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【後日談】君と誓いのキスを何度でも2
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「西の領地ですか。港のある穏やかな気候の街ですね。ここからは決して近くはないですが、比較的整備された道が繋がっているはずですよ」
翌日リゲルのところへ行き事情を話すと、リゲルは穏やかに話した。国王から、これからの身の振り方の選択を迫られていることは話していなかったのに、特に動揺がないのは、ある程度予想していたことなのだろう。対してマリアは目を見開いて、え、と声にしたきり固まってしまった。
「世凪様、ここを出ていかれるんですか……? せっかく残ってくださると思ったのに」
「うん。ここは楽しいけど、アド王子……アドウェルと生きていきたいんだ、僕」
だからここを出ていくよ、と世凪がマリアに笑いかけると、マリアはようやく息を吐いて、そうなんですね、と頷いた。
「私は賛成ですよ。城の中は、アドウェル様にとって、あまりにも不自由ですから……案外、ご自身で事業を立ち上げた方があの方の本領を発揮されるかもしれません」
リゲルがそう言いながら執務机を離れ、部屋のドアへと向かった。そして静かにそのドアを開けるとその場でしゃがみ込んだ。
「あなたはどう思われますか? レミウェル様」
ドアの向こうにはさっきのマリアと同じような表情をしたレミウェルが立っていた。リゲルは彼の存在に気づいていたのだろう。
「レミ……こんなところにどうしたの?」
世凪が驚いて座っていた椅子から立ち上がる。リゲルのいるこちらの建物は主に使用人が使っているところなので、王族であるレミウェルが通りかかることはない。何か用があってここまで来たのだろう。
「……かあさまに、お菓子を届けたくて……かあさま、遠くに行っちゃうの?」
レミウェルを見ると、手には白い箱を携えていた。けれど、その表情はお菓子を届けに来たというにはとても暗い。
「今の話、聞いてたの?」
世凪が聞くと、リゲルに案内されて部屋に入ったレミウェルが世凪の前で立ち止まり頷いた。
「でも、アド兄さまとかあさまが幸せになるなら、ぼくは大丈夫。だって、会いに行ってもいいんでしょう?」
「もちろんだよ。レミが来てくれたら、僕もアド王子も嬉しい」
世凪の言葉を聞いて、レミウェルがほっとしたように微笑む。それから嬉しそうに言葉を返した。
「ぼく、かあさまと兄さまの結婚式楽しみだな」
無邪気な言葉を聞いて、世凪がふと首を傾げる。そういえば婚約はしたし、移住することも決めたけれど、結婚式のことについては何も話していない。
「世凪様は、どんな式が理想ですか? 何も言わずにいると、おそらく国を挙げての一大イベントになりますよ」
リゲルが世凪ににっこりと微笑む。それはそれで楽しみだと言っているような笑顔に世凪は表情をひきつらせた。
「一大イベント、ですか……?」
「そういえば、フェルジェ様の時は朝から夜までずっと祝賀会で、翌日は街のメイン街道で祝賀パレードでしたね。お二人とも何十回とお色直しされて、二日目の夜はお疲れのようで別の寝室でお休みになられてました」
マリアが思い出したように話す。世凪はそれを聞いて表情を更にひきつらせた。
「そ、れは……ちょっと遠慮したい、かな……」
式なんかしなくても、今左手の薬指にあるガラスの指輪さえあればそれでいいと思っている。あとは二人で仲良く暮らしていければ十分なのだ。
「だったらアドウェル様とお話した方がよろしいと思いますよ。アドウェル様は確かに国王様やフェルジェ様に比べれば金銭感覚が我々に近い方ですが、世凪様が相手だとそのリミッターも故障するようですし、あの方が見ている結婚式はフェルジェ様のものだけです」
つまりアドウェルの中での結婚式はフェルジェの時のような派手なものが『普通』で、相手が世凪なら金を掛けることも厭わない、ということになる。
「それは……早急に話したいと思います……」
翌日リゲルのところへ行き事情を話すと、リゲルは穏やかに話した。国王から、これからの身の振り方の選択を迫られていることは話していなかったのに、特に動揺がないのは、ある程度予想していたことなのだろう。対してマリアは目を見開いて、え、と声にしたきり固まってしまった。
「世凪様、ここを出ていかれるんですか……? せっかく残ってくださると思ったのに」
「うん。ここは楽しいけど、アド王子……アドウェルと生きていきたいんだ、僕」
だからここを出ていくよ、と世凪がマリアに笑いかけると、マリアはようやく息を吐いて、そうなんですね、と頷いた。
「私は賛成ですよ。城の中は、アドウェル様にとって、あまりにも不自由ですから……案外、ご自身で事業を立ち上げた方があの方の本領を発揮されるかもしれません」
リゲルがそう言いながら執務机を離れ、部屋のドアへと向かった。そして静かにそのドアを開けるとその場でしゃがみ込んだ。
「あなたはどう思われますか? レミウェル様」
ドアの向こうにはさっきのマリアと同じような表情をしたレミウェルが立っていた。リゲルは彼の存在に気づいていたのだろう。
「レミ……こんなところにどうしたの?」
世凪が驚いて座っていた椅子から立ち上がる。リゲルのいるこちらの建物は主に使用人が使っているところなので、王族であるレミウェルが通りかかることはない。何か用があってここまで来たのだろう。
「……かあさまに、お菓子を届けたくて……かあさま、遠くに行っちゃうの?」
レミウェルを見ると、手には白い箱を携えていた。けれど、その表情はお菓子を届けに来たというにはとても暗い。
「今の話、聞いてたの?」
世凪が聞くと、リゲルに案内されて部屋に入ったレミウェルが世凪の前で立ち止まり頷いた。
「でも、アド兄さまとかあさまが幸せになるなら、ぼくは大丈夫。だって、会いに行ってもいいんでしょう?」
「もちろんだよ。レミが来てくれたら、僕もアド王子も嬉しい」
世凪の言葉を聞いて、レミウェルがほっとしたように微笑む。それから嬉しそうに言葉を返した。
「ぼく、かあさまと兄さまの結婚式楽しみだな」
無邪気な言葉を聞いて、世凪がふと首を傾げる。そういえば婚約はしたし、移住することも決めたけれど、結婚式のことについては何も話していない。
「世凪様は、どんな式が理想ですか? 何も言わずにいると、おそらく国を挙げての一大イベントになりますよ」
リゲルが世凪ににっこりと微笑む。それはそれで楽しみだと言っているような笑顔に世凪は表情をひきつらせた。
「一大イベント、ですか……?」
「そういえば、フェルジェ様の時は朝から夜までずっと祝賀会で、翌日は街のメイン街道で祝賀パレードでしたね。お二人とも何十回とお色直しされて、二日目の夜はお疲れのようで別の寝室でお休みになられてました」
マリアが思い出したように話す。世凪はそれを聞いて表情を更にひきつらせた。
「そ、れは……ちょっと遠慮したい、かな……」
式なんかしなくても、今左手の薬指にあるガラスの指輪さえあればそれでいいと思っている。あとは二人で仲良く暮らしていければ十分なのだ。
「だったらアドウェル様とお話した方がよろしいと思いますよ。アドウェル様は確かに国王様やフェルジェ様に比べれば金銭感覚が我々に近い方ですが、世凪様が相手だとそのリミッターも故障するようですし、あの方が見ている結婚式はフェルジェ様のものだけです」
つまりアドウェルの中での結婚式はフェルジェの時のような派手なものが『普通』で、相手が世凪なら金を掛けることも厭わない、ということになる。
「それは……早急に話したいと思います……」
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