お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治

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35 里帰り

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「ああ、俺達は明日には領都に到着する、聖女のいる後発隊はそろそろライム村につくころだ」

 暗闇の中人目を避けたところで男がはなす。

「ああ、その成果次第だな、場合によってはこのままドロンだ」

 辺りに視線を向けて落ち着かない様子である。

「とりあえずその成果を聞いてからだな、明後日また連絡する」

 そういって話を打ち切った男は暗闇の中に姿を隠す。

 不意に雲が晴れてその男の顔を一瞬映し出す。

 若い嫌らしい笑みを浮かべた男を。








 皇都を出発してから1週程が過ぎていた。

 その間3日ほどで北部まで移動し、その後2日は周囲の村を回っている。

 今日も村を回り、村民を慰撫した後に明夕に領都に入る。

 そういう日程で動いていた。

 慰撫というが、基本的には村の窮状を聞き、怪我や病気に対する支援が表向きになる。

 そしてその対応の代表者がアンジェであり、支援には教会も関与している。

 それは表向きの姿なのだが。

 その裏ではルイスを中心として今回の被害の拡大を防ぐ為の取り組みを行っている。

 まずは墓地に対してアンデッド化しないようにするための結界と浄化を。

 そして村人の診察と称して侵食が行われていないかの調査を行う。

 これについては錬金術師団も力を振るう事ができる。

 3日間で急遽作り上げた検査機器、それを使う事が出来るのは錬金術師だけであったから。

 そうして互いの力を併せて後顧の憂いを断って動く。

 そうした地味な作業を行う事で前線に出る部隊が戦う事ができる環境をつくるのも後方部隊の仕事であるからだ。

 今日もそうした作業を行い村を巡る。

 そうして今日三つ目の村に到着する。




「お兄ちゃん、帰ってきたわね」

「ああ、何年ぶりだ?」

「えっと、私が村を出たのが3年前だから、5年ぶりね!お帰りなさいお兄ちゃん」

「ああ、ただいま。ルイスもおかえり」

「ただいま!後でお墓参り行ってお父さんとお母さんに挨拶しなきゃね」

「ああそうだな、5年ぶりか、怒ってるかな?」

「まさか、ちゃんと帰ってきたんだから喜んでくれるわよ」

「そうだな、父さんと母さんならそうだ」

 この会話からも分かると思うが今日の終わりに訪れた村は俺達の故郷の村である。

 そんなに大きい村ではないので大体の人が顔見知りである。

 それは今も殆ど変わらない。

 村に入って一息着いた所で俺とルイスに来客があった。

 俺達が育った孤児院の代表をしているシスターが尋ねてきたのだ。

 別に何をしてくれというわけではない、自分の元を巣立っていった子供が来るといつもこうして足を運ぶ人だったのだから。

 この人の姿を見て、外から帰ってきた先達の無事を喜ぶ姿を見ることでルイスが俺に元気でいて欲しいと思う気持ちを持ったのが色々な事の発端になる。

 おかげでルイスがお祈りをするようになったので俺も助けられている。

 そういうわけでこの人はいろんな意味で恩人であり、普通ならただの教会関係者として扱うところがそうではなくなっている。

 結果どうなったかといえば俺達が懐かしの孤児院に足を運ぶ流れになったわけで、そこでちびっ子達や女の子達、近所のおばさん達にルイスが引っ張りだこになり俺はその旦那連中や男の子連中に外の話をする事になる。

 皆娯楽には飢えているからな。

 そんな訳で俺達はこの村の浄化には手を出す時間はとれなかった。

 その分治療や検診は全員分できたけどな。

 結果は問題なし、その事が分かった時にはホッとした。

 ルイスなんかはあからさまにホッと言う風にしてたからルイスもそうなのだろう。

 そのおかげで俺達は意表を突かれることになってしまう。

 それは村人の対応が終わり、浄化も終わった時に起きてしまった。

 ここは俺達の故郷で、俺達は数年ぶりの帰郷で、両親は既に鬼籍に入ってしまっている。

 そうなれば必ず行う事、その為に村人達に断って俺達はその準備をしてから墓所を訪れていた。

「ここに二人のご両親が眠ってられるのですね」

 墓参りに行くという俺達に挨拶にいきたいとついてきたアンジェが入り口でつぶやく

「ああそうだ、もう12年ほど前になるかな、勇敢で優しい人達だったよ」

「お父さんとお母さんのおかげで、私達も元気に過ごせてるものね」

「ああ、そうだ」

 そういって3人で話しているとアンジェと左手を繋いでいた少女が口を開く

「ここにロイドお兄さんのお父さんとお母さんがいるの?」

「そうだよ、といってももう形も残ってないだろうけどね」

「そうなんだ、人間って不思議なのね」

 そういって右手をクウと繋いでいるリンが不思議そうな顔をする。

 この子はドラゴンの子供なのでその辺の当たり前が違うのだ。

 それを知るためにこの子の母親のレイラは人里に出てくるように俺に預けたのだという事を彼女からは聞いている。

 そんなリンと、リンが大好きなクウをつれた5人で墓参りに来た。

 そこは少しだけ他の集団からは外れていた。

 それはなぜかと言われればこの村の墓所は大きく分けると3つにわけられるからだ。

 村に大きな貢献をした者達、実直に過ごした者達、何もしなかった者達や罪人、流浪のもの。

 そうした中で貢献をした者は少し小高い丘に葬られるのがこの村の慣習になっている。

 村どころか領内の危機を救う貢献を残した両親はそこに葬られている。

 小高い丘からは森の木々を背にして村を一望出来る場所、そこが両親の眠る場所である。

 そこについて花を飾り、祈りを捧げる。

 ただそれだけであるが、それまでの報告を併せて四半刻程墓に向かって手を合わせる。

 そうして報告してから俺達は決戦の地に向かう事になるはずだった。

 そう、その予定は狂い、そこから掛け違った歯車が元に戻っていく。

 それに俺は困惑してしまうのだが、それでも慣れていくしかなく、それは幸せといってもいいものなのかもしれない。

 ただ、このときは本当に困惑することになるのだけれども。

*お読みいただきありがとうございます!前々から悩んでいましたが、フラグ立てすぎたのでちょっと属性追加しちゃおうと思います。

 何の事かわからなかったら次話を読んでもらえば分かるようにしたいと思います。

 それとは別で、新作始めました!

 悪役令嬢に転生しましたが、破滅フラグが立ちおわっているので足掻きまくったら魔王になって乙女ゲーを間近で見る事になりました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/261717231/138407356

 悪役令嬢ものと思って書いていたら転生して転性して聖女設定が魔王になっちゃったところで乙女ゲーを間近で見るとかいう話を盛り込みまくったものにしようかと思っています。

 尚主人公は初期からいちゃいちゃしちゃいますのでブラックコーヒーを準備してから砂糖を吐き出すかもしれないと覚悟してお越しください(マテ)楽しく読めてざまぁできるようにがんばります!

 感想やブクマ等是非是非書き込んでいってください、お待ちしています!
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