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「近くに車とめてあるから、そこまで歩いていい?」
「あ、はい。秋生さん車だったんですね」
それで、朱莉にワインを勧めたのに、自分はアルコールを入れていなかったのかと納得する。以前、酔った勢いでキスをしてしまった。その次に会った時は同じ間違いを繰り返さないようにアルコールを抜いたのだと思っていたのだが、朱莉が彼女と間違えたのだと勘違いしていただけで、あのキスだって秋生が朱莉にしたいと思ってしてくれたものなのだから、もう一緒にお酒を飲んでもいいのに、むしろ酔ってキスをしてくれるならその方がいいのにと思っていたのだ。
「うん。帰りはやっぱり送ってあげたくて」
店を出た秋生が朱莉の手を掴む。歩く時は必ず手を繋いでくれるのが嬉しかった。肩や腰を抱き寄せて歩く人もいたし、腕を組むように言う人もいたけれど、どちらも結局朱莉を『自分のもの』と周りに言いたいだけのアピールで必要以上にくっつかせていたんだと思う。こうやって、対等に、でも朱莉が利き手を預けられるくらいの信頼で繋ぐ手は、朱莉にとってとても嬉しいものだった。
「ありがとうございます、秋生さん」
「全然。僕が心配なだけだから……せっかくだから少し遠回りして帰ろうか」
ちょっとだけドライブってどうかな? と聞かれ、朱莉がそれに頷いた。まだ時間は早いし、秋生の隣でするドライブはきっと楽しいだろう。嬉しくて微笑むと、秋生がぎゅっと手を握ってこちらを優しい目で見つめていた。それだけで心臓が跳ねる。
ベッドでこんな目で見下ろされたらドキドキしすぎて気絶しちゃうかも、なんて思いながら朱莉は秋生の手を握り返した。
秋生の運転する車で海の方へと向かい、途中でコーヒーを買って少しだけ散歩をしてから、再び車に乗り込み、ぐるりと一周するように遠回りドライブを二時間ほどした。海沿いの公園を散歩するのも楽しかったし、車窓から見える夜景もすごくきれいだったし、なにより運転中の秋生の横顔はすごくカッコよかった。
きっとこれからもっとカッコいい秋生を見ることができるのだろうと、その時の朱莉はわくわくしていた。
「じゃあ、今日はここで。一日ありがとう、お疲れ様」
けれど、朱莉が住むアパートの前で、こんなふうに言われるとは思っていなくて、朱莉は思わず助手席に座ったまま、え、と聞き返してしまった。
ドライブは雰囲気作りと時間稼ぎで、これからがデートのメインなのではないか。
「一日連れ出しちゃったから疲れたでしょ。ゆっくり休んで。また、連絡するよ」
朱莉の反応には気にも留めず、秋生は優しく言うと、朱莉の頬を撫でてこちらに近づいた。そのまま額にキスをして離れる。
「おやすみ、朱莉くん」
そこまで言われてしまってはもう車を降りるしかない。
「おやすみなさい、秋生さん……」
朱莉が助手席のドアを開け、車を降りる。ドアを閉めると、窓が開いて、秋生がこちらに微笑んだ。
「ちゃんと暖かくしてね」
「はい……あ、あの……また、会えますか……?」
こんなにあっさりと車を降ろされて少し不安になった朱莉が車の傍に寄り、秋生を見つめる。秋生は優しく笑って、当たり前でしょ、と朱莉を見つめた。
「……好きだよ、朱莉くん。また、近いうちにデートしよう。電話もする」
「はい……ぼくも、好き、です……」
朱莉がそう言って車から離れると、秋生は窓を閉め、ゆっくりと車を走らせた。テールライトが次第に遠くなり、朱莉は小さくため息を吐く。
こんなところで終わるデートだとは思っていなかった。これまでは、朱莉が『帰る』と言わない限り、ベッドに入るまで離してもらえなさそうな感じのものばかりで、向こうからこんなふうに送ってくれて別れるなんて滅多にない。
秋生は好きだと言ってくれたけど、それも優しさのうちだとしたら……そんなことを考え始めてしまう自分を否定するように頭を振った朱莉はとぼとぼと部屋へと戻っていった。
「あ、はい。秋生さん車だったんですね」
それで、朱莉にワインを勧めたのに、自分はアルコールを入れていなかったのかと納得する。以前、酔った勢いでキスをしてしまった。その次に会った時は同じ間違いを繰り返さないようにアルコールを抜いたのだと思っていたのだが、朱莉が彼女と間違えたのだと勘違いしていただけで、あのキスだって秋生が朱莉にしたいと思ってしてくれたものなのだから、もう一緒にお酒を飲んでもいいのに、むしろ酔ってキスをしてくれるならその方がいいのにと思っていたのだ。
「うん。帰りはやっぱり送ってあげたくて」
店を出た秋生が朱莉の手を掴む。歩く時は必ず手を繋いでくれるのが嬉しかった。肩や腰を抱き寄せて歩く人もいたし、腕を組むように言う人もいたけれど、どちらも結局朱莉を『自分のもの』と周りに言いたいだけのアピールで必要以上にくっつかせていたんだと思う。こうやって、対等に、でも朱莉が利き手を預けられるくらいの信頼で繋ぐ手は、朱莉にとってとても嬉しいものだった。
「ありがとうございます、秋生さん」
「全然。僕が心配なだけだから……せっかくだから少し遠回りして帰ろうか」
ちょっとだけドライブってどうかな? と聞かれ、朱莉がそれに頷いた。まだ時間は早いし、秋生の隣でするドライブはきっと楽しいだろう。嬉しくて微笑むと、秋生がぎゅっと手を握ってこちらを優しい目で見つめていた。それだけで心臓が跳ねる。
ベッドでこんな目で見下ろされたらドキドキしすぎて気絶しちゃうかも、なんて思いながら朱莉は秋生の手を握り返した。
秋生の運転する車で海の方へと向かい、途中でコーヒーを買って少しだけ散歩をしてから、再び車に乗り込み、ぐるりと一周するように遠回りドライブを二時間ほどした。海沿いの公園を散歩するのも楽しかったし、車窓から見える夜景もすごくきれいだったし、なにより運転中の秋生の横顔はすごくカッコよかった。
きっとこれからもっとカッコいい秋生を見ることができるのだろうと、その時の朱莉はわくわくしていた。
「じゃあ、今日はここで。一日ありがとう、お疲れ様」
けれど、朱莉が住むアパートの前で、こんなふうに言われるとは思っていなくて、朱莉は思わず助手席に座ったまま、え、と聞き返してしまった。
ドライブは雰囲気作りと時間稼ぎで、これからがデートのメインなのではないか。
「一日連れ出しちゃったから疲れたでしょ。ゆっくり休んで。また、連絡するよ」
朱莉の反応には気にも留めず、秋生は優しく言うと、朱莉の頬を撫でてこちらに近づいた。そのまま額にキスをして離れる。
「おやすみ、朱莉くん」
そこまで言われてしまってはもう車を降りるしかない。
「おやすみなさい、秋生さん……」
朱莉が助手席のドアを開け、車を降りる。ドアを閉めると、窓が開いて、秋生がこちらに微笑んだ。
「ちゃんと暖かくしてね」
「はい……あ、あの……また、会えますか……?」
こんなにあっさりと車を降ろされて少し不安になった朱莉が車の傍に寄り、秋生を見つめる。秋生は優しく笑って、当たり前でしょ、と朱莉を見つめた。
「……好きだよ、朱莉くん。また、近いうちにデートしよう。電話もする」
「はい……ぼくも、好き、です……」
朱莉がそう言って車から離れると、秋生は窓を閉め、ゆっくりと車を走らせた。テールライトが次第に遠くなり、朱莉は小さくため息を吐く。
こんなところで終わるデートだとは思っていなかった。これまでは、朱莉が『帰る』と言わない限り、ベッドに入るまで離してもらえなさそうな感じのものばかりで、向こうからこんなふうに送ってくれて別れるなんて滅多にない。
秋生は好きだと言ってくれたけど、それも優しさのうちだとしたら……そんなことを考え始めてしまう自分を否定するように頭を振った朱莉はとぼとぼと部屋へと戻っていった。
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