天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ

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「では、お作りした料理をご説明します」
 乾杯が終わったタイミングでシェフがテーブルに並ぶ料理を説明していく。スープやサラダという定番から、焼き物や揚げ物なんかも並んでいて、見た目もキレイだった。これなら小さい子でも楽しんで食べることができるだろう。
「これだけあれば十分だと思います。少しずつ、取り入れてあげたら喜ばれると思います。ワガママを言ってすみませんでした。でも、安心しました」
 きっとこれ以上のレパートリーを持っているはずだから、食事に飽きることもないだろう。これで王子たちが健康に育てばいいと思う。
「……世凪は母親のようだな。レミが『かあさま』と言うだけはある」
 黙々と食事を進めながらそんなことをさらりと言われ、世凪が、僕は男です、と不満を表に出して口を開いた。
「母親になったこともないですし、これからなる予定もありません」
「世凪はそう思っていても、この国では、誰が母になるか父になるかなんて分からないからな。そう伝えただろう?」
「それは、そうですが……僕みたいな平凡を絵に描いたような者を嫁にしたいなんて人はそうそういないと思います」
 世凪が告げると、周りに居た使用人たちが少し騒めいた。それにアドウェルが視線をむけると、そのざわめきはぴたりと収まる。
「世凪は自己評価が低いのだな。まあ、奥ゆかしいのだろう。ますます、レミの感覚が正しく思えるな」
 そんなことを言われ、世凪は自分の妄想力の逞しさに、心の中でため息をついた。平凡どころか、男として見れないという理由で振られてばかりの世凪は、自分の夢の中ではそれなりの容姿ということになっているらしい。自分大好きにも限度があるだろう。
 とはいえ、ストレスフルな世凪が作り出した癒しの世界だ。楽しまなければ損だろう。
「僕の容姿は置いといて、レミウェル様に気に入っていただけるのは嬉しいです」
「あの子は俺にとって、唯一の肉親だ。仲良くしてくれたら嬉しい」
 アドウェルが少しだけ微笑みを見せる。父親も、他の兄弟もいるのに『唯一』ということに気になりはしたが、きっとここで追及するのは良くないだろうと思い、聞きたい気持ちを押し流そうと、世凪はワインの入ったグラスを傾け、それを口に含んだ。少し渋いが濃い味のするワインだった。
「それに……俺は、世凪の容姿を平凡とは思っていない。もう少し自信と自覚を持った方がいい。城の中といえど、全てにおいて安全というわけではない」
 アドウェルが不器用ながらも褒めてくれているのが分かり、世凪は胸の奥からじわじと体温が上がっていくような感覚を覚えながら、ありがとうございます、と頷いた。
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