海のある街。-月の光に照らされて-

PELICAN

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よく見えルーペ。

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カララン コロン

ドアについている古めかしいベルが鳴る。

「おや、初めての顔ですな。」
店内に入ってきた男女のお客さんをちらっと見て、店主のカルロットは呟いた。

「こんばんは。いらっしゃいませ。」
店主は少し声のトーンをあげた。



・・・

「だから、ルーペがあったのよ!」

なんだか女性が興奮気味に話していて、店主の声はかき消された。

「どこにあったんだい?」

女性と会話しながらも、男性は店主に会釈をした。
窓際のテーブル席を指差して、座ってよいかとジェスチャーで聞いてきた。

「どうぞ。お好きな席に。」
と、店主もジェスチャーで応えた。


「すなの山公園の丸太のテーブルのうえ。」

女性は早く話の先を言いたいようだ。

「へぇ。そのルーペを見せてくれないか?」

コーヒーのメニューに目をやりながら、男性は答えた。

女性が麻紐で編んだバッグから、大きなルーペを取り出した。
あまり見た事がないサイズだ。

「これ、これ。それでね、見てみたの。」

「何を見たんだい?」

「砂浜の砂の粒。」

「えっ?」


カウンターにいる店主は、「砂の粒を見るなんて、よっぽどやることがなかったのかな?」と思ったが、オーダーをとりに行きつつ、話の先に聞き耳をたてていた。


「そうしたら見えたの!!」

「何が?」

「はみがきこ を つけすぎませんように。」

「え?ハミガキコ?」

「うん。砂の粒にそう書かれてたの。」

「砂の粒に?」

男性はちょっと混乱気味だった。
(いつもこの子の話は少し飛びすぎる。



「それは…まさか。〝 見えルーペ “ですよ!」
思わず店主は2人の会話に入っていた。

「ミエルーペ?」
男女はそろって(なんだろう?この店主は?)と怪訝そうに顔を見合わせていた。

「そうです。これ、これ。」
と店主は本棚から、古めかしい一冊の児童書を持ってきた。

年季の入ったその本の表紙には、「海の秘密の書」と書かれてある。

店主は慣れた手つきでページをめくった。
何度も読まれたであろう本なのだろう。

★★★

『 見えみえルーペ 』

このルーペは、あるものがとてもよくえます。
それはうみにある砂浜すなはますなのつぶです。

すなには一粒ひとつぶごとに、人々ひとびとねがいがいてあります。

なみにながされると、そのねがいはかないます。

うみ砂浜すなはまは、こうした秘密ひみつがかくされているのです。

★★★

読み終わると、女性のお客さんが
「今日は波があるから、どこかのだれかさん、歯磨き粉をつけすぎないでハミガキできたかしら?」
と、ニコッとしていた。

そして男性は
「本日のブレンドを2つください。」
と、やっとコーヒーにありつける…というような顔で店主にオーダーをしたのだった。
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