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「……では、ありがたく頂戴します」
世凪が二人に深く頭を下げると、二人はそれに慌てつつも、はい、と笑顔を向けてくれた。
「私たちもアドウェル様にはお世話になっているので、世凪様からプレゼントをしていただけると嬉しいです」
そういえばアドウェルの仕事は王宮内の管理も含まれていたはずだ。使用人たちにとってはアドウェルは一番上の上司ということになるのだろう。世話になっているというのは合っているだろうが、同時に『氷の王子』と呼ぶほど恐れているのではなかっただろうか。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど……氷の王子に渡すんだよ? いいの?」
「確かにあの方は滅多に表情を変えませんし、いつも冷静な判断をされます。彼女がここのメイドの採用試験を受けた時、彼女は僕の名前を出して、僕を追ってきたと言ったらしいんです。それで、僕がそれを知って採用をやめてくれと言ったのに、結局採用して……その時はからかわれたと思ったんです」
それは違う、と世凪は思った。
彼女が強く彼を思い近くに居たいと試験を受け、そして彼もまた彼女を思うからこそ追い返したかったという二人の気持ちに気づいたからこそ、アドウェルは彼女を城で働かせることを決めたのだろう。
「それは……」
世凪が言葉を挟もうとすると、分かってます、と衛兵が微笑んだ。
「アドウェル様は彼女を洗濯担当にしてくださって、毎日衛兵が訓練する裏庭に来れるようにしていたんです。裏庭は、物干し場も兼ねていますから」
直接言葉や態度では示さないけれど、ちゃんと細かな気遣いができる人だ。ただ、それが細やかすぎて気づけない人も多いから、あんな異名がついてしまうのだろう。本当はとても優しくて繊細な人なのに。
「この間も同僚の一人が体調を崩しているのを隠して働いていたら『下がれ、三日間部屋から出るな』って言われて泣いて帰ってたんですが……翌日から発熱して動けなくなったみたいで、結局三日休んだんです。初めは咳をしてたくらいで下がらせるなんてってみんな怒ってましたけど、ふたを開けてみたら本人はアドウェル様の命令で部屋から出ていないことになって休みの扱いにはならなかったし、事前に彼女が抜けることが決まっていたから残った私たちもスムーズに仕事をすることが出来てました。私、その時、アドウェル様はすごいって思ったんです」
そこまで上手くいったのは偶然も重なっているのかもしれない。けれどメイドを休ませたのはアドウェルの優しさだろう。自分が悪者になることで心置きなく三日間体を休めることができると判断したのは明らかだ。
「僕ももちろんだけど、みんながアド王子に感謝してるって伝えておくね」
メイドと衛兵が頷く姿を見て、世凪も微笑んだ。
きっと世凪が世凪としてプレゼントを贈ることができるのはこれが最後だ。だからこそ、ふさわしいものを選びたいと改めて思う世凪だった。
世凪が二人に深く頭を下げると、二人はそれに慌てつつも、はい、と笑顔を向けてくれた。
「私たちもアドウェル様にはお世話になっているので、世凪様からプレゼントをしていただけると嬉しいです」
そういえばアドウェルの仕事は王宮内の管理も含まれていたはずだ。使用人たちにとってはアドウェルは一番上の上司ということになるのだろう。世話になっているというのは合っているだろうが、同時に『氷の王子』と呼ぶほど恐れているのではなかっただろうか。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど……氷の王子に渡すんだよ? いいの?」
「確かにあの方は滅多に表情を変えませんし、いつも冷静な判断をされます。彼女がここのメイドの採用試験を受けた時、彼女は僕の名前を出して、僕を追ってきたと言ったらしいんです。それで、僕がそれを知って採用をやめてくれと言ったのに、結局採用して……その時はからかわれたと思ったんです」
それは違う、と世凪は思った。
彼女が強く彼を思い近くに居たいと試験を受け、そして彼もまた彼女を思うからこそ追い返したかったという二人の気持ちに気づいたからこそ、アドウェルは彼女を城で働かせることを決めたのだろう。
「それは……」
世凪が言葉を挟もうとすると、分かってます、と衛兵が微笑んだ。
「アドウェル様は彼女を洗濯担当にしてくださって、毎日衛兵が訓練する裏庭に来れるようにしていたんです。裏庭は、物干し場も兼ねていますから」
直接言葉や態度では示さないけれど、ちゃんと細かな気遣いができる人だ。ただ、それが細やかすぎて気づけない人も多いから、あんな異名がついてしまうのだろう。本当はとても優しくて繊細な人なのに。
「この間も同僚の一人が体調を崩しているのを隠して働いていたら『下がれ、三日間部屋から出るな』って言われて泣いて帰ってたんですが……翌日から発熱して動けなくなったみたいで、結局三日休んだんです。初めは咳をしてたくらいで下がらせるなんてってみんな怒ってましたけど、ふたを開けてみたら本人はアドウェル様の命令で部屋から出ていないことになって休みの扱いにはならなかったし、事前に彼女が抜けることが決まっていたから残った私たちもスムーズに仕事をすることが出来てました。私、その時、アドウェル様はすごいって思ったんです」
そこまで上手くいったのは偶然も重なっているのかもしれない。けれどメイドを休ませたのはアドウェルの優しさだろう。自分が悪者になることで心置きなく三日間体を休めることができると判断したのは明らかだ。
「僕ももちろんだけど、みんながアド王子に感謝してるって伝えておくね」
メイドと衛兵が頷く姿を見て、世凪も微笑んだ。
きっと世凪が世凪としてプレゼントを贈ることができるのはこれが最後だ。だからこそ、ふさわしいものを選びたいと改めて思う世凪だった。
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