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番外編 リチャード編03

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王宮にやってきたグレイスは、やっぱりとてもかわいらしかった。

僕が何か言うたび、赤くなったり青くなったり、飛び上がったり後ずさったりするんだ。

初めて出会ってから、何度も王宮で顔を合わせたことがあるんだけど、いつもそうだった。18歳になっても変わってなくて、微笑ましいと思った。

僕が国王だから、緊張してるんだろうな。

僕にとって、グレイスの反応は新鮮だ。
こんなこと言うのは失礼だけど、貴族のご令嬢たちって、最大限の敬意を払って接してくれるか、色気全開でアピールしてくるかのどちらかだから。


リアとタクトと遊ぶグレイスは、とってもイキイキしていた。

僕が近づくと固まるから、たいてい遠くから見ていたんだけど、笑ったり慌てたり、クルクル表情が変わって、何度見ても飽きなかった。
彼女が来てから、リアとタクトがとても楽しそうで、ああ、来てくれてよかったなと思ったものだ。



そういえばグレイスの母上は、片田舎の男爵家の出身だそうだ。
母上の生家では、乳母を置かずに母乳で子どもを育て、使用人も交えて食卓を囲むんだとか。だからうちでもそうしているんです、と、クォーツ公爵が幸せそうに言ってたっけ。

まるで卑しい平民のようだとか言う人たちもいるけど、僕はそうは思わない。

だからグレイスはこんなにイキイキしてて明るいんだな、と、好ましく思うよ。



そんな話を秘書官のアランにしていたら、突然恋だと指摘された時は、驚いた。

恋?僕が?まさかそんなわけない。
だってあの子は、17も年下なんだぞ?

だけどアランは年の功もあって、いい加減なことは言わない男だ。その彼が言うなら・・・。

いやいや、そんなはずないだろう。
彼女はまだ若い。今はリアとタクトを一生懸命世話してくれているけど、あれだけ美人で気立もよくて、家柄も申し分のない子だ。いい縁談が来る日も、そう遠くないだろう。

・・・縁談だって?! 

そこで僕は、はたと気付いた。
彼女が他の男に嫁いで行くのを、僕は耐えられるのか?
そうだ、冗談じゃない。他の男なんかに渡したくない。そんな男、絞め殺してやりたい。

・・・そうだったのか。これが恋か。僕はいつの間にか、グレイスにめちゃくちゃに恋していたんだ。アランの言う通りだったんだ。

でも、僕は彼女より17も年上だ。18歳の女の子から見たら、35の男なんてオジサンでしかないだろう?

ただでさえ彼女は、僕を前にすると固まってしまうくらい、打ち解けてくれてないんだ。
そんな男から愛を打ち明けられても、困らせるだけだろう。

しかも僕は国王だ。
国王からの望まぬ求愛なんて、彼女を苦しめるだけだ。

だけど彼女を誰にも渡したくない。
どうしたらいいんだ・・・。

僕は何日も何日も、堂々巡りを続けるしかなかった。
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