駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第49話 ヨシュア、一息つく。

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「ん、あれは……勇者様!? お一人でどうなされたのですか!?」

 僕が門に近づいていくと、兵士の人が僕に気づいたみたいで驚いたように声をあげた。
 顔に覚えは無いけど……もしかすると、教会に行くときに僕の事を見ていたのかも知れないな。
 そう思いつつ、僕は自分に起きた出来事を話すことにする。

「えっと、実は……教会で神さまのお告げを聞いて、外に出たら誰もいなくて……そしたら、変な人たちに連れてかれそうになって――「な、なんですってっ!?」――え?」

 僕の言葉を遮るように、信じられないと言った声が兵士の人から洩れた。
 どうしたのかなと思いつつ、兵士の人を見ると驚いた顔をしていた。

「も、申し訳ありません勇者様、すぐに中へとお入りください! おい、隊長に連絡を入れろ!!」
「わ、わかった!!」
「勇者様、どうぞこちらへ……」

 兵士の人たちは慌てながら色々と話を始め、ある兵士の人は急いで駆け出し、違う兵士の人は僕を案内しようと近づく。
 そんな案内をしようとしてくれている兵士の人へと僕はお願いをする。

「あ、あの、この子達も一緒に連れていっても良いですか? 僕を助けてくれた子達なので」
「そ、そうなのですか!? ありがとな、ワンちゃんネコちゃん。それではその子達も連れてお入りください」
「ありがとうございます! 2人とも、ついてきて」
「ワン」「ニャー」

 兵士の人に案内されて、僕は城の中へと入っていく。その後ろと僕の肩にはワンエルとサタニャエルがついてきてくれていた。
 城の中を歩いていると侍女さんや城でしごとをしている人が僕と、僕と一緒に居る2人に視線を移していた。
 そんな人達に向けてサタニャエルが「ニャー♪」と聞いたことが無いような甘い鳴き声を口にすると、歩くのを止めて僕達……ううん、サタニャエルのほうをチラチラっと見ていた。
 しかも暫く歩いている人が少なくなっていたのがまた増えてきたら、また同じような感じにサタニャエルは鳴いた。
 ……今度はワンエルも負けじと「ワン!」と鳴いているけど、まねをしたくなったのかなぁ?
 と思っていると、兵士の人が立ち止まっていたようでサタニャエルが僕の頬をポンと叩いてくれたお陰で背中にぶつからずに済んだ。

「勇者様、暫くこちらの貴賓室でお待ちいただけないでしょうか?」
「わかりました。えっと、こういう時って……案内ご苦労様でした。って言えば良いんだよね?」
「勿体無いお言葉です。それではどうぞお入りください」

 兵士の人にそう言われて、僕は部屋の中へと入る。
 その部屋は僕が昨日眠った部屋よりも小さいけれど、ちょっとごうかな感じに見えた。
 これが、きひんしつ。っていう物なんだろうな。
 そう思っていると、ワンエルは部屋の入口の扉近くに座り、サタニャエルは僕の肩から跳び立つと部屋の真ん中にあるテーブルに座った。

「勇者様もお座りくださいワン」
「そうですニャ。多分、忙しくなると思いますニャ」
「う、うん、わかったよ……あ、やわらかい」

 2人の勧めるままに僕はサタニャエルが座るテーブルの両側にあるふかふかとしたソファーの片方に座り、そのやわらかさに驚きつつも、緊張してたのかホッと息を吐く。
 ……ああ、怖い所から戻って来れたんだなー。
 心からそう思いつつ、ゆっくりと深く体をソファーに沈ませる。
 すると、うとうととしはじめ……僕はそれにあらがうことなく、ゆめのなかに……おち……て…………。

 ●

 ――シュア、

 ――ヨ、シュア……。

 う、うぅん……?
 あまくてやさしいこえが、みみもとにきこえる……。
 ぼくを、いっぱいあいしてくれて……、やさしくかみをなでてくれる……そんな、やさしいこえ……。
 そのこえは…………。

「ママァ……?」
「ええ、ママよ~♪」

 ゆっくりと瞼を開けると、そこには……優しいママの微笑みがあった。
 ……じゃあ、この耳元に感じる温かくて、柔らかい感触は……ママの太股なんだ。
 僕は、ママに膝枕、されてるんだ……。

「ヨシュア……大変だったわねぇ、怖かったわよね~……。だから、もう少し休んでいても良いからねぇ」
「うん……」

 優しくママの手が、指が僕の頭を優しく撫でる。
 ママの優しい撫で撫では僕の心を温かくして、ゆっくりとしていく……。
 何度かの撫で撫でが続き……、僕はまた夢の中へと沈み始める。
 そんな僕へとママは優しく言う。

「ヨシュア、これからもっと怖いこともあると思うわ……。だけど、怖くて泣いてたら、ママが夢の中で優しく慰めてあげる。だから、ゆっくり休みなさい……」
「う、ん……マ、マ…………」
「ママがあの子達をお仕置きするから、それまでゆっくり休んでるのよ~♪」
「う…………ん……」

 何か、ママが言ってるけど……上手く聞こえなかった。
 そして、僕はまた夢の中に沈んでいった……。
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