そうだ課長、俺と結婚してください

藤吉めぐみ

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 池上と共に瑛蒔を迎えに行き、そのまま家に上がりこむと、再び瑛蒔と二人でキッチンに立った。あの日、サラダを食べた池上は、ものすごく褒めてくれたようで瑛蒔はそれが嬉しかったらしい。
「仲直りしたんだな、ソウジと」
 本日はジャガイモのニョッキのチーズクリームソースと、瑛蒔のサラダ、バケットにはガーリックバターを塗って焼いている。北海道らしいものを作りたいという瑛蒔のリクエストなだけに、瑛蒔は一生懸命手伝ってくれている。踏み台に乗ってニョッキを小さくちぎって茹でることも怖がらずにやっていた。きっとこれも池上のためなのだろう。
「まあな。仲直りっていうか、仲を深めたというか」
「ふーん」
「だから、今日はお前、早く寝ろ」
 クリームソースを鍋の中でくるくるかき混ぜながら匡史が言うと、言われなくても、と舌を出された。匡史の一言で理解してしまうあたり、ませたガキだと思う反面子供らしい表情にほっとする。
「さ、そろそろ茹で上がっただろ。食うか」
 匡史が火を止め言うと、オレテーブル拭いてくる、と瑛蒔はダイニングへと向かった。まったくよく出来た子だよ、と思いながらその後姿を眺める。池上の教育がよかったんだろうなと思うと、なんとなく池上が瑛蒔をここまで連れてきた理由がわからないでもなかった。
「可愛いんだな、多分」
 責任でもなくて意地でもなくて、ただ瑛蒔が可愛いから。愛しい存在だから。
 そう思うと、なぜだか五歳児に嫉妬してしまう匡史だった。

 食事を終え、池上にお泊り許可を貰った匡史は、瑛蒔と風呂に入った。二人で湯船に浸かり、保育園の話を一通り話した後、瑛蒔はふと、あのさ、と真面目に呟く。
「どした? 瑛蒔。のぼせた?」
「いや……マサチカ、東京行ってきたんだよな」
「ああ。瑛蒔の父さんにも会ったよ。男前な、お前の父さん」
 湯船に浸かったまま匡史は大きく伸びをした。バスタブの縁に両手で掴まったまま、洗い場を見つめる瑛蒔は、ふーん、と答える。
「あのバカオヤジは、いいとこ顔だけだからな」
「こらこら、お父上だろ」
「ソウジと三人で暮らせなくなったのはアイツのせいだから、オレは許してないの!    ところでどうだった? 東京」
「まあ、仕事だからな」
 どうもこうもないよ、と匡史は答えた。色々食べ歩きはしたが、観光らしいことまではさすがに時間がなくてしなかった。出張なのだから当然だ。
「飛行機で行ったんだろ?」
 話が本田から逸れると、瑛蒔は匡史を振り返り笑顔で聞いた。乗り物には興味のある年頃だ。匡史は自分の幼い頃を思い出し、そういえば自分も父親が出張から戻ると電車や飛行機の半券を欲しがっていたなと思った。
「ここからなら、JRで新千歳空港まで行って、そこから飛行機、羽田行きに乗るんだ。こっちに来た時、羽田から乗っただろ? そこに着く。後で飛行機の半券やるよ」
「もっとマシなお土産ないの?」
 そんなのいらない、と言われ匡史は瑛蒔に腕を伸ばした。わき腹をくすぐり、可愛くないガキめ、と笑う。
「やめっ、やーだってば!」
 きゃっきゃと笑いながら瑛蒔は匡史の腕から逃れようともがく。ある程度暴れたところで匡史は瑛蒔から手を離した。
「土産なら、カバンに入ってる。でもデカイカバン、安藤に預けたままなんだよ。明日な」
「しょうがねえな。ちゃんとソウジにも買った?」
「さすがに課長には……」
 そもそもこんな風になれるなんてわからなかったのだ。そこまでの気は廻らない。
「マサチカは、ソウジのことどう思ってるの?」
「どうって、好きだよ。だからここに居る」
 瑛蒔のことも好きだよー、と頭を撫でると、やめろよ、と瑛蒔が頭を振る。
「ソウジの事、ちゃんと好きになってあげてな」
 絶対だぞ、と瑛蒔が真剣な目で匡史を見上げた。匡史はそれに深く頷く。
「わかってるよ。幸せにするつもりだ。お前もな」
 そう言って、くしゃくしゃと瑛蒔の頭を撫でると、今度は嫌がらずに唇を尖らせたまま黙って匡史の手を受け止めていた。
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