駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第52話 3人、お仕置きされる。(前編)

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 ちょっと鬼畜とグロな表現があるかも知れません。

 ―――――

 カツン、カツンとわたし達と同じ高さに降り立ったそれはゆっくりとわたし達へと歩み寄ってくる。
 一歩、一歩……と近づくに連れて、わたしの体はガクガクと震え、恐怖を感じているからか徐々に体が冷えていくのを感じた。
 何だ? 目の前の、それは……何なんだ……?
 頭の中で必死に、近づくそれが何なのかを考える。けれど、それが何であるのかはまったく理解出来ない。

「灰になるまで燃やしつくして、再生させて、また燃やし尽くすのが良いかしら~? それとも、無数の針を腹の中から飛び出させるのが良いかしらぁ? ああ、爪を剥がすっていうのも良いかしら~?
 でもメスならメスらしく、家畜のような扱いをして欲しいのかしら~? ああ、人買いに買われて何度も何度も犯されるっていうのも良いわねぇ……? うふふふ~……♪」
「っ!? な、にを……言ってるん……だ?」

 楽しそうに、歌うように、それは口にする。
 しかもその言葉は冗談なんかじゃなく、本気だ。本気にしか聞こえない……。
 だから、黙っていたら危険だと思いながら、ガチガチと震える口を必死に動かして言う。
 ――瞬間、それは一瞬でわたしと距離を詰めて、わたしの眼を間近に見ていた。

「あ……、ア…………」
「それだけの事を、あなた達はしたのよ。それに、本当なら一瞬でこの世界を消し飛ばすのを会いに来てあげてるのだから」

 死、その言葉が頭の中を通り過ぎ……、これまで生きていた自分の人生が通り過ぎる。
 ……座っている椅子が、服が水っぽく温かくなったけれど、気にする余裕もない…………。
 スッと、それは優しく頬を撫でる。いっかい、にかい、さんかい……。
 撫でられる度に、頭の中が恐怖で可笑しくなってしまうのが分かる。
 誰か、誰か、助けて……たすけて……。
 ……一瞬、わたしの頭の中に情けなくて、ママママ言って、オドオドしている顔が浮かんだ……。
 けど……、同時にそいつを放っておいた結果、こうなってしまったんだという事を思い出した。

「あの子の事を考えているのかしらぁ? けど、貴女はあの子に敬意を抱いてもいないし、勇者だって認めてもいないじゃない? そんな貴女が助けて、なんて……図々しいわね~?」
「あ……」
「でも、一度だけチャンスを上げるわ~? まあ、罰は与えるけどねぇ……えいっ」
「あぐっ!? ぎ、ぎぎぎっ!? ぎぃぃぃぃぃぃっ!!?」

 それはわたしに微笑む。恐怖しか感じていない。そんな笑顔のはず、それなのに……緊張が一瞬緩んでしまった。
 直後、そんなわたしの頭へと10本の指が突き刺さった。
 突然のことで痛みが走る。……が、それよりもその後に来たことが問題だった。
 頭の中に、何かが刻まれていく。何なのかはわからない。けれど、頭の中がグチャグチャに掻き乱され、見たことも知ったことも無い知識が無理矢理刻み込まれていく。
 一文字一文字、知識が刻まれていく痛みは果てしなく、その痛みに意識が飛んでしまうけれど……すぐに感じる痛みに無理矢理引き戻される。
 そんなわたしを見ながら、それは何かを呟いているけれど……激痛とグチャグチャとなった頭では、何を言ってるのか理解出来なかった……。

 ●

「しばらくはこの頭痛は治まらないけど、自業自得だったって思いなさいね~♪」

 ウィスの頭に突き刺さっていた指が抜けて、赤い血を垂らしながらウィスは白目のまま、時々ビクビクンと震えていたアル。
 それをファンロン、見てたアル。助けるべきだったかも知れないアル。だけど、ファンロン怖くて動けないアル。
 だって、ウィスが終わったなら、今度はファンロンだからアル……。

「あらあら、どうしてこんなに怖そうにしてるのかしら~?」
「あ、あ、あ……。だ、だって、怖いものはこわい、アル……」
「ええそうねぇ、怖いわよね~? それじゃあ、おなかいっぱいたべるのなら良いかしらぁ?」

 ぱちん、とその人が指を鳴らしたアル。するとファンロンの鼻に美味しい匂いが届いたアル。
 驚きながら顔を上げると、美味しそうな食べ物がいっぱい乗ったテーブルがあったアル。
 漂ってくる匂いに、ファンロンゴクリとなったアル。
 それを知ってか、その人ファンロンに言ったアル。

「これは全て、貴女の物ですから……好きなだけ、食べても良いですよ。……えぇ、好きなだけ……ねぇ」
「本当アルかっ!? だったら、ファンロン食べるアル!!」

 食べ物を前にしたファンロン、怖かった気持ちもすぐに無くなったアル。
 そうしたら、すぐにファンロン食べ物のところに向かったアル!

「わーい、饅頭アル饅頭アル~~! もぐもぐ、美味しいアル~~~~!!」
「いっぱい食べて良いわよ~。これだって美味しいからぁ」
「ありがとうアル~~!! もぐもぐ、ふぐふぐ……ちゅるちゅる……」

 その人に礼を言いながら、ファンロンいっぱい美味しい物いっぱい食べるアル!
 色んな饅頭に、らーめんに、他にも美味しい物をいっぱい食べるアル。
 いっぱいいっぱい食べて、ファンロンもうすぐ満足してきたアル。
 そして、これで最後。と思った料理を食べ終え、ファンロンお腹いっぱいになったアル。

「ふぁ~~、ファンロンお腹いっぱいアル~~! 幸せアル、ちょう幸せアル~~!!」
「それは良かったですね~。けど……、まだまだ食べないと無くなりませんよぉ」
「無理アルよ~。ファンロン、お腹いっぱいアル~~」
「いえいえ、ですから……おなかいっぱいでも無理矢理食べさせる。って言ってるんですよ」
「もごっ!? ファ、ファンロ――おなか、いっぱ――もぐっ!? もぐもごもがっ!!」

 その人は、ニコニコ笑いながら、手に持っていた食べ物を無理矢理ファンロンの口の中に詰め込んだアル。
 な、何するアルッ!? ファンロンおなかいっぱい言ってるアル!! 聞いてるアルか!?

「いっぱい食べたいんですよねぇ? 勇者ほっぽってでも、いっぱい食べたいんでしょ~? だったら、お腹が破けるまで……いいえ、お腹が破けてでも食べさせてあげるわぁ♪」
「っ!?」

 その人はニコニコしながら笑っていたアル。だけど、目が全然笑って無かったアル。
 もしかして、ファンロンなにかしたアルか? 悪いことしたアルか? 食べたら駄目だったアルか??

「食べるな、とは言って無いわよ~? けど、護るべき対象忘れて食べに行くな。って言ってるだけよぉ」
「もがっ! もごもご、もがごっ!? もごっ! もごぉ!! も――――もごっぉぉぉぉぉっ!!?」

 入らないアル! もう、もう入らないアルッ!! 気持ち悪いアル、吐きそうアル!! なのに、何で吐けないアルかっ!?
 痛いアル、痛いアル! お腹も口も、喉もパンパンに食べ物が詰まって、凄く痛いアル!!
 やめてアル、止めて欲しいアル!! ごめんなさいアル、本当にごめんなさいアルっ!!
 段々と膨れていくファンロンのお腹。それを見て、初めてファンロン、怖いって思い始めたアル。だからファンロン必死に謝ったアル。
 なのに、その人は食べさせるのを止めなかったアル。

 そして、パンパンに膨れたお腹は……パンって破裂したアル。

 ―――――

 続きます。(誰得)
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