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「グレイス、とってもきれい」
「グレイスきれいー」
フラワーガールとフラワーボーイの正装をしたリア様とタクト様が、目を輝かせながら褒めてくださる。
今日は、ついにリチャード様との結婚式だ。
花嫁衣装を身にまとい、控室で式が始まるのを待っている。
リチャード様は国王陛下として、別の控室でお待ちだ。
「ううっ、ぐすっ、まだ早すぎるよ、グレイスっ」
大泣きしているのは、兄のグレモント。私と同じ青い瞳から涙がダダ漏れている。優しくて頼りになる兄なのだけど、昔から過保護で困った人なのよね。
「まだ泣いてるのか、グレモント。次期クォーツ公爵ともあろう者が、情けない」
「ほんとうですよ。妹に先を越されるんだから、少し焦っても良さそうなものなのに、呑気に泣いてばかりで」
お父様とお母様が嗜める。
誘拐騒動から王都に戻るや否や、国王陛下の来訪を受けたクォーツ家は大騒ぎだった。そしてリチャード様から結婚の申し込みを受けたものだから、それはもうたいへんなことに。
お父様もお母様も、お転婆の一人娘がまさか皇后に選ばれるなんて、思ってもいなかったみたい。
「そっ、そんなこと言っても、早すぎるものは早すぎるよ。シモンズ家の馬鹿息子との婚約だって、僕が外遊中に勝手に決めてしまって。やっと白紙に戻ったと思ったら、よっ、よりによって国王陛下と結婚なんて!ううっ」
そう言ってグレモントお兄様は、先ほどよりも激しく泣き始める。
「完璧すぎて、邪魔しようがないじゃないかー!」
・・・国王陛下じゃなかったら、妹の結婚を邪魔する気だったのね。
この人これで、次期公爵としての手腕を高く評価されてる、若手貴族のエースなのよね。金髪の貴公子なんて呼ばれてて、女性たちにもかなり人気なのだけど。みなさん、この姿を知らないからそんなこと言えるんだわ。
私が呆れていると、私のスカートにしがみついていたリア様が言った。
「グレモント、なかないで。これ、あげるから」
涙でぐしゃぐしゃになったお兄様に、飴を差し出す。
「リっ、リア様、何とお優しい!」
お兄様は感激して受け取ると、リア様の前に跪いて言った。
「この愚か者にこのような施し、感激に耐えません。この上は、いついかなる時でも、リア様のお呼びがあれば駆けつけます」
リア様は驚いて、私の影に隠れてしまった。お兄様といえば、可愛らしい不意の攻撃にすっかり気分を良くして、ニコニコしている。
まずい・・・。今度はリア様まで、シスコンのターゲットにする気じゃないでしょうね。
不安に頭を抱えていると、侍従が式の開始を告げてきた。
お父様に手を取られ、大勢の招待客が見守る中、聖堂の回廊を進む。
リア様とタクト様が、ベールの裾を持ってついてきてくださって、その可愛らしさに歓声が上がる。
大司教様の前で待つリチャード様に、お父様がそっと、私の手を受け渡した。
リチャード様に手を取られ、大司教様の前に進む。
「汝、リチャード・デル・ローザンは、グレイス・デ・クォーツを妻とし、いついかなるときも、創造主ダイスが世界を愛するがごとく、この者を愛することを違いますか?」
「誓います」
深緑の瞳でまっすぐ私をみつめ、迷いのない口調でリチャード様が答える。
「汝、グレイス・デ・クォーツは、リチャード・デル・ローザンを夫とし、女神アルタナが世界を愛するがごとく、いついかなるときもこの者を愛すると誓いますか?」
「誓います」
私もリチャード様を見つめながら、ゆっくりと答えた。
「よいでしょう。創造主と女神の名のもとに、この結婚が成立しました。
では、誓いのキス、」
「もう我慢できないよ」
大司教様が言い終わらないうちに、リチャード様は私のベールを上げると、勢いよく抱き寄せ
キスをする。
私もたまらず、キスを返した。
参列客からは歓声が上がる。
バルコニーに出ると、民衆の大歓声が迎えてくれた。
花火が上がり、民衆の渦からは無数の風船が飛んでいる。
「リチャード王ばんざい!」
「グレイス王妃バンザイ!」
皆口々に、リチャード様と私の名を叫ぶ。
リチャード様がリア様を、私がタクト様を抱えて、揃って手を振り歓声に応えた。
今日から、王妃として生きていくんだ。
困難も、苦しみもあるだろう。
だけど、この方がいる限り越えて行ける。
このかわいい子どもたちがいれば、なんだって笑って乗り越えられる。
私がそっと手を伸ばすと、リチャード様が握り返してくれた。
幸せになろう。
この国を幸せにしよう。
私は心に誓い、いつまでも歓声に応えて手を振っていた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださったみなさま、ありがとうございました!初めての連載、こんなにたくさんの方に読んでいただけるとは思わず、感激の連続でした。
本編は一応ここで完結です。が、このあとも番外編を続ける予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちくださいね。
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「グレイスきれいー」
フラワーガールとフラワーボーイの正装をしたリア様とタクト様が、目を輝かせながら褒めてくださる。
今日は、ついにリチャード様との結婚式だ。
花嫁衣装を身にまとい、控室で式が始まるのを待っている。
リチャード様は国王陛下として、別の控室でお待ちだ。
「ううっ、ぐすっ、まだ早すぎるよ、グレイスっ」
大泣きしているのは、兄のグレモント。私と同じ青い瞳から涙がダダ漏れている。優しくて頼りになる兄なのだけど、昔から過保護で困った人なのよね。
「まだ泣いてるのか、グレモント。次期クォーツ公爵ともあろう者が、情けない」
「ほんとうですよ。妹に先を越されるんだから、少し焦っても良さそうなものなのに、呑気に泣いてばかりで」
お父様とお母様が嗜める。
誘拐騒動から王都に戻るや否や、国王陛下の来訪を受けたクォーツ家は大騒ぎだった。そしてリチャード様から結婚の申し込みを受けたものだから、それはもうたいへんなことに。
お父様もお母様も、お転婆の一人娘がまさか皇后に選ばれるなんて、思ってもいなかったみたい。
「そっ、そんなこと言っても、早すぎるものは早すぎるよ。シモンズ家の馬鹿息子との婚約だって、僕が外遊中に勝手に決めてしまって。やっと白紙に戻ったと思ったら、よっ、よりによって国王陛下と結婚なんて!ううっ」
そう言ってグレモントお兄様は、先ほどよりも激しく泣き始める。
「完璧すぎて、邪魔しようがないじゃないかー!」
・・・国王陛下じゃなかったら、妹の結婚を邪魔する気だったのね。
この人これで、次期公爵としての手腕を高く評価されてる、若手貴族のエースなのよね。金髪の貴公子なんて呼ばれてて、女性たちにもかなり人気なのだけど。みなさん、この姿を知らないからそんなこと言えるんだわ。
私が呆れていると、私のスカートにしがみついていたリア様が言った。
「グレモント、なかないで。これ、あげるから」
涙でぐしゃぐしゃになったお兄様に、飴を差し出す。
「リっ、リア様、何とお優しい!」
お兄様は感激して受け取ると、リア様の前に跪いて言った。
「この愚か者にこのような施し、感激に耐えません。この上は、いついかなる時でも、リア様のお呼びがあれば駆けつけます」
リア様は驚いて、私の影に隠れてしまった。お兄様といえば、可愛らしい不意の攻撃にすっかり気分を良くして、ニコニコしている。
まずい・・・。今度はリア様まで、シスコンのターゲットにする気じゃないでしょうね。
不安に頭を抱えていると、侍従が式の開始を告げてきた。
お父様に手を取られ、大勢の招待客が見守る中、聖堂の回廊を進む。
リア様とタクト様が、ベールの裾を持ってついてきてくださって、その可愛らしさに歓声が上がる。
大司教様の前で待つリチャード様に、お父様がそっと、私の手を受け渡した。
リチャード様に手を取られ、大司教様の前に進む。
「汝、リチャード・デル・ローザンは、グレイス・デ・クォーツを妻とし、いついかなるときも、創造主ダイスが世界を愛するがごとく、この者を愛することを違いますか?」
「誓います」
深緑の瞳でまっすぐ私をみつめ、迷いのない口調でリチャード様が答える。
「汝、グレイス・デ・クォーツは、リチャード・デル・ローザンを夫とし、女神アルタナが世界を愛するがごとく、いついかなるときもこの者を愛すると誓いますか?」
「誓います」
私もリチャード様を見つめながら、ゆっくりと答えた。
「よいでしょう。創造主と女神の名のもとに、この結婚が成立しました。
では、誓いのキス、」
「もう我慢できないよ」
大司教様が言い終わらないうちに、リチャード様は私のベールを上げると、勢いよく抱き寄せ
キスをする。
私もたまらず、キスを返した。
参列客からは歓声が上がる。
バルコニーに出ると、民衆の大歓声が迎えてくれた。
花火が上がり、民衆の渦からは無数の風船が飛んでいる。
「リチャード王ばんざい!」
「グレイス王妃バンザイ!」
皆口々に、リチャード様と私の名を叫ぶ。
リチャード様がリア様を、私がタクト様を抱えて、揃って手を振り歓声に応えた。
今日から、王妃として生きていくんだ。
困難も、苦しみもあるだろう。
だけど、この方がいる限り越えて行ける。
このかわいい子どもたちがいれば、なんだって笑って乗り越えられる。
私がそっと手を伸ばすと、リチャード様が握り返してくれた。
幸せになろう。
この国を幸せにしよう。
私は心に誓い、いつまでも歓声に応えて手を振っていた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
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