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08 ■Reincarnation04■
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ココリーネ嬢は、私の手を引っ張って、少しはなれたところへ連れて行った。
ブラウニーの方を見ると、リンデンに熱心に口説かれているようでげんなりした顔をしている。
ふふ、変なの。
この辺でよろしいかしら……と呟いたココリーネ嬢は、さっきのドジっ娘はどこへやら、貴族の娘らしいきれいなカーテシーをした。
「はじめまして、プラム様。わたくし、ココリーネ・ブルボンスと申します」
「えっと、どうも、プラムです。少しは落ち着かれました?」
ちなみに私は孤児なのでファーストネームしかない。
孤児は教会を出る時に引取先に行く場合は引取先になった親のファミリーネームをもらう。
私やブラウニーのように独立して生きていく場合は、自分で決めて役所に申請する。
そういえばそのあたりも決めてなかったなあ。
「ええ」
ココリーネ嬢は花がほころぶようにニコリと笑った。可愛い……。
先程大爆笑したせいか、緊張がほぐれたようだ。
「それで、私に用事ってなんですか?初対面かと思うのですが……」
「ええ、初対面ですわ。それでお伝えしたいということ、なのですが……」
ココリーネ嬢はすう、と息をすいこんだ。
「あの、わたくしを殺さないでくださいまし!」
「!?」
え、今なんていった?
私の耳がおかしくなければ、殺さないでって言われた気がするんだけど!
「大事なことなのでもう一度いいますね。
わたくしを殺さないでくださいまし…おねがいします!」
もう一度言ったあ!
「わたくし、あなたのライバルである公爵令嬢という設定であるがため、攻略対象である王子と婚約者になってしまいましたが、特に王妃になりたいとかありませんので、時期が来たらかならずこの座はお譲りいたしますので! あなたの許しがあれば、きっとわたくし、きっと生き残れますの!!」
先程までのモジモジ小動物どこいった! 急に饒舌になった!
そしてライバルってなんだ?
何故私があなたを殺すんですか……?
「あの……あなた公爵令嬢って、貴族令嬢のてっぺんであらせられる令嬢じゃありません?
私みたいな孤児でも知ってますよ?そんな人と私がライバルになるわけが……ましてやころ」
「それがなるんですの!!」
有無を言わせない!
「そして……あろうことか、リンデン様はじめ、他の攻略対象も最近やたら私になついてしまい、
なんだかあなたが学園に来る前にハーレム化してしまいそうなんですの!!!
でも! これは本来すべてあなたが享受すべきもの!
……わたくし、あなたから盗ろうとか思ってませんのに、何故かこうなってしまって……っ」
意味がわからない言葉が次々彼女から出る……。
……いや。待てよ、これ、この感じどっかで……あ、そうだ。
「なんかシスター・イラに似てる……?」
「はい?」
祈るようにして目をギュッとつぶっていたココリーネ嬢が、私を見上げた。
小さい。可愛い。
「えっと、えっと。なんとか、なんとかあなたのゲームスタートまでにはお返しできるようにいたしますので!!! わたくし、悪役令嬢として生まれついてしまいましたが、あなたが学園にきても絶対絶対、いじめたりしませんので!!」
「……」
私はしばし思案して思い切って切り出した。
「あなたって、転生者ってやつですか? 前世をおぼえてるとかっていう……」
ココリーネ嬢の目が輝いた。
「はい! そうです! ひょっとしてプラム様も!?」
「……いいえ」
また、この手の人か……。
私は少し悶々とした気持ちになった。
でも、ブラウニーともう悩まないと約束したし、シスター・イラと話した後にも、また落ち込んだ事を私は反省して……
『今後、転生者を名乗る人が現れても動揺しない』……と自分に言い聞かせていた。
神父様いわく私は運命に勝たなきゃいけないんだ。
転生者の言う事に、もう惑わされない。
私がたまに視る『特別な夢』と同じで、たとえ知っていても回避できない時は回避できないんだし。
それなら自分の思う道を脇見しないで行くべきだ。
「えっとその……あなたが仰ってる返すっていうもの……返さなくていいですよ、ていうか元々、私のものかどうかなんて誰にもわからないですし。
私、学院とか行くつもりないですし……関係ないっていうか」
おそらく、攻略対象っていうのは、将来何人かいる私の運命の相手とやらなんだろう。
それにしてもハーレムってなんなのよ……将来の私の運命なんなのよ。
てか、リンデンもその攻略対象とやらなんだ。
私とリンデン……かけらも想像できない。
私のパートナーとして必要なのはブラウニーだけだ。
「ええっ!? 学園外ルートですの? ……でもそうだとしたら魔王が」
!?
なんかとんでもワードが聞こえた気がする!
何? そんな物語の悪者みたいなのもいるんですか、この世には。
そういえば聖書の授業で聞いたような聞かなかったような……寝ちゃってたかもしれない!
んっ!聞こえなかった事にしよう。
スルーよ、スルー!
「そもそもプラム様が学園にこないルートってあったかしら……。
それって大丈夫なのかしら、運命の強制力がどう働くのかしら……」
「運命の強制力?」
ちょっと気になって聞き返した。
「あ。えっと、そうですね……この世界には決まった運命があって、それに役割を与えられたキャラ……いえ、人間がそれに沿って行動しない場合、強制的にその道に戻そうとする運命の修正といいますか……そういうセオリーがあるといいますか……」
「……」
「わたくしなど……先程申し上げました、将来あなたをいじめないとかですの。
わたくしはもともと『あなたをいじめるように設定』されている役回りですので……運命の強制力を恐れています。例えば、わたくしはいじめるつもりはなくても、わたくしの周りの方があなたを貶めて、
その責任がわたくしに回ってくる、結局はわたくしがいじめた事になる…その果に断罪され死刑になる……とか想像にかたくないんですの」
だいたいわかってきた。
つまり、この世には使命を与えられた人間とそうでない人間がいるって事ね。
それで私が本来果たさなければならない重要な使命があるけれど、ブラウニーと添い遂げると役割全部放棄となってしわ寄せが起こり、この世が大変になる……ってかんじか。
『君は大きな運命を抱えてるのに、それを全部放り出してささやかな夢を叶える事にした』
『運命のほうが君が必要で追いかけてくるんだ』
まさに神父様が言っていたっけ……。
ん? 待てよ。
このココリーネ嬢は、私のポジションを奪いつつある、と言ってる。
これは……運命の強制力とやらが私が学園に行かない事を、彼女で穴埋めをしようとしてるのでは?
つまり、この子は本来私のライバルになる予定が、言葉は悪いがつまり、私の『代役』になりつつあるのではないだろうか。
もしそうなら、そのままやってくれないだろうか。
王妃はなりたくないって言ってるけど、見た感じその事以外はそのポジション、まんざらでもなさそうだし。
そんなに運命に抗うっていうなら、私と似た立場では?
王妃回避だけはなんとか頑張って頂いて。
その考えをココリーネ嬢に話すと難しそうな顔をした。
「わ、わたくしには荷が重いんですの……。
それに、わたくしでは最終的に魔王を倒せませんの……。
せめて、あなたがいつか目覚める高位の聖属性を…更に超える魔法がありませんと……。
ちなみに、わたくし、これっぽっちも魔力持ってません……」
いやああああ! 聞くんじゃなかったああああ!
『転生者の言うことに惑わされない』
はっ!
そうだ、そうだった。
もうこの話はやめよう。
プラムはクールに去るわよ。
「……そうなんですね。でも私は私の道を行きます。……あなたもあなたの思う道を進んでください。ご武運を」
私は踵をかえして、ブラウニーのところへ歩き始めた。
「そ、そんなぁ!! ですわ!!」
ごめんなさい。
足早にブラウニーのところにもどると、リンデンが逆にココリーネ嬢のところへ走っていく。
ココリーネ嬢は涙目だ。
これはまたややこしくなる。
「ブラウニー…」
「……事情は後で聞くからな。走るぞ」
またもや私達は猛ダッシュで街から逃げ出すことになった。
ああ……私の誕生日プレゼント買ってもらえなかった……。
ブラウニーの方を見ると、リンデンに熱心に口説かれているようでげんなりした顔をしている。
ふふ、変なの。
この辺でよろしいかしら……と呟いたココリーネ嬢は、さっきのドジっ娘はどこへやら、貴族の娘らしいきれいなカーテシーをした。
「はじめまして、プラム様。わたくし、ココリーネ・ブルボンスと申します」
「えっと、どうも、プラムです。少しは落ち着かれました?」
ちなみに私は孤児なのでファーストネームしかない。
孤児は教会を出る時に引取先に行く場合は引取先になった親のファミリーネームをもらう。
私やブラウニーのように独立して生きていく場合は、自分で決めて役所に申請する。
そういえばそのあたりも決めてなかったなあ。
「ええ」
ココリーネ嬢は花がほころぶようにニコリと笑った。可愛い……。
先程大爆笑したせいか、緊張がほぐれたようだ。
「それで、私に用事ってなんですか?初対面かと思うのですが……」
「ええ、初対面ですわ。それでお伝えしたいということ、なのですが……」
ココリーネ嬢はすう、と息をすいこんだ。
「あの、わたくしを殺さないでくださいまし!」
「!?」
え、今なんていった?
私の耳がおかしくなければ、殺さないでって言われた気がするんだけど!
「大事なことなのでもう一度いいますね。
わたくしを殺さないでくださいまし…おねがいします!」
もう一度言ったあ!
「わたくし、あなたのライバルである公爵令嬢という設定であるがため、攻略対象である王子と婚約者になってしまいましたが、特に王妃になりたいとかありませんので、時期が来たらかならずこの座はお譲りいたしますので! あなたの許しがあれば、きっとわたくし、きっと生き残れますの!!」
先程までのモジモジ小動物どこいった! 急に饒舌になった!
そしてライバルってなんだ?
何故私があなたを殺すんですか……?
「あの……あなた公爵令嬢って、貴族令嬢のてっぺんであらせられる令嬢じゃありません?
私みたいな孤児でも知ってますよ?そんな人と私がライバルになるわけが……ましてやころ」
「それがなるんですの!!」
有無を言わせない!
「そして……あろうことか、リンデン様はじめ、他の攻略対象も最近やたら私になついてしまい、
なんだかあなたが学園に来る前にハーレム化してしまいそうなんですの!!!
でも! これは本来すべてあなたが享受すべきもの!
……わたくし、あなたから盗ろうとか思ってませんのに、何故かこうなってしまって……っ」
意味がわからない言葉が次々彼女から出る……。
……いや。待てよ、これ、この感じどっかで……あ、そうだ。
「なんかシスター・イラに似てる……?」
「はい?」
祈るようにして目をギュッとつぶっていたココリーネ嬢が、私を見上げた。
小さい。可愛い。
「えっと、えっと。なんとか、なんとかあなたのゲームスタートまでにはお返しできるようにいたしますので!!! わたくし、悪役令嬢として生まれついてしまいましたが、あなたが学園にきても絶対絶対、いじめたりしませんので!!」
「……」
私はしばし思案して思い切って切り出した。
「あなたって、転生者ってやつですか? 前世をおぼえてるとかっていう……」
ココリーネ嬢の目が輝いた。
「はい! そうです! ひょっとしてプラム様も!?」
「……いいえ」
また、この手の人か……。
私は少し悶々とした気持ちになった。
でも、ブラウニーともう悩まないと約束したし、シスター・イラと話した後にも、また落ち込んだ事を私は反省して……
『今後、転生者を名乗る人が現れても動揺しない』……と自分に言い聞かせていた。
神父様いわく私は運命に勝たなきゃいけないんだ。
転生者の言う事に、もう惑わされない。
私がたまに視る『特別な夢』と同じで、たとえ知っていても回避できない時は回避できないんだし。
それなら自分の思う道を脇見しないで行くべきだ。
「えっとその……あなたが仰ってる返すっていうもの……返さなくていいですよ、ていうか元々、私のものかどうかなんて誰にもわからないですし。
私、学院とか行くつもりないですし……関係ないっていうか」
おそらく、攻略対象っていうのは、将来何人かいる私の運命の相手とやらなんだろう。
それにしてもハーレムってなんなのよ……将来の私の運命なんなのよ。
てか、リンデンもその攻略対象とやらなんだ。
私とリンデン……かけらも想像できない。
私のパートナーとして必要なのはブラウニーだけだ。
「ええっ!? 学園外ルートですの? ……でもそうだとしたら魔王が」
!?
なんかとんでもワードが聞こえた気がする!
何? そんな物語の悪者みたいなのもいるんですか、この世には。
そういえば聖書の授業で聞いたような聞かなかったような……寝ちゃってたかもしれない!
んっ!聞こえなかった事にしよう。
スルーよ、スルー!
「そもそもプラム様が学園にこないルートってあったかしら……。
それって大丈夫なのかしら、運命の強制力がどう働くのかしら……」
「運命の強制力?」
ちょっと気になって聞き返した。
「あ。えっと、そうですね……この世界には決まった運命があって、それに役割を与えられたキャラ……いえ、人間がそれに沿って行動しない場合、強制的にその道に戻そうとする運命の修正といいますか……そういうセオリーがあるといいますか……」
「……」
「わたくしなど……先程申し上げました、将来あなたをいじめないとかですの。
わたくしはもともと『あなたをいじめるように設定』されている役回りですので……運命の強制力を恐れています。例えば、わたくしはいじめるつもりはなくても、わたくしの周りの方があなたを貶めて、
その責任がわたくしに回ってくる、結局はわたくしがいじめた事になる…その果に断罪され死刑になる……とか想像にかたくないんですの」
だいたいわかってきた。
つまり、この世には使命を与えられた人間とそうでない人間がいるって事ね。
それで私が本来果たさなければならない重要な使命があるけれど、ブラウニーと添い遂げると役割全部放棄となってしわ寄せが起こり、この世が大変になる……ってかんじか。
『君は大きな運命を抱えてるのに、それを全部放り出してささやかな夢を叶える事にした』
『運命のほうが君が必要で追いかけてくるんだ』
まさに神父様が言っていたっけ……。
ん? 待てよ。
このココリーネ嬢は、私のポジションを奪いつつある、と言ってる。
これは……運命の強制力とやらが私が学園に行かない事を、彼女で穴埋めをしようとしてるのでは?
つまり、この子は本来私のライバルになる予定が、言葉は悪いがつまり、私の『代役』になりつつあるのではないだろうか。
もしそうなら、そのままやってくれないだろうか。
王妃はなりたくないって言ってるけど、見た感じその事以外はそのポジション、まんざらでもなさそうだし。
そんなに運命に抗うっていうなら、私と似た立場では?
王妃回避だけはなんとか頑張って頂いて。
その考えをココリーネ嬢に話すと難しそうな顔をした。
「わ、わたくしには荷が重いんですの……。
それに、わたくしでは最終的に魔王を倒せませんの……。
せめて、あなたがいつか目覚める高位の聖属性を…更に超える魔法がありませんと……。
ちなみに、わたくし、これっぽっちも魔力持ってません……」
いやああああ! 聞くんじゃなかったああああ!
『転生者の言うことに惑わされない』
はっ!
そうだ、そうだった。
もうこの話はやめよう。
プラムはクールに去るわよ。
「……そうなんですね。でも私は私の道を行きます。……あなたもあなたの思う道を進んでください。ご武運を」
私は踵をかえして、ブラウニーのところへ歩き始めた。
「そ、そんなぁ!! ですわ!!」
ごめんなさい。
足早にブラウニーのところにもどると、リンデンが逆にココリーネ嬢のところへ走っていく。
ココリーネ嬢は涙目だ。
これはまたややこしくなる。
「ブラウニー…」
「……事情は後で聞くからな。走るぞ」
またもや私達は猛ダッシュで街から逃げ出すことになった。
ああ……私の誕生日プレゼント買ってもらえなかった……。
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