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「足は痛む? 一人で歩けるかな?」
「……かあさまと一緒がいい」
世凪が男の子の近くにしゃがみ込むと、小さな手が世凪のシャツの袖をぎゅっと掴んだ。その仕草はとても可愛いのだが、世凪はそれに眉を下げた。
一緒と言われても、そもそも彼の『かあさま』ではないし、ここがどこか分からないから、どこに行くこともできない。とはいえ、怪我をしている小さな子を放っておくこともできなかった。
「分かった。じゃあ、一緒に頼れる大人を探しに行こう」
世凪は小さく息を吐いてから、男の子の手を掴んだ。それからその体を抱き上げて立ち上がる。その次の瞬間だった。
「レミウェル様!」
遠くからそんな太い声が響いて世凪が驚いて辺りを見回す。芝の先には、また石畳があり、そこから重たい足音が聞こえてくる。次第に見えたその姿は、銀の鎧を着た男性たちだった。世凪から見えたのは三人ほどで、手には槍のような長細いものを持っている。
これが世凪の夢ならば、ここで彼らにこの男の子を引き渡して、その代わりこの世界から抜け出す方法を教えてもらえるはずだ。世凪の夢なんて、そのくらい都合よく出来ているに違いない。
「あの、この子、怪我をしてて……」
世凪が駆け寄ってきた男たちに声を掛けようとすると、手を離しなさい! と鋭い声が返ってきた。誘拐犯とでも思われてしまったのか。まあ敷地内に知らない男が紛れ込んで、小さな子を抱き上げていたら、警戒したくなるのも分かる。しかも、どうやら彼は、大事に育てられているらしい。大人に『様』と敬称をつけて呼ばれる子どもなんて、それだけいいところのご子息ということだろう。
犯人扱いされても無理はない。
「レミウェル様を離しなさい、従うなら、すぐに命は取らない」
槍の先を目の前に突き出され、世凪が息をのむ。目の前にある切っ先はおもちゃなんかではない、本物の質感だった。触ったら切れそうなそれを避けて、世凪はゆっくりと男の子を地面に下ろした。
「一人で立てる?」
男の子に小さく聞くと、彼が頷く。するとすぐに男の一人が男の子を抱き上げ、同時に別の男が世凪の背中から腕を取った。
「痛っ……! 急に、なんですか!」
振り返ると、男が眉根を寄せて怪訝そうに口を開いた。
「どうやってここに入った?」
「そう言われても……気づいたら、ここにいて……」
どうやって、なんて世凪の方が知りたい。けれど目の前の男たちにそんな世凪の気持ちは届いていないようだった。
「気づいたらレミウェル様を誘拐しようとしていたのか? そんな言い訳通用するか」
「誘拐なんて、そんなつもりないです! ここがどこだかも分からないのに」
絶対に信じてもらえないと思いながらも、とにかくその槍で一突きにされたくなくて、世凪が訴える。夢とはいえ、槍で刺されて起きるのは気分がいいものではない。
「分からない? 大人のように見えるが、迷子なのか? どこから入ったんだ?」
世凪の言葉に嘘を感じなかったのか、鎧を着た男は槍は突きつけたまま、それでも少し口調が優しくなる。
「プールに落ちたと思って……気づいたら、あの池に座ってて……それ以上は分かりません」
世凪が、傍にある池を指さす。青い空が映るその池は小さくて浅いのに、その水はとても澄んでいた。
「もしかして……泉が呼んだ者、か?」
「……かあさまと一緒がいい」
世凪が男の子の近くにしゃがみ込むと、小さな手が世凪のシャツの袖をぎゅっと掴んだ。その仕草はとても可愛いのだが、世凪はそれに眉を下げた。
一緒と言われても、そもそも彼の『かあさま』ではないし、ここがどこか分からないから、どこに行くこともできない。とはいえ、怪我をしている小さな子を放っておくこともできなかった。
「分かった。じゃあ、一緒に頼れる大人を探しに行こう」
世凪は小さく息を吐いてから、男の子の手を掴んだ。それからその体を抱き上げて立ち上がる。その次の瞬間だった。
「レミウェル様!」
遠くからそんな太い声が響いて世凪が驚いて辺りを見回す。芝の先には、また石畳があり、そこから重たい足音が聞こえてくる。次第に見えたその姿は、銀の鎧を着た男性たちだった。世凪から見えたのは三人ほどで、手には槍のような長細いものを持っている。
これが世凪の夢ならば、ここで彼らにこの男の子を引き渡して、その代わりこの世界から抜け出す方法を教えてもらえるはずだ。世凪の夢なんて、そのくらい都合よく出来ているに違いない。
「あの、この子、怪我をしてて……」
世凪が駆け寄ってきた男たちに声を掛けようとすると、手を離しなさい! と鋭い声が返ってきた。誘拐犯とでも思われてしまったのか。まあ敷地内に知らない男が紛れ込んで、小さな子を抱き上げていたら、警戒したくなるのも分かる。しかも、どうやら彼は、大事に育てられているらしい。大人に『様』と敬称をつけて呼ばれる子どもなんて、それだけいいところのご子息ということだろう。
犯人扱いされても無理はない。
「レミウェル様を離しなさい、従うなら、すぐに命は取らない」
槍の先を目の前に突き出され、世凪が息をのむ。目の前にある切っ先はおもちゃなんかではない、本物の質感だった。触ったら切れそうなそれを避けて、世凪はゆっくりと男の子を地面に下ろした。
「一人で立てる?」
男の子に小さく聞くと、彼が頷く。するとすぐに男の一人が男の子を抱き上げ、同時に別の男が世凪の背中から腕を取った。
「痛っ……! 急に、なんですか!」
振り返ると、男が眉根を寄せて怪訝そうに口を開いた。
「どうやってここに入った?」
「そう言われても……気づいたら、ここにいて……」
どうやって、なんて世凪の方が知りたい。けれど目の前の男たちにそんな世凪の気持ちは届いていないようだった。
「気づいたらレミウェル様を誘拐しようとしていたのか? そんな言い訳通用するか」
「誘拐なんて、そんなつもりないです! ここがどこだかも分からないのに」
絶対に信じてもらえないと思いながらも、とにかくその槍で一突きにされたくなくて、世凪が訴える。夢とはいえ、槍で刺されて起きるのは気分がいいものではない。
「分からない? 大人のように見えるが、迷子なのか? どこから入ったんだ?」
世凪の言葉に嘘を感じなかったのか、鎧を着た男は槍は突きつけたまま、それでも少し口調が優しくなる。
「プールに落ちたと思って……気づいたら、あの池に座ってて……それ以上は分かりません」
世凪が、傍にある池を指さす。青い空が映るその池は小さくて浅いのに、その水はとても澄んでいた。
「もしかして……泉が呼んだ者、か?」
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