駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第85話 ヨシュア、旅の準備をする。

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「いやあ、さすが勇者様だ! 飼っているペットも普通じゃないのですねっ!!」

 暫く馬車を走らせて、施設の周りを一周ほどしてから停車すると、施設の人が驚きながらも僕へとそう言う。
 僕もワンエルとサタニャエルが出来ると言ったから信じてたけど……本当に出来て驚いていた。
 やっぱり、見た目は犬さんや猫さんでも、天使と悪魔なんだなぁ。
 そんな内心驚いている僕へとウィスドムさんが話しかけてくる。

「とりあえず、馬車はあれで良いとして……、次は野宿する為の道具を用意しないといけないわね」
「え? でも、王様が用意してくれるって言ってましたよね? 他にも何かいるの?」
「まあ、そうだけど……出来ればクッションとかが欲しいのよ。長時間座ってたら、震動が……ね」

 そう言って、ウィスドムさんは少し恥かしそうにして自分のお尻に手を当てる。
 それを見て、僕はアッと気づく。……そういえば、僕もずっと座っていたからかお尻が痛いや。
 そんな僕らをファンロンさんがキョトンとした表情で見つめながら、首を傾げたけれど……すぐに納得してポンと手を打った。。

「ああ、ウィスもよしゅあもお尻痛いアル? ファンロン痛くないのに不思議アル」
「それはアンタの尻が厚いからよこのアホ! と言うか、分かってても口に出すな!!」
「分かったアル。あと、よしゅあはファンロンの上に座れば良いと思うアル!」
「えっ!?」

 ファンロンさんはそう言いながら、座っている自身の太ももを叩く。
 えっと、それって……乗れって言うこと……かな?
 困惑しながら、ファンロンさんをマジマジと見るけれど、ムッチリとした太ももが何というか……ドキドキしてしまう。
 …………の、乗ったら、どんな感触……なのかな?

「ちょ、ちょっとヨシュア!? アンタいったい何考えてるわけっ!?」
「はっ!? え、あ、い、え……そ、その……ご、ごめんなさいっ!」
「…………はあ、ナヨナヨしててもアンタも男ってことね。……やった」
「え? あの、ウィスドムさん? 何か今言いましたか?」
「えっ!? い、いやぁ、何にも言ってないわよ何にもっ!! アハハハーーッ」

 怒っていたウィスドムさんが何かを呟き、すぐに慌てたけれど……どうしたんだろう?
 うーん、良くわかんないや……。でも、何だか魔王だと思うあの女の人を見てから、その……女性に興味が出てきたのかも知れない……。
 実際、ウィスドムさんやファンロンさんを時折目で追ってしまったりしているしなぁ……。

「うぅーーん……、ママだったら……どう言ったんだろう」

 そう呟きながら僕は空を見上げて、ママを想った。

 ●

 そして、馬車を確認して次に装備を見繕うことになったのだけれど、ママが僕に遺してくれた装備は周辺の国の物よりも遥かに質が良い装備だったようで僕に合う装備が無かった。
 少しだけ残念だなって思っていると、ファンロンさんが元気良く着替えを行っていた部屋から姿を現した。

「じゃじゃーーん、どうアルかよしゅあ!」
「え、えっと……? ごめんなさい、どこがどうなったのか……その、分かりません」

 機嫌良く両腕を広げるファンロンさんだったけれど、分からなくて僕は素直に謝る。
 するとファンロンさんは……。

「駄目アルよよしゅあー。こういう時は「似合っている」って言わないといけないってじじょちょーが言ってたアル!」
「は、はあ……」
「ちなみに増えたのは角の先の環アル。どうアル? 綺麗アルか!?」

 ムフーッと鼻息荒くファンロンさんが僕に尋ねる。
 改めてファンロンさんの頭の角を見ると、銀色と金色の環が2つ付けられていた。
 それぞれの環には、赤色の石と緑色の石が埋め込まれていてファンロンさんの角に似合っているように感じられる。

「綺麗ですね」
「いやぁ、照れちゃうアル。よしゅあにそう言われるとファンロン照れちゃうアルよ~~!」

 僕の言葉が嬉しかったのか、ファンロンさんはグネングネンと体を捩じらせる。
 そんなファンロンさんから遅れて部屋からウィスドムさんが姿を現した。

「うわぁ…………」
「な、なによ……? この服装に何か文句でもあるわけ?」
「い、いえ、別にないです! ないですけど……、その……可愛いなって」
「か――かわっ!? な、なに言ってるのよ!!」

 真っ赤になったウィスドムさんが大きな声で僕に向かって叫ぶ。
 でも、ウィスドムさんの服装は見違えるほどに変わっていた。
 ボロボロだった薄汚れたローブが無くなって、膝までの長さがある白と黒の2色のワンピースという服に変わっていて……その上には表が白で裏が黒のマント、白と黒が真ん中で変わっている尖がった帽子。
 そして、持っている杖も新調されているのか、違う物になっていた。
 服装が変わったウィスドムさんの姿は、まるで昔ママが読んでくれた絵本で見た魔法使いみたいな服装だった。

「何ていうか、ウィスドムさんらしさが出ているって感じがします!」
「何かそう言われると、わたしがどんな風に見られているのかわかんなくなるわね……」
「すみません……。って、あれ? そういえば、ウィスドムさんの目がギロッてしていない?」

 ようやく気づいたけど、ウィスドムさんの顔に何かが掛けられていて、鋭かった目が普通になっていた。
 どうしてだろう?

「わたしだって好きでギロッてしてたわけじゃないのよ? 何ていうか……、前が見え難かったから睨んでるようになってただけなの」
「そ、そうだったんですか?」
「……まあ、たまに普通に睨んでたけど。それでこれを渡されたわけ」

 そう言いながらウィスドムさんは顔に掛けられたそれを指差した。

「メガネって言うらしいんだけど、目が見え辛い人への補助具ですって。お陰で色々と綺麗に見えるわ」
「なるほどー。良かったですね、ウィスドムさん!」

 嬉しそうに言うウィスドムさん、そんな彼女へと僕は笑顔で返事を返した。
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