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世凪との性的なあれこれを妄想して来たのだから不満ではあるだろうが、本人も一理あるとでも思ったのだろう。ソファに座り直したフェルジェは足を組んでこちらに視線を向けた。それを見ていたリゲルが、衛兵を部屋から出してドアを閉めた。その傍にドレッサーの椅子を寄せ、そこに落ち着く。
リゲルほどの魔法使いなら、きっとフェルジェの動きを止めることもできるのだろう。『できない』のではなく『しない』だけだから、フェルジェもこうして素直に世凪に応じているのかもしれない。
「以前からお聞きしたかったことがあるんですが、今聞いてもいいですか?」
世凪がフェルジェに視線を向けると、構わないよ、とフェルジェが頷いた。それを見て世凪が言葉を繋げる。
「フェルジェ様は……アド王子とレミのこと、お嫌いなのですか?」
世凪が言葉を選ばず直球で聞いてしまったせいだろう。フェルジェの眉間に皺が寄り、その表情が少し険しくなった。ただフェルジェも大人なのだろう、大きく一度呼吸をしてから、そうだな、と口を開いた。
「嫌い、という単純な感情ではない。血を分けた弟ということは十分理解しているが、オレの人生はあいつらに邪魔をされてばかりだから、上手く家族として愛せない、というのが一番近いか」
意外な言葉がフェルジェから飛び出して、世凪は首を傾げた。
「邪魔をされた、のですか?」
世凪が聞き返すとフェルジェは世凪に微笑んでから、少し昔話をしてやろう、と記憶を辿るように遠くに視線を向けた。
「アドウェルの母の話は聞いたことあるか? 彼がここへ来た年に、オレは生まれた。普通なら第一王子の誕生だ、当然のように祝い事となるのだが、第二王妃との結婚を優先され、母はそのショックから育児を放棄、オレは完全に乳母に育てられた。まあ、そこまではオレに記憶はないから別に良かった。翌年、アドウェルが生まれ、その時は派手な祝祭があったらしい。跡継ぎであるオレの時は何もなく、アドウェルの時は盛大に祝ったことをオレは後から知って悲しくなったことを覚えているよ。幼少期は父にも滅多に会わず、母には『役立たず』と言われて育った」
アドウェルから聞いていた母親との思い出の裏側で、幼いフェルジェがこんな扱いを受けていたのだと思うと胸が痛かった。聞いていた話から察すると、国王はその時ミシェルに夢中だったようだから、既にいる家族を無下に扱っていても不思議ではない。
「その後、何があったのか知らないが突然父が母の元に通うようになって弟が生まれて……その頃オレはアドウェルと共に全寮制の学校へと通っていたから城のことはよく知らないけれど、学校生活は楽しかった。オレが派手に遊んでもアドウェルが尻ぬぐいをしてくれたから。でも……誕生日にあいつは城に呼び戻されて祝ってもらえるのに、オレは『王妃急病のため中止』って手紙だけが来て終わり。母がオレの誕生日なんか祝いたくなくてそうなっていたのは分かっていたから、別に気にしていなかったけど、そのくせ、次期国王だからってアドウェルよりも学ぶ教科が多かったのは理不尽だなとずっと思っていたよ」
第一王子と第二王子の確執なんて、漫画みたいな創作でも、実際の歴史でも、なんなら海外のゴシップでもよく見る話だ。比べられて育つこと自体、気持ちのいいものではないだろうが、こうも扱いが違うとそこに闇が生まれても仕方ないかもしれない。
「フェルジェ様は、これまで一度も誕生日をお祝いされたことはないのですか?」
「そんなことはない。友人も多かったからパーティーをしたり、リボンを自身に巻いて来てくれた子を朝まで『プレゼント』として堪能したりはしたよ」
世凪が一瞬抱いた可哀そうという感情を壊すような話と、下品な視線に、世凪がため息を吐く。
「だったらもう、わだかまりはなくしてもいいのではないですか?」
これまで全く楽しんでいなかったわけではなさそうだし、アドウェルのことも手駒のように使っていたようだから、幼少期の恨みは消えてもいいのではと思った。けれどフェルジェは、だから複雑なのだと言ってる、と少し拗ねた顔を見せた。
「楽しい学校生活から急に呼び戻された理由が、第二王妃の逝去とレミウェルの誕生だったんだ。また振り回されたって思ってもいいだろう。しかもその後は、全てレミウェル中心だ。オレが小さい頃何度も足を滑らせた廊下は絨毯敷きになって、オレが子どもの時は眺めるだけの庭園になっていた中庭も遊び場となるように整備された。跡継ぎでもない子にばかみたいな金をかけてな」
「フェルジェ様は、アド王子とレミのことが直接嫌いなわけではないんですね。しいて言うなら……ミシェル様とその子供たちを最優先にして王妃もフェルジェ様も大事にしない国王様がお嫌い……?」
世凪の言葉を聞いたフェルジェが、ふふ、と小さく笑う。それから堪えきれないといったふうに笑い出した。
リゲルほどの魔法使いなら、きっとフェルジェの動きを止めることもできるのだろう。『できない』のではなく『しない』だけだから、フェルジェもこうして素直に世凪に応じているのかもしれない。
「以前からお聞きしたかったことがあるんですが、今聞いてもいいですか?」
世凪がフェルジェに視線を向けると、構わないよ、とフェルジェが頷いた。それを見て世凪が言葉を繋げる。
「フェルジェ様は……アド王子とレミのこと、お嫌いなのですか?」
世凪が言葉を選ばず直球で聞いてしまったせいだろう。フェルジェの眉間に皺が寄り、その表情が少し険しくなった。ただフェルジェも大人なのだろう、大きく一度呼吸をしてから、そうだな、と口を開いた。
「嫌い、という単純な感情ではない。血を分けた弟ということは十分理解しているが、オレの人生はあいつらに邪魔をされてばかりだから、上手く家族として愛せない、というのが一番近いか」
意外な言葉がフェルジェから飛び出して、世凪は首を傾げた。
「邪魔をされた、のですか?」
世凪が聞き返すとフェルジェは世凪に微笑んでから、少し昔話をしてやろう、と記憶を辿るように遠くに視線を向けた。
「アドウェルの母の話は聞いたことあるか? 彼がここへ来た年に、オレは生まれた。普通なら第一王子の誕生だ、当然のように祝い事となるのだが、第二王妃との結婚を優先され、母はそのショックから育児を放棄、オレは完全に乳母に育てられた。まあ、そこまではオレに記憶はないから別に良かった。翌年、アドウェルが生まれ、その時は派手な祝祭があったらしい。跡継ぎであるオレの時は何もなく、アドウェルの時は盛大に祝ったことをオレは後から知って悲しくなったことを覚えているよ。幼少期は父にも滅多に会わず、母には『役立たず』と言われて育った」
アドウェルから聞いていた母親との思い出の裏側で、幼いフェルジェがこんな扱いを受けていたのだと思うと胸が痛かった。聞いていた話から察すると、国王はその時ミシェルに夢中だったようだから、既にいる家族を無下に扱っていても不思議ではない。
「その後、何があったのか知らないが突然父が母の元に通うようになって弟が生まれて……その頃オレはアドウェルと共に全寮制の学校へと通っていたから城のことはよく知らないけれど、学校生活は楽しかった。オレが派手に遊んでもアドウェルが尻ぬぐいをしてくれたから。でも……誕生日にあいつは城に呼び戻されて祝ってもらえるのに、オレは『王妃急病のため中止』って手紙だけが来て終わり。母がオレの誕生日なんか祝いたくなくてそうなっていたのは分かっていたから、別に気にしていなかったけど、そのくせ、次期国王だからってアドウェルよりも学ぶ教科が多かったのは理不尽だなとずっと思っていたよ」
第一王子と第二王子の確執なんて、漫画みたいな創作でも、実際の歴史でも、なんなら海外のゴシップでもよく見る話だ。比べられて育つこと自体、気持ちのいいものではないだろうが、こうも扱いが違うとそこに闇が生まれても仕方ないかもしれない。
「フェルジェ様は、これまで一度も誕生日をお祝いされたことはないのですか?」
「そんなことはない。友人も多かったからパーティーをしたり、リボンを自身に巻いて来てくれた子を朝まで『プレゼント』として堪能したりはしたよ」
世凪が一瞬抱いた可哀そうという感情を壊すような話と、下品な視線に、世凪がため息を吐く。
「だったらもう、わだかまりはなくしてもいいのではないですか?」
これまで全く楽しんでいなかったわけではなさそうだし、アドウェルのことも手駒のように使っていたようだから、幼少期の恨みは消えてもいいのではと思った。けれどフェルジェは、だから複雑なのだと言ってる、と少し拗ねた顔を見せた。
「楽しい学校生活から急に呼び戻された理由が、第二王妃の逝去とレミウェルの誕生だったんだ。また振り回されたって思ってもいいだろう。しかもその後は、全てレミウェル中心だ。オレが小さい頃何度も足を滑らせた廊下は絨毯敷きになって、オレが子どもの時は眺めるだけの庭園になっていた中庭も遊び場となるように整備された。跡継ぎでもない子にばかみたいな金をかけてな」
「フェルジェ様は、アド王子とレミのことが直接嫌いなわけではないんですね。しいて言うなら……ミシェル様とその子供たちを最優先にして王妃もフェルジェ様も大事にしない国王様がお嫌い……?」
世凪の言葉を聞いたフェルジェが、ふふ、と小さく笑う。それから堪えきれないといったふうに笑い出した。
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