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第75話 ほう、これでは話になりませんな。
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テシテシ、テシテシ、ポンポン、いつもの朝起こしだ。リアルの肉球とスライムの程よい柔らかさの感触で起こしてもらえる、うーん、至福の時間だ。起こしてもらってから、朝の挨拶を交わして顔を洗いサッパリとしてから少し経つと、メイドさんが入ってきた。これもここにいるときはいつも通りだ。朝食の準備ができたそうだ。今日は移動せずにこの部屋で頂く。昨日までは別の場所で食べていたが、本来はここで食べるのが普通だろう。まあ、どう考えても一般市民が王族と一緒に食事を摂っている方が異常だ。ぶっちゃけ美味しければどこで食べても問題ない。
さてと、戦姫の護衛任務は今日までとなっている。別に特別に任務解除とかではなく普通に契約期間である1ヶ月の最終日が今日なだけである。といっても、戦姫、正確にはアンジェリカさんの護衛だが、王宮にいる間は特に護衛する必要はないので、特に出かけることがない場合は自由にさせてもらっている。そんなことを考えていたら、セイラさんが尋ねてきた。
「アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん、おはよう。」
「セイラさん、お早うございます。こんなに早くどうしました?」
「えーっと、私達の護衛任務って今日で最終日だよね?」
「そうですね、そういう契約でしたからね。」
「本来は期間を延長したかったんだけど、あの馬鹿お、じゃなかった、アテイン第2王子の依頼のせいでそれもしばらく無理になってしまったからなあ。本当にあいつ、使えない。って違った。アンジェリーナ様が今日が最終日だから、1日だけどどこかで討伐任務を受けるから護衛よろしくって。」
「なるほど、承知しました。依頼主を待たせるわけにはいかないので、早速冒険者ギルドに向かいますので、その後でゆっくりと来て下さい。」
「その必要はないよ。王女殿下が一緒に行こうって。」
「一緒にクエを受けるだけでしたら、それでいいと思うのですが、第2王子のパーティのポーター役としての依頼についての話もあるので、時間が掛かるかもしれませんので、お待たせするわけにもいきませんので。」
「それについては大丈夫。アイスさんが話をしている間に、マーブルちゃん達を私達に預けてくれれば。」
なるほど、そういうことか。アンジェリカさん達もマーブル達をモフりたいと、まあ、戦姫の3人だったらマーブル達も問題ないかな。
「わかりました、そういうことでしたら一緒に行きましょうか。」
「流石はアイスさん、話がわかるね。言わなくてもこちらの意図がバレたか。でも、了解してくれたっていうことは、それだけ私達も信用してくれているってことだよね。」
「そういうことです。」
「じゃあ、王女殿下に報告して来るから、その間に準備しておいてね。」
そう言ってセイラさんは退出した。メイドさんが多少不満げに話してくる。
「えーっ、もう出発しちゃんですか? 私ももっとマーブルちゃん達と遊びたいです、、、。」
いや、気持ちはわかるが、あんた仕事あるでしょうに、、、。
ぶつくさ言いながら片付けなどの仕事をこなすメイドさんに少し、本当に少しだけ呆れながら準備を済ませる、といっても、こちらの支度はそれほどかからない。マーブルとジェミニには従魔用の首輪を、ライムには帽子をかぶせるだけだ。私の場合もバーニィなどを装着するだけ。もちろんお揃いのウサギの毛皮だ。
ほとんど待つことなく、アンジェリカさん達がこちらの部屋に来た。
「アイスさん、ご機嫌よう。今日もよろしくお願いしますわね。」
「アンジェリカさん、ルカさん、お早うございます。セイラさんも改めてお早うございます。」
挨拶を交わして王宮を出て冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドに入ると視線がこちらに集中する。いつ入っても戦姫の3人は注目の的だ。戦姫をぼうっと眺める者もいれば、一緒にいる私を殺さんばかりに睨んでくる者もいる。ある意味様式美と化してしまっている。討伐内容はアンジェリカさん達が選ぶからその間にアテイン王子の依頼について詰めてくるように言われたので、マーブル達を彼女に預け私だけ手続きの窓口へと向かい、アンジェリカさん達は受注依頼を探しに行った。
手続き窓口に向かい、ギルドカードを見せて指名依頼のクエストを確認する。
「Cランクの冒険者、アイスさんですね。今回の指名依頼ですが、これについてはギルドマスターから話があるそうなので、2階のギルド長室に行って詳しい話を聞いてください。」
ギルドカードを受け取り、2階のギルド長室へと向かった。部屋に入るとアルベルトさんがいた。
「おう、アイスさん、呼び出して済まないね。こちらに座ってもらえないかな。あと、申し訳ないけど、これが終わるまで待っててほしい。すぐに終わらせるから。」
アルベルトさんに示された席に座って待機すること5分ほど。書類はまだたくさん残っていたが、一段落ついたらしくこちらに来た。
「待たせたね。申し訳ない。途中で中断すると最初からやり直しになってしまうくらい面倒なものだったから勘弁して欲しい。」
「そういうものって案外ありますよね。こちらは特に時間も指定してなかったですし、それは致し方ないかと。」
「そう言ってくれると助かる。さてと、早速だが本題といこう。今回の指名依頼についてはある程度話を聞いていると思うが、具体的にはアテイン第2王子が王宮のダンジョンに挑むそうで、そのパーティの運び屋だ。」
「はい、そこまでは国王陛下から話は伺っておりますが、それ以上については何も。」
「そうか。では、向こうの条件を伝えると、装備以外、つまり宿泊道具や食料、戦利品についての荷物運びおよび食事や宿泊準備などの身の回りの世話だそうだ。それと自分の身は自分で護るようにとのことだ。で報酬だが、銀貨1枚だとのことだ。」
「・・・アルベルトさん、これ、舐めてますよね。」
「一応、これだと厳しいと伝えたのだが、王子側は『王族と一緒に行動できる栄誉の上、報酬まででるのだぞ。』ということでな。」
王子側もひどいが、この条件で話を持ってくるギルドにも正直呆れた。
「本当にこれで引き受けると? そう考えておたくはこれを私に持ってきたと?」
敢えて名前を呼ばずに殺気をこめて問い詰める。本当にこの条件で納得してこちらに持ってきたのなら、この冒険者ギルドもどうしようもない組織と判断し、敵対も辞さないつもりだ。このエルフも殺気に気付いたのか全身から汗が出てきていた。
「す、済まない。い、一応向こうの条件を伝えただけなのだ。条件が不満なら話に応ずるということにはなっているのだ。それと、向こうにはポーター役の冒険者ランクは伝えないことになっているからどうしてもこうなってしまうんだ。」
「では、依頼側の担当者を交えて改めて話をしましょうかね。ダンジョンの難易度、依頼する日数、もちろん、私の役割と報酬について。ああ、あと向こうの冒険者ランクも把握しておきたいですね。」
殺気を消さずにこちらの意見を伝えた。正直気が乗らない、というかやりたくない依頼だったから沸点がかなり低くなるのは自分でもわかっていたが、ボンクラ王子と一緒に行動しても汚名こそついても決して名誉にはならない。そんなので栄誉なんてあるのか?
「わ、わかった。担当者も交えて改めてその話は詰めていくことにする。」
「承知しました。それで、いつ私はこちらに伺えばよろしいので?」
「向こうと話をして改めて伝えるようにする。恐らく明日になるけどそれでいいか?」
「ええ、明日は予定を開けておきますので、それで構いませんよ。」
「では、向こうの都合が決まったら、伝えるようにする、それでいいか?」
「はい、それで。今は王宮でお世話になっておりますので、そちらに伝えてくれれば大丈夫ですので。」
そう言って殺気を引っ込めてからギルド長室を出た。1階に降りると、いつもは騒がしいギルドがシーンとしていた。私の姿を見たアンジェリカさんが話しかけてきた。
「アイスさん、もの凄い殺気がしたのですが、何かあったのですか?」
「ええ、ちょっとね。ここで話すのも何ですから、討伐に向かいながら話すとしましょうか。」
「え、ええ。」
「ところで、何の依頼を受けましたか?」
「オーガの被害が出てきているということで、オーガの討伐ですわ。」
「ほう、オーガですか。私はフォレストオーガは見たことあるのですが、通常種となると初めてですね。強そうな名前をしているのですが、強いのですか?」
「ええ、オークとは比べものになりませんわね。けど、新しい装備を試すのには丁度いい相手かもしれませんので。」
「承知しました。たくさん倒せるといいのですが。」
「ですわね。張り切って参りましょう。」
アンジェリカさんの号令でギルドを出る。
「ところでオーガはどの辺に出現するのですか?」
「ギルドの話だと、こちらの方角から発見されたとのことですわ。」
その方角は以前大量のミノタウロスがいたところだ。うーん、そこって強めの敵が出現するエリアなのか。とりあえず多めに出現することを願いますかね。
「アンジェリカさん、オーガというものは食べられるのですか?」
「申し訳ありません、わたくしにはわかりかねますわ。」
「そうですか、食べられるといいのですがね。」
「アイスさん、オーガは美味しくないそうですよ。」
「そうなの? ジェミニはどこでそれを?」
「以前近くに住んでいたオーガさんに聞いたです。あ、アイスさん、今、同じオーガなのにって思ったですよね? わたしも同じように思ったのですが、フォレストオーガと通常のオーガは異なるらしく、普通に攻めたり攻められたりといったことがあるです。フォレストオーガさん達って普段は集団で行動することはないのですが、負けることはなくても、一々蹴散らすのが面倒だからって集落を築いたらしいです。」
「なるほど。味覚が違うことも考えられるけど、参考にはしますか。」
「アイスさん、肉はダメでも皮や角は需要があるからね。」
「そうなんですね。でも、王都のギルドには卸しませんけどね。」
「あ、そういえば、ギルドで何かあったのですか? もの凄い殺気を感じたのですが。」
「ああ、その件ですか。それはですね、あまりにもふざけた内容を提示されて、それをそのままこちらに提示してきたギルド長に殺意が芽生えましてね。まあ、正直やりたくもない依頼だったから沸点が低かったというのは否定できませんが。」
そう言って内容を伝えたところ、戦姫の3人は呆れていた。恐らく、条件のショボさもあったと思うが、この程度であそこまでの殺気を放った私に対してもそうなのだろう。
「シャー!」
マーブルの索敵センサーに反応したらしい。一応こちらも気配探知しているんだけどなあ、どこまで高性能になっていくのだろう。ってか、勝てる日は来るのか? とか考えつつ進んでいくと、ようやく私の探知にも反応があった。これでもかなりの距離があるんだけど、、、。
「敵の気配を探知。恐らくオーガだと思います。」
「ええっ? もう気配つかんだの? 私はまだ全くわからないのに?」
セイラさんが驚く。そう、凄腕のスカウトでもまだ探知できない距離から私達は探知している。マーブルのチートっぷりがわかるというものだ。流石は私の自慢の猫。可愛くて、強くて、頼りになる、で、可愛い、2度目になってしまったがこれが重要。いい歳こいたオッサンでもメロメロだ。まあ、それはさておき、一体どのくらいの数いるかだ。15、いや20弱か。もう少し進めばはっきりと数を把握できるな。どちらにしても腕試しには丁度いいかもしれないな。
さらに進んだところで、セイラさんの気配探知に反応があったようだ。これでも結構離れている。
「あ、ようやくわかった。アイスさん、どれだけ凄いの?」
「私の誇れる数少ない技能ですからね。でも、マーブルはそれよりも早く探知しておりますけどね。」
「う、上には上がいるのね、、、。」
「残念ながら、そういうことなのです。」
「ところで、ジェミニちゃんはどうなのかな? 探知しているのかな?」
「わたしは、大体セイラ殿と同じくらいですね。基本的にはマーブル殿やアイスさんが索敵をしてくれるからあまりやらないけど。」
「・・・だそうですよ。」
セイラさんはマーブルの言葉がわからないので通訳して答えた。
「ふーん、そうなんだ。でも、ジェミニちゃんと同じくらいというだけでも私もなかなかのものよね。」
「そうですね。ジェミニもSクラスの魔物ですからそこは十分誇れると思いますよ。」
「アイスさんのせいで自信を失いかけてたけど、その一言で頑張れそうだよ。」
「えーーーーっ、、、、。」
そんな遣り取りをしながら更に進んでいく。そろそろ戦闘準備をした方がいいかな。恐らくもうすぐ向こうもこちらの存在に気付くはず。人数的にこちらの方が少ないから問題なくこちらに攻撃してくるはず。
「では、そろそろ戦闘準備に入りたいと思います。」
「アイス隊長、指示をお願いいたしますわね。」
「承知しました。今回の敵はオーガで、数は18体ほどです。正直作戦という作戦はありませんが、戦姫の新しい武器を試すのが目的ですので、戦姫の3人は思い思いに敵を倒してください。私やマーブル隊員、ジェミニ隊員は戦姫が撃ち漏らした敵を倒しますが、それではつまらないので一体だけは撃ち漏らし以外を倒していいこととします。ライム隊員とオニキス隊員はいつも通り、戦姫の護衛で。とはいえ、今回は出番がありませんが、素材を綺麗にするという最重要任務が控えておりますので、その時は大活躍してもらいますよ。」
全員が敬礼で応える。その間にもオーガ達との距離は近づいている。オーガ達はようやくこちらに気付いて戦闘態勢にはいりつつ、こちらを包囲してきている。
結果と言えば、全く相手にならなかった。戦姫の3人はもう少し手こずると思っていたらしく、問題なく倒せていたことにビックリしていた。私達が3体、戦姫は残りの15体を倒して終了した。戦闘終了の後は解体の時間だ。ジェミニがアッサリと解体して、ライムとオニキスで綺麗にしていく。掛かった時間は30分ちょい。ジェミニの牙の切れ味って凄いなとつくづく感じた。
オーガの肉を何種類かの調理方法で試してみたが、結論から言うと「食べられなくはない」という感じだった。何せ筋肉ばかりなのだ。こういった肉はしばらくタレに漬けてジャーキーにするに限る。意外といけるかもしれない。ジャーキーについては後日ということで、皮や角は戦姫に、肉は私達がもらうことになった。肉はいらないし、普段から多めに分けてもらっているから、ということでこういった話になった。とはいえ、できあがったら真っ先に試食させてもらうという条件がついたが。まあ、これはアリだろう。
戦姫の3人は新装備について満足どころか、もう他の武器が使えないと嬉しさ半分寂しさ半分といった感じだった。とはいえ、専用装備だし問題ないのでは、と思った。こっちはバンカー以外使いこなせないんですけどね。それと比べたら贅沢というものですよ。
結果に満足しながら、王都へと戻っていった。
さてと、戦姫の護衛任務は今日までとなっている。別に特別に任務解除とかではなく普通に契約期間である1ヶ月の最終日が今日なだけである。といっても、戦姫、正確にはアンジェリカさんの護衛だが、王宮にいる間は特に護衛する必要はないので、特に出かけることがない場合は自由にさせてもらっている。そんなことを考えていたら、セイラさんが尋ねてきた。
「アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん、おはよう。」
「セイラさん、お早うございます。こんなに早くどうしました?」
「えーっと、私達の護衛任務って今日で最終日だよね?」
「そうですね、そういう契約でしたからね。」
「本来は期間を延長したかったんだけど、あの馬鹿お、じゃなかった、アテイン第2王子の依頼のせいでそれもしばらく無理になってしまったからなあ。本当にあいつ、使えない。って違った。アンジェリーナ様が今日が最終日だから、1日だけどどこかで討伐任務を受けるから護衛よろしくって。」
「なるほど、承知しました。依頼主を待たせるわけにはいかないので、早速冒険者ギルドに向かいますので、その後でゆっくりと来て下さい。」
「その必要はないよ。王女殿下が一緒に行こうって。」
「一緒にクエを受けるだけでしたら、それでいいと思うのですが、第2王子のパーティのポーター役としての依頼についての話もあるので、時間が掛かるかもしれませんので、お待たせするわけにもいきませんので。」
「それについては大丈夫。アイスさんが話をしている間に、マーブルちゃん達を私達に預けてくれれば。」
なるほど、そういうことか。アンジェリカさん達もマーブル達をモフりたいと、まあ、戦姫の3人だったらマーブル達も問題ないかな。
「わかりました、そういうことでしたら一緒に行きましょうか。」
「流石はアイスさん、話がわかるね。言わなくてもこちらの意図がバレたか。でも、了解してくれたっていうことは、それだけ私達も信用してくれているってことだよね。」
「そういうことです。」
「じゃあ、王女殿下に報告して来るから、その間に準備しておいてね。」
そう言ってセイラさんは退出した。メイドさんが多少不満げに話してくる。
「えーっ、もう出発しちゃんですか? 私ももっとマーブルちゃん達と遊びたいです、、、。」
いや、気持ちはわかるが、あんた仕事あるでしょうに、、、。
ぶつくさ言いながら片付けなどの仕事をこなすメイドさんに少し、本当に少しだけ呆れながら準備を済ませる、といっても、こちらの支度はそれほどかからない。マーブルとジェミニには従魔用の首輪を、ライムには帽子をかぶせるだけだ。私の場合もバーニィなどを装着するだけ。もちろんお揃いのウサギの毛皮だ。
ほとんど待つことなく、アンジェリカさん達がこちらの部屋に来た。
「アイスさん、ご機嫌よう。今日もよろしくお願いしますわね。」
「アンジェリカさん、ルカさん、お早うございます。セイラさんも改めてお早うございます。」
挨拶を交わして王宮を出て冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドに入ると視線がこちらに集中する。いつ入っても戦姫の3人は注目の的だ。戦姫をぼうっと眺める者もいれば、一緒にいる私を殺さんばかりに睨んでくる者もいる。ある意味様式美と化してしまっている。討伐内容はアンジェリカさん達が選ぶからその間にアテイン王子の依頼について詰めてくるように言われたので、マーブル達を彼女に預け私だけ手続きの窓口へと向かい、アンジェリカさん達は受注依頼を探しに行った。
手続き窓口に向かい、ギルドカードを見せて指名依頼のクエストを確認する。
「Cランクの冒険者、アイスさんですね。今回の指名依頼ですが、これについてはギルドマスターから話があるそうなので、2階のギルド長室に行って詳しい話を聞いてください。」
ギルドカードを受け取り、2階のギルド長室へと向かった。部屋に入るとアルベルトさんがいた。
「おう、アイスさん、呼び出して済まないね。こちらに座ってもらえないかな。あと、申し訳ないけど、これが終わるまで待っててほしい。すぐに終わらせるから。」
アルベルトさんに示された席に座って待機すること5分ほど。書類はまだたくさん残っていたが、一段落ついたらしくこちらに来た。
「待たせたね。申し訳ない。途中で中断すると最初からやり直しになってしまうくらい面倒なものだったから勘弁して欲しい。」
「そういうものって案外ありますよね。こちらは特に時間も指定してなかったですし、それは致し方ないかと。」
「そう言ってくれると助かる。さてと、早速だが本題といこう。今回の指名依頼についてはある程度話を聞いていると思うが、具体的にはアテイン第2王子が王宮のダンジョンに挑むそうで、そのパーティの運び屋だ。」
「はい、そこまでは国王陛下から話は伺っておりますが、それ以上については何も。」
「そうか。では、向こうの条件を伝えると、装備以外、つまり宿泊道具や食料、戦利品についての荷物運びおよび食事や宿泊準備などの身の回りの世話だそうだ。それと自分の身は自分で護るようにとのことだ。で報酬だが、銀貨1枚だとのことだ。」
「・・・アルベルトさん、これ、舐めてますよね。」
「一応、これだと厳しいと伝えたのだが、王子側は『王族と一緒に行動できる栄誉の上、報酬まででるのだぞ。』ということでな。」
王子側もひどいが、この条件で話を持ってくるギルドにも正直呆れた。
「本当にこれで引き受けると? そう考えておたくはこれを私に持ってきたと?」
敢えて名前を呼ばずに殺気をこめて問い詰める。本当にこの条件で納得してこちらに持ってきたのなら、この冒険者ギルドもどうしようもない組織と判断し、敵対も辞さないつもりだ。このエルフも殺気に気付いたのか全身から汗が出てきていた。
「す、済まない。い、一応向こうの条件を伝えただけなのだ。条件が不満なら話に応ずるということにはなっているのだ。それと、向こうにはポーター役の冒険者ランクは伝えないことになっているからどうしてもこうなってしまうんだ。」
「では、依頼側の担当者を交えて改めて話をしましょうかね。ダンジョンの難易度、依頼する日数、もちろん、私の役割と報酬について。ああ、あと向こうの冒険者ランクも把握しておきたいですね。」
殺気を消さずにこちらの意見を伝えた。正直気が乗らない、というかやりたくない依頼だったから沸点がかなり低くなるのは自分でもわかっていたが、ボンクラ王子と一緒に行動しても汚名こそついても決して名誉にはならない。そんなので栄誉なんてあるのか?
「わ、わかった。担当者も交えて改めてその話は詰めていくことにする。」
「承知しました。それで、いつ私はこちらに伺えばよろしいので?」
「向こうと話をして改めて伝えるようにする。恐らく明日になるけどそれでいいか?」
「ええ、明日は予定を開けておきますので、それで構いませんよ。」
「では、向こうの都合が決まったら、伝えるようにする、それでいいか?」
「はい、それで。今は王宮でお世話になっておりますので、そちらに伝えてくれれば大丈夫ですので。」
そう言って殺気を引っ込めてからギルド長室を出た。1階に降りると、いつもは騒がしいギルドがシーンとしていた。私の姿を見たアンジェリカさんが話しかけてきた。
「アイスさん、もの凄い殺気がしたのですが、何かあったのですか?」
「ええ、ちょっとね。ここで話すのも何ですから、討伐に向かいながら話すとしましょうか。」
「え、ええ。」
「ところで、何の依頼を受けましたか?」
「オーガの被害が出てきているということで、オーガの討伐ですわ。」
「ほう、オーガですか。私はフォレストオーガは見たことあるのですが、通常種となると初めてですね。強そうな名前をしているのですが、強いのですか?」
「ええ、オークとは比べものになりませんわね。けど、新しい装備を試すのには丁度いい相手かもしれませんので。」
「承知しました。たくさん倒せるといいのですが。」
「ですわね。張り切って参りましょう。」
アンジェリカさんの号令でギルドを出る。
「ところでオーガはどの辺に出現するのですか?」
「ギルドの話だと、こちらの方角から発見されたとのことですわ。」
その方角は以前大量のミノタウロスがいたところだ。うーん、そこって強めの敵が出現するエリアなのか。とりあえず多めに出現することを願いますかね。
「アンジェリカさん、オーガというものは食べられるのですか?」
「申し訳ありません、わたくしにはわかりかねますわ。」
「そうですか、食べられるといいのですがね。」
「アイスさん、オーガは美味しくないそうですよ。」
「そうなの? ジェミニはどこでそれを?」
「以前近くに住んでいたオーガさんに聞いたです。あ、アイスさん、今、同じオーガなのにって思ったですよね? わたしも同じように思ったのですが、フォレストオーガと通常のオーガは異なるらしく、普通に攻めたり攻められたりといったことがあるです。フォレストオーガさん達って普段は集団で行動することはないのですが、負けることはなくても、一々蹴散らすのが面倒だからって集落を築いたらしいです。」
「なるほど。味覚が違うことも考えられるけど、参考にはしますか。」
「アイスさん、肉はダメでも皮や角は需要があるからね。」
「そうなんですね。でも、王都のギルドには卸しませんけどね。」
「あ、そういえば、ギルドで何かあったのですか? もの凄い殺気を感じたのですが。」
「ああ、その件ですか。それはですね、あまりにもふざけた内容を提示されて、それをそのままこちらに提示してきたギルド長に殺意が芽生えましてね。まあ、正直やりたくもない依頼だったから沸点が低かったというのは否定できませんが。」
そう言って内容を伝えたところ、戦姫の3人は呆れていた。恐らく、条件のショボさもあったと思うが、この程度であそこまでの殺気を放った私に対してもそうなのだろう。
「シャー!」
マーブルの索敵センサーに反応したらしい。一応こちらも気配探知しているんだけどなあ、どこまで高性能になっていくのだろう。ってか、勝てる日は来るのか? とか考えつつ進んでいくと、ようやく私の探知にも反応があった。これでもかなりの距離があるんだけど、、、。
「敵の気配を探知。恐らくオーガだと思います。」
「ええっ? もう気配つかんだの? 私はまだ全くわからないのに?」
セイラさんが驚く。そう、凄腕のスカウトでもまだ探知できない距離から私達は探知している。マーブルのチートっぷりがわかるというものだ。流石は私の自慢の猫。可愛くて、強くて、頼りになる、で、可愛い、2度目になってしまったがこれが重要。いい歳こいたオッサンでもメロメロだ。まあ、それはさておき、一体どのくらいの数いるかだ。15、いや20弱か。もう少し進めばはっきりと数を把握できるな。どちらにしても腕試しには丁度いいかもしれないな。
さらに進んだところで、セイラさんの気配探知に反応があったようだ。これでも結構離れている。
「あ、ようやくわかった。アイスさん、どれだけ凄いの?」
「私の誇れる数少ない技能ですからね。でも、マーブルはそれよりも早く探知しておりますけどね。」
「う、上には上がいるのね、、、。」
「残念ながら、そういうことなのです。」
「ところで、ジェミニちゃんはどうなのかな? 探知しているのかな?」
「わたしは、大体セイラ殿と同じくらいですね。基本的にはマーブル殿やアイスさんが索敵をしてくれるからあまりやらないけど。」
「・・・だそうですよ。」
セイラさんはマーブルの言葉がわからないので通訳して答えた。
「ふーん、そうなんだ。でも、ジェミニちゃんと同じくらいというだけでも私もなかなかのものよね。」
「そうですね。ジェミニもSクラスの魔物ですからそこは十分誇れると思いますよ。」
「アイスさんのせいで自信を失いかけてたけど、その一言で頑張れそうだよ。」
「えーーーーっ、、、、。」
そんな遣り取りをしながら更に進んでいく。そろそろ戦闘準備をした方がいいかな。恐らくもうすぐ向こうもこちらの存在に気付くはず。人数的にこちらの方が少ないから問題なくこちらに攻撃してくるはず。
「では、そろそろ戦闘準備に入りたいと思います。」
「アイス隊長、指示をお願いいたしますわね。」
「承知しました。今回の敵はオーガで、数は18体ほどです。正直作戦という作戦はありませんが、戦姫の新しい武器を試すのが目的ですので、戦姫の3人は思い思いに敵を倒してください。私やマーブル隊員、ジェミニ隊員は戦姫が撃ち漏らした敵を倒しますが、それではつまらないので一体だけは撃ち漏らし以外を倒していいこととします。ライム隊員とオニキス隊員はいつも通り、戦姫の護衛で。とはいえ、今回は出番がありませんが、素材を綺麗にするという最重要任務が控えておりますので、その時は大活躍してもらいますよ。」
全員が敬礼で応える。その間にもオーガ達との距離は近づいている。オーガ達はようやくこちらに気付いて戦闘態勢にはいりつつ、こちらを包囲してきている。
結果と言えば、全く相手にならなかった。戦姫の3人はもう少し手こずると思っていたらしく、問題なく倒せていたことにビックリしていた。私達が3体、戦姫は残りの15体を倒して終了した。戦闘終了の後は解体の時間だ。ジェミニがアッサリと解体して、ライムとオニキスで綺麗にしていく。掛かった時間は30分ちょい。ジェミニの牙の切れ味って凄いなとつくづく感じた。
オーガの肉を何種類かの調理方法で試してみたが、結論から言うと「食べられなくはない」という感じだった。何せ筋肉ばかりなのだ。こういった肉はしばらくタレに漬けてジャーキーにするに限る。意外といけるかもしれない。ジャーキーについては後日ということで、皮や角は戦姫に、肉は私達がもらうことになった。肉はいらないし、普段から多めに分けてもらっているから、ということでこういった話になった。とはいえ、できあがったら真っ先に試食させてもらうという条件がついたが。まあ、これはアリだろう。
戦姫の3人は新装備について満足どころか、もう他の武器が使えないと嬉しさ半分寂しさ半分といった感じだった。とはいえ、専用装備だし問題ないのでは、と思った。こっちはバンカー以外使いこなせないんですけどね。それと比べたら贅沢というものですよ。
結果に満足しながら、王都へと戻っていった。
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プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
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