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★本編★あなたのタマシイいただきます!
【6-1】帰ってきた男とバカンスの蝶※R18
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◉◉ 何者でもない誰か(語り部)◉◉
空港近くの防波堤にマオカラーのスーツを着た集団が佇む。
その中に、日本という国には不釣り合いな派手なアロハシャツの長身の男が一人。
髪はシルバーの輝きをもつ透き通った短髪と襟足から伸びる赤い毛が潮風に揺らされている。
瞳は黒いサングラスに覆われ風貌の全体はうかがえないが、ふざけた格好とは裏腹にこの集団の核となる男、九鬼〈くき〉が取り巻きにヒラヒラと手を振る。
「ゴクローサン。もうここまででイイから。」
「しかし、ボス…!!」
「んー。そっちに居るときは父上の建前が有るから同行は許可するけど、日本に入ったらソレは無しの約束デショ?」
おちゃらけた調子で食えない笑みを湛え。
糸目を更に細めた瞳がサングラス越しに鋭い眼光を周りのものに向ける。
ガラの悪い屈強な男たちは一瞬にして萎縮し、九鬼の気に触れないようにと背筋を正す。
「ボクは今と───っても、機嫌がイイからもう一度言うヨ?そもそもキミ達じゃボクの護衛なんて務まらないデショ?
──────だからさっさと消えて、ネ?」
声の音こそ、おどけるようなものだが笑っているのに瞳は笑っていない。
異様な空気があたり一面に漂う。
ボクの気が変わらないうちに、と、言わなくても良いくらいに他の男たちを圧倒し支配していく。
直ぐ様、蜘蛛の子を散らすように取り巻きは居なくなり、赤い襟足を棚引かせながら男はガードレールに凭れかかり、大きく背伸びをする。
「んー。やっと帰ってこれたヨ~。
もー、ホント面倒な家に産まれたよねー、ボクって可哀想だと思わない?」
誰もいない空間で独り言を呟く。
九鬼の周りに人は居ないが荷物は溢れかえっており、幾つもあるスーツケースをキャリーにロープで縛るようにして纏めていく。
「どっかにカワイイ子、転がってないかナァ」
おおよそ、人一人では運ぶのが不可能なほど積み上がったキャリーの車輪を歪ませながら、力ずくで転がし、目的地へと向かい歩き始める。
鼻歌まじりで目的地へと向かう途中、ガードレールの切れ目に赤い火の玉が揺れたのを九鬼は見逃さなかった。
「こんなところで会えるなんてね。
ボク、超ラッキーじゃん☆連れて帰ったら喜んでくれるかナ…?」
細い瞳がゆっくりと開く。
既に九鬼の脳内は一つのことに侵されているように、《紅い魂─あかいたましい─》 に近づいていく。
そう、九鬼も《紅い魂》が見える者の一人である。
口角は上がりっぱなしで、何処か狂気じみた雰囲気を隠すようにと仮面を貼り付け、《紅魂ーあかたまー》との距離を詰め、──────そっと、その魂へと触れた。
▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲
∞∞ nayuta side ∞∞
「はーぁ、疲れたー。」
「お疲れ様です那由多くん、上手くなりましたね。」
喫茶【シロフクロウ】は既にClose作業を終え、今はマスターと俺の二人だけだ。
俺はと言うと、紅茶の淹れ方を教わっているところだ。
まだマスターみたいに優雅に入れることはできないが、入れたものに関してはなんとかお金を貰って飲めるものにはなってきたと思う。
紅茶は基本ティーポットのままで提供するので、茶葉の量、湯の量、蒸らし時間を間違わなければ問題ないのだが、いかんせん紅茶の種類も多く、覚えるのが大変である。
マスターは紅茶派なので、紅茶によっても、ミルクがオススメだとか、ストレートがいいとか濃いめ薄めなど、こだわりがあるようだ。
普段マスターがいるカウンター内に俺がいて、マスターがお客さんが座るカウンターに居る。
とてつもなく不思議な感じがするが、今は練習中だから仕方がない。
それにしても、マスターはカウンターの中で入れる姿も優雅なのだが、紅茶を飲む様にも品がある。
唇を薄くマグカップにつけ、少しずつ音を立てずにカップを傾ける様は絵になる。
ぼーっと、俺がマスターを見つめていると、自然と彼と視線が合った。
マスターがマグカップをソーサーに起き、そのまま流れるように手が伸びてきて俺の顎が掬い上げられる。
予想もしない展開に俺の心臓に一気に血液が集まり、激しく音を立てる。
この、流れるような所作はよく漫画とかでは見るけど、まさか俺にこの展開が訪れるとは思ってもみなかった。
次の瞬間、俺の想像通りにマスターが立ち上がるようにして俺に顔を寄せてきて、このままキスをされてしまうと思った俺は甘いマスターの匂いに鼻腔を擽られながらギュッと瞼を落とした────が。
「マス…タ──」「糸くず、…ついてますよ那由多くん。」
俺の行き過ぎた想像を打ち砕くマスターの声に、パチパチと数度瞬くと頭の先から足の指先まで真っ赤に染まっていく。
穴があったら入りたい!
てか、そもそも、俺達男同士だからあり得ないやつだろ!那由多しっかりしろ!
いくらマスター推しと言えど自分の行き過ぎた妄想に俺はカウンターに突っ伏した。
「戸締まり確認して………きます。」
気を取り直すようにそう言葉を告げて、喫茶【シロフクロウ】の、エントランスへと向かう。
マスターの顔がまともに見れないので少し俯いたまま、扉の側まで来た瞬間。
「ミンナ、たっだいまー!おまたせ~☆
…あ、ごめん、なゆゆ居たんだ、ミジンコみたいだから気づかなかったヨ」
「────っでぇ!!!……くき、せ……オーナー、それ酷すぎますッ!」
ゴン、と、けたたましい音を立てて俺の額に扉がぶつかる。
俺はその場に蹲り、額を手で押さえながら昔と変わらない高校時代の先輩の言葉を受け止める。
かなーり、久々に会った筈なのに何も変わってないことに俺は小さく笑みを浮かべた。
額は死ぬほど痛いけど。
不意に俺の視界にこの季節には不釣り合いなビーチサンダルが、映る。
しゃがみこんだままゆっくりと顔を上げると、どんなバカンスに行ってきたんだと言わんばかりの真っ赤なアロハシャツと黒いサングラスをかけた、この喫茶【シロフクロウ】の土地の所有者、即ちオーナーの…九鬼〈くき〉先輩が居た。
懐かしんでいた俺の気持ちは一気に凍てつき、相変わらずぶっ飛んでいるこの人に俺の体は硬直する。
それだけじゃ飽き足らず、どうやって持ってきたのか分からないくらいの荷物をキャリーに積み上げ、更にはなんか、メチャクチャ美形で長身のモデルのような黒髪の女性を、……侍らせている。
もう、嫉妬やら呆れやら驚きやら、すべての感情がごちゃまぜになって俺は大きく溜息を吐いた。
「九鬼…遅かったですね。」
マスターから九鬼オーナーに声がかかるが、何処か冷ややかな音のような気がして蹲ったままの俺はマスターを見遣る。
いつも通りの表情でマスターはカウンターに腰を付け、凭れるようにして腕を組んでいた。
「んー。ニホンに着いたのは早かったんだけどサ、カノジョがどーしてもイロイロ行きたいって言うからデートしてきちゃった☆
あ、カノジョ、“たてはちゃん”って言うんだ、ヨロシクね!」
何だろう、色々ツッコミたい事が多くて頭の処理が間に合わない。
いっその事マスターにバイト先に彼女連れてくんなって言ってほしいが、九鬼オーナーの部屋はこの土地の最上階に有るのでそんな事も言えない。
それに、マスターから発せられるオーラが何処かいつもと違うのも気になる。
あれ、そういえば、九鬼オーナーの連れてる女性ってなんか見た事あると思ったら。
俺は九鬼オーナーにすり寄る女性と、カウンターに凭れているマスターを交互に見ると、納得がいったかのように瞬く。
何というか、二人は見た目が異様に似ている。
雰囲気は全く違うが、髪の色、瞳、胸の有無はあるがスタイル…全てが似ている。
「これから、ボク達ベッドでイチャイチャするんだ。
カノジョ、可哀想なんだヨ~、いろーんな男性に騙されて捨てられて、最後は殺〈や〉られちゃって海にポイ捨てされたらしくてね。
サイゴにイイ思いさせてあげたら《食霊─しょくれい─》 させてくれるって言うからサ、連れてきちゃった!」
色々耳を塞ぎたいリア充話に俺は項垂れたが。
不意に違和感を覚えて床を見つめながら瞬いた。
やられた?
ヤられた?
殺された?
《食霊》?
俺はゆっくりと九鬼先輩の横の彼女を見た。
もしかすると彼女は《紅い魂─あかいたましい─》 なのか?
視線を女性へと戻すと、俺はゴクリと喉を動かす。
少し離れた位置からマスターの声が降ってきて視線だけを向けた。
「“イイコト”を、していただくのは構わないのですが…」
「どうしたの?左千夫くん、もしかして嫉妬してくれてるの~?カワイイとこあるネ☆
それとも、3Pでもする~?」
「嫉妬ですか、…確かにそのストライクゾーンの広さには嫉妬しますね。
流石の僕も“そこまで”のものは抱けません。」
蹲った俺を挟んで二人が物凄い会話をしている。
マスターは九鬼オーナーに対して昔からこんな態度であったが、昔はもう少し愛があるというか、九鬼オーナーのイタズラに心を動かされていたというか…。
なんというか、今はもう、無、である。
怒ってるわけでもないし、勿論嫉妬してる訳でもない。
そして、引っ掛かるのがマスターが九鬼先輩の横の美女を“そこまで”のものと表現することだ。
“彼女”は俺から見たら、男だったら誰しもが抱いてみたいと思えるほど整った容姿の持ち主だからだ。
その返答に九鬼先輩がサングラスを外しポケットに放り込む、糸目だったその目が開くと急に表情に冷たさが宿る。
「ンー…気になるナ。左千夫くん、前も言ってたよネ、それどー言うこと?」
「それでは、僕が観てる世界を見せて差し上げましょう。調度那由多くんが居ますしね、僕の力を共有するまでもなく観る事ができますよ。」
そうなると次はマスターが愉しそうに笑みを浮かべる。
因みに俺の心臓はマスターにキスされるかも!と、勘違いしたときから、もうずっといつもの5割増しくらいに動いていた。
このままでは心臓を動かし過ぎてすぐに寿命が来るかもしれないと、色んな意味でドキドキしっぱなしだ。
そして、何故か、この話題の火種が俺へと飛んできた。
俺はしゃがんだまま、ガバっとマスターの方を振り仰ぐ。
「ママママママ、マスター、どう言う意味…」
「那由多くん、“たては”さん、って呼んでみてください。」
マスターが俺の言葉を遮るようににこやかに告げるとカウンターから離れて俺の方へと歩いてくる。
1度、視線は俺に向けて微笑んだ後、マスター似の美女を見詰める。
俺もそれにつられるように立ち上がると、視線を女性へと向けた。
「は、………はじめまして、“たては”さん。」
人見知りの俺にとってはかなりハードルが高い美女の名前を、ぎこちない笑みを浮かべながら呼んだ。
その瞬間ふわりと彼女の中の魂が発光したかのように赤く輝くが、次の瞬間グロテスクな見た目が俺の視界に映った。
すかさず、後ろのマスターの手がよろける俺の目を塞いでくれて、背中を支えてくれる。
「………ヒィ!!マスター、あれなんなんで…すかっ」
「彼女の死体は海に捨てられたんですよ、那由多くん」
マスターが俺の視界を塞いでしまったので、ほんの少し見えただけだったが、トラウマに残るレベルの水死体だった。
目も舌も押し出されるように垂れ下がり、ゼリーのようなドロドロとした皮膚は2倍にも3倍にも膨張していた気がする。
マスターの指の隙間からもう一度見たいような見たくないような、怖いもの見たさとはこのことだろうか。
いつもなら既に逃げ出している俺だが、マスターが後ろで支えてくれている安心感が半端なく、なんとかその場に留まることが出来た。
「ワォ☆そーいうことか。左千夫くんもホントイケずだよね~。
マァ、ボクは見た目はキニシナイタイプだから大丈夫だヨ、たてはちゃん────たてはちゃ…ん?」
そこは気にしてください!九鬼オーナー!!
次の瞬間、ピリッと空気が凍りつくのが分かった。
オーナーが俺から手を離すと視界が戻ってくる。
また、あの水死体を見なければいけないのかと思ったが、そこには全く違う光景が広がっていて瞠目した。
金髪の小柄な女性の腕が細く氷柱のように伸び、九鬼オーナーの腹部を貫通していた。
「九鬼オーナーッ!」
「“転送”します。」
マスターがそう告げた瞬間、視界の前が白く霞む。
∞∞ nayuta side ∞∞
次の瞬間見たことの無い光景が目の前に広がる。
先程まで喫茶【シロフクロウ】に居たはずなのに、アニメに出てきそうな訓練施設に飛ばされたようだ。
そういや晴生が、喫茶【シロフクロウ】内で《紅魂ーあかたまー》 が、暴れたときは地下の訓練施設に転送できる装置がありますって言ってたけど、これのことか?
流れについていけないが、マスターは既に喫茶【シロフクロウ】の制服ではなく、“もう一つの仕事”の白い服装へと形態を変化させていた。
俺はそんな事より、目の前で倒れて流血している九鬼オーナーに体が戦慄く。
「九鬼、いい加減遊んでないでさっさとしてください。」
「あれ~やっぱりバレちゃった?少しは驚いてくれたらいいのにー。」
「え?…え!?ちょ!九鬼オーナー、何してるんですか!ホント」
「はい、なゆゆ。ケチャップあげる~、あーあ、シャツお気に入りだったのに~!
弁償してよネ、“たては”ちゃん」
九鬼オーナーは無事だった。
ムクリと立ち上がると一瞬で跳躍し俺達の傍へと戻ってくる。
貫通したように見えたが実際は彼のアロハシャツを穿いただけで、しかも、赤い血液に見えたものは……ケチャップらしい。
床にもケチャップは散乱しているが、九鬼オーナーの白いタンクトップも真っ赤に汚れていた。
渡されたケチャップのボトルをなんとも言えない表情で見つめ、もし俺がいなくてオーナーだけでもこんな小芝居をしたのかどうか気になったのだが、相変わらずな九鬼先輩に俺は安堵の溜息を漏らした。
しかし、目の前の《紅魂》 が片付いた訳ではない。
先程のグロテスクな水死体ではなく、金髪で巻き髪の小柄な女性がそこには立っていた。
勿論、不細工なんかではない、でもなんか、神々しさと言うのか、容姿だけがもたらす圧倒的な精巧な美はその女性から感じられず、もう一度俺はマスターと女性に交互に視線を向けた。
マスターが俺に気付き笑みを浮かべたまま口を開く。
「九鬼の能力、“創造”が起こしている現象だと思いますよ。《紅い魂》を彼が人間に創り上げているんです。
那由多くんの実体化とは違い、九鬼が創り上げてしまうので見た目は原型からはかなりズレますがね。」
▽▽ KUKi side ▽▽
ソレ、ボク初めて聞いたんだけど…。
じゃァ、ナニ?今までボクが見てきたやつって全部ボクが創り上げてたってこと?
ボクってやっぱセンス最高だネ!
ただ、今まで《食霊─しょくれい─》 した、首吊り、飛び降り、飛び込み、焼死体が実際はどんな風だったかは気になった。
別に死体をみて興奮する性癖を持ってる訳ではないけど、“普通”に飽きてしまっているボクにしてみれば、少しでも変わったものに触れたい。
好奇心の塊ってやつだ。
破れたアロハシャツを脱ぎ捨てると、ボク専用のグローブを両手にはめる。
そして《紅魂》をもう一度見詰めると、自然と視線を眇めた。
千星那由多〈せんぼし なゆた〉 ことなゆゆが《紅魂》を実体化できることは情報として聞かされていた。
左千夫くんの言うとおり、僕は《紅い魂》を人の形に創り上げる事はできるが、エネルギー量を変えることはできない。
でも、ボクの目の前にいる《紅魂》の“たては”ちゃんは僕が創り上げたときよりもかなり大きなエネルギー量となっていた。
昔から役には立たなかったケド、やっぱりなゆゆは面白いと自然に口角が上がる。
さて、左千夫くんの視線が冷たさを含んで来たので彼に《食霊》されてしまう前に、ボクが《食霊》することにしよう。
カノジョと“イイコト”ができないのは残念だけどネ~。
「“たては”ちゃん酷いナ。どうして殺そうとしたの?」
「ごめんなさい…死んだときの苦しみを思い出して気が動転したんです。」
「そうやって何人騙してきたの?」
ボクは知っている。
カノジョが本当のことを言っていないと言うことくらい。
カノジョは男に騙されて殺されたと言っていたがホントは逆だろう。
男から貢がせるだけ貢がせてポイ捨てするタイプだ。
ここに戻ってくるまでの道中だってボディタッチの数といい、モノを強請る量といい、明らかに騙す側の手腕だった。
ボクが創り上げた見た目でボクに奉仕してくれる様は興奮したけど、もう今は完全に興味は失せた。
《紅魂》と言うものは図星をつくと大体本性を表してくる、ほら見て、今だってボクがそう言葉を掛けただけで醜い表情で笑いだした。
「何人かわかんないわぁ!だって男の人ってバカばっかりだもん」
先程の土左衛門、水死体ほどではないが肌はドロっと溶けて、まるでヘドロが纏わりついているような風貌へと変化していく。
屍姦と言う言葉があるので抱こうと思えば抱けるケド。
「見た目より中身だよね~、なゆゆもそう思わない?──と。」
「思いますけど!ちょ、なんか、来ますッ!」
「那由多くん、こっちへ…」
悠長になゆゆに視線を向けていると、“たては”ちゃんからドロっとした液体がとんで来た。
ボクは跳躍して避けたが、なゆゆの傍に居た左千夫くんはマントを翻すようにしてなゆゆを守る。
マントにドロっとした液体がつくとそのままジュ…とマントを溶かしていっている。
下に落ちていたボクのお気に入りのアロハシャツも硫酸でもかけられたかのように溶けて原型をなくしている。
マントが溶けたら、普通なら焦るところであるが、その辺は左千夫くんなので心配は要らない。
彼はマントを外すと液体がつかないように地面に放り投げ、なゆゆの服装を《食霊》用の正装へとフォルムチェンジさせていた。
「後もう少しでお金持ちと結婚できてシアワセを手に入れるはずだったのにぃ…!!よくも殺してくれたわねぇ!!」
「ボクがやったわけじゃナイんだけどなー」
逆恨みにも程がある言葉に自然と肩を竦める。
さっさと《食霊》したいところだがこの何でも溶かしてしまう液体はかなり邪魔だ。
金髪の“たては”ちゃんは体を揺らすようにゆらりゆらりと近づいてくる。
「カラダ、カラダが欲しいわ…、こんなにドロドロの体じゃ何もできない。カラダをよこしなさい…!!」
「九鬼、差し上げたらどうですか?」
「え?左千夫くん、それ本気で言ってる?ボクが居なくなっちゃってもいいの!?」
「いえ、そういう訳ではないですが…。頑張れば共存できるかと思います。」
「そんな変態じみたことができるの、左千夫くんだけだって!」
マントを取った、エロいタートルネックの左千夫くんは飄々とトンデモないことを言い始める。
そもそも、左千夫くんみたいに精神を自由にできないボクがカノジョを受け入れてしまったら乗っ取られて終わりだろう。
はぁー、と、大袈裟に溜息を吐いているとカノジョが左千夫くんを指差した。
「あなた…そこの、黒髪のあなたがいいわ。」
左千夫くんにロックオ──ン!!
まさか指名されると思っていなかったのか、左千夫くんは数度瞬いたがすぐに表情はいつも通りに戻る。
ボクは口に手をやり、クスクスとワザとらしく笑ってやった。
「左千夫くんがいいらしいヨ!」
「…先程も言いましたが、ストライクゾーンではないので遠慮します。」
「何二人でごちゃごちゃいってんのよ!!はやく、私に体をよこしなさいッ!!!」
“たては”ちゃんはドロドロの液体を飛ばしながら猛烈なスピードで近づいてくる。
流石に遊んでるとまずいな、と、ボクが臨戦態勢に入ろうとしたがそれよりも早く、隣の赤い悪魔の瞳が揺らめいた。
「僕と魂を共有する女性は一人だけで充分ですので、遠慮しますね。」
左千夫くんが蠱惑的な笑みを浮かべた瞬間、ゴウッと辺りを炎が包み、彼女が普通の人間の形に戻る。
「え?なに!?カラダが…動かないわ…」
ヘドロのようなものは消え去り、人間の形になれば後はボクの仕事だろう。
硬直してしまった彼女の前まで歩いてくると、動かない手を拾い上げる。
「バイバイ、“たては”ちゃん。大人しくしてたらもうちょっと遊んであげれたんだけど。」
「やめ、やめて、やめろ、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
「でも、キミとーっても男の趣味はよかったよ♪」
左千夫くんを選ぶなんてね!
チュっと、リップ音をたてて掌にキスを落とす。
悲痛な表情を浮かべた彼女がパン─ッと、一瞬にして消え去った。
水の粒子が《紅魂》を中心に霧散し、周りに立ち込めていた炎を弱めるようにシトシトと雨を降らす。
体は濡れたりはしないけど、左千夫くんが作った幻影は静かになりをひそめていった。
「吃饱了☆」
《食霊》は《紅魂》の思いを叶えてからのほうがいいのは、周知の事項だけど。
こんな奴もいるため全部そうできるわけではない。
その時は《idea─イデア─》 化するエネルギーが減り、《霊ヤラレ─れいやられ─》 になってしまう思念の量が増える訳だけど。
不意に僕の元に走ってくる影を見つめて視線をそちらへと向けた。
「九鬼オーナー!大丈夫ですか?」
「あ、なゆゆ居たんだ。
存在薄すぎて忘れてたヨ♪」
∞∞ nayuta side ∞∞
何だろう。
夫婦漫才でも見せられているのか、これは。
マスターはいつも突拍子もないことを言うけど、九鬼オーナーを目の前にするとそれが酷くなる。
冗談なのかマジなのか本気でわかんねぇ。
《食霊》が終わった九鬼オーナーのもとに行くとまたもや心を抉られるような言葉をかけられる。
確かに俺、何もしてないけど!
服すらもマスターが変えてくれたけど!!
て言うかもうちょっと《食霊》って、緊張感ないのか!?
「あー、あー、ズボンまで穴空いちゃったシ。」
九鬼オーナーは相変わらずの調子で、ハーフパンツについた埃を払っている。
どうやらズボンにも、さっきのヘドロのようなものが飛んでしまったようで残念がっていた。
その時、俺は見てしまった。
ハーフパンツが規格外に盛り上がっているところを…
九鬼オーナーは、俺の青ざめた顔と視線に気づいたようで三白眼を細めて笑いつつ俺の方へと寄ってきた。
「ちょ、何おっ勃ててんですか!?」
「んー?ボク《霊ヤラレ》 になり易い体質で《食霊》したらスグ勃起するんダ。
ムラムラはしないから安心して☆」
「なんですか、それ!
意味わからない設定付け加えないでくださいっ!」
凶器、としか言いようのないソレを何の恥ずかしげもなくひけらかし俺の方へと歩いてくると、そのまま壁へと追い詰められる。
「それよりさ………」
ドンっと壁に手をつかれると逃げ場が無くなってしまった。
これが噂の壁ドン!などど悠長に考えてる間はない。
このままだと色々失いそうな雰囲気に俺は九鬼オーナーから視線を外すように俯いた。
「じゃーん!!見て、なゆゆ!ついにボクもピアスデビューだヨ!」
そう言って俯いた俺は、勃起した九鬼オーナーのイチモツを見せられた上。
その、先端の方にはボディピアスが2つも貫通していた。
俺の悲鳴が訓練室に響いたのは言うまでもない。
▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲
「つー、ことがあってさ…」
「それはお疲れ様でしたね。
転送装置が発動したので心配したんスけど、何事もなくてよかったです。」
「俺にとってはありまくりだっつーの!」
あの後、疲れきった俺はマスターに連れられ共同スペースへと来た。
マスターはすぐに何処かに行ってしまったけど、ここには巽も晴生も剣成も居たので何やかんやいたれりつくせりで風呂に入り、今目の前にご飯まで用意されている。
ただ、俺の頭からはさっきの九鬼オーナーの禍々しい性器が離れずにいた。
目の前の普通サイズのソーセージさえ凶器に見えてくる。
「ミンナ、たっだいまー!!あ、なゆゆはさっきぶり!」
九鬼オーナーの軽快な声が部屋に響き渡る。
疲れているときはかなり耳に触る声に、机に突っ伏したまま顔だけ向けた。
そして、俺の顔はまた歪むことになる。
俺達は指定された色のハイネックを下に着ているのだけど、色指定があるだけで形は各々異なっている。
晴生は肩のところに切れ込みがあるし、マスターも胸元に切れ込みがあるし、丈も短い。
ただ、今、俺の目の前にはハイネックと呼んでいいかどうかの露出狂が居る。
背面こそ布はあるものの、前は胸が全部出て腕だけしか隠されていない形だ。
九鬼オーナーの体は鍛え抜かれているので肉体美として見れなくはない、見れなくはないんだけど…。
そんな俺の思考などお構いなしに、九鬼オーナーは皆にお土産を配っている。
巽には金ピカのブタの貯金箱で、胴体に“福”と書かれている。
晴生は敦煌飛天の天女の一人を模った人形。
剣成は健身球という、ビー玉よりも少し大きい球体がふたつ。
そして、俺は。
「ジャーン!なゆゆにはこれ!ここのスイッチを入れると飛ぶ!!」
女の子のスレンダーな人形の頭にプロペラがついており横にあるボタンで飛ぶようだ。
ありがとうございます。と、受け取ると。
もう、色々ツッコミどころが多いことに疲れ果てて机に突っ伏していたが、不意に九鬼オーナーが人形のスイッチをいれた。
「イタタタタタタッ、スッゲーうるさいし!
うわっ!オーナー!止めてくださいッ、危ないっ!!」
とんでもないモーター音と共にプロペラが俺を攻撃する。
うっかり手を離したのが運の尽き。
その人形はプロペラと言う凶器を振りかざしながら部屋の中を滑空する。
しかも決まって俺に向かって飛んでくるので頭を抱えるようにガードした。
バチンと電気がショートした音がしたので顔を上げると、壊れた人形は見事に俺の飯にダイブしていた。
「あーあ、壊れちゃった☆
あ、あと喫茶【シロフクロウ】で使えそうな衣装も買ってきたから、はるるよろしくー。
じゃあ、ボクは用事があるからマタネ~♪」
俺のご飯が…と、硬直している俺を他所に九鬼オーナーは何事もなかったように部屋から出ていった。
まぁ、色々と、ほんとに色々と有りすぎたがこれで俺が高校時代に出会った人物が全て喫茶【シロフクロウ】に集った訳だ。
少し感慨深さを感じ、口角が緩む。
巽が作り直すと言ってくれるのを制止して、まだ食べれそうなソーセージを口へと放り込んだ。
▽▽ KUKi side ▽▽
エレベーターに乗り込むと、専用の鍵を差し込んでから地下2階へと降りるボタンを押す。
自分を待ってくれている人物を考えると気持ちの高揚が抑えきれない。
エレベーターが止まると、ガラガラとこの場に不釣り合いなスーツケースを転がしながら奥に進んだ。
「ヤッホー☆イデちゃん、ひっさしぶり!!
今日はお土産いっぱい持ってきたよ~。ほら見て、アロハ柄のワンピースもあるヨ!…勿論左千夫くんのもあるからね~」
ボクがイデちゃんに色んな服を見せている傍で、左千夫くんは少し離れたところで喫茶【シロフクロウ】のシンボルである、ロボットの“シロフクロウ”と戯れていた。
左千夫くんがいつも居る、カウンターの上の飾り棚に、イデちゃんのマスコット人形と、この“シロフクロウ”のロボットが居る。
多分お客さんは普通の飾りか何かと思っているが、実は動いたりする。
造りも精巧なものなので、動いたら動いたでフクロウにしか見えないんだけど。
触り心地もいいらしく、左千夫くんは良く頭を撫でたり顎の下を擽ったりしているが、まだボクは触れたことがない。
あまつさえ、マカロンとかあげちゃったりしてるからもう何でもありだ。
「ソンナノあげていいの?」
「“ラケ”はイデアと同じ造りですからね、食べなくても食べても大丈夫なようです。
甘いものが好きなようですが、基本何でも食べますよ?
食べたそうにしているものをあげることにしてます。」
ロボットの“シロフクロウ”の名前は“ラケ”、正式名称は“ラケダイモン”と言う。
ラケを手に乗せたまま、マカロンを与え終わると、頭を撫でたり羽の隙間を撫でたり、なんだか愉しそうな雰囲気だ。
ボクもやりたい。勿論撫でられる側を。
そんなことを考えていると、“ラケ”が左千夫くんの手から飛び立った。
“ラケ”専用の通路へと進んでいったので、地下一階のラボか喫茶【シロフクロウ】の定位置に戻ったのだろう。
「お待たせしました。」
左千夫くんはマントが溶けてしまったのでエッロいタンクトップ一枚だ。
まぁ、このハイネックをチョイスしたのはボクだけど。
思ったとおりの黄金比で、自分の感性に感謝したのは言うまでもない。
左千夫くんは相変わらず読み取りにくい表情のままボクに近づいてくる。
ボクの前に立ち止まると手を差し出してくる。
勿論これは《idea─イデア─》 化を始めるための合図だ。
左千夫くんは、エネルギーを抽出する相手のキーポイントに触れてから《idea》 化をする。
巽は自分で出来るとして、日当瀬晴生〈ひなた はるき〉 こと、はるるなら、“耳”、明智剣成〈あけち けんせい〉 こと、けんけんなら、“外部”、即ち彼専用の武器に触れてからエネルギー化をしている。
なのでボクに手を出せと言う合図だ。
「ソンナ普通に《idea》 化させてあげると思う?
なんたって、ボクは1ヶ月も頑張って《食霊》してきたんだからネ」
約1ヶ月間は中国の自分の実家に呼び出されたので帰っていたのだが、勿論その間向こうでもちゃんと《食霊》はしていた。
そもそも、左千夫くんから触れてくれるチャンスをそんなツマラナイ形で終わらしたくない。
ボクが床にタッチすると、メキメキと音を立て地面が隆起していく。
アンティークな王宮にありそうなロココ調の椅子を創り上げると、ドカッとその上に腰掛けた。
椅子の背に腕を掛け、サンダルを脱いでから足を組むと顎を上げるようにしながら左千夫くんを見上げる。
「足にキスしてよ、奴隷だったんだからできるデショ?」
左千夫くんが僕を見下ろす表情は変わらない。
彼から伸びる髪の一部、通称“触覚”も動かないから自分のお強請りが吉か凶かわからない。
静寂な間が流れる、少し張り詰めたこの空気も好きだ。
昔はこんな事を言ったら蔑んだ目で見詰められたものだけど…。
「─────いいですよ。」
左千夫くんからの言葉に内心歓喜した。
表情には全く出さずに口角を持ち上げたまま左千夫くんの所作を見詰める。
彼もいつものように食えぬ笑みを湛え、ボクの前に跪く。
組んでいる上の方を足の裏から両手で掬うように持ち上げるとボクに視線を合わせ、誘惑的な笑みを浮かべてから足の甲に徐に口付ける。
ボクの足に彼の唇が触れた瞬間腰が疼くのを感じて更に口角が持ち上がる。
余りにも優雅な所作からは奴隷らしさを感じることができず、王族が下々のものへと施すためのキスのように感じられた。
今すぐ、口付けている左千夫くんの小さな口に、ボクのナニを突っ込みたくなる衝動にはなんとか耐えた。
▲▲ sachio side ▲▲
九鬼はいつも突拍子もないことを口にする。
今回口にされた言葉も、何を趣旨にしているのか理解できなかった。
僕を貶めたいのだろうか、惨めなところを見たいのだろうか。
残念なことに僕は彼に心を許してしまっているので、そんなところを見られても特に問題は無い。
願うがままに彼の前に跪き、爪まで手入れの行き通った足の甲にキスを落とした。
彼から向けられる視線に、彼が興奮しているのが手に取るように分かる。
唇が触れた瞬間《idea─イデア─》 化が始まる。
僕は視線だけ持ち上げて九鬼の表情を見据える。
九鬼は僕へと対抗するための能力を有しているため、僕の幻術には簡単には掛からない。
なので、彼の中に入る事は早々無いが、《idea─イデア─》 化のこの瞬間だけは彼の中に入り込む事が出来る。
僕の精神が彼を侵食し、彼の精神が僕の中に入り込んで来るのはとんでも無く心地よい。
僕達の周りに無数の水滴が姿を表していき、全ての光を受け入れるように輝く。
クリスタルガラスのような屈折率の高さで輝きを帯びた水は、九鬼が伸ばした右手の上へと注がれる様に球体を成していく。
僕が唇を離す頃には、無重力空間に放たれた水のように狂いのない球体が作られていく。
が、いつも通り形成が終わりそうなところでパンッと、弾けた。
「……アレ?左千夫くんまた、なんかした?」
「いいえ、那由多くんが関わった魂はこうなるんです。」
目の前には先程の《食霊》したはずの女性が薄っすらと姿をあらわした。
“ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ、ワタシがシナナイトイケナイノヨ、ナンデナンデナンデナンデナンデナンデ………”
真っ黒い思念が漏れ出て、人間らしいそれには感服し口角が上がる。
僕は立ち上がると近くの鳥籠を開き、漂う彼女の喉元を掴むようにして力を込める。
“キィィ”と、断末魔のような声を上げると思念は消えてしまい、元の浄化された薄い水色ががった透明な球体へと戻った。
最近《idea─イデア─》 化した中では一番大きいそれを鳥籠へと誘うと、鍵をかけた。
「九鬼、お疲れ様でした。」
「アレもなゆゆのせいとかほんっっと特殊だネ、彼。」
「そうですねぇ、おかげで楽しませてもらってま─────す?」
再び玉座と呼んでもそぐわないだろう椅子に腰掛けた九鬼へと近づいていくと腕を捕まれ引き寄せられた。
殺意のない行動に数度瞬くと、彼が僕の頬に触れる。
「左千夫くん、怪我してるじゃん。ナニ、これ。」
彼は僕の幻術を消してしまえるのでこの前晴生くんにつけられた鎌鼬の傷が顕になる。
何でもないと答えたかったが、九鬼から向けられる表情に怒気が含まれていたので自然と呼吸が溢れる。
「これは、この前晴生くんを《idea》 化するときに付いてしまった傷です。
彼は僕に心を開いてくれませんから。」
「ふーん。はるるなら仕方ないカ。」
九鬼は面白くないと言わんばかりに表情を無くしていたが、頬に触れた手を一度離すと九鬼が自分の親指に歯を立てて流血させる。
そして、彼の血を僕の頬上の傷に重ねるようにして塗り広げていく。
まるで、彼の色へと塗り替えるかのように。
彼のもう一つの能力が発動条件を満たしたので、僕の頬の傷はもとから何もなかったかのように消えて、そこには九鬼につけられた血液のみが残った。
「お腹空いたし、ご飯食べよっか♪」
そして、空気に不釣合な声が彼から落ちると、腕が開放される訳もなく、引き摺られるようにエレベーターへと向かっていった。
End
空港近くの防波堤にマオカラーのスーツを着た集団が佇む。
その中に、日本という国には不釣り合いな派手なアロハシャツの長身の男が一人。
髪はシルバーの輝きをもつ透き通った短髪と襟足から伸びる赤い毛が潮風に揺らされている。
瞳は黒いサングラスに覆われ風貌の全体はうかがえないが、ふざけた格好とは裏腹にこの集団の核となる男、九鬼〈くき〉が取り巻きにヒラヒラと手を振る。
「ゴクローサン。もうここまででイイから。」
「しかし、ボス…!!」
「んー。そっちに居るときは父上の建前が有るから同行は許可するけど、日本に入ったらソレは無しの約束デショ?」
おちゃらけた調子で食えない笑みを湛え。
糸目を更に細めた瞳がサングラス越しに鋭い眼光を周りのものに向ける。
ガラの悪い屈強な男たちは一瞬にして萎縮し、九鬼の気に触れないようにと背筋を正す。
「ボクは今と───っても、機嫌がイイからもう一度言うヨ?そもそもキミ達じゃボクの護衛なんて務まらないデショ?
──────だからさっさと消えて、ネ?」
声の音こそ、おどけるようなものだが笑っているのに瞳は笑っていない。
異様な空気があたり一面に漂う。
ボクの気が変わらないうちに、と、言わなくても良いくらいに他の男たちを圧倒し支配していく。
直ぐ様、蜘蛛の子を散らすように取り巻きは居なくなり、赤い襟足を棚引かせながら男はガードレールに凭れかかり、大きく背伸びをする。
「んー。やっと帰ってこれたヨ~。
もー、ホント面倒な家に産まれたよねー、ボクって可哀想だと思わない?」
誰もいない空間で独り言を呟く。
九鬼の周りに人は居ないが荷物は溢れかえっており、幾つもあるスーツケースをキャリーにロープで縛るようにして纏めていく。
「どっかにカワイイ子、転がってないかナァ」
おおよそ、人一人では運ぶのが不可能なほど積み上がったキャリーの車輪を歪ませながら、力ずくで転がし、目的地へと向かい歩き始める。
鼻歌まじりで目的地へと向かう途中、ガードレールの切れ目に赤い火の玉が揺れたのを九鬼は見逃さなかった。
「こんなところで会えるなんてね。
ボク、超ラッキーじゃん☆連れて帰ったら喜んでくれるかナ…?」
細い瞳がゆっくりと開く。
既に九鬼の脳内は一つのことに侵されているように、《紅い魂─あかいたましい─》 に近づいていく。
そう、九鬼も《紅い魂》が見える者の一人である。
口角は上がりっぱなしで、何処か狂気じみた雰囲気を隠すようにと仮面を貼り付け、《紅魂ーあかたまー》との距離を詰め、──────そっと、その魂へと触れた。
▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲
∞∞ nayuta side ∞∞
「はーぁ、疲れたー。」
「お疲れ様です那由多くん、上手くなりましたね。」
喫茶【シロフクロウ】は既にClose作業を終え、今はマスターと俺の二人だけだ。
俺はと言うと、紅茶の淹れ方を教わっているところだ。
まだマスターみたいに優雅に入れることはできないが、入れたものに関してはなんとかお金を貰って飲めるものにはなってきたと思う。
紅茶は基本ティーポットのままで提供するので、茶葉の量、湯の量、蒸らし時間を間違わなければ問題ないのだが、いかんせん紅茶の種類も多く、覚えるのが大変である。
マスターは紅茶派なので、紅茶によっても、ミルクがオススメだとか、ストレートがいいとか濃いめ薄めなど、こだわりがあるようだ。
普段マスターがいるカウンター内に俺がいて、マスターがお客さんが座るカウンターに居る。
とてつもなく不思議な感じがするが、今は練習中だから仕方がない。
それにしても、マスターはカウンターの中で入れる姿も優雅なのだが、紅茶を飲む様にも品がある。
唇を薄くマグカップにつけ、少しずつ音を立てずにカップを傾ける様は絵になる。
ぼーっと、俺がマスターを見つめていると、自然と彼と視線が合った。
マスターがマグカップをソーサーに起き、そのまま流れるように手が伸びてきて俺の顎が掬い上げられる。
予想もしない展開に俺の心臓に一気に血液が集まり、激しく音を立てる。
この、流れるような所作はよく漫画とかでは見るけど、まさか俺にこの展開が訪れるとは思ってもみなかった。
次の瞬間、俺の想像通りにマスターが立ち上がるようにして俺に顔を寄せてきて、このままキスをされてしまうと思った俺は甘いマスターの匂いに鼻腔を擽られながらギュッと瞼を落とした────が。
「マス…タ──」「糸くず、…ついてますよ那由多くん。」
俺の行き過ぎた想像を打ち砕くマスターの声に、パチパチと数度瞬くと頭の先から足の指先まで真っ赤に染まっていく。
穴があったら入りたい!
てか、そもそも、俺達男同士だからあり得ないやつだろ!那由多しっかりしろ!
いくらマスター推しと言えど自分の行き過ぎた妄想に俺はカウンターに突っ伏した。
「戸締まり確認して………きます。」
気を取り直すようにそう言葉を告げて、喫茶【シロフクロウ】の、エントランスへと向かう。
マスターの顔がまともに見れないので少し俯いたまま、扉の側まで来た瞬間。
「ミンナ、たっだいまー!おまたせ~☆
…あ、ごめん、なゆゆ居たんだ、ミジンコみたいだから気づかなかったヨ」
「────っでぇ!!!……くき、せ……オーナー、それ酷すぎますッ!」
ゴン、と、けたたましい音を立てて俺の額に扉がぶつかる。
俺はその場に蹲り、額を手で押さえながら昔と変わらない高校時代の先輩の言葉を受け止める。
かなーり、久々に会った筈なのに何も変わってないことに俺は小さく笑みを浮かべた。
額は死ぬほど痛いけど。
不意に俺の視界にこの季節には不釣り合いなビーチサンダルが、映る。
しゃがみこんだままゆっくりと顔を上げると、どんなバカンスに行ってきたんだと言わんばかりの真っ赤なアロハシャツと黒いサングラスをかけた、この喫茶【シロフクロウ】の土地の所有者、即ちオーナーの…九鬼〈くき〉先輩が居た。
懐かしんでいた俺の気持ちは一気に凍てつき、相変わらずぶっ飛んでいるこの人に俺の体は硬直する。
それだけじゃ飽き足らず、どうやって持ってきたのか分からないくらいの荷物をキャリーに積み上げ、更にはなんか、メチャクチャ美形で長身のモデルのような黒髪の女性を、……侍らせている。
もう、嫉妬やら呆れやら驚きやら、すべての感情がごちゃまぜになって俺は大きく溜息を吐いた。
「九鬼…遅かったですね。」
マスターから九鬼オーナーに声がかかるが、何処か冷ややかな音のような気がして蹲ったままの俺はマスターを見遣る。
いつも通りの表情でマスターはカウンターに腰を付け、凭れるようにして腕を組んでいた。
「んー。ニホンに着いたのは早かったんだけどサ、カノジョがどーしてもイロイロ行きたいって言うからデートしてきちゃった☆
あ、カノジョ、“たてはちゃん”って言うんだ、ヨロシクね!」
何だろう、色々ツッコミたい事が多くて頭の処理が間に合わない。
いっその事マスターにバイト先に彼女連れてくんなって言ってほしいが、九鬼オーナーの部屋はこの土地の最上階に有るのでそんな事も言えない。
それに、マスターから発せられるオーラが何処かいつもと違うのも気になる。
あれ、そういえば、九鬼オーナーの連れてる女性ってなんか見た事あると思ったら。
俺は九鬼オーナーにすり寄る女性と、カウンターに凭れているマスターを交互に見ると、納得がいったかのように瞬く。
何というか、二人は見た目が異様に似ている。
雰囲気は全く違うが、髪の色、瞳、胸の有無はあるがスタイル…全てが似ている。
「これから、ボク達ベッドでイチャイチャするんだ。
カノジョ、可哀想なんだヨ~、いろーんな男性に騙されて捨てられて、最後は殺〈や〉られちゃって海にポイ捨てされたらしくてね。
サイゴにイイ思いさせてあげたら《食霊─しょくれい─》 させてくれるって言うからサ、連れてきちゃった!」
色々耳を塞ぎたいリア充話に俺は項垂れたが。
不意に違和感を覚えて床を見つめながら瞬いた。
やられた?
ヤられた?
殺された?
《食霊》?
俺はゆっくりと九鬼先輩の横の彼女を見た。
もしかすると彼女は《紅い魂─あかいたましい─》 なのか?
視線を女性へと戻すと、俺はゴクリと喉を動かす。
少し離れた位置からマスターの声が降ってきて視線だけを向けた。
「“イイコト”を、していただくのは構わないのですが…」
「どうしたの?左千夫くん、もしかして嫉妬してくれてるの~?カワイイとこあるネ☆
それとも、3Pでもする~?」
「嫉妬ですか、…確かにそのストライクゾーンの広さには嫉妬しますね。
流石の僕も“そこまで”のものは抱けません。」
蹲った俺を挟んで二人が物凄い会話をしている。
マスターは九鬼オーナーに対して昔からこんな態度であったが、昔はもう少し愛があるというか、九鬼オーナーのイタズラに心を動かされていたというか…。
なんというか、今はもう、無、である。
怒ってるわけでもないし、勿論嫉妬してる訳でもない。
そして、引っ掛かるのがマスターが九鬼先輩の横の美女を“そこまで”のものと表現することだ。
“彼女”は俺から見たら、男だったら誰しもが抱いてみたいと思えるほど整った容姿の持ち主だからだ。
その返答に九鬼先輩がサングラスを外しポケットに放り込む、糸目だったその目が開くと急に表情に冷たさが宿る。
「ンー…気になるナ。左千夫くん、前も言ってたよネ、それどー言うこと?」
「それでは、僕が観てる世界を見せて差し上げましょう。調度那由多くんが居ますしね、僕の力を共有するまでもなく観る事ができますよ。」
そうなると次はマスターが愉しそうに笑みを浮かべる。
因みに俺の心臓はマスターにキスされるかも!と、勘違いしたときから、もうずっといつもの5割増しくらいに動いていた。
このままでは心臓を動かし過ぎてすぐに寿命が来るかもしれないと、色んな意味でドキドキしっぱなしだ。
そして、何故か、この話題の火種が俺へと飛んできた。
俺はしゃがんだまま、ガバっとマスターの方を振り仰ぐ。
「ママママママ、マスター、どう言う意味…」
「那由多くん、“たては”さん、って呼んでみてください。」
マスターが俺の言葉を遮るようににこやかに告げるとカウンターから離れて俺の方へと歩いてくる。
1度、視線は俺に向けて微笑んだ後、マスター似の美女を見詰める。
俺もそれにつられるように立ち上がると、視線を女性へと向けた。
「は、………はじめまして、“たては”さん。」
人見知りの俺にとってはかなりハードルが高い美女の名前を、ぎこちない笑みを浮かべながら呼んだ。
その瞬間ふわりと彼女の中の魂が発光したかのように赤く輝くが、次の瞬間グロテスクな見た目が俺の視界に映った。
すかさず、後ろのマスターの手がよろける俺の目を塞いでくれて、背中を支えてくれる。
「………ヒィ!!マスター、あれなんなんで…すかっ」
「彼女の死体は海に捨てられたんですよ、那由多くん」
マスターが俺の視界を塞いでしまったので、ほんの少し見えただけだったが、トラウマに残るレベルの水死体だった。
目も舌も押し出されるように垂れ下がり、ゼリーのようなドロドロとした皮膚は2倍にも3倍にも膨張していた気がする。
マスターの指の隙間からもう一度見たいような見たくないような、怖いもの見たさとはこのことだろうか。
いつもなら既に逃げ出している俺だが、マスターが後ろで支えてくれている安心感が半端なく、なんとかその場に留まることが出来た。
「ワォ☆そーいうことか。左千夫くんもホントイケずだよね~。
マァ、ボクは見た目はキニシナイタイプだから大丈夫だヨ、たてはちゃん────たてはちゃ…ん?」
そこは気にしてください!九鬼オーナー!!
次の瞬間、ピリッと空気が凍りつくのが分かった。
オーナーが俺から手を離すと視界が戻ってくる。
また、あの水死体を見なければいけないのかと思ったが、そこには全く違う光景が広がっていて瞠目した。
金髪の小柄な女性の腕が細く氷柱のように伸び、九鬼オーナーの腹部を貫通していた。
「九鬼オーナーッ!」
「“転送”します。」
マスターがそう告げた瞬間、視界の前が白く霞む。
∞∞ nayuta side ∞∞
次の瞬間見たことの無い光景が目の前に広がる。
先程まで喫茶【シロフクロウ】に居たはずなのに、アニメに出てきそうな訓練施設に飛ばされたようだ。
そういや晴生が、喫茶【シロフクロウ】内で《紅魂ーあかたまー》 が、暴れたときは地下の訓練施設に転送できる装置がありますって言ってたけど、これのことか?
流れについていけないが、マスターは既に喫茶【シロフクロウ】の制服ではなく、“もう一つの仕事”の白い服装へと形態を変化させていた。
俺はそんな事より、目の前で倒れて流血している九鬼オーナーに体が戦慄く。
「九鬼、いい加減遊んでないでさっさとしてください。」
「あれ~やっぱりバレちゃった?少しは驚いてくれたらいいのにー。」
「え?…え!?ちょ!九鬼オーナー、何してるんですか!ホント」
「はい、なゆゆ。ケチャップあげる~、あーあ、シャツお気に入りだったのに~!
弁償してよネ、“たては”ちゃん」
九鬼オーナーは無事だった。
ムクリと立ち上がると一瞬で跳躍し俺達の傍へと戻ってくる。
貫通したように見えたが実際は彼のアロハシャツを穿いただけで、しかも、赤い血液に見えたものは……ケチャップらしい。
床にもケチャップは散乱しているが、九鬼オーナーの白いタンクトップも真っ赤に汚れていた。
渡されたケチャップのボトルをなんとも言えない表情で見つめ、もし俺がいなくてオーナーだけでもこんな小芝居をしたのかどうか気になったのだが、相変わらずな九鬼先輩に俺は安堵の溜息を漏らした。
しかし、目の前の《紅魂》 が片付いた訳ではない。
先程のグロテスクな水死体ではなく、金髪で巻き髪の小柄な女性がそこには立っていた。
勿論、不細工なんかではない、でもなんか、神々しさと言うのか、容姿だけがもたらす圧倒的な精巧な美はその女性から感じられず、もう一度俺はマスターと女性に交互に視線を向けた。
マスターが俺に気付き笑みを浮かべたまま口を開く。
「九鬼の能力、“創造”が起こしている現象だと思いますよ。《紅い魂》を彼が人間に創り上げているんです。
那由多くんの実体化とは違い、九鬼が創り上げてしまうので見た目は原型からはかなりズレますがね。」
▽▽ KUKi side ▽▽
ソレ、ボク初めて聞いたんだけど…。
じゃァ、ナニ?今までボクが見てきたやつって全部ボクが創り上げてたってこと?
ボクってやっぱセンス最高だネ!
ただ、今まで《食霊─しょくれい─》 した、首吊り、飛び降り、飛び込み、焼死体が実際はどんな風だったかは気になった。
別に死体をみて興奮する性癖を持ってる訳ではないけど、“普通”に飽きてしまっているボクにしてみれば、少しでも変わったものに触れたい。
好奇心の塊ってやつだ。
破れたアロハシャツを脱ぎ捨てると、ボク専用のグローブを両手にはめる。
そして《紅魂》をもう一度見詰めると、自然と視線を眇めた。
千星那由多〈せんぼし なゆた〉 ことなゆゆが《紅魂》を実体化できることは情報として聞かされていた。
左千夫くんの言うとおり、僕は《紅い魂》を人の形に創り上げる事はできるが、エネルギー量を変えることはできない。
でも、ボクの目の前にいる《紅魂》の“たては”ちゃんは僕が創り上げたときよりもかなり大きなエネルギー量となっていた。
昔から役には立たなかったケド、やっぱりなゆゆは面白いと自然に口角が上がる。
さて、左千夫くんの視線が冷たさを含んで来たので彼に《食霊》されてしまう前に、ボクが《食霊》することにしよう。
カノジョと“イイコト”ができないのは残念だけどネ~。
「“たては”ちゃん酷いナ。どうして殺そうとしたの?」
「ごめんなさい…死んだときの苦しみを思い出して気が動転したんです。」
「そうやって何人騙してきたの?」
ボクは知っている。
カノジョが本当のことを言っていないと言うことくらい。
カノジョは男に騙されて殺されたと言っていたがホントは逆だろう。
男から貢がせるだけ貢がせてポイ捨てするタイプだ。
ここに戻ってくるまでの道中だってボディタッチの数といい、モノを強請る量といい、明らかに騙す側の手腕だった。
ボクが創り上げた見た目でボクに奉仕してくれる様は興奮したけど、もう今は完全に興味は失せた。
《紅魂》と言うものは図星をつくと大体本性を表してくる、ほら見て、今だってボクがそう言葉を掛けただけで醜い表情で笑いだした。
「何人かわかんないわぁ!だって男の人ってバカばっかりだもん」
先程の土左衛門、水死体ほどではないが肌はドロっと溶けて、まるでヘドロが纏わりついているような風貌へと変化していく。
屍姦と言う言葉があるので抱こうと思えば抱けるケド。
「見た目より中身だよね~、なゆゆもそう思わない?──と。」
「思いますけど!ちょ、なんか、来ますッ!」
「那由多くん、こっちへ…」
悠長になゆゆに視線を向けていると、“たては”ちゃんからドロっとした液体がとんで来た。
ボクは跳躍して避けたが、なゆゆの傍に居た左千夫くんはマントを翻すようにしてなゆゆを守る。
マントにドロっとした液体がつくとそのままジュ…とマントを溶かしていっている。
下に落ちていたボクのお気に入りのアロハシャツも硫酸でもかけられたかのように溶けて原型をなくしている。
マントが溶けたら、普通なら焦るところであるが、その辺は左千夫くんなので心配は要らない。
彼はマントを外すと液体がつかないように地面に放り投げ、なゆゆの服装を《食霊》用の正装へとフォルムチェンジさせていた。
「後もう少しでお金持ちと結婚できてシアワセを手に入れるはずだったのにぃ…!!よくも殺してくれたわねぇ!!」
「ボクがやったわけじゃナイんだけどなー」
逆恨みにも程がある言葉に自然と肩を竦める。
さっさと《食霊》したいところだがこの何でも溶かしてしまう液体はかなり邪魔だ。
金髪の“たては”ちゃんは体を揺らすようにゆらりゆらりと近づいてくる。
「カラダ、カラダが欲しいわ…、こんなにドロドロの体じゃ何もできない。カラダをよこしなさい…!!」
「九鬼、差し上げたらどうですか?」
「え?左千夫くん、それ本気で言ってる?ボクが居なくなっちゃってもいいの!?」
「いえ、そういう訳ではないですが…。頑張れば共存できるかと思います。」
「そんな変態じみたことができるの、左千夫くんだけだって!」
マントを取った、エロいタートルネックの左千夫くんは飄々とトンデモないことを言い始める。
そもそも、左千夫くんみたいに精神を自由にできないボクがカノジョを受け入れてしまったら乗っ取られて終わりだろう。
はぁー、と、大袈裟に溜息を吐いているとカノジョが左千夫くんを指差した。
「あなた…そこの、黒髪のあなたがいいわ。」
左千夫くんにロックオ──ン!!
まさか指名されると思っていなかったのか、左千夫くんは数度瞬いたがすぐに表情はいつも通りに戻る。
ボクは口に手をやり、クスクスとワザとらしく笑ってやった。
「左千夫くんがいいらしいヨ!」
「…先程も言いましたが、ストライクゾーンではないので遠慮します。」
「何二人でごちゃごちゃいってんのよ!!はやく、私に体をよこしなさいッ!!!」
“たては”ちゃんはドロドロの液体を飛ばしながら猛烈なスピードで近づいてくる。
流石に遊んでるとまずいな、と、ボクが臨戦態勢に入ろうとしたがそれよりも早く、隣の赤い悪魔の瞳が揺らめいた。
「僕と魂を共有する女性は一人だけで充分ですので、遠慮しますね。」
左千夫くんが蠱惑的な笑みを浮かべた瞬間、ゴウッと辺りを炎が包み、彼女が普通の人間の形に戻る。
「え?なに!?カラダが…動かないわ…」
ヘドロのようなものは消え去り、人間の形になれば後はボクの仕事だろう。
硬直してしまった彼女の前まで歩いてくると、動かない手を拾い上げる。
「バイバイ、“たては”ちゃん。大人しくしてたらもうちょっと遊んであげれたんだけど。」
「やめ、やめて、やめろ、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
「でも、キミとーっても男の趣味はよかったよ♪」
左千夫くんを選ぶなんてね!
チュっと、リップ音をたてて掌にキスを落とす。
悲痛な表情を浮かべた彼女がパン─ッと、一瞬にして消え去った。
水の粒子が《紅魂》を中心に霧散し、周りに立ち込めていた炎を弱めるようにシトシトと雨を降らす。
体は濡れたりはしないけど、左千夫くんが作った幻影は静かになりをひそめていった。
「吃饱了☆」
《食霊》は《紅魂》の思いを叶えてからのほうがいいのは、周知の事項だけど。
こんな奴もいるため全部そうできるわけではない。
その時は《idea─イデア─》 化するエネルギーが減り、《霊ヤラレ─れいやられ─》 になってしまう思念の量が増える訳だけど。
不意に僕の元に走ってくる影を見つめて視線をそちらへと向けた。
「九鬼オーナー!大丈夫ですか?」
「あ、なゆゆ居たんだ。
存在薄すぎて忘れてたヨ♪」
∞∞ nayuta side ∞∞
何だろう。
夫婦漫才でも見せられているのか、これは。
マスターはいつも突拍子もないことを言うけど、九鬼オーナーを目の前にするとそれが酷くなる。
冗談なのかマジなのか本気でわかんねぇ。
《食霊》が終わった九鬼オーナーのもとに行くとまたもや心を抉られるような言葉をかけられる。
確かに俺、何もしてないけど!
服すらもマスターが変えてくれたけど!!
て言うかもうちょっと《食霊》って、緊張感ないのか!?
「あー、あー、ズボンまで穴空いちゃったシ。」
九鬼オーナーは相変わらずの調子で、ハーフパンツについた埃を払っている。
どうやらズボンにも、さっきのヘドロのようなものが飛んでしまったようで残念がっていた。
その時、俺は見てしまった。
ハーフパンツが規格外に盛り上がっているところを…
九鬼オーナーは、俺の青ざめた顔と視線に気づいたようで三白眼を細めて笑いつつ俺の方へと寄ってきた。
「ちょ、何おっ勃ててんですか!?」
「んー?ボク《霊ヤラレ》 になり易い体質で《食霊》したらスグ勃起するんダ。
ムラムラはしないから安心して☆」
「なんですか、それ!
意味わからない設定付け加えないでくださいっ!」
凶器、としか言いようのないソレを何の恥ずかしげもなくひけらかし俺の方へと歩いてくると、そのまま壁へと追い詰められる。
「それよりさ………」
ドンっと壁に手をつかれると逃げ場が無くなってしまった。
これが噂の壁ドン!などど悠長に考えてる間はない。
このままだと色々失いそうな雰囲気に俺は九鬼オーナーから視線を外すように俯いた。
「じゃーん!!見て、なゆゆ!ついにボクもピアスデビューだヨ!」
そう言って俯いた俺は、勃起した九鬼オーナーのイチモツを見せられた上。
その、先端の方にはボディピアスが2つも貫通していた。
俺の悲鳴が訓練室に響いたのは言うまでもない。
▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲∞▽▲
「つー、ことがあってさ…」
「それはお疲れ様でしたね。
転送装置が発動したので心配したんスけど、何事もなくてよかったです。」
「俺にとってはありまくりだっつーの!」
あの後、疲れきった俺はマスターに連れられ共同スペースへと来た。
マスターはすぐに何処かに行ってしまったけど、ここには巽も晴生も剣成も居たので何やかんやいたれりつくせりで風呂に入り、今目の前にご飯まで用意されている。
ただ、俺の頭からはさっきの九鬼オーナーの禍々しい性器が離れずにいた。
目の前の普通サイズのソーセージさえ凶器に見えてくる。
「ミンナ、たっだいまー!!あ、なゆゆはさっきぶり!」
九鬼オーナーの軽快な声が部屋に響き渡る。
疲れているときはかなり耳に触る声に、机に突っ伏したまま顔だけ向けた。
そして、俺の顔はまた歪むことになる。
俺達は指定された色のハイネックを下に着ているのだけど、色指定があるだけで形は各々異なっている。
晴生は肩のところに切れ込みがあるし、マスターも胸元に切れ込みがあるし、丈も短い。
ただ、今、俺の目の前にはハイネックと呼んでいいかどうかの露出狂が居る。
背面こそ布はあるものの、前は胸が全部出て腕だけしか隠されていない形だ。
九鬼オーナーの体は鍛え抜かれているので肉体美として見れなくはない、見れなくはないんだけど…。
そんな俺の思考などお構いなしに、九鬼オーナーは皆にお土産を配っている。
巽には金ピカのブタの貯金箱で、胴体に“福”と書かれている。
晴生は敦煌飛天の天女の一人を模った人形。
剣成は健身球という、ビー玉よりも少し大きい球体がふたつ。
そして、俺は。
「ジャーン!なゆゆにはこれ!ここのスイッチを入れると飛ぶ!!」
女の子のスレンダーな人形の頭にプロペラがついており横にあるボタンで飛ぶようだ。
ありがとうございます。と、受け取ると。
もう、色々ツッコミどころが多いことに疲れ果てて机に突っ伏していたが、不意に九鬼オーナーが人形のスイッチをいれた。
「イタタタタタタッ、スッゲーうるさいし!
うわっ!オーナー!止めてくださいッ、危ないっ!!」
とんでもないモーター音と共にプロペラが俺を攻撃する。
うっかり手を離したのが運の尽き。
その人形はプロペラと言う凶器を振りかざしながら部屋の中を滑空する。
しかも決まって俺に向かって飛んでくるので頭を抱えるようにガードした。
バチンと電気がショートした音がしたので顔を上げると、壊れた人形は見事に俺の飯にダイブしていた。
「あーあ、壊れちゃった☆
あ、あと喫茶【シロフクロウ】で使えそうな衣装も買ってきたから、はるるよろしくー。
じゃあ、ボクは用事があるからマタネ~♪」
俺のご飯が…と、硬直している俺を他所に九鬼オーナーは何事もなかったように部屋から出ていった。
まぁ、色々と、ほんとに色々と有りすぎたがこれで俺が高校時代に出会った人物が全て喫茶【シロフクロウ】に集った訳だ。
少し感慨深さを感じ、口角が緩む。
巽が作り直すと言ってくれるのを制止して、まだ食べれそうなソーセージを口へと放り込んだ。
▽▽ KUKi side ▽▽
エレベーターに乗り込むと、専用の鍵を差し込んでから地下2階へと降りるボタンを押す。
自分を待ってくれている人物を考えると気持ちの高揚が抑えきれない。
エレベーターが止まると、ガラガラとこの場に不釣り合いなスーツケースを転がしながら奥に進んだ。
「ヤッホー☆イデちゃん、ひっさしぶり!!
今日はお土産いっぱい持ってきたよ~。ほら見て、アロハ柄のワンピースもあるヨ!…勿論左千夫くんのもあるからね~」
ボクがイデちゃんに色んな服を見せている傍で、左千夫くんは少し離れたところで喫茶【シロフクロウ】のシンボルである、ロボットの“シロフクロウ”と戯れていた。
左千夫くんがいつも居る、カウンターの上の飾り棚に、イデちゃんのマスコット人形と、この“シロフクロウ”のロボットが居る。
多分お客さんは普通の飾りか何かと思っているが、実は動いたりする。
造りも精巧なものなので、動いたら動いたでフクロウにしか見えないんだけど。
触り心地もいいらしく、左千夫くんは良く頭を撫でたり顎の下を擽ったりしているが、まだボクは触れたことがない。
あまつさえ、マカロンとかあげちゃったりしてるからもう何でもありだ。
「ソンナノあげていいの?」
「“ラケ”はイデアと同じ造りですからね、食べなくても食べても大丈夫なようです。
甘いものが好きなようですが、基本何でも食べますよ?
食べたそうにしているものをあげることにしてます。」
ロボットの“シロフクロウ”の名前は“ラケ”、正式名称は“ラケダイモン”と言う。
ラケを手に乗せたまま、マカロンを与え終わると、頭を撫でたり羽の隙間を撫でたり、なんだか愉しそうな雰囲気だ。
ボクもやりたい。勿論撫でられる側を。
そんなことを考えていると、“ラケ”が左千夫くんの手から飛び立った。
“ラケ”専用の通路へと進んでいったので、地下一階のラボか喫茶【シロフクロウ】の定位置に戻ったのだろう。
「お待たせしました。」
左千夫くんはマントが溶けてしまったのでエッロいタンクトップ一枚だ。
まぁ、このハイネックをチョイスしたのはボクだけど。
思ったとおりの黄金比で、自分の感性に感謝したのは言うまでもない。
左千夫くんは相変わらず読み取りにくい表情のままボクに近づいてくる。
ボクの前に立ち止まると手を差し出してくる。
勿論これは《idea─イデア─》 化を始めるための合図だ。
左千夫くんは、エネルギーを抽出する相手のキーポイントに触れてから《idea》 化をする。
巽は自分で出来るとして、日当瀬晴生〈ひなた はるき〉 こと、はるるなら、“耳”、明智剣成〈あけち けんせい〉 こと、けんけんなら、“外部”、即ち彼専用の武器に触れてからエネルギー化をしている。
なのでボクに手を出せと言う合図だ。
「ソンナ普通に《idea》 化させてあげると思う?
なんたって、ボクは1ヶ月も頑張って《食霊》してきたんだからネ」
約1ヶ月間は中国の自分の実家に呼び出されたので帰っていたのだが、勿論その間向こうでもちゃんと《食霊》はしていた。
そもそも、左千夫くんから触れてくれるチャンスをそんなツマラナイ形で終わらしたくない。
ボクが床にタッチすると、メキメキと音を立て地面が隆起していく。
アンティークな王宮にありそうなロココ調の椅子を創り上げると、ドカッとその上に腰掛けた。
椅子の背に腕を掛け、サンダルを脱いでから足を組むと顎を上げるようにしながら左千夫くんを見上げる。
「足にキスしてよ、奴隷だったんだからできるデショ?」
左千夫くんが僕を見下ろす表情は変わらない。
彼から伸びる髪の一部、通称“触覚”も動かないから自分のお強請りが吉か凶かわからない。
静寂な間が流れる、少し張り詰めたこの空気も好きだ。
昔はこんな事を言ったら蔑んだ目で見詰められたものだけど…。
「─────いいですよ。」
左千夫くんからの言葉に内心歓喜した。
表情には全く出さずに口角を持ち上げたまま左千夫くんの所作を見詰める。
彼もいつものように食えぬ笑みを湛え、ボクの前に跪く。
組んでいる上の方を足の裏から両手で掬うように持ち上げるとボクに視線を合わせ、誘惑的な笑みを浮かべてから足の甲に徐に口付ける。
ボクの足に彼の唇が触れた瞬間腰が疼くのを感じて更に口角が持ち上がる。
余りにも優雅な所作からは奴隷らしさを感じることができず、王族が下々のものへと施すためのキスのように感じられた。
今すぐ、口付けている左千夫くんの小さな口に、ボクのナニを突っ込みたくなる衝動にはなんとか耐えた。
▲▲ sachio side ▲▲
九鬼はいつも突拍子もないことを口にする。
今回口にされた言葉も、何を趣旨にしているのか理解できなかった。
僕を貶めたいのだろうか、惨めなところを見たいのだろうか。
残念なことに僕は彼に心を許してしまっているので、そんなところを見られても特に問題は無い。
願うがままに彼の前に跪き、爪まで手入れの行き通った足の甲にキスを落とした。
彼から向けられる視線に、彼が興奮しているのが手に取るように分かる。
唇が触れた瞬間《idea─イデア─》 化が始まる。
僕は視線だけ持ち上げて九鬼の表情を見据える。
九鬼は僕へと対抗するための能力を有しているため、僕の幻術には簡単には掛からない。
なので、彼の中に入る事は早々無いが、《idea─イデア─》 化のこの瞬間だけは彼の中に入り込む事が出来る。
僕の精神が彼を侵食し、彼の精神が僕の中に入り込んで来るのはとんでも無く心地よい。
僕達の周りに無数の水滴が姿を表していき、全ての光を受け入れるように輝く。
クリスタルガラスのような屈折率の高さで輝きを帯びた水は、九鬼が伸ばした右手の上へと注がれる様に球体を成していく。
僕が唇を離す頃には、無重力空間に放たれた水のように狂いのない球体が作られていく。
が、いつも通り形成が終わりそうなところでパンッと、弾けた。
「……アレ?左千夫くんまた、なんかした?」
「いいえ、那由多くんが関わった魂はこうなるんです。」
目の前には先程の《食霊》したはずの女性が薄っすらと姿をあらわした。
“ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ、ワタシがシナナイトイケナイノヨ、ナンデナンデナンデナンデナンデナンデ………”
真っ黒い思念が漏れ出て、人間らしいそれには感服し口角が上がる。
僕は立ち上がると近くの鳥籠を開き、漂う彼女の喉元を掴むようにして力を込める。
“キィィ”と、断末魔のような声を上げると思念は消えてしまい、元の浄化された薄い水色ががった透明な球体へと戻った。
最近《idea─イデア─》 化した中では一番大きいそれを鳥籠へと誘うと、鍵をかけた。
「九鬼、お疲れ様でした。」
「アレもなゆゆのせいとかほんっっと特殊だネ、彼。」
「そうですねぇ、おかげで楽しませてもらってま─────す?」
再び玉座と呼んでもそぐわないだろう椅子に腰掛けた九鬼へと近づいていくと腕を捕まれ引き寄せられた。
殺意のない行動に数度瞬くと、彼が僕の頬に触れる。
「左千夫くん、怪我してるじゃん。ナニ、これ。」
彼は僕の幻術を消してしまえるのでこの前晴生くんにつけられた鎌鼬の傷が顕になる。
何でもないと答えたかったが、九鬼から向けられる表情に怒気が含まれていたので自然と呼吸が溢れる。
「これは、この前晴生くんを《idea》 化するときに付いてしまった傷です。
彼は僕に心を開いてくれませんから。」
「ふーん。はるるなら仕方ないカ。」
九鬼は面白くないと言わんばかりに表情を無くしていたが、頬に触れた手を一度離すと九鬼が自分の親指に歯を立てて流血させる。
そして、彼の血を僕の頬上の傷に重ねるようにして塗り広げていく。
まるで、彼の色へと塗り替えるかのように。
彼のもう一つの能力が発動条件を満たしたので、僕の頬の傷はもとから何もなかったかのように消えて、そこには九鬼につけられた血液のみが残った。
「お腹空いたし、ご飯食べよっか♪」
そして、空気に不釣合な声が彼から落ちると、腕が開放される訳もなく、引き摺られるようにエレベーターへと向かっていった。
End
10
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