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しおりを挟む「儀式の話でしたら、私の方にも届いています。それを行えるのはここでは私だけなので」
翌日いつも通りにリゲルのところへ行くと、マリアが突然世凪に抱きついてきて、儀式って本当ですか? と焦った顔を向けた。世凪が反応する前にリゲルが答えたのが今の言葉だ。
「それなんですけど……一体何ですか? 儀式だの、相性だの……」
昨日の晩餐の場で国王が言っていたことを、結局誰にも聞けないまま朝を迎えていた。レミウェルとは夜遅くまで一緒に居たが五歳の子に聞いても分からないだろうし、使用人にも聞きにくかったし、アドウェルなら答えてくれるかと思っていたが、忙しいのか晩餐以降会えていない。あの時援護してくれた礼もしたいのだが、まだ出来ていないしそのことについても聞けていなかった。
「儀式というのは、魔法使いの洗礼を受けて、妊娠が可能な体になる事です。相性というのは、一晩同衾することです。拒否権はありませんが決定権は世凪様にあります」
リゲルは淡々と説明しているが、それは世凪が思っていたよりも生々しい話だった。
「つまり……僕の体を作り変えて、更に嫁に欲しいと言ってる奴らと一晩寝ろと……」
「乱暴に言うとその通りです」
世凪の言葉に苦笑しながらリゲルが頷く。理解はしたが納得はできない。
「それ、歴代の人たちもやってることなんですか?」
「記録では、三代前の方がこの『相性』の儀式をされてます。ミシェル様とその前の方は、洗礼だけを受けられてます。ちなみに二代前の方は国王のお父様で、第一王女とご成婚されてます」
「それってつまり……女性が男性の機能を授かったってことですか?」
「そうですね。なので、相性の儀式はとても久しぶりなのです……あまり賛同できるような儀式ではないですからね」
決定権はこちらにあるとはいえ、一晩ずつ付き合えなんて、そういう仕事のようで嫌だ。まして相手が国王とフェルジェなら、更にその嫌悪も増す。
「絶対嫌なんですけど……」
「私もそう思います! そんなお試しされるみたいなことありえないです。だって、同じ夜を過ごすって気持ちがあってこその話じゃないですか! 『恋の旋律』でもそう言ってました」
ため息を吐く世凪にマリアが真剣な目をして捲し立てる。世凪はその言葉を聞いて、『恋の旋律』? と聞き返した。
「今メイドの間で流行っている恋愛小説です。貴族の令嬢が愛のない結婚生活から抜け出して売れないピアニストと愛の逃避行をする話なんです。ちょっと大人な場面もあってドキドキするんです」
マリアの頬が興奮で赤くなる。それを聞いていた世凪も同じように目を輝かせた。マリアが語るそれは、どう聞いてもTL小説だろう。こちらに来てから本といえば絵本しか読んでいないので、正直萌えは枯渇していた。
「それ……僕に貸して貰える?」
「もちろんです! 今度お持ちしますね!」
この世界で恋をすることが許されないのなら、せめて脳内だけでも満たされていいだろう。世凪はそんなことを思いながらマリアに笑顔で頷いた。
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