駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第21話 魔マ王、襲来する。

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 ザッコよ、お主は泣いて良いのじゃ……。
 じゃからワシには厄介ごとを持ち込まないで欲しいのじゃ。
 そう思いながらワシはザッコがフルボッコされる姿を見て戦々恐々としておったのじゃ。

「……って、待つのじゃ。まさか、ファンロンが抱き締めることをせずに苛立ったウィスドムがヨシュアの頭を叩いてたりしておったら、ワシの命が危なかったりしたのじゃないのかのう?」

 ……下手をするとそんな未来が見えたかも知れないのじゃ。
 そうなっていたら、きっとあの魔マ王のことじゃ、尻叩きとか言い抜かしてワシをベシンベシン叩いたに違いないのじゃ!
 そのような未来がなくて良かったのじゃ……ふう。
 もしパラレルワールドがあったとしてもそのような自体が無いことを祈っておくのじゃ……。

 っと、気を取り直して、魔マ王の様子を見るのじゃ。現在の時間は翌朝のようじゃな。
 目覚めて身嗜みを整えた魔マ王はザッコと共に朝食を採っておるようじゃ。
 それらを時間をかけずに食べ終えると、食後のお茶を楽しんで少し休んでから魔マ王は立ち上がった。

「さてと、それじゃあザッコ君行きましょうか」
「わ、わかりましたッス……。けど、突然行って大丈夫なんッスか?」
「大丈夫じゃ無いでしょうねぇ。けど、私が来るなんて知ってたら黒い部分を見せずに良い子ちゃんぶるじゃないの~」
「まあ、そうッスよね……」

 魔マ王はそう言うのじゃが、その考えは間違えとるとは思わんのじゃ。
 だって昔からガサ入れはいきなりが効果的と言うのじゃ。

「それで、魔マ王様。いったい何処から魔王城に向かうッスか? 飛んで行ったとしても数日は掛かる距離ッスよ?」
「ええ、普通に歩いたり馬を使ったら、時間が掛かる。そして飛んで行ったら歩くよりは時間が掛からないけど……襲われるでしょうねぇ」
「じゃあどうするつもりッスか?」
「こうするつもりよ~♪」

 魔マ王はそう言うと腕をサッと振りおった。
 すると、足元に魔方陣が――って、ちょっと待つのじゃ! なに普通に転移魔法唱えようとしておるのじゃーー!!
 魔マ王は転移魔法を使えないという設定ではなかったのかーー!?
 って、いきおった。いきおったのじゃーーーーっ!!
 サッと消えた2人を追うように、ワシは即座に視点をザッコの館から魔王城へと移動させたのじゃ。

 ●

 ……あかん。魔王城のイメージがまんま魔王城なのじゃ……。
 魔マ王が魔王城にいた在位していた頃の状況はまったくわからんのじゃが、今現在の状況を簡単に言うとこんな感じじゃ。

 魔王城の目の前にある広大な湖は、元々は済んでいたであろうが今は立派な毒湖となっておるのじゃ。
 元は白亜な外見であった魔王城は所々が砕け……あ、モンスター寄りの魔族同士の喧嘩でまた壁が砕けたのじゃ。
 あと、血もこびり付いておるのじゃ。そして、床のほうもホコリが舞って血や泥がついておる。
 綺麗な真紅の絨毯も張りかえられていないのか、破けて悲惨な状況……。
 もうテンプレな勇者がこれを見たら、「こ、これが魔王城……、なんて有様だ……。だが、魔王なら仕方ない」と言うほどの酷さなのじゃ。
 けれども一応はちゃんとしている貴族風な魔族は自身の部屋の中を侍女達に頼んで掃除を頼んでおるのか綺麗じゃのう。
 そして、最後に古ぼけた広間では若い魔族が2人ほど酒盛りをしておった。
 多分じゃが、高位の魔族じゃろうな。

「んぐんぐ……ぷはぁ! っか~~、生き返るぜぇ!!」
「本当だなぁ! で、今日はどうするつもりなんだ?」
「んー、とりあえずはモンスターどもの訓練だな。いつ何時も戦えるようにしておかないといけねぇしよ!」
「でも、勇者なんて本当に来るのかぁ? 居たのってずっと昔なんだろ? 今じゃモンスターどもの訓練もオレたちの脅威を知らせる為に街や村を襲う為のもんじゃねーかよ」
「そうだよなー。それに魔王様も昔姿を消してから、自称魔王様がふんぞり返ってるからな」
「ああ、魔王様を先代呼ばわりして、自分を今の魔王と言ってるからなぁ」

 自称魔王? どれどれ、どんな魔王なのか見てみるのじゃ。……と言うか、今の今までワシは不干渉貫いとったからのう。
 ちなみに魔マ王が特別なだけで、元来魔王は自称ではなく神に決められてなるものなのじゃ。
 そう考えながら、ワシは視点を謁見の間へと移したのじゃ。

「…………おっふ」

 思わず声が洩れてしまったのじゃ。
 何故なら、謁見の間はゴテゴテしい内装になっておったからのう……。
 柱には幾つものガイコツがかけられており、薄暗いダークな雰囲気を感じさせる照明、そして無駄に高い階段の先にある玉座。
 ……えー、なにこれー? なんなのじゃこれー?
 そう思いつつも魔王を見てみると、人やドラゴンのガイコツがゴテゴテしい上に無駄に黒い皮が張られた玉座に座った完全に武闘派ですいった筋肉質のマントの魔族が座っておった。

「暇だ……。何か面白いことでも無いのか?」
「でしたら魔王様、暇潰しにモンスターの大群を人間の暮らすミツメーノ王国に放っては如何でしょうか?」
「それも良いだろう。やっておけ」
「仰せのままに、キヒヒ」

 わぁ、とっても魔王っぽいのじゃ。混沌と破壊を生み出す魔王っぽいのじゃ。
 そして側近っぽい狐目の魔族も小物感プンプンのクズなのじゃ。
 それに賛同するように他の魔族達も自分も混ぜてくれと口にし始めておる。
 そんな彼らに一括するように甲高い声が響きおった。

「ばっかもーーーーんっ!! 貴様ら、何を考えておる!!」

 雄叫びのようなその声に反応して、彼らは一斉に声の方向へと振り向きおった。
 すると、皺が目立つ老人魔族が持っていた杖を振り上げて、頭に血管を浮かべておる。
 そんな老人魔族を見て、賛同していた魔族達が嫌な顔をしおった。

「うわ、また大臣だよ……」
「いい加減五月蝿いんだよなあのジジイ……」
「というか何でまだ大臣なんだよあの爺さん」
「何でも先代魔王が任命したままらしいぞ」
「魔王様は今はあの御方なんだから、別の人物にしたらいいのによぉ」

 口々に謁見の間におる魔族達が文句を口にしておる。
 そんな陰口を叩かれていることに気づいて居ないのか、大臣と呼ばれた老人魔族はなおも怒鳴り続けておる。

「貴様ら、魔王様は姿を消す前に、目立った行動を控えろと言っておった! なのに、貴様らは気まぐれに街を襲うと言うとは何事じゃ!! 儂の目が黒い内は勝手な行動はさせんぞっ!!」
「…………大臣、魔王は我だ」
「貴様は魔王ではないだろうが! それなりの力はあるが、貴様は決して魔王になれん!!」
「………………ほう? 我が魔王ではないだと?」

 目元をピクリとさせ、自称魔王はゆっくりと立ち上がり……玉座の置かれた壇上から下りていくのじゃ。下りるのも上るのも大変そうじゃのう。
 そして、階段を下り終え……老人魔族へと近づき、手を近づけおった。どうやら殺すつもりじゃろうか?
 事実、自称魔王の目には苛立ちを感じさせるものがあり、明確な殺意も感じられる。
 それがわかっておるのか、老人魔族は恐怖に震え始めるが……毅然と立ち向かおうとしておった。
 と、そんな緊迫した空間の中に眩い光が突如照らし出したのじゃ。

「とうちゃ~く♪ ……あらぁ、何だか凄く酷い有様になってないかしらぁ?」

 そんな間伸びた声が周囲に響き渡り、光が収まると……魔マ王とザッコが立っておったのじゃった。
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