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孤軍奮闘(ルフナ視点)
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自分がいまどこにいて、どのくらい魔物を屠ったかもわからない。
少なくとも数時間はずっと剣を揮っていることは確かだ。
あの後、香りが染みついた上着は脱ぎ棄てた。
だけど香水を頭からかぶったせいで髪と顔にもしっかり香りがついてしまい、魔物の返り血も浴び続けているので鼻の良い魔物にすぐに見つけられてしまう。
ある程度数を減らして逃げては大木や岩の陰に身を隠して、息を整える間もなく新たな魔物と相対する。
川があれば洗い流してしまいたいが、この状況では川があってもそんな暇は作れない。
常に体を動かしている今は寒さをあまり感じていないけど、じっとする時間が長くなれば凍えてしまうから休むにも休めない。
絶体絶命ではあったけど、時間が経てばいいこともある。
真夜中から移動してきたせいか早い内に空が白み始めて、森の中の様子が見えるようになった。
朝陽が昇れば魔物達の動きも多少は収まるはず。
突進してきたサイのような猪・ライノスボアを岩壁を登って回避する。
この魔物は皮膚が硬すぎて俺の持っている剣では歯が立たない。
衝撃で岩崖(がんがい)が崩れ落ちる前に登りきると、上空から待ち構えたように鷹のような嘴を持つ人食い梟・イーディアグルが飛来してきた。
鋭い鉤爪を往なして地面を転がり、体勢を整える。
背後からもう一羽現れて少し焦ったけど、上手くかわして一息吐いた瞬間、眼前に尖った嘴が迫った。
咄嗟に庇って攻撃の軌道逸らしたが、肩に爪がかすって灼けるような痛みが走った。
後ろに倒れそうになるのを両足で踏ん張って堪えようとした時、地面が揺れて完全にバランスを崩した。
まだ俺を諦めていないライノスボアが岩に体当たりを繰り返して、ついに崖が崩れたらしい。
尻餅をついたところに二羽のイーディアグルが挟み撃ちを狙ってくる。
一羽はかわせたとして、もう一羽を迎え撃つには時間が足りない。
魔物の鉤爪が胸に食い込む映像が脳裏に過る。
直感的に死ぬ―――
と思った瞬間、視界の中で何かが煌き、光が弾けた。
ずっと首から下げていたお守りの指輪がシャツの胸元から飛び出し、ひとりでに浮き上がっている。
指輪の表面に散りばめられた透明な石の欠片の一つ一つが、黒紫色の光を帯びていた。
気がつけばイーディアグルが飛びかかってきた状態のまま、時が止まったかのように空中で静止している。
驚きが先行して一瞬自分が何をしようとしていたのか見失ってしまう。
だけど眼前に迫った凶器を目にした途端、我に返った。
その場から離れて魔物と距離を取ると、指輪の光が徐々に弱まっていく。
黒紫色の光が消えると同時に、制止させられていた魔物が動き出す。
俺の肉を切り裂こうとしていた前足は空を切り、数秒前まで俺のいた場所を通過して高い枝の上に着地した。
理屈は定かじゃないけど、指輪の石が黒紫色に光ると魔物は動けなくなるみたいだ。
そうとわかれば、この指輪の力を借りてなんとか倒せるかも知れない。
剣の柄を持ち直して魔物の様子を観察していると、二羽のイーディアグルがホーと鳴いた。
仲間を呼んでいる。
たった二羽でも苦戦しているのに、大群になって囲まれたら今度こそ確実に死ぬ。
迎え撃つ作戦を変更して、俺は走った。
少しでもあの魔物から身を隠せる場所を探さなければ。
この時俺は、死ぬ恐怖に囚われて余裕を失くしていた。
だから上や前ばかりを気にしていて、足元に迫った罠に全く気が付かなかった。
あっと気が付いた時には俺の足は空を踏んで、抵抗する間もなく穴の中に落下した。
少なくとも数時間はずっと剣を揮っていることは確かだ。
あの後、香りが染みついた上着は脱ぎ棄てた。
だけど香水を頭からかぶったせいで髪と顔にもしっかり香りがついてしまい、魔物の返り血も浴び続けているので鼻の良い魔物にすぐに見つけられてしまう。
ある程度数を減らして逃げては大木や岩の陰に身を隠して、息を整える間もなく新たな魔物と相対する。
川があれば洗い流してしまいたいが、この状況では川があってもそんな暇は作れない。
常に体を動かしている今は寒さをあまり感じていないけど、じっとする時間が長くなれば凍えてしまうから休むにも休めない。
絶体絶命ではあったけど、時間が経てばいいこともある。
真夜中から移動してきたせいか早い内に空が白み始めて、森の中の様子が見えるようになった。
朝陽が昇れば魔物達の動きも多少は収まるはず。
突進してきたサイのような猪・ライノスボアを岩壁を登って回避する。
この魔物は皮膚が硬すぎて俺の持っている剣では歯が立たない。
衝撃で岩崖(がんがい)が崩れ落ちる前に登りきると、上空から待ち構えたように鷹のような嘴を持つ人食い梟・イーディアグルが飛来してきた。
鋭い鉤爪を往なして地面を転がり、体勢を整える。
背後からもう一羽現れて少し焦ったけど、上手くかわして一息吐いた瞬間、眼前に尖った嘴が迫った。
咄嗟に庇って攻撃の軌道逸らしたが、肩に爪がかすって灼けるような痛みが走った。
後ろに倒れそうになるのを両足で踏ん張って堪えようとした時、地面が揺れて完全にバランスを崩した。
まだ俺を諦めていないライノスボアが岩に体当たりを繰り返して、ついに崖が崩れたらしい。
尻餅をついたところに二羽のイーディアグルが挟み撃ちを狙ってくる。
一羽はかわせたとして、もう一羽を迎え撃つには時間が足りない。
魔物の鉤爪が胸に食い込む映像が脳裏に過る。
直感的に死ぬ―――
と思った瞬間、視界の中で何かが煌き、光が弾けた。
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指輪の表面に散りばめられた透明な石の欠片の一つ一つが、黒紫色の光を帯びていた。
気がつけばイーディアグルが飛びかかってきた状態のまま、時が止まったかのように空中で静止している。
驚きが先行して一瞬自分が何をしようとしていたのか見失ってしまう。
だけど眼前に迫った凶器を目にした途端、我に返った。
その場から離れて魔物と距離を取ると、指輪の光が徐々に弱まっていく。
黒紫色の光が消えると同時に、制止させられていた魔物が動き出す。
俺の肉を切り裂こうとしていた前足は空を切り、数秒前まで俺のいた場所を通過して高い枝の上に着地した。
理屈は定かじゃないけど、指輪の石が黒紫色に光ると魔物は動けなくなるみたいだ。
そうとわかれば、この指輪の力を借りてなんとか倒せるかも知れない。
剣の柄を持ち直して魔物の様子を観察していると、二羽のイーディアグルがホーと鳴いた。
仲間を呼んでいる。
たった二羽でも苦戦しているのに、大群になって囲まれたら今度こそ確実に死ぬ。
迎え撃つ作戦を変更して、俺は走った。
少しでもあの魔物から身を隠せる場所を探さなければ。
この時俺は、死ぬ恐怖に囚われて余裕を失くしていた。
だから上や前ばかりを気にしていて、足元に迫った罠に全く気が付かなかった。
あっと気が付いた時には俺の足は空を踏んで、抵抗する間もなく穴の中に落下した。
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