駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

文字の大きさ
23 / 88

第22話 魔マ王、頭を下げられる。

しおりを挟む
 突如現れた魔マ王とザッコ、そんな2人を謁見の間にいる魔族達が誰だこいつ。という視線を送りおった。
 ……あ、ここにいる魔族の殆どは魔マ王の事を知らないようじゃな?
 いや、一人居るのう。今現状魔マ王を見て、目を見開いている大臣が……。

「ま、まままま……」
「…………誰だ、貴様は?」
「いきなりやってくるとは何事だ! いったい何処から入ってきたっ!?」
「怪しい奴め、覚悟しろっ!!」

 魔マ王の正体に気づいている大臣は、目を見開き混乱しておるようで彼女が魔王もとい魔マ王である事を他の者達は気づいて居らぬようじゃな。
 その結果、自称魔王はいぶかしむ様に魔マ王を睨みつけ、他の者達はすぐに怪しい奴認定をして自前の爪や所持する武器を構えて一斉に襲いかかってきおった。
 だがそれよりも早く……。

「ぬぅん!!」
「「「ぐあああああああっ!!?」」」

 ブオンッ、と風を振るう音が響き渡り、飛び掛ろうとしていた魔族達がザッコの太い腕によって薙ぎ払われたのじゃ。
 薙ぎ払われた魔族達は素早く腹や顔に拳を受けていたらしく、床に倒れ伏しておる。
 弱いイメージがあったのじゃが、流石魔マ王の側近を務めるだけの力はあるようじゃな。
 更にその表情は何時ものナヨナヨしい表情とは違い、怒気を露わとした……悪魔よりも鬼といったほうが良いのでは無いかという表情をしておる。

「貴様ら、自分達が誰に手をかけようとしているのか分かっていないのかっ?」
「な、なんだこいつ……! 明らかに強すぎるぞっ!?」
「うぅ……た、ただのデーモンじゃないのかっ!?」
「魔王様、あの不届き者達を魔王様の力でぶちのめしてください!!」

 顔や腹を押さえながら置き上がった魔族達がすぐに静かに腕を組んでいた自称魔王に助けを求めおった。
 その言葉を聞いてなのか、それとも俺より強い奴に会いに行こう。精神なのかゆっくりと近づき始めたのじゃ。
 そして、ザッコのすぐ側までゆっくりと近づくと、ザッコ自身も相手にまだ攻撃の意思が無いのを感じているのか手を出さないのじゃ。
 え、地味にコヤツ武闘派じゃったのか?

「…………覚悟しろ」
「上手くいくッスかね?」
「――ヌゥン!!」

 ザッコを睨みつけながら、自称魔王はその巨大な拳をザッコに向けて放ったのじゃ。
 じゃが、自称魔王の拳は簡単にザッコに受け止められると動くことが出来なくなっておった。

「っ!?」
「このような攻撃で自分に挑もうとしていたッスか? ……自分の力量を弁えることだな!」
「ぬ、ぬおおおっ!? ぐ――――はああっ!!」

 掴まれて動けない拳を外そうとする自称魔王に何処か落胆した表情を見せながら、ザッコは空いた拳を自称魔王の胸に打ちつけおったのじゃった。
 すると、最初は抵抗しようとした自称魔王じゃが、耐え切ることが出来ずに吹き飛ばされ……壁へと減り込んだのじゃった。
 そしてそれを見た謁見の間に居る魔族達の反応は様々じゃった。ある魔族はその場で怯え始め、ある魔族は憎々しげにザッコを睨みつけ、ある魔族は逃げ出し始めた。

「静まれ! 静まれぇぇっ!!」

 そんな狂乱の中に響き渡るように老人魔族の声が響き渡ったのじゃ。
 彼の声に謁見の間は静まり返り、視線が彼に集中する。
 一点に集中する視線を無視するかのように、老人魔族はツカツカとザッコを通り過ぎ……その奥に立つ魔マ王へと近づいたのじゃ。
 そして、彼女の前に立つと……ゆっくりと跪いた。その動作に老人魔族を見ていた魔族達から戸惑いの声が洩れる。
 じゃが次に老人魔族が発した言葉によってその戸惑いは固まることとなる。

「お、お久しゅうございます魔王様……。貴女様のご帰還を長くお待ちしておりました……」
「「なっ!? ま、魔王……様だとっ!?」」

 固まりながら老人魔族へと向けていた視線を、すぐさま彼が跪いている人物へと魔族達は一斉に向けたのじゃ。
 ……が、目の前にいた人物が女性であることに彼らは嘲りの表情へと変えたのじゃった。
 どれどれ、いったい何を思っておるのかのう?

(これが魔王様……だと? 美しくはある。だが、強さは感じられん……!)
(美人だ……。しかし、魔王様と言うよりも魔王様の妻ではないのか?)
(襲えば、屈服出来そうだな……。やるか)

 やめておくのじゃ。命があっても危険なのじゃよ?
 そして、女性だからと舐めるべきではないのじゃ。男性のほうが強いなんて考えはあかんのじゃよ?
 とか思っておると、ジッと老人魔族を見ておった魔マ王がポンと手を叩きおったのじゃ。

「あぁ、もしかして大臣かしら~? この城を離れてからずっと見ていなかったけど、老けたわねぇ? 髪も綺麗に無くなっちゃって……」
「はい……、色々と、色々とありましたので……。ですが、今まで先走った者はおりません……」
「……本当、頑張ってくれてたのねぇ。偉いわ~。ご褒美に頭を撫でてあげるわぁ♪」
「あ、ありがたき幸せ……! ぉ、おぉ……おおおおおおおおっ!!?」

 頭を撫でる。そう言うと、老人魔族は滂沱の涙を流し始め……ゆっくりと頭を魔マ王へと向けたのじゃ。
 ツルッツルとなっておる頭を魔マ王はそっと優しく撫で始めると、老人魔族が突拍子も無い声を上げはじめおった。
 そんな老人魔族を他の魔族達は侮蔑の視線を送り、魔マ王へと落胆の視線を送った。
 要するに、武闘派を期待しておったんじゃろうな?
 そして変化は起きたのじゃった。
 魔マ王が優しく老人魔族の頭を微かに光る手の平で撫でていくと、ツルッツルのピッカピカじゃった老人魔族の髪が段々と生え始めたのじゃ。
 当然これを見ておった魔族達は口をポカーンと開けて、呆けおった。
 更に魔マ王が撫で続けると、ひょろひょろな体が段々と膨れ始めているように見え、彼らは自分の目が可笑しくなったのか眉間を揉み解し始めたり、目をパチパチとしておる。

「…………はい、撫で撫で終了~♪ 気分はどうかしらぁ?」
「……魔王様の愛。確かに頂戴いたしました。……まるで、生まれ変わって気分です」

 そう言って、老人魔族は立ち上がり晴れやかな笑みを浮かべ…………って。

「「「誰だお前はーーーーっ!!?」」」

 一斉にその言葉が口から洩れたのじゃった。
 じゃって、変わりすぎなんじゃよ?
 頭が禿げ上がった落ち武者スタイルの髪型(白髪)が、ふっさふさの黒髪となっておるし……。
 モヤシみたいにひょろひょろとして風が吹いたら折れるんじゃないかって体格が、細身ながらも服が内側の筋肉によって膨れ上がっているガッチリとした体格となっておる。
 最後に皺だらけの偏屈そうな顔つきをしていた老人が、凛々しさを感じさせる……THE・大臣。という顔つきになっておるのじゃ。
 所謂、80代後半の外見が一気に4,50代前半にまで若返ったという感じじゃった。
 そうなっておれば、驚きの声を上げるに決まっておるじゃろ?

「ぅ……、わ、れは……倒された。のか……?」

 む? どうやら壁に減り込んでいた自称魔王が気絶から覚めたようじゃ。
 その声を聞いて、驚いていた魔族達が一斉に視線をそちらへと向けたのじゃった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...