1 / 2
卵を投げる群衆ー語感とリズムの練習ー
しおりを挟む
大きな大きなその建物は群衆の叫びを飲み込んだ。ひたすらに沈黙し、人々が息を潜めている姿を覆い隠すかのように、聳え立っていた。
そんなそっけない態度をとるソレに対し、群衆はひたすらに言葉を投げかけている。
「民主主義を返せ」だの「戦争法案ぶっ壊せ!」だのと投げかけている。
しかしそれは言葉を投げているというより、石を投げているようであり、そのじつ卵を投げているも同然であり、相手を傷つけることはかなわず、万が一にも自分を傷つけることもない。
言葉は見えない壁にぶつかり、パラパラと砕けちり、汚れすらつかず、その残骸だけが虚しく地に落ちるけだった。でも彼らは卵を投げる。なんどもなんども投げる。ある者は大きく振りかぶり、ある者は下手から放るように投げる。
やがて誰かの泣き声がした。赤ん坊が泣いていた。群衆に参加している母親の腕の中で「ア゛ーア゛ー」と泣いている。まるで軽くて硬くて脆いナニカがあたったかのように。
しかしその声はかき消される。そして更に泣き声は大きくなる。彼らの言葉は柔らかく無垢な存在にしか届かず、しかし柔らかく無垢な存在はその意味を解さない。
彼らはその泣き声には気づかない。自分たちの泣き声を届けるのに精一杯だからだ。
そんなそっけない態度をとるソレに対し、群衆はひたすらに言葉を投げかけている。
「民主主義を返せ」だの「戦争法案ぶっ壊せ!」だのと投げかけている。
しかしそれは言葉を投げているというより、石を投げているようであり、そのじつ卵を投げているも同然であり、相手を傷つけることはかなわず、万が一にも自分を傷つけることもない。
言葉は見えない壁にぶつかり、パラパラと砕けちり、汚れすらつかず、その残骸だけが虚しく地に落ちるけだった。でも彼らは卵を投げる。なんどもなんども投げる。ある者は大きく振りかぶり、ある者は下手から放るように投げる。
やがて誰かの泣き声がした。赤ん坊が泣いていた。群衆に参加している母親の腕の中で「ア゛ーア゛ー」と泣いている。まるで軽くて硬くて脆いナニカがあたったかのように。
しかしその声はかき消される。そして更に泣き声は大きくなる。彼らの言葉は柔らかく無垢な存在にしか届かず、しかし柔らかく無垢な存在はその意味を解さない。
彼らはその泣き声には気づかない。自分たちの泣き声を届けるのに精一杯だからだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる