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第58話 ほう、謁見ですか。いやあ、面倒なことが少なくて済みましたね。
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さて、今日は国王様に拝謁する日だ。昨日はどうしていたかというと、ゴブリンのムラに戻ってミノタウロスの肉や内臓および素材などのお裾分けをしたり、ゴブリン達とマーシィさんと戦闘訓練を行ったり、前世のリアルチートだったエーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさんの3人から集団戦闘について勉強させてもらったりした。マーブル達は戦闘訓練に参加しつつもその合間に子供達と遊んだりしていた。食事の時はライムが引っ張りだこだった。実際ライムは普通のスライムとは違い、某有名RPGのような外見をしているため非常に可愛らしい上に、汚れを落としてくれるのでゴブリンのお姉様達に特に大人気だった。
朝食を終えて王宮に行く準備をしてから3人とまったりしていると、メラちゃんが来て、王都の使いの人が来たと知らせてくれた。使いとはセイラさんだった。
「アイスさん、おはよう。今日は王都の使者として来たよ。準備ができたら早速出発するけど。」
「おはようございます、セイラさん。準備はできておりますので、早速ですが案内お願いしますね。」
使者がセイラさんだと知ると、マーブル達も次々に挨拶を交わしていく。
「あはっ、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃんもお早う。みんなもアイスさんとお揃いのウサギの毛皮なんだね。似合ってるよ。」
セイラさんが褒めると、マーブル達はセイラさんの周りを跳ね回り嬉しさをアピールした。
「アイスさんって、いつもこの子達に囲まれて生活しているんだよね。もの凄く羨ましいんですけど。」
「そうでしょう、そうでしょう、私の自慢の猫達ですからね。」
自分が褒められても、あーはいはい、って感じだけど、マーブル達が褒められるのは親馬鹿として非常に嬉しいです。もっと褒めて上げて!!
セイラさんについていくと、馬車が待機していた。私が引いているソリの3倍の長さがあった。
「アイスさん、こちらの馬車で王宮まで案内いたします。」
セイラさんがいつもの口調ではなく公式での口調に変わっていたので多少違和感はあったけど、これ公の場だからと思い直す。馬車の中に案内されると、アンジェリカさんとルカさんがいた。
「アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん、ご機嫌よう。」
「ウサちゃん達、おはよう。」
「おはようございます、みなさん。今日はよろしくお願いします。」
王家に対する礼式なんて知らないので、王都に向かうまでにある程度アンジェリカさん達に教えてもらう、といっても、こんな短時間ではせいぜいどこまで進めばいいのか、とか、何回目の「面を上げよ。」で頭を上げればいいかといった程度のものだ。それ以上は無理。馬車内で頭の下げ方など練習していると、マーブル達も頭を下げているときは「伏せ」の状態になったりしていた。ライムに至っては、どうみても「たれ○んだ」になったスライムである。可愛すぎる。戦姫の3人もマーブル達の可愛さに我慢できず歓声を上げてしまったり、それを聞きつけて馬車に入ってきた衛兵たちもマーブル達の姿を見て悶えていた。アンジェリカさんは特に気に入ってしまい、マーブル達にも謁見時にそれをやって欲しいと頼んでいた。
王城では馬車のまま通過したが、王宮の前に着くと馬車から降りるよう言われたのでその通りにする。アンジェリカさん達とは別れ、そこに控えていた見事な鎧を着た騎士らしき人に案内される。案内の騎士に着いていくと部屋に通されてそこで待つように言われた。席に着くと部屋で控えていたメイドが飲み物や食べ物を用意してくれた。メイド達は最初はよそよそしい感じだったが、マーブル達とモフモフを楽しんでいると我慢できなくなったのか、モフらせて欲しいと頼んできた。周りには人はいなかったので許可をするとじらされた鬱憤を晴らすかのごとく、マーブル達に飛びつくような感じでそれぞれをモフり出した。
メイドさん達も交えてマーブル達と戯れていると、ドアをノックする音がした。メイド達は慌てて襟を正す。入ってきたのはセイラさんだった。セイラさんは慌てているメイド達を見て全てを察してメイド達を羨ましそうな目で睨んだ。まあ、許してやって欲しい。
「アイスさん、国王陛下の準備が整いましたので、謁見の間へとご案内します。」
「セイラさん自らとは恐縮です。よろしくお願いします。」
セイラさんの後について歩いていると、セイラさんが足を止めて話しかけてきた。
「アイスさん、あのメイド達ってマーブル達と遊んでたよね? 私だってそこまでしっかりと遊んでないのに。」
「それは許してやってくださいよ。」
一応公式なんですが、なぜ口調がいつもの感じに戻っているのですか? まあ、周りに人もいないですし、どこに人がいるか把握している、ということでここは一つってことですかね。こちらはその方が気楽だし正直ありがたいのですがね。
しばらく進んでいくと、大きな扉の所に衛兵が2人ほど待機していた。これが謁見の間ですな。セイラさんが話してきた。
「アイスさん、この扉の先が謁見の間だよ。ここから他人行儀の口調に戻すから、よろしく。はあ、面倒だよね。早く冒険者に戻りたいわ。」
「こちらからは、お察し申し上げますとしか言えないのですが。」
「では、改めまして、アイスさん、向こうが謁見の間になります。私の所作に合わせて頂ければ大丈夫です。顔を上げるタイミングだけは異なりますので、その点だけご注意願います。」
それだけ言うと、隣にいたセイラさんが前に進み出す。付いてこい、ということかな。謁見の間に到着すると、セイラさんが衛兵達に話しかける。
「国王陛下のお招きに応じ、冒険者のアイス殿をお連れしました。」
「ご苦労様です。お入りください。アイス殿、申し訳ありませんが、身体を検めさせていただきます。」
衛兵達がボディチェックを行う。武器を携えての参内は認められていないということだね。うん、これも定番だね。けどね、私、基本武器持ってないんだ。何せ武器の素質全く無いから(泣)。バーニィは例外ね。
身体チェックが終わると、申し訳なさそうに衛兵達が話してきた。
「武器の類いはお持ちではありませんね。失礼いたしました。では、お通りください。」
「お勤めご苦労様です、では、失礼します。」
そう返すと衛兵達は驚いていた。まあ、冒険者だったらもう少し口調が荒いんでしょうね。
謁見の間に入ると、後ろの扉が閉まった。部屋自体はかなり広かった。進路のように絨毯が敷かれており途中で色が変わっていた。あ、これが境界線か。あまりキョロキョロするのもどうかと思ったので周りを見ることはできなかったが、今日のお披露目はごく少数に対してのようで、あまり人の気配は見られない。こういう謁見だと、最初にこちらが来て王様の入場まで頭を下げたりしているはずだが、なぜか王様以下主要人物はすでに待機していた。
境界線らしき場所辺りまで進むと、セイラさんが膝をつき頭を下げた。私もその所作に従って同じように膝をついて頭を下げた。打ち合わせ通りマーブルとジェミニは私の肩から降りて伏せの所作をし、ライムは腰袋から飛び出して一気に「たれぱ○だ」のような姿になった。その一部始終を見ていた王様達とその他の人達を取り巻いていた空気が一気に緩くなった。改めて気配探知を行うと、何と見えないところで警戒していた護衛達ですら我慢しきれず悶えていた者もチラホラ出てきていた。
「国王陛下。お召しにつきアイス殿達をお連れいたしました。」
「うむ、大義であった。」
「ははっ。」
「アイスと言ったな。面を上げよ。」
確か、この時点では顔を上げてはいけない、そう教えられたので頭は下げたままだ。
「アイス殿、確かに謁見ではあるが、通常の謁見ではないので遠慮なく顔を上げられよ。」
王様らしき人物の隣から声がした。恐らく宰相様というやつだろう。それを追うようにして王様からも声がかかる。
「うむ、遠慮はいらん。今回は公式の場ではない故に遠慮することはない、余に顔を見せておくれ。」
ここまで言われては顔を上げなければならないかな。打ち合わせと多少異なるがまあいいか。下げていた頭を上げる。それを追うようにマーブルとジェミニは「伏せ」から「お座り」の体勢に、ライムは「たれ○んだ」からいつもの状態に戻る。
「うむ、お主がアイスか。余がこの国の王であるオーグ・デリカ・タンヌである。先程申したように今回は公式の場ではない故、直答を許す、というよりも直接答えて欲しい。正直一々誰かを通じて話をするのは面倒じゃからな。」
「では、お言葉に甘えまして、私はアイスと申します。タンバラの街でCランクの冒険者をしております。こちらの猫がマーブル、ウサギがジェミニ、スライムはライムと申します。以後、お見知りおきを。」
「うむ、覚えておくぞ。こちらが余の第一王妃であるナターシャじゃ。まあ、第一王妃と呼称しておるが、正直王妃はナターシャのみである。そして、それ以外でここにおる者達は余が最も信頼している家臣達である。ここにおらん者達はな、正直ゲフンゲフン。」
「陛下、いくら公式の場ではないとはいえ、今それをおっしゃいますかね。」
「いや、宰相よ問題ない。っと紹介がまだだったな。こちらにおるのが、宰相のレイモンド、反対側におるのが近衛兵長のランバラル、こちらにおるのがタンヌ王国軍大将のオルステッドで、、、、、。」
済みません、王様、全員覚えきれません。一通り紹介してもらい互いに挨拶を交わす。とはいえ今後関わることはないでしょうから、無理して覚えなくてもいいかな。
「ところで、アイスよ。そなたは可愛らしい従魔を連れておるのう。アンジェリーナが連れているオニキスは元はお主の従魔のスライムから分かれたものだと聞いておる。アンジェリーナもそうだが、ワシもその可愛らしい見た目や行動に癒やされておる。特にナターシャがオニキスを気に入っておってのう。」
「ありがとうございます。アンジェリ、ーナ様とはこのライムが分裂して数が増えたときに譲ると約束を交わしたので献上いたしました。」
「そうかそうか。っと、この話を続けているといくら話しても時間が足りぬ。今日、そなたを呼んだのはそちらではなく、アンジェリーナと一緒にパーティを組んで国の厄介事を解決したお礼をしようと思っての。」
「いえ、その件に関しましては冒険者ギルドからの依頼を受けただけのことですので、報酬はギルドから十分すぎるほどいただいております。」
「それでもじゃ。何かこちらからでも褒美を出さないと、沽券に関わるのじゃ。何せ近いところでは王都に攻めてきたミノタウロス共を王都にたどり着く前に全滅させた功労者と聞いておる。それとな、うむ、面倒だから正直に言ってしまおう。そのな、お主のスライムが分裂したときにな、我にも1体欲しいのじゃ。」
「なるほど、そういうことですか。ご安心ください国王陛下。オニキスはライムから分かれたとはいえ、すでに1生命体ですので、分裂して数が増えます。」
「いやな、それはわかっておるのじゃが、オニキスの分裂体はすでにある程度順番が決まっておってな。余も欲しいとアンジェリーナには伝えておるのじゃが、かなり後になるみたいでな、、、。」
「そういうことでしたか。わかりました。他ならぬ国王陛下のご依頼とあってはお断りできませんね。承知しました。ライムがまた分裂して新たなスライムが生まれましたら、陛下に献上いたします。ただし条件があります。」
「ふむ、条件か、余にできる範囲でならかまわん。言ってみたまえ。」
「ありがとうございます。条件というのは他ではありません。末永く可愛がるというのが条件でございます。」
「なんじゃ、そんなことか。当たり前のことを申すでない。こんなに可愛らしい見た目をしておるのじゃ。日頃の疲れを癒やしてくれるじゃろう。しかもスライムじゃから身の回りのものを綺麗にもしてくれる。可愛がらないでどうするのじゃ。それは条件にすらならんよ。」
「ありがとうございます。では、このライムが分裂して増えた場合、国王陛下に献上いたしますことをここでお約束いたします。」
「うむ、感謝するぞ。そこでこの件に関しての褒美というわけではないが、できればアンジェリーナを介することなく直接に手渡して欲しい、というわけでお主にはこれを授ける。これを城の者に見せてくれれば面倒臭い手続きを踏むことなく余に直接会える。お主なら悪用せぬじゃろうし、宰相達も問題はないよな?」
「はい、アンジェリーナ様がここまで信頼を寄せておりますので、問題ないかと思います。できましたらそれがしにも是非1体欲しいくらいです。」
「そうじゃろう。こんなに可愛い存在をモノ扱いするのはよくないかもしれないが、褒美として分裂した1体を授けるのもありじゃな。って、済まぬなアイスよ。」
「可愛がっていただけるのでしたら、特にこちらから申し上げることはございません。」
「そうか、それはありがたい。しかし、まだ手には入っておらんからのう。この件はアイスからもらってから考えるとしよう。っと、横道にそれたな。アイスよ、ミノタウロスの件のみならず日頃からアンジェリーナを護衛している褒美として何か授けないとならない。面倒臭いと思うかもしれぬが、何か希望のものがあるのなら、申して欲しい。遠慮は無用だ。」
うーん、正直一々呼ばれるのが面倒でいやなんだよな。あ、そうか、呼ばれないようにするのも褒美の一つではないかな。よし、それにしよう。
「では、国王陛下。私は気ままに冒険者の活動を行いたいので、お招きを断っても問題ないように取りはからっていただけますと、これ以上の私に対する褒賞はありません。」
「お主は財貨や爵位ではなく自由が欲しいと申すか。相わかった。お主の希望を叶えよう。宰相、手続きを頼むぞ。」
「かしこまりました。」
「よし、面倒な話はここまでじゃ。これより昼食にしよう。アイスよ、別室にて昼食を用意してある故、そこで食事をしながら語ろうではないか。ここにいる皆も相伴せよ。」
別室に案内されて昼食を摂った。この国に至るまでの経緯などを話したりもした。ゴブリンのムラについては話してないけどね。そんなこんなで結構話したと思う。帰り際に宰相様からこの国の貴族からの召喚を拒否できる書状をいただいた。国王陛下並びに宰相様のお墨付きだ。これで、面倒なことはある程度避けることができたかな。ともあれ最悪の事態にならなくてよかったかな。
帰りは王宮から徒歩で戻る。時間が微妙なのと、昼食を食べ過ぎたので消化させる目的もあり帰りはのんびりと帰った。万が一に備えて周りを探知していたが、幸いにも敵の反応はなかった。
ゆっくり時間をかけて丁度夕食に間に合うようにホーク亭に到着し、後はいつものメシ、風呂、洗濯を済ませて床に就いた。
朝食を終えて王宮に行く準備をしてから3人とまったりしていると、メラちゃんが来て、王都の使いの人が来たと知らせてくれた。使いとはセイラさんだった。
「アイスさん、おはよう。今日は王都の使者として来たよ。準備ができたら早速出発するけど。」
「おはようございます、セイラさん。準備はできておりますので、早速ですが案内お願いしますね。」
使者がセイラさんだと知ると、マーブル達も次々に挨拶を交わしていく。
「あはっ、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃんもお早う。みんなもアイスさんとお揃いのウサギの毛皮なんだね。似合ってるよ。」
セイラさんが褒めると、マーブル達はセイラさんの周りを跳ね回り嬉しさをアピールした。
「アイスさんって、いつもこの子達に囲まれて生活しているんだよね。もの凄く羨ましいんですけど。」
「そうでしょう、そうでしょう、私の自慢の猫達ですからね。」
自分が褒められても、あーはいはい、って感じだけど、マーブル達が褒められるのは親馬鹿として非常に嬉しいです。もっと褒めて上げて!!
セイラさんについていくと、馬車が待機していた。私が引いているソリの3倍の長さがあった。
「アイスさん、こちらの馬車で王宮まで案内いたします。」
セイラさんがいつもの口調ではなく公式での口調に変わっていたので多少違和感はあったけど、これ公の場だからと思い直す。馬車の中に案内されると、アンジェリカさんとルカさんがいた。
「アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん、ご機嫌よう。」
「ウサちゃん達、おはよう。」
「おはようございます、みなさん。今日はよろしくお願いします。」
王家に対する礼式なんて知らないので、王都に向かうまでにある程度アンジェリカさん達に教えてもらう、といっても、こんな短時間ではせいぜいどこまで進めばいいのか、とか、何回目の「面を上げよ。」で頭を上げればいいかといった程度のものだ。それ以上は無理。馬車内で頭の下げ方など練習していると、マーブル達も頭を下げているときは「伏せ」の状態になったりしていた。ライムに至っては、どうみても「たれ○んだ」になったスライムである。可愛すぎる。戦姫の3人もマーブル達の可愛さに我慢できず歓声を上げてしまったり、それを聞きつけて馬車に入ってきた衛兵たちもマーブル達の姿を見て悶えていた。アンジェリカさんは特に気に入ってしまい、マーブル達にも謁見時にそれをやって欲しいと頼んでいた。
王城では馬車のまま通過したが、王宮の前に着くと馬車から降りるよう言われたのでその通りにする。アンジェリカさん達とは別れ、そこに控えていた見事な鎧を着た騎士らしき人に案内される。案内の騎士に着いていくと部屋に通されてそこで待つように言われた。席に着くと部屋で控えていたメイドが飲み物や食べ物を用意してくれた。メイド達は最初はよそよそしい感じだったが、マーブル達とモフモフを楽しんでいると我慢できなくなったのか、モフらせて欲しいと頼んできた。周りには人はいなかったので許可をするとじらされた鬱憤を晴らすかのごとく、マーブル達に飛びつくような感じでそれぞれをモフり出した。
メイドさん達も交えてマーブル達と戯れていると、ドアをノックする音がした。メイド達は慌てて襟を正す。入ってきたのはセイラさんだった。セイラさんは慌てているメイド達を見て全てを察してメイド達を羨ましそうな目で睨んだ。まあ、許してやって欲しい。
「アイスさん、国王陛下の準備が整いましたので、謁見の間へとご案内します。」
「セイラさん自らとは恐縮です。よろしくお願いします。」
セイラさんの後について歩いていると、セイラさんが足を止めて話しかけてきた。
「アイスさん、あのメイド達ってマーブル達と遊んでたよね? 私だってそこまでしっかりと遊んでないのに。」
「それは許してやってくださいよ。」
一応公式なんですが、なぜ口調がいつもの感じに戻っているのですか? まあ、周りに人もいないですし、どこに人がいるか把握している、ということでここは一つってことですかね。こちらはその方が気楽だし正直ありがたいのですがね。
しばらく進んでいくと、大きな扉の所に衛兵が2人ほど待機していた。これが謁見の間ですな。セイラさんが話してきた。
「アイスさん、この扉の先が謁見の間だよ。ここから他人行儀の口調に戻すから、よろしく。はあ、面倒だよね。早く冒険者に戻りたいわ。」
「こちらからは、お察し申し上げますとしか言えないのですが。」
「では、改めまして、アイスさん、向こうが謁見の間になります。私の所作に合わせて頂ければ大丈夫です。顔を上げるタイミングだけは異なりますので、その点だけご注意願います。」
それだけ言うと、隣にいたセイラさんが前に進み出す。付いてこい、ということかな。謁見の間に到着すると、セイラさんが衛兵達に話しかける。
「国王陛下のお招きに応じ、冒険者のアイス殿をお連れしました。」
「ご苦労様です。お入りください。アイス殿、申し訳ありませんが、身体を検めさせていただきます。」
衛兵達がボディチェックを行う。武器を携えての参内は認められていないということだね。うん、これも定番だね。けどね、私、基本武器持ってないんだ。何せ武器の素質全く無いから(泣)。バーニィは例外ね。
身体チェックが終わると、申し訳なさそうに衛兵達が話してきた。
「武器の類いはお持ちではありませんね。失礼いたしました。では、お通りください。」
「お勤めご苦労様です、では、失礼します。」
そう返すと衛兵達は驚いていた。まあ、冒険者だったらもう少し口調が荒いんでしょうね。
謁見の間に入ると、後ろの扉が閉まった。部屋自体はかなり広かった。進路のように絨毯が敷かれており途中で色が変わっていた。あ、これが境界線か。あまりキョロキョロするのもどうかと思ったので周りを見ることはできなかったが、今日のお披露目はごく少数に対してのようで、あまり人の気配は見られない。こういう謁見だと、最初にこちらが来て王様の入場まで頭を下げたりしているはずだが、なぜか王様以下主要人物はすでに待機していた。
境界線らしき場所辺りまで進むと、セイラさんが膝をつき頭を下げた。私もその所作に従って同じように膝をついて頭を下げた。打ち合わせ通りマーブルとジェミニは私の肩から降りて伏せの所作をし、ライムは腰袋から飛び出して一気に「たれぱ○だ」のような姿になった。その一部始終を見ていた王様達とその他の人達を取り巻いていた空気が一気に緩くなった。改めて気配探知を行うと、何と見えないところで警戒していた護衛達ですら我慢しきれず悶えていた者もチラホラ出てきていた。
「国王陛下。お召しにつきアイス殿達をお連れいたしました。」
「うむ、大義であった。」
「ははっ。」
「アイスと言ったな。面を上げよ。」
確か、この時点では顔を上げてはいけない、そう教えられたので頭は下げたままだ。
「アイス殿、確かに謁見ではあるが、通常の謁見ではないので遠慮なく顔を上げられよ。」
王様らしき人物の隣から声がした。恐らく宰相様というやつだろう。それを追うようにして王様からも声がかかる。
「うむ、遠慮はいらん。今回は公式の場ではない故に遠慮することはない、余に顔を見せておくれ。」
ここまで言われては顔を上げなければならないかな。打ち合わせと多少異なるがまあいいか。下げていた頭を上げる。それを追うようにマーブルとジェミニは「伏せ」から「お座り」の体勢に、ライムは「たれ○んだ」からいつもの状態に戻る。
「うむ、お主がアイスか。余がこの国の王であるオーグ・デリカ・タンヌである。先程申したように今回は公式の場ではない故、直答を許す、というよりも直接答えて欲しい。正直一々誰かを通じて話をするのは面倒じゃからな。」
「では、お言葉に甘えまして、私はアイスと申します。タンバラの街でCランクの冒険者をしております。こちらの猫がマーブル、ウサギがジェミニ、スライムはライムと申します。以後、お見知りおきを。」
「うむ、覚えておくぞ。こちらが余の第一王妃であるナターシャじゃ。まあ、第一王妃と呼称しておるが、正直王妃はナターシャのみである。そして、それ以外でここにおる者達は余が最も信頼している家臣達である。ここにおらん者達はな、正直ゲフンゲフン。」
「陛下、いくら公式の場ではないとはいえ、今それをおっしゃいますかね。」
「いや、宰相よ問題ない。っと紹介がまだだったな。こちらにおるのが、宰相のレイモンド、反対側におるのが近衛兵長のランバラル、こちらにおるのがタンヌ王国軍大将のオルステッドで、、、、、。」
済みません、王様、全員覚えきれません。一通り紹介してもらい互いに挨拶を交わす。とはいえ今後関わることはないでしょうから、無理して覚えなくてもいいかな。
「ところで、アイスよ。そなたは可愛らしい従魔を連れておるのう。アンジェリーナが連れているオニキスは元はお主の従魔のスライムから分かれたものだと聞いておる。アンジェリーナもそうだが、ワシもその可愛らしい見た目や行動に癒やされておる。特にナターシャがオニキスを気に入っておってのう。」
「ありがとうございます。アンジェリ、ーナ様とはこのライムが分裂して数が増えたときに譲ると約束を交わしたので献上いたしました。」
「そうかそうか。っと、この話を続けているといくら話しても時間が足りぬ。今日、そなたを呼んだのはそちらではなく、アンジェリーナと一緒にパーティを組んで国の厄介事を解決したお礼をしようと思っての。」
「いえ、その件に関しましては冒険者ギルドからの依頼を受けただけのことですので、報酬はギルドから十分すぎるほどいただいております。」
「それでもじゃ。何かこちらからでも褒美を出さないと、沽券に関わるのじゃ。何せ近いところでは王都に攻めてきたミノタウロス共を王都にたどり着く前に全滅させた功労者と聞いておる。それとな、うむ、面倒だから正直に言ってしまおう。そのな、お主のスライムが分裂したときにな、我にも1体欲しいのじゃ。」
「なるほど、そういうことですか。ご安心ください国王陛下。オニキスはライムから分かれたとはいえ、すでに1生命体ですので、分裂して数が増えます。」
「いやな、それはわかっておるのじゃが、オニキスの分裂体はすでにある程度順番が決まっておってな。余も欲しいとアンジェリーナには伝えておるのじゃが、かなり後になるみたいでな、、、。」
「そういうことでしたか。わかりました。他ならぬ国王陛下のご依頼とあってはお断りできませんね。承知しました。ライムがまた分裂して新たなスライムが生まれましたら、陛下に献上いたします。ただし条件があります。」
「ふむ、条件か、余にできる範囲でならかまわん。言ってみたまえ。」
「ありがとうございます。条件というのは他ではありません。末永く可愛がるというのが条件でございます。」
「なんじゃ、そんなことか。当たり前のことを申すでない。こんなに可愛らしい見た目をしておるのじゃ。日頃の疲れを癒やしてくれるじゃろう。しかもスライムじゃから身の回りのものを綺麗にもしてくれる。可愛がらないでどうするのじゃ。それは条件にすらならんよ。」
「ありがとうございます。では、このライムが分裂して増えた場合、国王陛下に献上いたしますことをここでお約束いたします。」
「うむ、感謝するぞ。そこでこの件に関しての褒美というわけではないが、できればアンジェリーナを介することなく直接に手渡して欲しい、というわけでお主にはこれを授ける。これを城の者に見せてくれれば面倒臭い手続きを踏むことなく余に直接会える。お主なら悪用せぬじゃろうし、宰相達も問題はないよな?」
「はい、アンジェリーナ様がここまで信頼を寄せておりますので、問題ないかと思います。できましたらそれがしにも是非1体欲しいくらいです。」
「そうじゃろう。こんなに可愛い存在をモノ扱いするのはよくないかもしれないが、褒美として分裂した1体を授けるのもありじゃな。って、済まぬなアイスよ。」
「可愛がっていただけるのでしたら、特にこちらから申し上げることはございません。」
「そうか、それはありがたい。しかし、まだ手には入っておらんからのう。この件はアイスからもらってから考えるとしよう。っと、横道にそれたな。アイスよ、ミノタウロスの件のみならず日頃からアンジェリーナを護衛している褒美として何か授けないとならない。面倒臭いと思うかもしれぬが、何か希望のものがあるのなら、申して欲しい。遠慮は無用だ。」
うーん、正直一々呼ばれるのが面倒でいやなんだよな。あ、そうか、呼ばれないようにするのも褒美の一つではないかな。よし、それにしよう。
「では、国王陛下。私は気ままに冒険者の活動を行いたいので、お招きを断っても問題ないように取りはからっていただけますと、これ以上の私に対する褒賞はありません。」
「お主は財貨や爵位ではなく自由が欲しいと申すか。相わかった。お主の希望を叶えよう。宰相、手続きを頼むぞ。」
「かしこまりました。」
「よし、面倒な話はここまでじゃ。これより昼食にしよう。アイスよ、別室にて昼食を用意してある故、そこで食事をしながら語ろうではないか。ここにいる皆も相伴せよ。」
別室に案内されて昼食を摂った。この国に至るまでの経緯などを話したりもした。ゴブリンのムラについては話してないけどね。そんなこんなで結構話したと思う。帰り際に宰相様からこの国の貴族からの召喚を拒否できる書状をいただいた。国王陛下並びに宰相様のお墨付きだ。これで、面倒なことはある程度避けることができたかな。ともあれ最悪の事態にならなくてよかったかな。
帰りは王宮から徒歩で戻る。時間が微妙なのと、昼食を食べ過ぎたので消化させる目的もあり帰りはのんびりと帰った。万が一に備えて周りを探知していたが、幸いにも敵の反応はなかった。
ゆっくり時間をかけて丁度夕食に間に合うようにホーク亭に到着し、後はいつものメシ、風呂、洗濯を済ませて床に就いた。
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プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
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