【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ

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「楽、どうして、ここに壱月がいるんだよ?」
 そこに居たのは及川だった。動揺から挑むような鋭いものに変わる視線を受けて、壱月は居たたまれず、及川から視線を逸らせた。
 いつの間にか呼び方も『楽』に変わっている。それだけ二人が親しくなっているということだろう。嫌だ、逃げたい――そう思う自分に、もう少し我慢だ、と言い聞かせ、壱月は黙って及川と楽の様子を見つめた。
「どうしてって、説明しても納得いかないって言ったの、そっちだろ。だから、壱月をわざわざ呼んだんだよ。本当は、学祭の時に話してもよかったんだけど、そっちが仕事だとか言うから、合わせてもらった」
 楽に親指で指され、壱月は訝しげな顔で楽を見る。及川が、よく分からないという顔を楽に向けていた。
 正直、壱月にも楽の言っていることが分からない。ただ、壱月に伝えたいことがあるのは分かったので、大人しくそのまま見守ることにする。
「楽、あの日言ったよな? 壱月が出ていったら一緒に住んでくれるって。オレのことも抱けるって言ってくれたよな?」
 及川の言葉が壱月の胸に刺さる。壱月とはしたくないと言ったのに、及川なら抱けるのか。もうこれは決定打と言っていいだろう。
「ああ……言ったな」
 楽も及川の言葉を認めた。
 今自分は傷口に更にナイフを突き立てられているのだろうか。ここまでしなくても、もう壱月が楽を困らせることはしない。これ以上は無理だと判断した壱月がため息を吐く。
「あのさ、楽。もうお前の恋愛に僕を巻き込むの、やめてほしいんだけど。もう、部屋も出ていくし、楽には関わらないよ」
 もう傍で見ているのは辛い。忘れたくても顔を見たらやっぱり好きだと思ってしまう、こんな自分から抜け出したい。それには楽と縁を切るしかないのだ。壱月だって、幸せになりたいのだ。これまで壱月なりに楽を想ってきたのだ。新しい恋を求める権利くらいあるだろう。
 そう思って言うと、楽がこちらをじっと見つめ、口を開いた。
「そんなこと言うなよ、壱月。だって気づいちゃったんだから……一番大事なのは誰か、一番手に入れたいのは誰なのか」
 楽は滅多に見せない真面目な顔で壱月を見つめた。冷え切っていた体が更に冷えていく。体温がどこまでも下がっていくような、そんな気がした。不安だけで鼓動を繰り返していた心臓が、止まりそうなくらい収縮する。
「だから、それって……」
 及川のことだろ、とは言えなくて壱月が黙り込む。その顔を見て、及川が勝ち誇った様に笑んだ。楽の言葉と壱月の態度で、これから楽が何を言わんとするか分かったのだろう。
「楽、こんなこと言う為に壱月呼んだのか? さすがに可哀そうじゃない?」
 眉を下げてこちらを見上げる及川から、壱月が視線を逸らす。
 随分前だが、楽と付き合っていた子からこんな視線を受けたことがある。私の方が楽に近いとか、好かれているとか、そんなマウントのようなものなのだろうと思っていたが、いつの間にかそんなこともなくなり、なんなら楽からの評価を上げようと、壱月と仲良くしようとする子もいたくらいだ。
 多分、由梨乃が言っていたように楽が壱月の話をするからだろう。
 だからこの時の視線は、少し懐かしいとさえ思った。
「……及川、僕はもう帰るから、そんなこと言わなくていいよ。僕は可哀そうとかじゃないから」
 壱月がそれだけ言ってその場を離れようとすると、楽の大きなため息が聞こえ、壱月と及川が楽に視線を向けた。
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