3 / 4
ステータスとストレージ ②
しおりを挟むいろいろ確認した結果、とんでもないのも紛れていたけど、見ない事にした。
もう少しこの世界に自分が馴染んでから再度確認しようと思う。
「何か武器でもあったら護身用にって思ったけど、伝説のとか、覇王のとか、何かやばい名前が前についてたし……」
街についたら武器屋で普通の剣を購入しようと思う。
創世主が用意した物は概ね非常識なのが分かっただけでも良しとしよう。
「こんな真っ暗闇で移動するのは危険でしかないし、テントでも張って今日は休もう」
テントの形をしたアイコンをツンとタップすると、テントが組み立てられた状態でパっと現れた。
非常識な創世神が用意した割りにちゃんとしていて、日本製のテントらしいけど広々として快適そうである。
中に入ると結構な広さがあった。
というよりも、部屋…っぽい。
テントじゃなくてロッジ出しましたっけ? な仕様である。
歩いて色々確認してみると、キッチンもトイレもお風呂まで完備されていた。
これテントじゃなくない?
日本製だから? 絶対違う……あの非常識なのが改良したんだろう。
この異世界で友人が出来てもこのテントに招待できなくない? と思われる。
「まぁ……便利で快適だからいいや……」
まるでジェットコースターのように血圧が上がったり下がったりする出来事が続いたせいで、体力∞らしいが、そんなの嘘だろう、今、とても疲れている。
どこぞの高級ホテルに設置されてそうなフカフカベッドにどさりと前倒しに倒れこみ夢も見ずに寝た。
翌朝、時計が無いので翌昼なのかもしれないが。
外が明るい時間に目が覚めた。
「今日は集落みたいな小さな村でもいいから人がいる所までは行きたいな」
ストレージを呼び出し、テントのアイコンをタップするとパっと収納された。
触れて「収納」というだけでもストレージに戻るみたいだけど、タップする方を気に入っている。
ストレージにあるアイコンを探すのが面倒になってきたり飽きたら「収納」と言って収納しよう。
でも人がいる時に「収納」っていうの怪しまれないかな。
マジックバックという存在をどう扱っている世界なのか判明してからじゃないと安心できないな。
そもそもマジックバックって存在しているのだろうか……
もう一度ストレージを開いてテントのアイコンをタップする。
(収納)
言葉にせず心の中だけで口にする。
パっとテントが消えストレージへと戻った。
「声に出さなくても収納できるんじゃないか……」
ストレージ開いた上部にストレージの出し入れの仕方の説明書きにそんなこと書いてなかったんだけど。
あの創世神の悪意を感じる。
「手紙で伝えるしか出来ない? しない? 物臭神のくせに……声に出して周囲の視線にいたたまれず恥をかく私を眺めたいのか?」
先が思いやられる。色んな意味で。
―――――陽射しの角度がだいぶ下へと下がってきたくらい歩いた。
が、未だに人っこひとり見かけない。
「この森ってどれくらいの規模なんだろう…」
体力が∞のお陰なのか一切疲れないのだけが救い。
「可愛い森の動物たちすら見かけないって寂しすぎ。子リスや子ウサギどこいった…」
道なき道を歩きながら、時折木の上や下を確認すれど生き物の気配すらない。
「死の森とか、魔の森とかだったら、あの物臭神恨んでやる」
一切疲れていないから休憩はとってないけど、お腹は空く。
ストレージを呼び出して食べ物っぽいアイコンを探す。
「アイコンをいちいち探すの面倒だよなあ、検索機能とかないのかな。どんな食べ物あるのか分からないんだから小説にあるみたいに手を突っ込んでスッと出すのも無理よねえ?」
試してみるか。
「とにかく食べ物でろー」
手を上げ掴んだように握って下ろす。
…なにもない。
多分、このガラス板みたいなのをタップしないと出ないのかもしれない。
「はぁ…探すしかないか」
果物っぽいアイコンが横一列に並んでるのを見つけたので、ひとつタップしてみた。
アイコンの横に数字っぽいのが表れて“999/999”とある。
もう一度タップするとパっと手にリンゴのようなものが現れた。
アイコンを見ると“998/999”となっていた。
「なるほど999個あるんだ。食べきる前に飽きそう」
ナイフを探そうと思ったが、昨夜の“伝説の”“覇王の”とか付いてそうなのでやめた。
丸かじり、最高です。
シャクシャクと音を立てながら食べる。
「あっま、これ凄く美味しい! これなら998個食べきれそう!」
あの物臭神の用意したものだから期待してなかったけど、いい意味で予想を裏切ってくれたようだ。
とっても美味しい。
他にもたくさん果物の種類があるっぽいので、食べる楽しみが出来た。
ただ、このリンゴっぽいの一個食べただけでお腹一杯になったので、今はいいや。
果物なのに一個で全然お腹一杯って…少食になった?
異世界に転生したから低燃費仕様になったのかなー。
ちょっとした違和感はあるものの、まあ気にする事もないかとまた移動を開始する。
恐らく夕方、夜が少しずつ近づいて来た事に気付き、歩くのを諦める。
夕飯に選んだのはリンゴっぽい物の横にあったアイコン。
出て来たのはお高い値段で販売されている皮まで食べられるブドウっぽい果物。
「………まんまアレに見えるけど」
ばくっと一口で食べて口の中で弾ける甘さを楽しむ。
「んんーーっ! これアレじゃない!? おいしい!」
シャイン何とかそのものの美味しさ。
物臭神、果物に関してはとてもとても感謝してもいいかもしれない。
ひと房食べきると、またお腹一杯になった。
ストレージからテントをタップしてテントの中に入る。
「あー、お風呂……どうしよう、起きたらでいいか……」
体力∞なのに何故か睡魔だけは襲ってくる。
眠くて仕方ないので、ちょっと汚いかもしれないけど寝よう。
「おやすみなさい……」
誰に告げるでもないおやすみの挨拶。
物臭神にでも告げたことにしよう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる