駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

文字の大きさ
72 / 88

第71話 逃亡魔族、画策する。

しおりを挟む
「クククッ、さあ来い……勇者よ! お前を殺して、あの魔王に一泡吹かせてやろうではないか!!」

 続々とモンスターが集まっていく中、私は魔マ王とか言い抜かし始めた魔王が泣き崩れる未来を想像する。
 そうでもしないと、私は死んでも死に切れないだろう。
 と言うか、死ぬのは確定かも知れないが、本当に一矢報いてやろう!

「それもこれも、魔王……お前が帰ってきたのがいけないのだ!!」

 十数年前に魔王が行方を眩ましてから、私は魔王城で行動を起こし始めた。
 初めに、強い力を持ち……頭が良いわけではない魔族を探した。
 目的の魔族を見つけると、私は彼に「魔王が居なくなった今こそ貴方が魔王となるのです」と唆した。
 その結果、そいつは気持ち良いくらいに上手く動いてくれた。
 力こそ全てと言いながら、その魔族は魔王を名乗り始めてくれて……刃向かう者達を薙ぎ払った。
 それを行うに連れて、その魔族に刃向かう魔族は減って行き、段々と力こそ全てと魔族達は思い始めていった。

 同時に私は魔王が大事にしていた湖を毒の沼に変えると……その水を使って城の壁や床を汚していった。
 途中、侍女どもが私をゴミを見るような眼差しで見ていたが、今となってはそれは快感だ。
 そうすることで、4年ほど前になると……美しかった魔王城の外観は見事に汚く邪悪に染まり、中の秩序も力こそ全て、問答するなら殴り合えが当たり前となってくれた。
 その様子を私は興奮しながら、魔王なんかよりも遥かに上の存在である本当の主に告げる。

「どうですか、邪神様。この邪悪な様相を! もうすぐです、もうすぐ魔族達は力こそ全ての者達となり、人間や亜人どもに攻撃を仕掛けることでしょう!!」
『クックック、そうか。スグニーケよ、最後まで注意し……破壊と混乱の果てに我がこの世界に現れることが出来るようにするのだ』
「ははっ、お任せください邪神様! このスグニーケ=サレールにお任せを!!」

 聞こえてくる声に返事を返しながら、私は地べたに頭を擦り付けながら主の期待に応えるべく返事を返す。
 そう、後は力馬鹿の脳無し魔族が魔王となって人間どもに戦いをすれば良いだけ。
 ……だが、そう簡単に上手く行くことは無かった。
 何故なら、前魔王の威光が強すぎたようで、魔族達は自分達で殴り合って実力を示すだけで終わっていて人間どもに攻撃を仕掛けるという事はしなかったのだ。
 何度も自称魔王となった奴に仕掛けるよう唆したと言うのに、最後の最後で古い魔族が抵抗をしていた。

「ならん、ならんっ! 魔王様は人間亜人、それらに手出しは無用。向こうが何かをしてこない限りは手を出すなとお達しだ! だから、自分で魔王を名乗っている貴様が勝手なことを言うではない!!」

 特に、魔族の中の大臣だったか宰相の位置に立っている魔族が一番の抵抗を見せていたのだった。
 それが何年も続き、後一歩、後一歩で自称魔王が率いる新生魔王軍が人間亜人に宣戦布告をするはずだったのに……。
 魔王が帰ってきたのだった。
 当然、初めは魔王だと判るはずが無かったが、異常なまでの能力を見せつけ、自称魔王を屈服させた。
 それを見た瞬間、私は全力で逃げ出していた。

 いったい何がいけなかったのだ!?
 力しかない脳無しを魔王にしようとしたのが不味かったのか?!
 下準備に時間をかけすぎたのが駄目だったのか!?
 魔王の実力を甘く見ていたのがいけなかったのか?!

「はあ、はあ、はあっ! じゃ、邪神様! 邪神様っ!! 緊急事態です、緊急事態です!!」

 魔王城を抜け、鬱蒼とした森へと入り、その中央辺りで私は天に向かって叫ぶ。
 何時もならば心で語り掛ければ邪神様は声をかけてくださる。その後は普通に話をしていたけれど、緊急事態のため大声で叫んだ。
 すると、少し遅れて邪神様が話しかけてきてくださった。

『ア、アー……ァー。どうした、スグニーケよ?』
「邪神様? な、なにやら声が……?」

 かけられた声に若干の違和感を感じ、私はすぐに問いかける。
 何と言うか、相手が違う様な気がしたからだ。

『うむ、少し唄を歌いすぎて喉がおかしいだけだ。それで、どうしたのだ?』
「は、はい、ま……魔王が帰還しました」
『な、なんだとー? それはいちだいじではないかっ。して、スグニーケよ、おまえはどうするのだ?』

 …………なんだ? この邪神様のやる気のなさは……?
 何か、何か危険だと私の本能が囁いている気がする。……いや、邪神様を疑ってはいけない。
 だが、それなのに……。

『答えよ、スグニーケよ』
「っ!! は、はっ! 私はこれより、人間どもが安全と思っている国を襲い、魔族への怒りを高めさせようと思っております!!」

 そうだ。何を悩む必要があった。私の目的は邪神様の降臨だ。
 だったら、私独り……いや、モンスターを伴って、人間どもの負の感情を高めさせたら良いじゃないか。

『ほう? 期待しているぞ、スグニーケよ』
「ははぁ! 貴方様の降臨を心よりお待ち申し上げております!!」

 その言葉を最後に、邪神様の声は聞こえなくなった。
 とりあえず、どの国に攻撃を仕掛けるか……。

「そうだ。魔族の領域から遥かに離れた国……ハジメーノ王国を狙おう。あの国ならば日和見過ぎた人間どもばかりのはずだ」

 目的地を決め、私は森の中を駆け出していく。
 待っていろハジメーノ王国、私が貴様らに滅びを招いてやるからなっ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

処理中です...