駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第20話 侍女長、会議を行う。

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 透明な、まるで水のように透き通り……口に含むと酒精を感じさせて喉へとピリッとした辛味を与えていく。
 今の所はまだこの<ソウルーム>でしか飲むことが出来ない、今の世界には無い異世界のお酒。
 それを一気に飲み干して、…………ふぅ、と艶のある息を漏らす。
 前世ではワイン派だったけれど、現世では何でもありです。
 そう思いながら、新しいお酒を貰おうとしている私へと声が掛かりました。

「こんばんわ侍女長ママさん」
「あっ、こんばんわ、神官ママさん。お疲れさまです」
「ありがとうございます。……ですけど、今の所は侍女長ママさんや侍女ママさん達のほうが大変じゃないのですか?」

 私がお酒を飲み干すのを待っていたのか、法衣姿の神官ママさんが話しかけてきます。
 現世で慣れ親しんだ服装がそれだからでしょうけど、居酒屋風の室内にその衣装は浮きますよね? まあ、私の侍女服も同様ですが……。
 というよりも、他のママさんもコスプレとしか言い様が無い服装や姿をしているので気にしていませんけどね。

「まあそれは置いておくとして……、大変と言うことは皆さん知っているってことですか?」
「? はい、一応触りは『あの御方』が全員に告げましたので……」
「なるほど……。それじゃあ、色々と打ち合わせをした方が良いみたいですね?」
「はい、特に『あの御方』の逆鱗に触れないように気をつけないと居ないことを知らないといけませんから」

 神官ママさんの返事を聞いて、私は立ち上がります。そして……。

「皆さーん、とりあえず転生者会議を始めたいと思うのでー、各国の重役や裏事情に詳しい方々はこっちに来てくださーーいっ!!」
「「「「はーーいっ」」」」
「うぇっ!? ひゃ、ひゃい!!」

 私の言葉に反応するように、何名か出来上がっていたけれどすぐに酔いを冷まして返事をしました。
 若干1名ほど酔いが回り過ぎていたからか驚いた様子で反応するママも居ましたが……。
 そして、色々な王国各所の重役に収まっているママ、魔王軍の関係者に収まっているママ、そんな様々な国の重役や裏の世界に生きるママさん達が近づいてきます。
 彼女たちが集まるのを確認すると、私を議長として別ルームを創りました。
 とりあえず内装は、ザッコ様の館の広間をイメージしましょう。
 イメージするとそのイメージ通りにルームは形作られ、長テーブルに並べられた椅子や壁際のソファ等にママ達は思い思いに座り、転生者会議が始まりました。

「ではまず初めに皆さん、集まってくださってありがとうございます」
「お気になさらずにー。それで、今日はどのような議題ですか?」
「そういえば、勇者が目覚めたって聞いたんだけど本当ですか? そして、どんな格好をしていますか?」
「あと、魔マ王様もどんな状況です? きっと泣いていますよね?」
「ヨシュア君、何処に向かって居ます?」

 多分この中で事情に詳しいと思われる私に対して、ママ達各所から問い掛けが来ます。
 とは言っても問い掛けの大半はヨシュア君と魔マ王様の事ですけど……。
 なので私は現状を話します。

「とりあえず現状ですが、ヨシュア君ですが勇者として無事にロリ神様が覚醒させました。まだまだ成長途中なので長い目で見ないといけません。
 ……そして、魔マ王様ですが……知っての通り、ヨシュア君に危害を加えようとしなければ大丈夫です」
「それは知っていますけど……、危害というものはどのようなものが上げられますか? というか、魔マ王様にも都合っていう物がありますよね? その間は見ることが出来ないのでは?」

 何処かの国の重役のママが挙手をし、質問をします。なので私はすぐに答えます。

「危害、として当てはまるものは暴力・詐欺・淫行と言ったものが主に有ります。まあ、そうなる前にやりそうな人間は矯正するなり追い出すなりした方が良いかと……。
 そして、魔マ王様は現在ヨシュア君を常時監視しています。本人曰く【ママラブ魔法】を使って、ですが……」
「あ、あの、それってストーキン――「それ以上は分かってても言っては駄目です」――あ、はい」
「被害の規模はどれくらいになると予想していますか?」
「今の所はザッコ様を捌け口となっていただく予定ですが、ヨシュア君が殴られたり……騙されたり、売春宿なんかに連れて行かれた場合は……多分ですけど、この国が消滅するかも知れません。……いえ、下手すれば大陸ごと……」
「え、ええ? じょ、冗談……ですよね?」

 本当に魔マ王様ならやりかねないと思いつつも、流石にそれは無いだろうとママの一人が戸惑いながら言います。
 なので私は、見た映像を表示させてから……ザッコ様のボコられている姿を見せました。

「これは、ヨシュア君がオークに襲われた時にザッコ様とロリ神様が救援を送ったのですが、その内の一人が泣いているヨシュア君を慰めている状況です」
「ファ、ファファッ!?」
「ぶふぉっ!?」
「とりあえず、あなたがたの国や集落にも旅の中で寄ると思うので、奇妙な雄叫びは上げないでください」

 同行者2人の関係者へと私はそう言ってから、もう一枚の映像の説明をします。

「それを魔マ王様が【ママラブ魔法】で目撃した結果のザッコさんの状況です」
「こ、これは……酷いですね」
「これは本当に大陸ごと消滅させそうな気がします……」

 映し出される映像に全ママさん達はしかめっ面になりました。
 分かります。分かりますけど……魔マ王様なんですから。
 っと、現実の方で子供がおしっこに目覚めちゃいましたね。巻きで行きましょう。

「ですので、今の状況を簡単に説明しますとヨシュア君一向は魔マ王様が指定した初めの街としてハジメーノ王国に向かっていますので注意してください。次に、教会等を通して神のお告げを聞いたという風にで良いので魔王復活と勇者が現れた事を公表してください。最後に魔マ王様が明日魔王城に行きますので覚悟してください」

 それを聞いたその関係者であるママ達が恐怖に顔を引き攣らせています。
 ですがそれ以上に娘のおしっこ行きたいの催促が大事なんです。地図作るのは良い事ですけど、恥かしい思い出です。

「それでは私は娘達がおしっこに行きたいみたいなので、退室します。それでは」
「えっ、ちょっ!? ま、まあ、おしっこ催促なら仕方ないですね」
「ええ、地図作りは大事ですけど洗濯が大変ですし……、気をつけてー」
「仕方ない、ルームに戻ったら皆と一緒に話をしましょうか」

 そんなママ達の会話を聞きながら、私は意識を現実へと戻します。
 すると、私の頬をぺちぺちと叩く今にも泣きそうな娘達が居ました。

「「まま、おしっこぉ……」」
「ええ、わかっていますよー。それじゃあ、行きましょうか」
「「うん~……」」

 娘達の返事を聞き、私は彼女たちを優しく抱き上げるとあまり揺らさないようにしながらトイレへと連れて行きました。
 そのお陰か、シーツに地図を作ることも、寝巻きを汚すこともありませんでした。
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