62 / 85
第59話 ほう、迷子探索ですか。頑張りますよ。
しおりを挟む昨日無事謁見を終えた私達は宿でのんびり過ごしていた。昨日の件で何かに巻き込まれそうな予感がしたが、特にそういったこともなく平穏に過ぎていった。
王都ではミノタウロスの襲撃の話と戦姫の話で持ちきりだった。わざわざメラちゃんが話しに来たくらいだからよほど反響が大きかったのだろう。もちろんミノタウロスは王都にたどり着く前に冒険者達が迎え撃って殲滅したので王都に被害はない。そしてそのミノタウロスのボスをアンジェリカさんが倒したことを冒険者ギルドが発表したので王都で大きな話題になったというわけだ。
王都でも戦姫の名は知れ渡っており、アンジェリカさんは王位継承順位こそ低いが、人気度では圧倒的の1位となっている。無理もない、美人でスタイルもよし、性格は貴族特有の上から目線もない、ハッキリ言って控えめに言ってもチートだ。
逆に、冒険者ギルドに厄介事を押しつけて何もしなかった王都の兵士や騎士達への評判は冒険者達への評判と反比例するように下がっていた。王都の兵士や騎士は基本貴族の子息達しかなれない、というより、騎士はともかく貴族が多すぎて職がないので剣や魔法の才能が低い者が兵士になっている。そのため兵士達は普段から威張りくさるだけで王都民に迷惑しかかけない存在と認識されていた。そんな状態の上にさらにミノタウロスの件も相まって兵士や騎士という存在、いや、貴族という存在について否定される状態になっていた。
今日は特に予定もなかったので、王都散策の続きをすることになった。出発の準備が完了すると、マーブル達は何も言わなくとも定位置に飛び移った。左右の肩にはモフモフ、腰の辺りには柔らかい感触、これを至福と言わずして何と言おうか。
散策といっても、最初は冒険者ギルドへと向かう。何か短期間でのクエストがあるかどうかだ。時間も早いわけではないので、冒険者もそれほどいなかった。掲示板を見ると、かなりの数が残っていた。流石は王都だ、っと思ってみていると、内容は両極端で、報酬は高めだが拘束期間が長いものと、すぐに終わりそうだけど報酬がショボい。討伐依頼についてはほとんど見かけなかった。それでも何かないかな、と思って探していると、「わたちのねこちゃんをさがしてください」というものがあった。何? 猫だと? これはやらずばなるまい、ということでこれを受けることにした。
受注窓口へと向かい、この依頼票を受付に手渡す。ギルドカードを見せると受付嬢は驚いていたが、すぐに気を取り直し念を押した後、説明してくれた。
「えーっと、この依頼はFランクやGランクの冒険者が受けるような内容ですが、アイスさんはCランクですよね? 本当に受けるんですか?」
「ええ、この依頼を受けるつもりですが、ひょっとして受注不可ですか?」
「いえ、受けるのは問題ないのですが、報酬も銅貨1枚ですし、数日放置されている状態なので、むしろ受けて頂けるとありがたいのですが、本当によろしいのですか?」
「もちろん、かまいませんよ。しかし数日も放置されているのであれば急ぎませんと。」
「はい、では受注完了しました。依頼主はアマデウス教会の孤児院の子供です。詳細はアマデウス教会でお聞き下さい。」
「わかりました、それでは行って参ります。」
依頼を受注して冒険者ギルドを後にする。アマデウス教会か、ある程度勝手のわかる場所だったから丁度良かったかな。早速向かうとしますか。
アマデウス教会に到着すると、シスターが出迎えてくれた。
「アイスさん、ようこそいらっしゃいました。それで本日はどのようなご用件ですか?」
「あ、どうも、今日はですね、冒険者として、ここの孤児院の子からの依頼を受けたので伺いました。」
「あ、あの依頼を受けられたのですか? あの子達がいないいないと大騒ぎだったので、それを鎮めるために依頼を出したのですが、本当によろしいのですか? 報酬も最低額の銅貨1枚ですが。」
「もちろんです。猫探し、腕が鳴ります。」
「そ、そうですか。では、こちらにどうぞ。詳細を説明いたします。」
シスターから詳細を聞く。特徴や大きさなどを聞いたが、正直に申します。特徴になってねぇ。いや、説明は十分すぎるほど詳しく説明してもらいましたが、まとめてみると、特にこれといったポイントがさっぱり見当が付かない。ぶっちゃけどこにでもいそうな猫であり特定が難しいタイプのやつだ。しかし、マーブル達を見てみると、任せろとばかりに理解していた。君達、違いがわかるのね。とりあえず一通り説明を受けて教会を後にする。
教会を出てからマーブル達に聞くことにした。
「君達、あの話で迷子猫ちゃんの特徴とかわかったのかな?」
「ミャー!」
「あのシスターさん、説明が上手でしたね。もの凄くよくわかりましたです。」
「ぼくもわかったー!」
「そんなにわかりやすかった? いや、説明は上手だったししっかりと特徴を話してくれたけど、ゴメン、私にはああいうタイプは数が多すぎて特定できない。」
「わたし達に任せるです! マーブル殿も場所など特定できたと言ってますです!」
「ボク達におまかせー!!」
そう言うと、マーブルは早速肩から降りて移動しだす。いつもの散策するペースで進み出す。ジェミニも肩から降りてマーブルの隣を歩き出す。ライムは下手すると騒ぎになるから腰袋でおとなしくしててね。
歩くこと20分、何か訳のわからない場所に来てしまった。木々が生い茂っているところで私的には迷いの森に入ったような気分だったが、マーブル達は全く問題なく進んでいく。マーブル達が動きを止める。それに合わせて歩くのを止めて耳を澄ますと、弱々しく鳴き声が聞こえた。上の方を見ると、特徴通りの猫が震えながら鳴いているのに気付いた。定番だと木に登ったりして助けるのだが、生憎私は木登りができない。では、どうするか? もちろん見捨てるという選択肢はない。よし、猫ちゃん救出任務開始だ。
「では、これより猫ちゃん救出任務を開始します。まず、マーブル隊員はあの木に登って猫ちゃんとコンタクトを取って、落ち着かせて下さい。できますよね?」
「ミャッ!」
問題ない、とばかりに敬礼でもって応える。
「猫ちゃんが落ち着いたところで、少し強引ですが、ジェミニ隊員、猫ちゃんを咥えて降りて下さい。少し無茶かもしれませんができますか?」
「その程度楽勝です、任せるです!」
「ライム隊員は万が一に備えてクッションとなって猫ちゃんを保護して下さい。」
「まかせてー!!」
「よし、では、作戦開始です!」
私の号令の後、すぐにマーブルが木に登って猫とコンタクトを取る。最初はおびえていた猫も、マーブルのおかげで落ち着いているようだ。ジェミニはまだ待機している、ということはひょっとしたら作戦の全容を説明しているのかもしれない。端から見ると猫2匹が仲良く木の上でのんびりしているようにしか見えない。モフモフ好きとしては眼福以外の何物でもない。
少ししたら、ジェミニが動き出した。あっという間に木に登りジェミニが猫とコンタクトを取っている。作戦では猫を咥えてもらう予定だったが、何と猫がジェミニの背に乗った。ジェミニ達がゆっくり降りるとマーブルが風魔法で2体を覆った。なるほど、風魔法だとビックリしてしまうと思って少々強引な策を出したが、そこまで説明済みだったのか。流石は私の猫達だ。着地地点にはライムが待ち構えていたが、どうやら必要なさそうだ。無事に猫は下に降りることができた。
「猫ちゃん、頑張ったね。偉かったよ。ご褒美にこれをあげよう。」
恐らくお腹が空いていると思われたので、塩漬けされていない干し肉をあげた。猫は最初こそ戸惑っていたが、マーブル達が声をかけると途端に良い勢いで食べ出した。うんうん、まだまだあるから、たくさん食べてね。
何枚か食べて満足したのだろうか、猫が食べ終わって少ししてから手を出すと、飛びついてきてくれた。おお、やはりこの世界の猫もモフモフだ。いや、マーブルも猫なんだけど、元は魔獣だから確証がなかったんだよね。迷子猫を抱きながら任務完了の号令を終えると、マーブル達は定位置に飛び乗った。手はふさがっているから顔でモフモフを堪能する。ライムはあとでおにぎりの刑にしてやるから楽しみに待っててくれ。
「あー、マーブルにジェミニや。乗っててくれるのも非常にうれしいのだけど、君達の案内がないと私は帰れないから、大通りに出るまでは案内してくれないかな。」
マーブル達は、あっ、と思い出したように肩から降りて進み出してくれた。うん、ゴメンね、若干方向音痴だから道わからないんだよね。
しばらく進むと見慣れた場所に到着したので、マーブル達にお礼を言うと、2人は定位置に飛び乗った。顔モフで歓迎の意をしめすと、2人とも嬉しそうだった。迷子猫はその間おとなしくしていた。無事にアマデウス教会に到着してシスターに猫を預ける。猫はシスターに飛びつくと、シスターはまんざらでもない表情で迎えていた。うんうん、よかったね、猫ちゃん。
シスターから依頼完了のサインをもらって気分良く教会を後にして冒険者ギルドへと報告に戻った。ギルドに報告を済ませると、Bランク昇進試験の打診を受けたが断った。受付嬢は驚いていたが、あまり高ランクになってもいいことがなさそうなので保留だ。少なくとも王都では受けない予定だし。
ギルドを後にしてホーク亭に戻ると、セイラさんが待っていた。
「あ、アイスさんお帰りなさい。」
「あ、セイラさんどうも。護衛任務なのに留守にしていて申し訳ありません。」
「ううん、問題ないよ。こっちも特に予定伝えてなかったし。」
「そう言ってくれると助かります。で、今日はどうしました?」
「あ、それなんだけど、タンバラの街に戻る予定だから、準備しておいてって話。」
「おお、そうですか。で、出発はいつになります? こちらはいつでも準備は整ってますが。」
「うん、急で申し訳ないんだけど、明日出発予定だよ。」
「また、急ですね。まあ、詳しくは伺いますまい。明日出発と言うことで了解しました。」
「ごめんね、アイスさん。そういうことなのでお願いします。」
セイラさんは帰っていった。ふむ、明日出発か。メラちゃんに話しておかないとな。
メラちゃんに明日王都を出発してタンバラの街に戻ることを伝えると、了承してくれた。宿代もまだ数日分残っているから、残りはタンバラの街での宿泊代としてタンバラの街に報告しておいてくれるとのことだった。
しかし、明日出発っていきなりだな、おい。これは何かありそうな予感がする。しばらくはゆっくり出来そうもないか、ということで残りの時間はマーブル達とのんびりモフモフして過ごすことにした。うん至福。
夕食や風呂洗濯着替えなどいつもの用事を済ませて床に就いた。さて、明日以降はどうなることやら。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる