸でボコール兵に対応することになる。
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