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「手伝い、とは?」
アドウェルの表情が怪訝そうに歪む。けれど、この言葉も表情も世凪の予想の範囲内だった。世凪が小さく頷いてから言葉を繋げる。
「アド王子もご存知かと思いますが、リゲルさんの魔法の源について今日彼から話を聞きました。それで、やっぱり目の前で人の命が削られていくのをただ見ていることはできなくて、治療の手伝いをしたいと思ったんです」
「リゲルの命は、王族に捧げられている。それをどう使おうが、こちらの勝手だ。世凪が気に留めるようなことではない」
アドウェルの言葉を聞いた瞬間、空気が冷えた気がした。
「……アド王子にとって、リゲルさんはどうでもいい人、なんですか?」
「そういう訳ではない。けれど、世凪がわざわざ手を貸すような相手でもない。彼は、城の使用人のひとりに過ぎない」
アドウェルの言うことは正しいのだろう。使用人のひとりだと言うなら、彼だけに心も時間も割くのは上に立つ者としていいことではないのは分かる。人を統括しているのなら、時に冷静に冷淡にも見える行動を取らなくてはいけないのだろう。けれどそれは、アドウェルの立場だからであって、世凪は別だ。
「でも、僕は聞いてしまった以上、無視はしたくありません。といっても、僕は魔法なんか使えませんから、町の医者の真似事になってしまうと思うんですが……軽い怪我の手当てをしたり、気軽に話ができるような、城の保健室の先生になれたらいいと思うんです」
世凪は一気に話してから、そっとアドウェルの表情を窺った。じっとテーブルの上のカップを見つめている。きっと世凪の言ったことを彼なりに理解しようと考えてくれているのだろう。
「……ダメだ、と言いたいところだが、言ったところで世凪は聞かないだろう? 俺に内緒で抜け出されるよりは、世凪の行動を把握出来た方がいい。午前中の数時間だけは、リゲルのところへ行くことを許可する。使用人の中に医学の心得のある者も居るから、ついて行かせよう。その代わり、午後はレミと居るか、ここに戻っていること」
それならいい、とアドウェルがこちらを見やる。その表情はどこか不機嫌そうに眉根が少し寄っていた。彼にとって、これが最大の譲歩なのだろう。
「もちろん、そうします。許可いただけてありがとうございます」
世凪がほっと息を吐きながら微笑むと、アドウェルは長いため息を零し、世凪から視線を外した。
「そろそろ世凪が新しいことを言い出しそうとは思っていたが……リゲルは穏やかで悪い人ではないが、彼にだって感情はあるし、魔が差すとか我慢が出来ないとかそういうこともあるだろうから、今後は彼と二人きりにならないように」
アドウェルがティーカップを持ち上げ、少し強い口調で告げる。世凪はその言葉を聞いてしばらく首を傾げたが、その言葉の意味を理解した時、え、と思わず声を上げた。
「リゲルさんが僕に、ですか? 絶対ないです! 城の中にはもっとキレイで可愛らしい人がたくさんいるじゃないですか」
世凪が首を振ると、アドウェルは一口だけお茶を飲んでから、世凪に視線を向けた。
「自己肯定感を上げろとは言わない。ただ、常に危機感は持って欲しい。前にも言っただろう、この国の恋愛・結婚に性別は関係ない、と。自分だって、いつ襲われるか分からないんだ」
アドウェルの表情は少し厳しく見えるくらい真剣だったが、その言葉はどうしても理解出来なかった。確かに性別は関係ないと言われたが、やっぱり自分が誰かにどうにかされるとは思えないのだ。そもそも、こう見えて世凪だって男だ。抵抗くらい出来るだろう。
「アド王子って、ホントに心配性ですよね。僕なら大丈夫です。そもそも僕が誰かに襲われるなんてないですから」
世凪が笑うと、アドウェルは静かに持っていたカップをテーブルに戻した。それから世凪に体を向けたかと思うと、そのままその肩をソファの座面へと押し付けるように世凪を組み敷いた。あっという間のことで、世凪は抵抗することも出来ずにアドウェルの顔を見上げた。
アドウェルの表情が怪訝そうに歪む。けれど、この言葉も表情も世凪の予想の範囲内だった。世凪が小さく頷いてから言葉を繋げる。
「アド王子もご存知かと思いますが、リゲルさんの魔法の源について今日彼から話を聞きました。それで、やっぱり目の前で人の命が削られていくのをただ見ていることはできなくて、治療の手伝いをしたいと思ったんです」
「リゲルの命は、王族に捧げられている。それをどう使おうが、こちらの勝手だ。世凪が気に留めるようなことではない」
アドウェルの言葉を聞いた瞬間、空気が冷えた気がした。
「……アド王子にとって、リゲルさんはどうでもいい人、なんですか?」
「そういう訳ではない。けれど、世凪がわざわざ手を貸すような相手でもない。彼は、城の使用人のひとりに過ぎない」
アドウェルの言うことは正しいのだろう。使用人のひとりだと言うなら、彼だけに心も時間も割くのは上に立つ者としていいことではないのは分かる。人を統括しているのなら、時に冷静に冷淡にも見える行動を取らなくてはいけないのだろう。けれどそれは、アドウェルの立場だからであって、世凪は別だ。
「でも、僕は聞いてしまった以上、無視はしたくありません。といっても、僕は魔法なんか使えませんから、町の医者の真似事になってしまうと思うんですが……軽い怪我の手当てをしたり、気軽に話ができるような、城の保健室の先生になれたらいいと思うんです」
世凪は一気に話してから、そっとアドウェルの表情を窺った。じっとテーブルの上のカップを見つめている。きっと世凪の言ったことを彼なりに理解しようと考えてくれているのだろう。
「……ダメだ、と言いたいところだが、言ったところで世凪は聞かないだろう? 俺に内緒で抜け出されるよりは、世凪の行動を把握出来た方がいい。午前中の数時間だけは、リゲルのところへ行くことを許可する。使用人の中に医学の心得のある者も居るから、ついて行かせよう。その代わり、午後はレミと居るか、ここに戻っていること」
それならいい、とアドウェルがこちらを見やる。その表情はどこか不機嫌そうに眉根が少し寄っていた。彼にとって、これが最大の譲歩なのだろう。
「もちろん、そうします。許可いただけてありがとうございます」
世凪がほっと息を吐きながら微笑むと、アドウェルは長いため息を零し、世凪から視線を外した。
「そろそろ世凪が新しいことを言い出しそうとは思っていたが……リゲルは穏やかで悪い人ではないが、彼にだって感情はあるし、魔が差すとか我慢が出来ないとかそういうこともあるだろうから、今後は彼と二人きりにならないように」
アドウェルがティーカップを持ち上げ、少し強い口調で告げる。世凪はその言葉を聞いてしばらく首を傾げたが、その言葉の意味を理解した時、え、と思わず声を上げた。
「リゲルさんが僕に、ですか? 絶対ないです! 城の中にはもっとキレイで可愛らしい人がたくさんいるじゃないですか」
世凪が首を振ると、アドウェルは一口だけお茶を飲んでから、世凪に視線を向けた。
「自己肯定感を上げろとは言わない。ただ、常に危機感は持って欲しい。前にも言っただろう、この国の恋愛・結婚に性別は関係ない、と。自分だって、いつ襲われるか分からないんだ」
アドウェルの表情は少し厳しく見えるくらい真剣だったが、その言葉はどうしても理解出来なかった。確かに性別は関係ないと言われたが、やっぱり自分が誰かにどうにかされるとは思えないのだ。そもそも、こう見えて世凪だって男だ。抵抗くらい出来るだろう。
「アド王子って、ホントに心配性ですよね。僕なら大丈夫です。そもそも僕が誰かに襲われるなんてないですから」
世凪が笑うと、アドウェルは静かに持っていたカップをテーブルに戻した。それから世凪に体を向けたかと思うと、そのままその肩をソファの座面へと押し付けるように世凪を組み敷いた。あっという間のことで、世凪は抵抗することも出来ずにアドウェルの顔を見上げた。
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