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37 血塗りのヴァルザード
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「やったか?」
土煙の舞う戦場に小さく響いた声に答えられるものは誰もいない。
騎士隊長も限界を超えた身体の酷使のせいで膝を突き肩で息をしている。
そんな中全員の視線が集まる中徐々に土煙が晴れていき、そして
「やったぞ!」
「我らの勝利だ!」
土煙の腫れたクレーターの中心には天の裁きを受けたままの体勢で心臓と足を縫い付けられた男が仰向けに倒れて断末魔の表情のままぼろ雑巾のようになっている。
その姿を見た騎士や錬金術師が歓声をあげる。
そしてその輪は広がっていき、全員の勝利に緩む。
そうして喜んでいる中、ある騎士は違和感に気がつく。
「隊長?どうされたのですか?」
隊長の顔が険しい。
そしてそれはある聖職者も同じように気がつく。
その隊を率いる隊長と司教の険しい顔に気がついた者は喜ぶ事が出来なくなる。
未だ何かあるのか?そう不安に思ったとき。
「構えろ、未だ終わっていない」
隊長の言葉がその場を静寂に包む。
「なっ!?」
「まさか!?」
半信半疑の隊員達の前に隊長が進み出て口を開く。
「下手な芝居はやめろ!バンパイアキング!」
その言葉にその場にいた者達に旋律が走る、そして
「あっはっはっはっは!いやー愉快愉快!やっぱり人間って面白いわ!」
その声の中心を見るとそこには気色の悪い重力を無視したような動きで手足を使わず起き上がった男がいた。
そしてその姿が見る見るうちに変化していく。
いや、変化というよりも再生されていくといった方が確かだろう。
「何故黒幕の貴様がここにいる」
その言葉は相手の格を王と断じているからされた判断であり、普段なら間違っていない、だが。
「ん?黒幕?俺達のボスは北に鎮座してるぞ、俺はただの食客だ。残念だったな」
そうこともなげに話す男は刺さった剣を無造作に抜き投げ返す。
「なんのつもりだ?」
いぶかしむ騎士隊長。
「なに、武器がなくては戦えまい?俺はここに来れば楽しめると聞いたからお使いついでにきただけだ。まだまだもの足りねえからな、相手してくれるんだろ?」
そう楽しそうに話す男の言葉に顔をしかめる隊長。
全力を超えた領域で圧倒したと思ったところでこの様にケロリとした顔で返されたのだ。
その時の動きで既に体はガタガタ、同じように動こうとしても恐らく途中で破綻する。
それが経験上分かるのだ。
対して向こうはまだまだ余裕の表情である。
表情を動かすなと言われても無理な話だ。
「さて、もう少し時間があることだし、第二ラウンドも楽しませてくれよな?いくぜ!」
そうして男達と輸送兵団に配置された精鋭達の戦いは再会された。
それは戦いとは言えなかった。
既に消耗しきっていた隊長の動きは鈍く、男の攻撃を辛うじて捌くのが精一杯で、途中隊員が横槍をいれるのだが。
「みえみえだぜ!」
そういって殴る蹴る投げるで一人、また一人と脱落していく。
聖職者達も残った力を振り絞り合体魔法を繰り出すが。
「涼風位にしか感じねえな!」
そういって笑い飛ばされた後に衝撃波で一人また一人と意識が消えていく。
そして一人、また一人と倒れていき、もはや隊長以外に立っている者は戦闘に参加できていない錬金術師数人と司教だけになっていた。
「さて、ここまで楽しませてくれた礼にいい物を見せてやろう」
そういって無造作に隊長に近付いてくる男に両手の剣を突き出すが。
「はっ!無駄だってのがわからねえのかよ」
そう言って刺されるままにした男はついに隊長を掴み上げそ。
「まずはその両腕を砕いてやろう」
そう言って両肩に叩き込まれる拳。
ゴキャメキャという音がして隊長の両腕が力を失う。
その顔は痛みに青く染まり、普通ならば既に失神していておかしくはない。
「声一つ上げないとはご立派ご立派!次はどうかな?」
言うや否や再度拳が振りぬかれる。
両膝と腿を打ち抜かれるがそれでも声を漏らしてなるものかと必死に歯を食いしばって耐える姿に男は更に笑みを深める。
「ほう、これでもまだ悲鳴一つあげないか、よかろう、その気概気に入った!この俺がつかってやろう!光栄に思うがいい!」
そう言って隊長を地面に下ろすと男は自らの手首を搔き切りだす。
「騎士隊長の堕ちる姿、さぞやいい見ものになろう」
そう言ってその手を開き、指先の爪を赤く光らせ右手を後ろに構える。
「さあ、いい声で鳴いて俺を楽しませろ!そして俺の下僕となるのだ!」
そして満を持して一歩踏み込む、その手に助走と踏み込みと、身体全身の力を注ぎ込み、胸の中心を貫く為に腕を差し込む
そうして指先が彼の胸に入ったと思った瞬間、その視界は地面の底に沈んでいた。
その予想もしていない変化に男は受身も何も取れずにその身体を上半身から地面にめり込ませる。
「すまない、遅くなった」
辛うじて意識を保っていた騎士隊長の目に映ったのは常に聖女と共にいる、冒険者の男。
その姿を見たときに騎士隊長の意識は途切れていた。
「おっと、これはひどいな……すまないが司教殿、彼を頼めるか?」
「ええ、それは構いませんが……」
「感謝する、さて俺は」
そういって地面にめり込んだ男に目を向ける。
「ははははははは!あーっはっはっは!愉快!これは愉快!」
「ちっ、予想通りタフだな」
「然り!この俺があの程度で死ぬはずがなかろう。」
「腐っても王に並び立つと言われただけあるか」
「ほう、俺の事をしっていると?」
「ああ、雑魚をつかって露払いをさせ、気に入った者以外は使い捨てにして、その気にいった奴も自分の欲の為に叩き潰し常に血の色に染まっていると言われる戦闘狂のバンパイアロード」
それは戦闘力だけで言えば王の領域に足を踏み入れたと言われるランク詐欺。
「SS級討伐対象、ヴァンパイアロード、血塗りのヴァルザード!」
その瞬間、ヴァルザードはニヤリと口を緩ませた。
土煙の舞う戦場に小さく響いた声に答えられるものは誰もいない。
騎士隊長も限界を超えた身体の酷使のせいで膝を突き肩で息をしている。
そんな中全員の視線が集まる中徐々に土煙が晴れていき、そして
「やったぞ!」
「我らの勝利だ!」
土煙の腫れたクレーターの中心には天の裁きを受けたままの体勢で心臓と足を縫い付けられた男が仰向けに倒れて断末魔の表情のままぼろ雑巾のようになっている。
その姿を見た騎士や錬金術師が歓声をあげる。
そしてその輪は広がっていき、全員の勝利に緩む。
そうして喜んでいる中、ある騎士は違和感に気がつく。
「隊長?どうされたのですか?」
隊長の顔が険しい。
そしてそれはある聖職者も同じように気がつく。
その隊を率いる隊長と司教の険しい顔に気がついた者は喜ぶ事が出来なくなる。
未だ何かあるのか?そう不安に思ったとき。
「構えろ、未だ終わっていない」
隊長の言葉がその場を静寂に包む。
「なっ!?」
「まさか!?」
半信半疑の隊員達の前に隊長が進み出て口を開く。
「下手な芝居はやめろ!バンパイアキング!」
その言葉にその場にいた者達に旋律が走る、そして
「あっはっはっはっは!いやー愉快愉快!やっぱり人間って面白いわ!」
その声の中心を見るとそこには気色の悪い重力を無視したような動きで手足を使わず起き上がった男がいた。
そしてその姿が見る見るうちに変化していく。
いや、変化というよりも再生されていくといった方が確かだろう。
「何故黒幕の貴様がここにいる」
その言葉は相手の格を王と断じているからされた判断であり、普段なら間違っていない、だが。
「ん?黒幕?俺達のボスは北に鎮座してるぞ、俺はただの食客だ。残念だったな」
そうこともなげに話す男は刺さった剣を無造作に抜き投げ返す。
「なんのつもりだ?」
いぶかしむ騎士隊長。
「なに、武器がなくては戦えまい?俺はここに来れば楽しめると聞いたからお使いついでにきただけだ。まだまだもの足りねえからな、相手してくれるんだろ?」
そう楽しそうに話す男の言葉に顔をしかめる隊長。
全力を超えた領域で圧倒したと思ったところでこの様にケロリとした顔で返されたのだ。
その時の動きで既に体はガタガタ、同じように動こうとしても恐らく途中で破綻する。
それが経験上分かるのだ。
対して向こうはまだまだ余裕の表情である。
表情を動かすなと言われても無理な話だ。
「さて、もう少し時間があることだし、第二ラウンドも楽しませてくれよな?いくぜ!」
そうして男達と輸送兵団に配置された精鋭達の戦いは再会された。
それは戦いとは言えなかった。
既に消耗しきっていた隊長の動きは鈍く、男の攻撃を辛うじて捌くのが精一杯で、途中隊員が横槍をいれるのだが。
「みえみえだぜ!」
そういって殴る蹴る投げるで一人、また一人と脱落していく。
聖職者達も残った力を振り絞り合体魔法を繰り出すが。
「涼風位にしか感じねえな!」
そういって笑い飛ばされた後に衝撃波で一人また一人と意識が消えていく。
そして一人、また一人と倒れていき、もはや隊長以外に立っている者は戦闘に参加できていない錬金術師数人と司教だけになっていた。
「さて、ここまで楽しませてくれた礼にいい物を見せてやろう」
そういって無造作に隊長に近付いてくる男に両手の剣を突き出すが。
「はっ!無駄だってのがわからねえのかよ」
そう言って刺されるままにした男はついに隊長を掴み上げそ。
「まずはその両腕を砕いてやろう」
そう言って両肩に叩き込まれる拳。
ゴキャメキャという音がして隊長の両腕が力を失う。
その顔は痛みに青く染まり、普通ならば既に失神していておかしくはない。
「声一つ上げないとはご立派ご立派!次はどうかな?」
言うや否や再度拳が振りぬかれる。
両膝と腿を打ち抜かれるがそれでも声を漏らしてなるものかと必死に歯を食いしばって耐える姿に男は更に笑みを深める。
「ほう、これでもまだ悲鳴一つあげないか、よかろう、その気概気に入った!この俺がつかってやろう!光栄に思うがいい!」
そう言って隊長を地面に下ろすと男は自らの手首を搔き切りだす。
「騎士隊長の堕ちる姿、さぞやいい見ものになろう」
そう言ってその手を開き、指先の爪を赤く光らせ右手を後ろに構える。
「さあ、いい声で鳴いて俺を楽しませろ!そして俺の下僕となるのだ!」
そして満を持して一歩踏み込む、その手に助走と踏み込みと、身体全身の力を注ぎ込み、胸の中心を貫く為に腕を差し込む
そうして指先が彼の胸に入ったと思った瞬間、その視界は地面の底に沈んでいた。
その予想もしていない変化に男は受身も何も取れずにその身体を上半身から地面にめり込ませる。
「すまない、遅くなった」
辛うじて意識を保っていた騎士隊長の目に映ったのは常に聖女と共にいる、冒険者の男。
その姿を見たときに騎士隊長の意識は途切れていた。
「おっと、これはひどいな……すまないが司教殿、彼を頼めるか?」
「ええ、それは構いませんが……」
「感謝する、さて俺は」
そういって地面にめり込んだ男に目を向ける。
「ははははははは!あーっはっはっは!愉快!これは愉快!」
「ちっ、予想通りタフだな」
「然り!この俺があの程度で死ぬはずがなかろう。」
「腐っても王に並び立つと言われただけあるか」
「ほう、俺の事をしっていると?」
「ああ、雑魚をつかって露払いをさせ、気に入った者以外は使い捨てにして、その気にいった奴も自分の欲の為に叩き潰し常に血の色に染まっていると言われる戦闘狂のバンパイアロード」
それは戦闘力だけで言えば王の領域に足を踏み入れたと言われるランク詐欺。
「SS級討伐対象、ヴァンパイアロード、血塗りのヴァルザード!」
その瞬間、ヴァルザードはニヤリと口を緩ませた。
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