用心棒な家政夫

ハジメユキノ

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ホームパーティー

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「こんばんは~!伊織くん、久しぶり!」
三人はそれぞれ持ち寄ってきてくれた。
糸は得意のサーモンの押し寿司を作ってきた。拓馬の好物だ。
「わっ!久しぶり!母さんの押し寿司!俺、これ好きなんだよ(笑)」
「私も~!お母さんの押し寿司美味しいんだよね~」
爽は見た目によらず和食が得意なので、筑前煮を作ってきた。
「すごいな!ちゃんとしたお店のみたいだ!」
安田が横から覗いて驚いていた。塗りのお重に、板前ばりに美しくカットされた根菜に、サヤエンドウが飾り切りされて添えてある。
「買ってきたみたいな事言わないで!」
「だってさ、野菜の切り方もきれいだし…」
「お母さん仕込みなの。味もお母さんのお墨付きなんだから」
「私より上手なのよ。安田くん、お嫁にもらってよ」
いつものように爽を茶化すと、意外な反応が返ってきた。
「私、お母さんに…」
「待って!俺に言わせてよ」
「あら」
糸はピンときた。
「俺、やっと報われました!」
「何!その言い方!」
爽はムッとしていたが、他はみんな良かったねぇと安堵の表情。
「良かったわね。爽の鈍さは折り紙付きだから、あと2、3年かかると思ってたわ」
「良かったね!こいつ、守ってあげちゃう方だったから、安田くんに守られてるのに気付いてなかったもんな」
「良かったです!安田さん、爽さんのこと大好きですもんね」
三人に言いたい放題言われて、さすがの爽もシュンとなっていた。
「私、そんなに鈍いの?」
「そこも込みで好きになったんだからいいんです」
安田がさらっと言うので、爽は真っ赤になってしまった。
「で、俺はみんなの幸せを願って、これです!」
赤と白のワインをぶら下げて来ていた。
「おめでたいでしょ?」
「何の料理にも合いそうね」
「みんな飲みそうだから、楽しいお酒になりそうですよね」
拓馬が伊織を心配そうに見た。
「伊織は飲むとキャラが変わるから…」
「酒癖悪いの?」
「いや…。ふにゃふにゃになる…」
「よく分かんないよ。家の中なんだからいいじゃない」
「僕、あんまり覚えてないです…。どうなるんだろ?」
当の本人が分からないものは、とにかく飲んでみるしかない。
「さぁ始めましょ!」

テーブルにはすっかり料理が並んでいた。コブサラダ(チキンソテーにアボカド、ゆで卵、キュウリ、トマトを全部角切りにして、タマネギのみじん切りが入ったオーロラソースをかける)にローストビーフ、伊織が頑張っただし巻き卵につくねの照り焼き、拓馬と一緒に作った春巻まであった。
「伊織くんもレパートリー増えたわね♪」
糸に褒められると、伊織は嬉しそうに言った。
「僕、お母さんの卵焼きが美味しかったから、拓馬さんに教わって作ってみました」
「美味しそう!」
「グラス持ってくるね」
拓馬が取りに行くと、伊織も席を立って手伝ってくれた。
「すっかり夫婦みたいだわね」
「お似合い…」
仲睦まじい二人の様子に、男とか女とか関係ないんだなと安田は思っていた。

伊織が酔っ払うとふにゃふにゃになるという意味を皆が理解した。本人以外は…。
「猫みたいね(笑)」
爽は拓馬の膝に寝かされている伊織を見て笑った。
「でも。グラス1杯でここまでふにゃふにゃになるのね」
「伊織、お水飲みなさい」
「ん…。はい」
「もうねる?」
「僕、ここにいたいです…」
お水を飲むと、頑張って椅子に座っていた。
「お兄ちゃん、可愛くてしょうがないでしょ?」
「まあね」
「否定しない…」
爽は拓馬に若干呆れながらも、ここまで一途になれる二人の姿が眩しく感じた。隣に座る安田をチラッと盗み見て、お兄ちゃんみたいになれるかなと思っていた。
「何?」
気付かれてないと思っていたのに、安田は爽の視線を感じていた。今まで気付かなかったけど、こんなに優しい目してたんだっけ?と爽はだんだん頬が熱くなるのを感じていた。
「ううん。何でもない」
「何だよ」
「ん…、あんなに仲睦まじいのっていいなって思ったの」
「じゃあ、俺らも頑張ればいいじゃん」
「…」
「何か言えよ~」
「まだ慣れないの!」
安田は笑った。スゴく幸せそうに。爽はこの人を好きになって良かったと、テーブルの下の安田の手をキュッと握った。爽より骨ばった安田の手が、強く握り返した。

……………………………………………………………………
伊織はあの後、頑張って起きていたつもりだったのだが、気付いたらベッドに寝かされていた。リビングからは楽しそうな話し声が聞こえてくる。
「みんな楽しそう…」
その会話がまるで子守歌のように、伊織を夢の中へと誘っていった。

「じゃあ今度は家に連れてくるのよ(笑)」
糸は伊織が拓馬のために一生懸命料理を覚えようとしていたのを見て、今度は私の味を覚えてもらいたいなと思っていた。
「押し寿司教えてあげようかな」
すっかり気に入られた様子に、拓馬は内心ホッとしていた。いくら理解があるとはいえ、孫の顔はさすがに見せてあげられないから。
「お兄ちゃん。今日はありがと」
「ごちそう様でした。ほんとに美味しかったです!」
拓馬は安田なら爽を安心して任せられると思っていた。
「安田くん。爽のこと、よろしく頼むね」
「それだけは任せてもらって大丈夫です!」
「それだけはって!何?」
「他のことは人並みかもしれないけど、それだけは誰にも負けない自信があるんだよ」
すると、さすがの拓馬も当てられたなと思った。
「はいはい。ごちそうさま(笑)」
「いつも当てられっぱなしだったので(笑)」
「爽、安田くんは俺のお墨付きだよ(笑)」
「お母さんも嬉しいわ!ほんとに息子になって欲しかったんだもの(笑)」
安田はやっと人前でも触れるようになったと、爽の手をしっかり握っていた。爽はほんとに恥ずかしそうだった。

みんなが帰った後、伊織の様子を見に行くとぽけーっとベッドの上に起き上がっていた。
「伊織?起きたの?」
何も言わずぽーっと拓馬を見つめる伊織。
「どした?」
ベッドを降りて拓馬に抱きついてきた。
「甘えてんの?」
「うん…」
珍しく伊織の方からキスをしてきた。
「酔っぱらってる?」
「うん。気持ちいい…」
「どれ」
伊織を抱えると、ベッドに連れていった。伊織は拓馬の首にしがみついて離さない。
「ね、して?」
耳に囁く。
「飲みすぎだな」
「いやですか?」
素面の時とは違う、艶めかしい伊織がいた。
「俺、手加減できないかもよ?」
返事の代わりにキスの雨が降ってきた。
「僕がするの」
「跡は付けちゃダメだよ?」
「見えないとこならいい?」
返事を待たずに鎖骨に吸い付いていた。
「やっぱり飲ませちゃダメだな…」

指を絡めて伊織を組み敷くと、可愛い唇を奪った。いつもなら恥ずかしそうに応えてくるのに、今日は拓馬が気持ち良くなりそうだった。
「もお!覚悟してね」
伊織は体中にキスを受けながら、ずっと拓馬を呼び続けていた。
「触ってないのに…やらしいな」
伊織の硬くなったものに拓馬は優しくキスした。指と舌でコリコリと刺激すると、どんどん濡れてくる。後ろはローションが要らないほど先走りで濡れていた。
「もう柔らかいよ…。俺が準備したいって言ってるのに…」
「だって…」
「だって、何?」
「…欲しかったんだもん」
あ~もう!変わりすぎでしょ!
拓馬はたまらず奥まで挿れた。柔らかな入り口は拓馬をするんと受け入れ、中は熱く吸い付いてきた。
「伊織…気持ちいいよ」
「あっ!たくまも…きもちいい?」
紅潮した顔が、嬉しそうに微笑んだ。
「うん」
「うれしい…」
体力差があるからか、3回目の途中で伊織は意識を失ってしまった。

「ん、ん~!」
伊織が目を覚ますと、もう大分日が高くなっていた。起き上がろうとすると、腰がだるくて動けなかった。ベットの中には拓馬の姿はない。
「拓馬?」
伊織が起きた物音を聞いて拓馬がドアを開けて顔を出した。
「おっ?起きたな(笑)」
朝からスゴい笑顔。
「おはようございます、拓馬さん」
「おはよ。昨日のこと覚えてる?」
「え?昨日のこと?」
拓馬は深い深いため息をついた。
「やっぱり…」
伊織は何をやらかしてしまったのかと慌てた。
「えっ?僕、失礼なことしちゃったんですか?」
あわあわしている伊織に拓馬は近づいてきて、ほっぺにキスした。
「違うよ。昨日スゴい可愛かったの♡」
な、何?全然覚えてない…。
真っ赤になっている伊織を抱きしめて、
「俺が覚えてるからいいの」
と意味深なことを呟いた。伊織の頭の上には?マークが何個も浮かんでいた。
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