婚約破棄したら、憧れのイケメン国王陛下と相思相愛、熱烈年の差婚?!

Narian

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15王の出立

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翌朝目を覚ますと、王宮内が騒がしかった。
身支度を整えたところに、国王陛下がお呼びです、と伝令が来る。何か起きたんだわ。


執務室に入ると、リチャード様が出迎えてくださった。いつもなら秘書官の方が控えているけれど、今朝はお一人だ。

「グレイス。わざわざすまない。しばらく留守にすることになってね」

陛下が王宮を離れる・・・よほどのことだわ。

「何があったのですか?」

「アルザス族から報せが届いたんだ。東の遊牧民ムン族の侵攻を受けていると。盟約に従い、僕が兵を率いて救援に向かう」

「アルザス族・・・東国境に接する山岳地帯に、古くから住む民族。我が国建国以来の盟友ですわね」

初代国王によるロザーヌ王国建国に、アルザス族は多大なる貢献をしたという。
以来、対等の盟友として代々親交を深めて来たし、東の国境が安定しているのも、彼らの協力があればこそだ。

「そうだ。有事には国王自身が駆け付ける、いついかなるときも。それが彼らとの盟約なんだ」

そのあとリチャード様はいったん言葉を切り、少し間を置いてから口を開いた。

「それでね、報せにはこうもあった。来訪中のクォーツ公爵夫妻ならびにその長子グレモント卿が、混乱に巻き込まれて行方不明だと」

「えっ?!両親と兄が?!」

私は驚いたけれど、アルザス族の住む国境の山岳地帯は、クォーツ公爵家の領地と接している。
両親や兄上は、数年おきにアルザス族を訪ねて親交を深めているから、ありえないことではない。

「心配しないで。僕は今日にも軍を率いて発つ。必ずご両親と兄上を、無事に連れ帰るから」

リチャード様は、安心させるように微笑んだ。
優しさが心に刺さる。国王として、兵士の命を背負って前線に向かうという時に、私の心配をしてくださるなんて。
だけど。

「いいえ、陛下。両親も兄も公爵家の者ですもの。常日頃から覚悟しておりますわ。どうぞ、民と兵士たちの命を最優先に」

貴族たる者、民の盾となり剣となること。それができなければ貴族を名乗る資格はない。それが父上の、我がクォーツ家の信念だもの。

「・・・わかった。だけど僕は、民も君の家族も優先したいんだ。だからどちらにも全力を尽くすよ。いいね?」

「・・・はい。ありがとうございます」

「うん。ところで」

「はい?」

「しばらく逢えないからね・・・」

机越しに会話していたリチャード様が、机を回り込んで近づいて来た・・・と思うと、突然腰を引き寄せられ、キスされた。

「君を刻みこんでおきたい、心にも身体にも」

キスが激しくなる。

「リ、リチャードさまっ・・・んんっ!」

リチャード様は唇を離すと、優しく額にキスして囁いた。

「続きは帰ってからね。覚悟しておいて」



それから数時間後、リチャード様は軍隊を率い、東の国境地帯へと出立した。私はお子様方と一緒に王宮から見送る。

リチャード様は皇太子時代から、何度となく戦場に立たれている。私も子供の頃から、陛下の出立を祈るような気持ちで見送ったものだ。そのたびに敵を蹴散らして帰還された。だからきっと、今回も大丈夫。

王都の沿道は、陛下を慕う民たちで埋め尽くされていた。



「陛下、ムン族はなぜ今、侵攻してきたのでしょう」

参謀長が問いかける。
王都を出て数日後。リチャード率いるアルザス族救援隊は、目的地近くの森で夜営していた。

「そうだね・・・今年は特に飢饉とは聞かないしね。しかもムン族は草原の民だ。山岳戦は不得手なのに」

「たしかに」

何かある、とはリチャードも参謀長も思っている。が、今のところ判断するだけの情報がないし、アルザス族が侵攻を受けているのは事実だ。まずは救援に向かう他ない。

「不得手とは言っても、ムン族は獰猛にして残忍な民族だ。油断は禁物だよ」

ムン族は、降伏しない敵は容赦なく殺戮し、奪い犯しつくす。そして戦闘においては、とにかく勇猛で引くことを知らぬ。無敵の民族と言われ、恐れられている。

「そうですね。特にあのムン族の強弓、月飛弓。あの威力は驚異的です。崖上から狙われたらやっかいですな」

月飛弓とはムン族独自の弓で、ムン族の居住域で採れる月飛石を矢尻に用いてあることからそう呼ばれる。遠くから放っても鎧兜を貫通するほど強力なものだ。それが頭上から降り注ぐとなると、かなりの脅威と言える。

他に二、三点話し合ってから、リチャードは天幕を出た。頭上には十四夜の月がかかっている。

きれいな月だな・・・とリチャードは思った。できるならこのまま持ち帰って、グレイスと子供たちとともに見たいものだ、と。

「待っていて。早く片付けて帰るから」

帰ったら花火でも上げるか。
王都には露天が並び、見物の民で潤うだろう。お忍びで出かけるのもいいな。子どもたちと一緒になってはしゃぐグレイスを想像して、思わず顔が緩むリチャードだった。



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