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「世凪は何が飲みたい? 眠る前だからハーブティーの方が良いな」
「そうですね。アド王子にお任せします」
世凪の言葉に頷いたアドウェルが部屋へ戻ると、そのままドアへと向かった。すぐそこに控えている使用人に何か話すと、すぐにこちらへと戻ってきた。
「世凪、まだ髪が濡れている」
アドウェルは世凪の手からタオルを取ると同時に世凪の手を引いて歩き出した。そのままソファに座らされる。
「さっき、レミの髪もこうやって乾かしてきた。世凪も特別に乾かしてやろう」
アドウェルがソファの後ろに回り込み、世凪の背後からタオルを頭に掛ける。世凪は慌てて振り返った。
「お、王子にそんなこと、させられないです!」
いくら世凪の世話を任されたといっても、それは自らするという意味ではない。それは多分アドウェル自身も分かっているはずだ。さすがにこんなところを使用人にでも見られたら、いい顔はしないだろう。
「俺がしたいんだ。王子の要望に応えない方がよほど不敬だと思わないか?」
「いや、しかし……」
王子にこんなことさせて調子に乗ってる、なんて陰口を叩かれたくはない。
世凪が眉を下げるとアドウェルは世凪に顔を近づけるようにソファの背もたれに手をついた。
「世凪の髪に触れたい。その口実だと言ったら?」
低く少し掠れたその声でそんなことを言われ、世凪の心臓はその瞬間大きく跳ねた。そんなちょっと夜の匂いがするようなことを言われたら、世凪だって期待してしまう。
「髪、ですか……」
「世凪の髪は、母と同じく艶がある。母の髪も触り心地のいい、さらさらとした髪だったから」
アドウェルの言葉を聞いて、飛び跳ねていた鼓動がぴたりと落ち着いた。今度は、ぎゅっと絞られるように痛む。
アドウェルが世凪に母親のおもかげを重ねているともう気づいていたのに、改めて思い知らされるとやっぱり切ない。
「……僕の髪は猫毛なので、さらさらというものではないと思います……」
母親の何かを思い出したくて世凪の髪に触れたいというなら、従うほかない。世凪が小さく息を吐いてからゆっくりと前を向く。
「確かにさらさらというほどではないが、柔らかく手触りはいい。世凪の魅力のひとつだ」
タオルで髪の水分を取るように丁寧に乾かされ、世凪はその心地よさに目を閉じた。アドウェルが自分から触りたいと言ったことに違いはないのだから、少しくらいこの優しい指先を堪能してもいいはずだ。首元に触れるアドウェルの指は、今日はいつもより温かい。世凪の体温が移ったのだろうか、なんて考えていると、部屋のドアがノックされ、世凪が目を開いた。
「失礼いたします。お茶をお持ちしました。眠りの妨げにならないものを、とのことでしたので、カモミールティーをご用意いたしました」
そんな言葉と共に使用人がワゴンを押して近づき、世凪の目の前にあるテーブルにカップを並べていく。使用人の男性はちらりとこちらに視線を向けたが、王子がどこの馬の骨ともわからないヤツの髪を乾かしている姿を見ても表情を変えることなく、自分の仕事をするとすぐに部屋を後にした。使用人としての意識が高いのか、それとも明日になったら王子に世話を焼かせすぎと言われるのかは分からないが、とにかくこの時は、すぐにアドウェルと二人きりになった。
「……それで、世凪の話とは?」
アドウェルが世凪から手を離し、ソファの前へと移動する。
世凪の隣に腰かけた彼が、こちらを少し真剣な目で見つめた。
「僕、リゲルさんの手伝いをしたいと思って。その許可が欲しいんです」
「そうですね。アド王子にお任せします」
世凪の言葉に頷いたアドウェルが部屋へ戻ると、そのままドアへと向かった。すぐそこに控えている使用人に何か話すと、すぐにこちらへと戻ってきた。
「世凪、まだ髪が濡れている」
アドウェルは世凪の手からタオルを取ると同時に世凪の手を引いて歩き出した。そのままソファに座らされる。
「さっき、レミの髪もこうやって乾かしてきた。世凪も特別に乾かしてやろう」
アドウェルがソファの後ろに回り込み、世凪の背後からタオルを頭に掛ける。世凪は慌てて振り返った。
「お、王子にそんなこと、させられないです!」
いくら世凪の世話を任されたといっても、それは自らするという意味ではない。それは多分アドウェル自身も分かっているはずだ。さすがにこんなところを使用人にでも見られたら、いい顔はしないだろう。
「俺がしたいんだ。王子の要望に応えない方がよほど不敬だと思わないか?」
「いや、しかし……」
王子にこんなことさせて調子に乗ってる、なんて陰口を叩かれたくはない。
世凪が眉を下げるとアドウェルは世凪に顔を近づけるようにソファの背もたれに手をついた。
「世凪の髪に触れたい。その口実だと言ったら?」
低く少し掠れたその声でそんなことを言われ、世凪の心臓はその瞬間大きく跳ねた。そんなちょっと夜の匂いがするようなことを言われたら、世凪だって期待してしまう。
「髪、ですか……」
「世凪の髪は、母と同じく艶がある。母の髪も触り心地のいい、さらさらとした髪だったから」
アドウェルの言葉を聞いて、飛び跳ねていた鼓動がぴたりと落ち着いた。今度は、ぎゅっと絞られるように痛む。
アドウェルが世凪に母親のおもかげを重ねているともう気づいていたのに、改めて思い知らされるとやっぱり切ない。
「……僕の髪は猫毛なので、さらさらというものではないと思います……」
母親の何かを思い出したくて世凪の髪に触れたいというなら、従うほかない。世凪が小さく息を吐いてからゆっくりと前を向く。
「確かにさらさらというほどではないが、柔らかく手触りはいい。世凪の魅力のひとつだ」
タオルで髪の水分を取るように丁寧に乾かされ、世凪はその心地よさに目を閉じた。アドウェルが自分から触りたいと言ったことに違いはないのだから、少しくらいこの優しい指先を堪能してもいいはずだ。首元に触れるアドウェルの指は、今日はいつもより温かい。世凪の体温が移ったのだろうか、なんて考えていると、部屋のドアがノックされ、世凪が目を開いた。
「失礼いたします。お茶をお持ちしました。眠りの妨げにならないものを、とのことでしたので、カモミールティーをご用意いたしました」
そんな言葉と共に使用人がワゴンを押して近づき、世凪の目の前にあるテーブルにカップを並べていく。使用人の男性はちらりとこちらに視線を向けたが、王子がどこの馬の骨ともわからないヤツの髪を乾かしている姿を見ても表情を変えることなく、自分の仕事をするとすぐに部屋を後にした。使用人としての意識が高いのか、それとも明日になったら王子に世話を焼かせすぎと言われるのかは分からないが、とにかくこの時は、すぐにアドウェルと二人きりになった。
「……それで、世凪の話とは?」
アドウェルが世凪から手を離し、ソファの前へと移動する。
世凪の隣に腰かけた彼が、こちらを少し真剣な目で見つめた。
「僕、リゲルさんの手伝いをしたいと思って。その許可が欲しいんです」
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