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3章 天国からの地獄ルート、罪深ルート、現実は非情ルート
5話 天国からの地獄ルート 5
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僕は自室に向かった。彼女にこの会話を聞いては欲しくないから。彼女もそれを悟ったように何も言わなかった。
「ふぅ。よし、がんばれ、僕」
連絡履歴から一番上の番号をタップする。彼女から、あの電話以来電話はしてないとのことを聞いた。
少しリズミカルな音の後、聞き覚えのあることが電話の向こうから聞こえてきた。
「はい。桜坂です」
この声を聞くと、背筋がぞくりと震える。拒否反応が起こってるかのように、震えが止まらない。
でも、向き合うと決めたから。
僕は、もう逃げない。
「僕だよ。陽縞凱だよ」
「陽、縞くん、なの?」
「そうだよ。美紗から君から電話があったと聞いてね。良い機会だからケリを付けようってね」
「久し振りだね、陽縞くん」
「そうだね」
「元気?」
「うん。桜坂は?」
「私も元気だよ」
「そっか」
桜坂は少しおっとりとした喋り方が特徴で、話してるだけで癒される。容姿もそれに伴ってか、とても整ってると言える。一番のポイントは目が少したれ目と言うことだろうか。桜坂は運動神経抜群だった。勉強は少し苦手で、本性を知る前は一緒に勉強したこともある。と言っても小学生のときの記憶だ。今もそうとは限らない。
「私も話したいことがあったんだぁ」
「何?」
僕に緊張が走った。口調が少し冷たく、ぶっきらぼうな返しとなってしまった。でも、それぐらい余裕がないのだ。
「私のことは後で良いんだ。それよりも、陽縞くんのお話しって何かな?」
そういう、ちょっとした気遣いが出来るのも、ポイントが高いのだろう。小学生のときにも、相当モテていたから。今でもモテるのではないだろうか?まあ、僕には関係無いけど。
「小学生のときの自分と決別するためさ」
「………」
「桜坂。君は自分がやったことを覚えているかい?」
「……………うん」
「なんであんなことをしたのかなんて、聞きはしない。大方予想はできている。僕が知りたいのは、なぜしたのかではなく、あの行動に意味があったのか、と言うことだよ」
僕の予想が当たっていれば、意味はない。
今考えても意味不明だからこそ、この質問をしたい。
すると、彼女は……
「ごめんなさい…………」
「………」
電話の向こうからは泣き声らしきものも聞こえる。これが本当かどうかは分からない。
「僕が、どれだけ傷付いたと思っているの?」
「ごめんなさい…………」
彼女はひたすらに謝った。それでも、僕には分からないのだ。
「今更謝ってもらっても、意味はないよ。これ以上は話しても無駄そうだね。切るよ」
何も得ることはできなかった。しかし、少しは前に進めた気がした。だが、そのとき、初めて彼女は焦ったように声をあげた。
「ま、まって!私の話しも聞いて………」
少しずつ小さくなる声に、少しの罪悪感を感じ、僕は切らなかった。いや、切ることが出来なかったのだ。
「私、貴方のことが、好きなの……」
「はっ?急に何?」
突拍子も無いことを。
好きだと?ならば、なぜあんなことを?僕の予想は完全に外れたようだ。僕の予想としては、ただ僕の歪んだ顔を見たいのかなって思った。でも、違ったみたいだね。
「理由は良いよ。君の行動は矛盾している。なぜ、最後にあんなことを?」
「ごめんなさい………」
これ以上は本当に無理そうだ。
「君は、学校でいじめられている僕に、唯一話し掛けてくれた人だ。休みの日も一緒に遊んだこともあったよね。僕は嬉しいかったよ。この場だから言えることだけど、好きだったよ。それに、単純に嬉しかったんだ。それでも、君は……………」
ここを思い出すと、少し心がキュッとなって、嫌だ。
「僕は、君を信用していたのに、見捨てたんだよ」
もし、表現するならば、天国からの地獄だった。あの後、もっといじめが過激化した。僕は、小学校卒業まで耐えることができた。
だが、僕が耐えられたのは、彼女の言葉があったと言うのも事実。
そして、彼女は言った………。たった一言。
「ごめんなさい」
そう。結局、何も言わなかった。これ以上は時間の問題だね。
「切るから」
「あっ……」
有無を言わせぬ速度で切った。何か言っていたが、気にならない。
「はぁ。なんかいいや」
僕は、美紗とはキスをしようなんて気にはなれず、『クロノス』と五回唱えた。
~~~~~~~~~~~~~~~
インパクトとしては少し弱かったですね。それに、そこまで伝わらないような………。まあ、凱君に何があったのかは回想でいつかやりますよ。お楽しみに。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
「ふぅ。よし、がんばれ、僕」
連絡履歴から一番上の番号をタップする。彼女から、あの電話以来電話はしてないとのことを聞いた。
少しリズミカルな音の後、聞き覚えのあることが電話の向こうから聞こえてきた。
「はい。桜坂です」
この声を聞くと、背筋がぞくりと震える。拒否反応が起こってるかのように、震えが止まらない。
でも、向き合うと決めたから。
僕は、もう逃げない。
「僕だよ。陽縞凱だよ」
「陽、縞くん、なの?」
「そうだよ。美紗から君から電話があったと聞いてね。良い機会だからケリを付けようってね」
「久し振りだね、陽縞くん」
「そうだね」
「元気?」
「うん。桜坂は?」
「私も元気だよ」
「そっか」
桜坂は少しおっとりとした喋り方が特徴で、話してるだけで癒される。容姿もそれに伴ってか、とても整ってると言える。一番のポイントは目が少したれ目と言うことだろうか。桜坂は運動神経抜群だった。勉強は少し苦手で、本性を知る前は一緒に勉強したこともある。と言っても小学生のときの記憶だ。今もそうとは限らない。
「私も話したいことがあったんだぁ」
「何?」
僕に緊張が走った。口調が少し冷たく、ぶっきらぼうな返しとなってしまった。でも、それぐらい余裕がないのだ。
「私のことは後で良いんだ。それよりも、陽縞くんのお話しって何かな?」
そういう、ちょっとした気遣いが出来るのも、ポイントが高いのだろう。小学生のときにも、相当モテていたから。今でもモテるのではないだろうか?まあ、僕には関係無いけど。
「小学生のときの自分と決別するためさ」
「………」
「桜坂。君は自分がやったことを覚えているかい?」
「……………うん」
「なんであんなことをしたのかなんて、聞きはしない。大方予想はできている。僕が知りたいのは、なぜしたのかではなく、あの行動に意味があったのか、と言うことだよ」
僕の予想が当たっていれば、意味はない。
今考えても意味不明だからこそ、この質問をしたい。
すると、彼女は……
「ごめんなさい…………」
「………」
電話の向こうからは泣き声らしきものも聞こえる。これが本当かどうかは分からない。
「僕が、どれだけ傷付いたと思っているの?」
「ごめんなさい…………」
彼女はひたすらに謝った。それでも、僕には分からないのだ。
「今更謝ってもらっても、意味はないよ。これ以上は話しても無駄そうだね。切るよ」
何も得ることはできなかった。しかし、少しは前に進めた気がした。だが、そのとき、初めて彼女は焦ったように声をあげた。
「ま、まって!私の話しも聞いて………」
少しずつ小さくなる声に、少しの罪悪感を感じ、僕は切らなかった。いや、切ることが出来なかったのだ。
「私、貴方のことが、好きなの……」
「はっ?急に何?」
突拍子も無いことを。
好きだと?ならば、なぜあんなことを?僕の予想は完全に外れたようだ。僕の予想としては、ただ僕の歪んだ顔を見たいのかなって思った。でも、違ったみたいだね。
「理由は良いよ。君の行動は矛盾している。なぜ、最後にあんなことを?」
「ごめんなさい………」
これ以上は本当に無理そうだ。
「君は、学校でいじめられている僕に、唯一話し掛けてくれた人だ。休みの日も一緒に遊んだこともあったよね。僕は嬉しいかったよ。この場だから言えることだけど、好きだったよ。それに、単純に嬉しかったんだ。それでも、君は……………」
ここを思い出すと、少し心がキュッとなって、嫌だ。
「僕は、君を信用していたのに、見捨てたんだよ」
もし、表現するならば、天国からの地獄だった。あの後、もっといじめが過激化した。僕は、小学校卒業まで耐えることができた。
だが、僕が耐えられたのは、彼女の言葉があったと言うのも事実。
そして、彼女は言った………。たった一言。
「ごめんなさい」
そう。結局、何も言わなかった。これ以上は時間の問題だね。
「切るから」
「あっ……」
有無を言わせぬ速度で切った。何か言っていたが、気にならない。
「はぁ。なんかいいや」
僕は、美紗とはキスをしようなんて気にはなれず、『クロノス』と五回唱えた。
~~~~~~~~~~~~~~~
インパクトとしては少し弱かったですね。それに、そこまで伝わらないような………。まあ、凱君に何があったのかは回想でいつかやりますよ。お楽しみに。
面白いと思っていただけたらこれからもよろしくお願いします。
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