20 / 115
第二話 あなたのぜんぶ
あなたのぜんぶ(1)
しおりを挟む
おつかれさま、そこが俺の家だよ──との言葉は、日本史BL検定対策講座講師・花咲蓮らしくのどかで穏やかな口調であった。
その言葉にモブ子らは一斉に足をとめる。
見上げた表情は一様に引きつっていた。
「……蓮ちんは、お坊ちゃまなんだとばかり思ってたんだが」
彼女らの目の前。
色あせた屋根瓦は年月の重みを増して、二階建てのアパートを今しも押し潰そうとしている。
「……蓮ちんのおうちは洋風の豪邸で、庭にはガーベラの花が咲いていて、大きな噴水があるんだと思ってたんだが」
築何年経つのであろうか。
すれ違うことも困難な細い外廊下。
玄関扉は薄いベニヤ板で造られており、扉と壁の間に隙間が空いているのが分かる。
扉の数から、古ぼけたアパートは各階4軒ずつ、計8部屋あると数えられた。
「……蓮ちん家、執事とかいてフランス語を喋ってるのかと思ってたんだが」
──蓮ちんのぜんぶを知りたくて付いてきたのにと、モブ子三人は一斉に叫んだ。
すべての夢破れたと、壮絶な表情で見やるボロアパート。
今まさに、屋根瓦から土塊がパラパラと落ちた。
「やだなぁ、そんなわけないじゃない。このあいだまで職にあぶれてた一研究者だよ、俺は」
「はは……っ」
蓮らしいとぼけた返答にモブ子らは顔を見合わせる。
──帰るか?
──いや、ここで帰るのはあまりに露骨すぎないか?
鋭い視線をかわした結果、彼女らはこう結論づけたようだ。
──とりあえず蓮ちん家(内部)を見てみたい、と。
当の蓮は、ボロアパート1階端のベニヤ扉の前で格闘している。
立て付けが悪く鍵を開けるのにコツがいるらしい。
ガチャっと大きな音がしたところで、体重を乗せるようにして一気に扉を押し開いた。
「ふぅ……ようこそ、遠慮はいらないからね」
ようやく開いた扉に、元より遠慮などするはずもないモブ子らが押し入る。
その言葉にモブ子らは一斉に足をとめる。
見上げた表情は一様に引きつっていた。
「……蓮ちんは、お坊ちゃまなんだとばかり思ってたんだが」
彼女らの目の前。
色あせた屋根瓦は年月の重みを増して、二階建てのアパートを今しも押し潰そうとしている。
「……蓮ちんのおうちは洋風の豪邸で、庭にはガーベラの花が咲いていて、大きな噴水があるんだと思ってたんだが」
築何年経つのであろうか。
すれ違うことも困難な細い外廊下。
玄関扉は薄いベニヤ板で造られており、扉と壁の間に隙間が空いているのが分かる。
扉の数から、古ぼけたアパートは各階4軒ずつ、計8部屋あると数えられた。
「……蓮ちん家、執事とかいてフランス語を喋ってるのかと思ってたんだが」
──蓮ちんのぜんぶを知りたくて付いてきたのにと、モブ子三人は一斉に叫んだ。
すべての夢破れたと、壮絶な表情で見やるボロアパート。
今まさに、屋根瓦から土塊がパラパラと落ちた。
「やだなぁ、そんなわけないじゃない。このあいだまで職にあぶれてた一研究者だよ、俺は」
「はは……っ」
蓮らしいとぼけた返答にモブ子らは顔を見合わせる。
──帰るか?
──いや、ここで帰るのはあまりに露骨すぎないか?
鋭い視線をかわした結果、彼女らはこう結論づけたようだ。
──とりあえず蓮ちん家(内部)を見てみたい、と。
当の蓮は、ボロアパート1階端のベニヤ扉の前で格闘している。
立て付けが悪く鍵を開けるのにコツがいるらしい。
ガチャっと大きな音がしたところで、体重を乗せるようにして一気に扉を押し開いた。
「ふぅ……ようこそ、遠慮はいらないからね」
ようやく開いた扉に、元より遠慮などするはずもないモブ子らが押し入る。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
まさか「好き」とは思うまい
和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり……
態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語
*2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。
記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た
キトー
BL
【BLです】
「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」
無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。
そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。
もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。
記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。
一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。
あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。
【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】
反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。
ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる