駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第51話 ウィスドム、おのれのおろかさをしる。

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 凄い、これは凄い魔術書だ……! 口止めの報酬というだけの事はある。
 そう思いながら、わたしは魔術書のページを捲りながら書かれている文字を目で追いかけていく。
 数日前にオーク共に放っていた魔術。それをもう少しスマートに簡略にする方法が乗っているし、理論上難しいと思われていた属性の魔術も分かり易く書かれている。
 その一文字一文字を噛み砕きながら、わたしはぶつぶつと呟きつつ……頭の中に魔術式を構築する。
 一つ一つの文字が形を持って行く、実際に試していないからどんな効果となるのかは分からない。けれど、どんな効果を産むのか分からなくても……何度も何度も長年これをやっていると楽しいものは楽しいものだった。

「…………うん?」

 何かフワッとした感覚がした。だけど、瑣末な事だと考えわたしは魔術書を読み進めて行く。
 ふわふわ、ユサユサと体が揺れる。……多分、体が揺れてるだけだろう。
 そう思いながら暫く読み続けて行くと、ドスッと体が揺さぶられてから……揺れは収まった。
 何だったのだろうか? 一瞬疑問に思ってしまったが、すぐに読書に戻り魔術書を読み進める。
 だが、突如魔術書が浮き上がり……いや、誰かに取られてしまった。

「なっ!? いったい何をする! 誰がこんなこ…………え?」
「ようやく気づいたか……」

 いったい誰がわたしの探求の邪魔をする! そう思いながら目を釣り上げて顔を上げた。……が、わたしを取り囲むように騎士達が立っていて、呆けてしまった。
 どういうこと? いったいどういう状況??
 右を見る、アホがアホ面下げて居た。左を見る……勇者を教会に送る時に張り切っていた暑苦しい騎士が青い顔をしていた。
 ……あ、これ何だかヤバイ予感?

「……さて、何を言いたいのか分かるか?」
「も、もうしわけありませんでした!」
「ファンロン、何で連れて来られたアル?」
「状況がわからない……」

 一番偉そうな立場に見える騎士……多分騎士団長がわたし達に訊ねると、暑苦しい騎士は頭を下げ、アホは首を傾げ、わたしは状況がついていけなかった。
 そんなわたし達の言葉に、騎士団長だと思われる騎士が呆れたように溜息を吐く。

「ならば一応説明させて貰おう。勇者様が今日教会に神の声を聞きに行ったのだが、戻ると誰も居なかったらしい」

 そう言いながら、わたし以外の2人を騎士団長はチラリと見る。
 見られたアホは首を傾げ、暑苦しい騎士のほうはますます顔を蒼ざめさせた。
 …………つまりあのアホが原因って事だろうか?

「本当ならば、御供の方がもう一人居たら良かったが……どうやら読書に夢中だったようで勇者様はお一人だったらしい」
「……………………」

 原因のひとつはわたしも含まれて居たらしい。
 あー……うん、正直、悪かったわ。王妃に対する疑問が解消された時点で、教会に向かっていたらばったり会えたかも知れないのに……。
 心でちょっとばかり悪いと思っていると、騎士団長は更に衝撃的なことを言った。

「更に一人になった勇者様のところに、優しい顔をした女が近づいたらしいが……勇者様の説明を聞くとどうも人攫いだったらしい」
「ひと……」
「さら?」
「いぃぃぃぃぃぃぃいぃいいいいい!?」

 信じられないことを聞いた、と思いながら訊ねるように聞くと……驚いた声が暑苦しい騎士から洩れた。
 五月蝿い、そう思いつつもわたしも驚いてしまっているのは確かだった。
 けれども同時に、勇者の弱さを改めて思い知……あ、思い返してみればレヴは1だったんだ……。
 そう考えると自分自身の行動に悪いことをしてしまったと考え始めてしまう。

「悪いことをしてしまった。そう思っているようだが……、もう遅い。何故なら――――私が、お仕置きするからぁ」
「「え?」」

 俯いていたわたしだったけれど、騎士団長の威厳のある声が不意に女性の声へと変わった事に驚き、顔を上げた。
 すると……、さっきまで居た騎士達が居なかった。
 それどころか、わたし達が連れられた部屋でもなかった……。
 あるのは、真っ白い空間。そこにわたしとアホと暑苦しい騎士だけが居た。

「ど、どこですかここはっ!?」
「これは……いったい?」
「アル!? ご飯まだアルかっ!?」

 戸惑うわたしと暑苦しい騎士、そしてアホはやっぱりアホだった。
 もう少しコイツには食欲以外の考えは無いのか? ……いや、わたしも同じような物か……。

「……それよりも、ここはいったい何処?」
「分かりません! 城にはこの様な場所は無かったはずです!!」
「何処にもご飯なさそうアル!」
「うん、アホは黙ってろ」

 わたしのスッパリと断ち切る一言に、アホは「酷いアルー!」と文句を言っているけれど無視をする。
 そういえば……、騎士団長から切り替わるように変わった女性の声、あれはいったい……。

「そろそろ良いかしら~?」
「「「!?」」」

 先程の、女性の声が空から響いた。
 その声にわたしと暑苦しい騎士はビクッとしたが、アホまでもビクッとしたのは驚いた。
 珍しい……一瞬そう思ってしまったわたしだったが、空から感じる気配に気づけば震えてしまっていた……。
 危険だ。下りてくるそれは、危険なものだ……あのアホよりも、遥かずっと……。
 そう心から感じている中、それは私達が立っている高さに降り立った……。
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